不動産会社の評判を悪くしている理由の1つが、「おとり広告」や「釣り広告」と呼ばれる存在です。
おとり広告や釣り広告というのは、ありもしない架空の格安物件や掘り出し物件で、お客さんを獲得しようとする方法のことです。実際には存在しない偽の広告でお客さんに来店してもらい、他の物件へと誘導・紹介するのが狙いです。
賃貸や売買のどちらでも、不動産業界では以前からよく使われている集客方法です。
このような、「おとり広告」や「釣り広告」に騙されないための見分け方を、いくつか紹介しておきますので参考にしてください。
おとり広告の実態
おとり広告や釣り広告は、各不動産会社によって色々なやり方があるので、ここで全てを紹介することはできませんが、一般的な手法をいくつか紹介しておきます。
すでに入居者が決まった物件をHPに載せたままにしている
よくあるのがこのパターンで、すでに入居者が決まっているにも関わらず、その物件への問い合わせが多いため、HPから入居者募集の情報を消さずに載せたままにしておくやり方です。
実際に借主が入居するまでは、HPから募集情報を消さないことが多いです。その物件情報を見て来店したお客さんに、他の類似物件を紹介するのが狙いであり、自分の顧客として囲いこみ、次に良い物件が出たときに案内するのが目的です。
【回避方法】
来店前に、必ず電話で「○○物件はまだ空いているか、他に案内したお客さんや検討しているお客さんはいるのか」を確認しておくようにしましょう。良心がある不動産会社なら、「まだ決まっていませんが、すでに検討されているお客さんはいます」と言うでしょう。これくらいしか確認方法はありません。
まったく存在していない物件情報で釣る
この方法はかなり悪質です。実在しない募集情報を掲載してお客さんを釣るパターンです。
実際の建物すら存在していないとなると怪しまれるので、実在する物件名なのですが、家賃や初期費用などの情報はデタラメというケースが多いです。
このようなおとり広告や釣り広告を使うのは、店舗へ足を運んでもらう来店率を上げることが目的です。来店してもらうことができれば、他の物件を紹介して契約に至る可能性が高くなります。とにかく店舗に足を運んでもらうことを最優先に考えている不動産会社がよく使う手法です。
分譲マンションのポストなどに、「当マンションを買いたいというお客さまがいます」というポスティングチラシが投函されていますが、あれは9割ウソです。そんなお客さんは実際にはいません。
あたかもすぐに売れてしまうかのように見せるための釣り広告です。それと同じような目的で、賃貸でもおとり広告や釣り広告を多用している不動産会社は少なくありません。
おとり広告の見分け方
おとり広告を見分けるのは、正直プロでもないかぎり難しいです。明らかにおとり広告だとわかる物もありますが、なかには巧妙に作られているおとり広告もあるからです。
これから紹介する方法で、100%おとり広告や釣り広告を見破れるという保証はできませんが、知らないよりは知っておいた方が、騙されて貴重な時間を費やすことがなくなるかもしれません。
相場に見合った条件であるか?
おとり広告なので、相場に見合ったという言い方も変ですが、あまりにも家賃が安すぎるような物件は疑ってかかるべきです。
例えば目黒駅から徒歩5分圏内の築浅1LDKであれば、相場は20万円程度です。それなのに、同じ条件で家賃12万円という物件があれば、いかにも怪しいです。
事故物件でもない限り、ここまで相場から外れることはありません。好条件なのに家賃があまりにも安い物件というのは、まず疑ってかかった方が賢明です。
物件の詳細情報が書かれているか
一番良いのは、物件の詳しい住所が書かれていることです。おとり広告の場合は、たいてい「○○市○○町」までしか書かれていません。番地まで書いていると、お客さんが勝手に外観を見に行って空室がないことがわかってしまうからです。
本当に悪質な場合になると、詳しい住所どころか物件名まで伏せてあるケースもあります。本当にお得な情報であれば、何も物件名や住所を隠す必要はどこにもありません。詳しい情報を書けないということは、何かしら後ろめたいことがあるからだと思ってください。
現地待ち合わせで内覧を受けてくれるか?
おとり広告の物件は、その物件が実在していたとしても、内覧案内は嫌うものですし、それが現地待ち合わせとなればなおさらです。
「内見案内はできますが、その前に一度会社に来店して頂くことになります」というのは、明らかに怪しいです。来店したときに、「さきほど管理会社から連絡がありまして、他のお客さんの申し込みが入ってしまったそうです」などと適当な嘘を言われるのが目に見えています。
また、違う会社の募集物件を他の不動産会社が勝手に使っていることなどもあります。問合せをしても、やはり適当に違う物件をすすめられることになります。
無理難題の条件が書かれていないか
おとり広告を隅々まで読むと、無理難題な条件が書かれていることも珍しくありません。例えば「定期借家契約」などの文言があると、通常の契約は難しくなります。このように一般的には契約に至らないであろう条件を書いておき、いざ来店したときに詳しく説明して、その物件を諦めるように仕向けるという作戦です。
禁止用語を平気で使っている不動産会社は要注意
物件情報のコメント欄で、「激安物件」「日当たり最高」という言葉を見かけることがあります。実は、この言葉は賃貸募集で使うことを法律で禁止されています。
不動産公正取引協議会が定める「広告ルール」というものがあります。不動産関係者であれば誰もが知っているルールです。これらの言葉を平気で使っているような不動産会社は、法律や法令を守る意識が低い会社と見られても仕方ありません。
「広告ルール」で定められている賃貸募集時の禁止用語の事例
[1] 完全、完ぺき、絶対などの用語
[2] 日本一、抜群、当社だけなどの用語
[3] 特選、厳選などの用語
[4] 最高、最高級など最上級を意味する用語
[5] 格安、掘出物、土地値などの用語
[6] 完売など著しく人気が高く、売行きがよいことを意味する用語※公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会のHPより抜粋
(http://www.sfkoutori.or.jp/consumer/c_002.html)
今回紹介した事例はほんの一部です。上手い話には裏があります。明らかに好条件過ぎる物件は、まず疑ってかかることをおすすめします。とくに、おとり広告や釣り広告を使っている不動産会社は、日常的にそのようなやり方で集客しているので、掘り出し物件が多数存在していると謳っている不動産会社というのは、あまり信用しない方が賢明です。
現実的な希望や相場をしっかり自分で把握して、おとり広告や釣り広告に惑わされないように物件探しをすることが望ましいと言えます。
賃貸物件探しは物件との巡り会いと言っても過言ではありません。万全な情報収集をして多くの物件を目にすることが、自身の望む物件に出会う確率を高めてくれます。