賃貸物件を探す際に、どの程度の家賃の物件を探すべきか即座に答えられる人はどのくらいいるでしょうか。毎月の収入に対して固定費となる家賃は、節約をして金額を減らせる性質のものではありません。毎月必ずかかる固定費や変動費の支出額は、収入額よりも少なくなければいけないのですが、家賃はどの程度に抑えるべきか見ていきましょう。
家賃の上限は月収の3分の1?
少し前までは「家賃は収入の3分の1が目安」と、長い間定説のように語り継がれてきました。一人暮らしをする人は、親や知人やメディアなどから「家賃は3分の1に抑えるべき」と教えられた人も多いかと思います。ライフスタイルや家族構成が多様化するこの現代において、その定説は今でも通用するのでしょうか。
定説の「家賃は給料の3分の1」は現代でも当てはまる?
確かに年齢や職種、会社の規模や経営状態などでそれぞれ収入額に差異があり、地域差によっても物価が違えば当然家賃も異なるので、収入の何%という考え方は一見妥当のように思えます。
総務省の統計局では毎年四半期に分け、単身世帯と2人以上の世帯それぞれの家計調査報告を行い、そこには収入や、家賃や光熱費、食費や教育費などの支出の内訳をかなり細かく列記してあります。それらの情報を元に、賃貸暮らしをしている世帯の平均収入に対する家賃の家計に占める割合などを根拠に、長い間信じられてきたものと考えられます。
万人に当てはまるわけではない
世の中には月々の収入が100万円の人もいれば500,000円の人も200,000円の人もいるわけで、その人たちを十把一絡げにして考えても良いものでしょうか。
上の例のように、子供のいない単身世帯や、子育て真っ最中の家族世帯、子供を育てあげた高齢者世帯、本業の他に家賃収入や副収入がある人、など世の中にはさまざまなライフスタイルがあり、全ての人に対して当てはまるわけではありません。
これから一人暮らしを始める人にしても、何年も勤続していて貯蓄がある人か、新卒でこれから社会人になる人なのかによってもかなり状況は変化するでしょう。
生活に必要な家財が既に揃っているのか、これから生活をしながら少しずつ買い集めるのか、キリがありませんがそれぞれの事情が異なる以上、一般的な定説に縛られる必要はないと思います。
UR賃貸では家賃の4倍の収入が目安
民間の賃貸物件ではなく、独立行政法人が管理するUR賃貸では、一定の入居資格を満たさないと入居の申し込みができません。そこには、家賃の4倍の収入があることが基準とされています。
ということは、UR賃貸に住むには収入の4分の1以下、つまり収入の25%以下の家賃に抑えなければならないことになります。これはUR賃貸に限らず、民間の賃貸住宅の場合でも、現代の考え方としては当てはまると言えそうです。
支出の費目が昔とは異なっている
なぜなら、給料の3分の1の説が生まれてから久しく、かなりの年月が経過しています。その頃とは、時代背景も異なり、その頃になかった支出の費目も増えていると思われます。例えば、インターネットやスマートフォンなどにかける通信費が考えられます。
また、少子化の影響もあるのか、子供1人に対するお金のかけ方が昔とは異なり、塾や習い事、被服や娯楽費の費用や、進学率が増えているため教育費などの家計に占める割合が増えています。いつまでも昔の教えに従い、それが正しいものとして受け止める必要はありません。
何にどれだけ支払う?家計の見直しを
これから一人暮らしを始めようと思う人は、長く実家暮らしをしていた場合、どんな費用にどれくらいの金額がかかるか全くわからない人もいるでしょう。おおよその収支計画は立てておきましょう。
また、何年も家計を預かる主婦でも、月々いくらぐらいという額は把握していても、それが全体の割合として何%に当たるかまで捉えていない場合もあります。次に引っ越す場合はどれくらいの家賃の物件が適正なのか、子供の成長に応じて支出も増えてくるでしょう。家計を見直して予測を立てておく必要があります。
固定費と変動費で考えてみよう
まずは、月々必ずかかることになる固定費から考えてみましょう。固定費は、毎月決まった額で支払うもので、家賃や通信費、保険料等がそうです。水道光熱費も月により使用料の変動はあるものの、基本料金が定められていて確実に使い支払うべきものなので固定費に含めます。
変動費は、食費や被服費、医療費や交際費、生活用品の消耗品費等です。食費は自炊か外食かにより、かかる金額も変わってきます。もし使い過ぎたと思えば、給料日まで自炊をしたりお弁当を持参したりして節約ができます。
また、安い食材を使ったり嗜好品を我慢したりすることによって、月額を調整することができます。このように流動的な費用を変動費とします。
固定費は必ず毎月支払うもので節約ができない
変動費に比べて固定費は月々決められた額を支払い続けなければならないものです。後から節約しようと思っても減らせるものではありませんので、しっかりと月々にかかる費用を見極める必要があります。
変動費は固定費と違い節約ができると説明しましたが、それにしても一定の支出は考えておかなければなりません。目に見えない固定費だけを重視して、変動費を毎月節約して好きなものにお金を使えないようでは生活も楽しくありません。
家賃以外の支払いを想定して計算してみる
通信費、保険料、水道光熱費、交際費、被服費、生活消耗品費、などにどれくらいかかりそうか目安の金額を書き出してみましょう。家族の家計を預かる人に尋ねるか、概算額の見当がつかない場合は、総務省統計局の家計調査を参考にしてみましょう。
参照URL:総務省統計局 家計調査 公表結果
その他にも、習い事や趣味にかける費用、美容費、いざというときの薬や通院等の医療費、また社会に出れば冠婚葬祭費用が重なることもあります。そんなときのために月々意識的に貯蓄をしていく必要もあります。余ったお金をそのまま普通預金に置いておくだけではなかなか残高は増えていきません。
財形貯蓄や定期預金口座などを作り貯蓄を心がけましょう。新卒なら、予定収入から社会保険料や所得税などの控除額を差し引いた手取り収入から、おおまかに計算した支出額を引いてみてください。その金額が家賃の上限額になります。当然、共益費や管理費などがあれば、家賃と合計しておきます。
ボーナスを当てにした支出計画は危険
ここで気をつけたいのは、夏と冬のボーナスをあてにした収支計画です。昨年度の賞与実績○か月分などの記載があっても、それは世の中の景気や会社の収益により、いつどこでどうなるかわからないものです。
皆に等しく還元する企業があれば、歩合給的な側面を強くして、査定などで個人別にかなりの差をつける企業もあります。景気が悪ければ、ボーナス50%カットや賞与支給なしということもあります。
月々の家計のやりくりがギリギリだからといって、クレジットカードやカードローンのボーナス一括払いは、他に貯蓄がない場合あまりにも危険だとの認識が必要です。同様に、月々の生活費の赤字分をボーナスで補填しようと思わないようにしましょう。
これで家賃の上限がわかる!
一人暮らしが初めての人も、ここまでくれば、大体の家計の収支の内容や、目安の金額、今後の生活に対するイメージが湧いてきたのではないでしょうか。もっと月々の貯蓄額を増やしたい、家賃を抑えて趣味にかけるお金を増やしたい、など見えてきたと思います。
他の費目を削ってでも、都心の立地の良い場所に住みたいという人もいるでしょう。要は、収入と支出のバランスが取れれば赤字にはなりません。それらを計算し直して、収入から家賃以外の支出合計を引いた残額が、家賃の目安の金額ということになります。大体収入の25%から30%あたりが多いのではないでしょうか。
まとめ
子育てや教育でも昔通りの教えが現代では通用しないことが多いものです。自分で住むところを選べるなら、なるべく家賃を安く抑えるに越したことはありません。
ライフスタイルや年齢、地域などでそれぞれ自分に適した家賃の上限額を知る必要があります。一般的に言えるのは家賃を収入の30%を上限とし、25%程度におさまれば安心なのではないでしょうか。