毎年色々なデザインや機能が追加され進化していくランドセルですが、最近では特に軽さに対する工夫を各社が取り入れています。
これはランドセルを背負った時の負担が社会的にも問題となっているためで、最近では「ランドセル症候群」という言葉も耳にするようになりました。
今回はこの「ランドセル症候群」についてわかりやすく解説します。
ランドセル症候群とは?病気の一種なの?
ランドセル症候群と聞くと病名のようなイメージを持ちますが、具体的にそういった病気があるわけではありません。
この言葉が話題になったのは、フットマーク株式会社が行った「ランドセルの重さに関する意識調査」によって、ランドセルの重さに悩んでいる子どもが多いという結果が発表されたためです。
※フットマーク株式会社とは、「ラクサック」というナイロン製のリュックを販売している会社です。
この調査によると、子どものうち3人に1人が「ランドセルが重いことが原因で、登校・通学をしたくないなど、通学を嫌がったことがある」とのことです。
実際に子どもが背負う「荷物が入った状態のランドセル」の重量は昔に比べて増えており、特に低学年の子どもは負担を感じやすい状態になっていると言えます。
子どもが背負うランドセルの重さはどれくらい?
先ほどの調査によると、子供が背負うランドセルの重さは平均3.97㎏という結果になります。
これはランドセルを含んだ荷物全体の重さであり、荷物だけの重量はおよそ2.67㎏となります。
一方で、セイバンが2018年に行った調査によると、荷物の重さの全国平均は1年生で3.6㎏、6年生では5.4㎏という結果になっています。
これはランドセルを含めない荷物だけの重さなので、ここにランドセルの平均重量1.3㎏をプラスするとさらに重くなります。
低学年でも約5㎏、高学年では約7㎏に近い荷物を背負って登校していることになります。
調査結果にバラつきはありますが、いずれにせよ子どもが背負うランドセルの重さは過去に比べて増えています。
どうしてランドセルが重たくなったのか?
昔に比べてランドセルが重くなってしまった原因は、「ランドセル自体の重さ」が増したというわけではありません。
主な原因は「ランドセルの中に入れる荷物の量が増えた」ことです。
その背景には「脱ゆとり教育」があると考えられます。
ゆとり教育時代であった15年前の教科書と比較すると、現在の教科書はページ数が約1.7倍に増えています。
さらに英語教育の若年化により、新しい教科書も追加され、冊数も増えています。
タブレット導入によりデジタル教科書の活用も検討されていますが、本格的な実施はまだ先の話。
逆に従来の教科書にタブレットが加わり、荷物の量が今まで以上に増えてしまっている状態です。
また最近ではコロナウイルスの影響もあり、ほとんどの学校で「水筒の持参」が求められ、子どもの荷物を重くしています。
このような要因によって、子どもが学校へ持って行く荷物の重量が増えてしまったわけです。
身体へ負担をかけないための対策
子供たちの身体に負担をかけないために、どのような対策をすればよいのでしょうか。
具体的な対策をまとめてみました。
教科書などを「置き勉」にする
最も効果が高いのは「置き勉」の実施です。「置き勉」とは、教科書を学校に置いて帰るという方法のことです。
実施の有無については学校によって様々ですが、例えば週に一度しか授業のない「書写」や「道徳」「図工」などの教科書を学校で管理しているというケースはよくありますし、もっと多くの授業で置き勉を認めている学校もあります。
最近ではTVなどで有識者が「もっと置き勉を認めるように」と発言することもあり、今後認める学校は増えるともいますが、現時点ではすべての学校で置き勉が認められているわけではありません。
この点に関しては、児童が勝手に判断できることではないので、保護者たちが協力して学校側に掛け合って実施を促していく必要があると思います。
軽さ対策を行っているランドセルを選ぶ
軽さ対策をしっかり行っているランドセルを選ぶのも重要です。
例えば業界最大手であるセイバンでは、1000g以下の超軽量ランドセルを開発して、少しでも重量を軽くするという対策を行っています。
また天使のはねというオリジナル肩ベルトを開発して、ランドセルがぴったりと肩にフィットするような構造を実現し、背負った時にかかる負担を全体に分散させています。
同じく大手のフィットちゃんでも、立ち上がり背カンを使用して肩と体にぴったりとランドセルをフィットさせる対策を行っていますし、加えて「楽ッション肩ベルト」という新機能も開発しています。
これは肩ベルトの厚みが従来の2倍以上にアップさせることで、背負った時の肩の負担や傷みを軽減させるものです。
このように、各メーカーがランドセルを背負った時の負担を軽減させる対策を行っています。
できれば展示会やショールームなどに行って実際に背負ってみて、もっとも負担が少ないと感じたランドセルを選ぶことをおすすめします。
ただしくランドセルを背負う
せっかく軽さ対策を行っているランドセルを選んでも、正しく背負っていないと重心が一点に集中してしまい、体のゆがみや痛みにつながります。
ランドセルを正しく背負うために、次のポイントを意識しましょう。
- 肩ベルトの長さ
- チェストストラップの調節
- 荷物の入れ方(背中側に重い荷物を入れる)
- 左右のナスカンに掛ける荷物(左右バランスよく)
ランドセルは背中にぴったりフィットするように背負うのが正しい背負い方です。
これらのポイントをきちんとチェックすることで、背中にランドセルが密着して、体に負担をかけにくくなります。
低学年のうちはうまく調節できないことが多いので、保護者が調節してあげましょう。
また子どもの成長は早いので、ずっと同じ長さにするのではなく、定期的に肩ベルトやチェストストラップの長さを調節することが重要です。
まとめ
近年のランドセル重量の増加による「ランドセル症候群」の原因は、子どもが持ち歩かなければいけない「荷物量の増加」が主な原因です。
政府としてはデジタル教科書の導入などにより、荷物量の軽減を目指してはいますが、まだ実現までは少し時間がかかってしまうでしょう。
このような状況で子供たちの負担を減らすためには、保護者がこの問題をきちんと理解して、学校側と協力した上で、「置き勉」などの具体的な対策をしていくことが重要だと思います。
またランドセル選びについても、デザインやカラーだけで決めるのではなく、しっかり軽さ対策を行っているモデルを選ぶことが重要です。