賃貸物件を探すとき、アパートやマンションの共同住宅に住むなら、家賃や間取りだけでなく建物の構造にも着目することをおすすめします。木造は分かるけれど、RC造やSRC造と書かれていてもピンとこないため、ついつい見逃してしまうこともあるでしょう。
そこで今回は、建築物の構造を表す鉄筋コンクリート造(RC造)と鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)について解説します。
賃貸物件でも建物の構造を気にすべき?
建物を構成する柱、梁、壁の材質の違いにより、建物の構造は主に、
- 木造
- 軽量鉄骨造
- 重量鉄骨造
- 鉄筋コンクリート造
- 鉄筋鉄骨コンクリート造
に分かれます。このうち、マンションやビルなどの大きな建物は、鉄筋コンクリートか鉄骨鉄筋コンクリートです。木造アパートよりはマンションの方が頑丈で、防音性にも優れていることは一般的によく知られています。
しかし、鉄筋コンクリート造と鉄骨鉄筋コンクリート造がどう違うのかはあまり知られていません。何千万円も払って購入する分譲マンションならまだしも、賃貸物件でも、構造の違いを知って借りる必要があるのでしょうか。
何を重視するかにより選ぶべき構造が異なる?
上記で説明した建物の構造は、耐久性や耐震性、耐火性、防音性に関わってきます。これらは、生活する上での快適性や安全性に直結します。しかし、高い快適性や安全性を誇る物件ほど、家賃は高くなってしまいます。同じ間取りなら、木造アパートよりもマンションの方が高くなる、ということですね。
設計の自由度はRC造の方が優れていると言われています。耐震性、耐火性ならSRC造の方がやや高いとする説明もありますが、最新の技術で作られた建物は、どちらも大差ないというのが一般的な見方です。防音性、耐久性はどちらも同じと考えて良いでしょう。
というわけで、木造とコンクリート造を比較するなら大きな違いが出ますが、RC造とSRC造の細かな違いまでは、住む上ではあまり気にならないものです。どちらかに絞り込んで物件を探すというのは、あまり意味がありません。
鉄筋コンクリート造(RC造)とは
鉄筋コンクリートはReinforced Concreteの頭文字からRCと略されます。Reinforcedは強化という意味なので、強化されたコンクリートや、補強したコンクリートととらえると良いでしょう。
鉄筋は鉄棒のことで、引っ張る力に対しては強いが、曲がりやすいデメリットがあります。逆に、コンクリートは圧縮する力は強いが、引っ張る力に弱いという弱点があります。組み立てた型枠の芯に鉄筋を配し、コンクリートを流し込むことにより、お互いの弱点を補う強固な構造としたのがRC造です。耐火性、耐久性に優れています。
建物自体の重量が重たいため、低層階になるほど、上階を支えるための柱が太くなります。同じ間取りでも低層階と高層階では専有スペースが異なり、上階ほど広くなります。そもそも建築材料の重量が重たいものは、建てる地盤が強固でなければなりません。そのための工事がまず必要になるため建築費用が高くなります。
10階未満の中低層のマンションが多かったのですが、近年では、コンクリートの高強度化の開発が進み、10階建て以上のマンションも建設されています。外観や内装、間取りも柱のない大空間のリビングなどデザインの自由度が高いのも魅力です。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)とは
鉄骨鉄筋コンクリートはSteel Reinforced Concreteの頭文字で、SRCと略されます。鉄がSteelなので、上記のRCに加えてさらに鉄骨を組み合わせています。RC造は芯に鉄筋を使いますが、SRC造の場合は、芯が鉄骨になり、その周囲に鉄筋を組んでからコンクリートを打ち込んでいて、鉄骨の特徴であるしなやかさを持たせた造りです。
耐火性や耐久性に優れ、RC造に比べると、柱や梁などの躯体のサイズを小さくしても耐震性の高い25階程度の高層マンションやビルなどの建物に向いています。しかし、建築時の工程が複雑で工事も長期化するため、建設コストがどうしても高くなってしまいます。低中層マンションなどではコストが見合わないためあまり存在しません。
それぞれのメリットで比較すると
実際に住むなら部屋ごとに比較しないことには意味がありません。そこで、両者のメリットである遮音性と防災面について、構造的には大きな違いはありませんが、壁材の材質により音の伝わり方も異なり、建物によってかなりの違いを感じることもあるため、それぞれの注意点を説明します。
遮音性の良さ
木造と比べれば、RC造とSRC造は遮音性能は高いです。気密性の高い重い材料ほど遮音性能も良くなり、厚さが増せばその分高い遮音効果が期待できます。賃貸ではスラブ厚までは公開していないと思いますが、その数値が大きいほど遮音性は高くなります。
スラブとは、RC造かSRC造で建てられた構造床のことです。昨今では、スラブを薄くした二重床や二重天井の造りもありますが、スラブが厚ければ直床でも十分な遮音効果があります。
上に敷くフローリングがいくらグレードの高いものを使用していても、スラブ厚が薄ければ意味がありません。同様に二重床で空間を空けているなら直接の振動は響きにくいだろうと思うのも早計です。衝撃音が太鼓現象で増幅されて階下に響く現象もあるため注意が必要です。
RC造かSRC造なら何が何でも安心できる、ということにはなりません。壁材によっては、隣室の音が聞こえやすいこともあります。こればかりは構造や間取りなどを眺めていても実際の遮音性は分からないため、内見の際にコンコンと叩いてみて音の響き具合を確かめてみましょう。軽い音が響くようなら遮音面では期待できません。
防災面の安全性
火災に強い耐火性という点では、RC造もSRC造も問題ありません。コンクリートは不燃素材のため、木造と比べると優れた耐火性があります。万が一火災が発生しても、燃え続ける高温の火に2時間さらされても変形しないことがわかっているので、共同住宅に住む以上は、火元の部屋一箇所のみの被害で抑えられるのは大きな安心感につながります。
地震に対する耐震性は、耐震基準の大きな改正があった1981年以降に新耐震基準で造られた建物なら安心できます。鉄筋を埋め込んだSRC造の方がRC造よりはやや有利ではあるものの、どちらも十分な耐震性能があります。
免震、制震は、構造の問題ではなく工法上での違いになります。大きい地震が起きても耐震性が高いと室内は揺れないということにはなりません。免震工法なら、大きな地震の際には大きくゆっくりと揺れるようになります。耐震、免震を過信せず、室内の家具などは転倒防止の対策をしましょう。
良い物件なら家賃も高い!コスパで考えると?
分譲マンションは、建築コストの高いSRC造の方が販売価格は高くなるようです。それに比例して、賃貸の際もSRC造の方がRC造よりも家賃が若干高いという説もあります。しかし、築年数や立地、面積や階数などの条件により、家賃はどのようにも変わってくるため、SRC造とRC造に限って家賃を比較する意味はあまりないと思います。
木造や鉄骨造と違って、RC造とSRC造に限っての比較は大差ありません。両者の2つの構造に限定して比較するよりも、物件ごとの造りで見るべきでしょう。両者に共通して言えることは、遮音面でも防災面でも、他の構造の建物よりも優れている、そのため家賃も高くなる、ということです。