賃貸契約時の火災保険は強制で入らないといけないの?

賃貸契約時の火災保険は強制で入らないといけないの?

賃貸契約の際に「当社指定の火災保険に加入すること」という文言や、「火災保険料25,000円」などと書かれた物件広告を見たことがあるでしょう。建物の所有者は大家なのに、なぜ入居者が火災保険を払う必要があるのか、と疑問に感じた人もいるかもしれません。

賃貸物件の入居者が加入する火災保険は、建物に対してではなく、自分の家財を守るためと他者への賠償の目的で加入するものです。

賃貸物件の火災保険は加入が義務付けられている?

賃貸物件を借りるときは、敷金や礼金と同じように、火災保険料も当然支払うべきものとして、疑問を持たずに保険に加入する人もいるでしょう。

しかし、今まで賃貸物件に何年も住んできたが一度として火災を起こしたことはない、そろそろ火災保険料を払い続けるのが馬鹿らしくなってきた、と感じる人もいるようです。自分には不要なので加入したくないということが、はたして通用するのでしょうか。

法的強制力はなく義務ではない

自動車保険には車に乗る人なら必ず入らなければいけない強制保険と、必要に応じて入る任意保険の2種類があります。賃貸物件の火災保険は、強制、任意のどちらに属するのでしょうか。賃貸物件の契約時に必ず加入しなければいけないと思っている火災保険は、強制ではありません。火災保険の加入はあくまでも任意です。

もし、万が一何か重大な事故が起きても、自分が賠償できる十分な財力があれば入らなくても問題はありません。ただし、そのような十分な財力のある人が賃貸物件に入居するかどうかは疑問ですが。

賃貸借契約書ではどう決めているか

借地借家法などの法律で、加入を義務付けているわけではありません。しかし、契約時の賃貸借契約書には「火災保険に加入すること」と記載があることが多いはずです。それは、不動産仲介会社や大家の利益のためではなく、ひとえに入居者本人の財産を守るためだからです。

賃貸借契約書に記載されていることを貸主と借主の双方が納得して署名捺印をすることにより、正式に契約締結となるため、記載されていることが守られなければ、契約破棄となり入居ができません。

どの保険も万一のために掛けるもの

生命保険にしても自動車保険にしても、万が一のことを考えて加入するものです。保険があるので安心はしていても、通常は事故を起こさないように安全運転に気をつけ、病気にならないように健康的な生活を送りますよね。

しかし、そうはいってもいつなんどき何が起こるかわからず、事故や病気や怪我の際には、金銭的な負担も重くのしかかることになります。そこで自分や家族のために生命保険や自動車保険は抵抗なく加入する人が多いようです。賃貸契約の際の火災保険も全く同じです。

火災保険とは、

  • 入居者の不注意により賃貸物件に損害を与えてしまったときの賠償責任をカバーする「借家人賠償責任保険」
  • 隣人や階下など第三者に怪我をさせたり水漏れで階下に損害を与えたりしたときに補償してくれる「個人賠償責任保険」
  • 自分の家財が火災や盗難水害などにあった際に補償してくれる「家財保険」

になっています。それぞれ補償内容や補償額は、保険会社のプランや年齢などに応じて変わります。

もし火災保険に入らないとどうなるの?

火災保険は強制ではなく義務でないと上で説明しましたが、実際に入らなかった場合はどうなるのでしょうか。賃貸物件で起こる可能性のあるケースについて説明します。

水漏れにより下の部屋が水浸しに

賃貸借の火災保険から補償が行われるケースとして最も多いのが、水漏れに関する補償です。たとえば、洗濯機の排水ホースが外れてしまい、排水が床にあふれて下の階に水漏れしたり、お風呂のお湯をためていることをうっかり忘れていて浴室外に水があふれた場合です。

階下の天井からポタポタとしずくが落ちてきたり、壁を伝って水のクロスに汚水のシミができたりしたときには賠償しなければなりません。状況によっては、天井をはがしての大がかりな修繕工事になってしまいます。

クローゼットや押入れの洋服や布団を濡らしてしまったら、その賠償責任もあります。もっと高価な家電などを濡らして故障してしまったら大変です。

放火されたら犯人が弁償してくれる?

火災の原因で1番多いのが放火です。自分の住居が放火の被害にあったらどうでしょう。命だけでも助かってよかった、と思えますか?なんとしてでも犯人を見つけ出し責任を取ってもらわなければ気がすまない、と思っても実際には個人的に犯人探しをするわけにもいかないでしょう。

仮に犯人が見つかったとしても、弁済能力がなければ泣き寝入りになってしまいます。火災保険に入っていれば、このような第三者による放火被害の補償もしてくれます。

空き巣被害にあっても泣き寝入り

昨今は、作業着を着て業者のふりをしてどこからか侵入し、玄関から堂々と家財などを運び出す空き巣被害があります。あまりにも堂々としているため、目撃した人もまったく怪しさを感じないのだそうです。

犯人が見つかっても失ったものは多くの場合返ってきません。火災保険で盗難も対象に入っていれば、時価額や再調達価額などで補償されます。計算式や上限額はプランにより異なります。

延焼の場合は火元に責任はない

近所で火災が起きた場合、風向きによってはあっという間に火の手が及ぶこともあります。しかし、そんな類焼や延焼においては、火元になった人の不注意から起きた火災でも、当事者に賠償請求をすることができない失火責任法という国で決められた法律があります。

木造建築が密集した日本における民法の特別法です。そんな類焼や延焼の被害にあった場合にも、保険から補償されます。

退去の際は原状回復義務がある

上のような火災で家財は補償をしてもらうことができます。家財が被害にあったということは、室内にもある程度の被害があることが考えられます。入居者は引っ越しをして退去する際には、入居時のような状態にして部屋を明け渡さなければならない原状回復の義務があります。

日焼けによる壁紙や畳の通常損耗と言われる程度では問題となりませんが、火災で焼けた場合は事情が異なります。この際はたとえ出火元が別人の場合でも、その部屋に住んでいた入居者が原状回復をして返さなければなりません。この時にかかる原状回復のための修繕費用も保険に加入していれば補償されます。

このように、いくら自分が気をつけて生活をしていても、いつなんどき、よそからの被害を受けることがないとは言えません。自分の財産を守るために入るのが火災保険です。

賃貸物件に住む人のためを考えて作られた保険にあえて入らないのでは、あまりにもリスクが大きすぎます。万が一そのような事故があった際にトラブルになることが予想されるため、賃貸借契約書において最初から火災保険を加入することが決められているのはごく自然なことだといえるでしょう。

火災保険は自分で選ぶことができる

不動産会社が損害保険の代理店をしている場合、自社で扱う火災保険の加入をすすめられます。入居者全員が同じ保険会社に加入していれば、万が一の事故が起きた際に都合が良いこともあります。

また、契約更新切れなどにならないよう、管理面でも手間がないためです。どこの損害保険会社を使いたい、という希望がなければそこで加入するのが手っ取り早いでしょう。

しかし、指定されたプランの保険料が高過ぎるため内容を確認すると、自分の家財の総額をはるかに超えた補償内容だったということもあり、一人ひとりの状況に応じたプランでないことが多いようです。

自分や知人が損害保険会社に勤めているなら、そちらに加入したいと思うでしょう。そんな場合は自分で保険会社と借家人賠償責任保険が付いたお得なプランを選んで加入することができます。とりあえずは、加入前に不動産会社に相談してみましょう。

火災保険の加入は、他の誰でもない自分のためです。掛け捨て保険なので、互助のための安心料と割り切るしかありません。最初に提示された保険料が他の同等の物件と比べて高いと思えば、自分に合ったプランに変更するなど交渉の余地はあると思います。

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