賃貸広告で見られるメゾネットタイプというのは、一軒の物件が1階と2階以上の縦に連なる階層になり室内に階段があるアパートやマンションを言います。同じ建物の中でも全ての住居が同じ間取りではなく、3階と4階などの一部がメゾネットタイプになっていることもあります。
このメゾネットはファミリー層に人気があります。どの辺が人気なのか、住み心地やメリット・デメリットはどうなっているのかを解説していきます。
誤解されやすいメゾネットタイプの間取り
メゾネットタイプのマンションは、全ての間取りがメゾネットであることは少ないです。
通常のフラットの部屋が連なる階がいくつかあり、その最上階とその下の階をメゾネットにしたり、同じ階でも左と右に分け、フラットタイプとメゾネットタイプの両方が混在しているところもあります。
内階段があれば全部メゾネットになるの?
ここがややこしいのですが、室内に階段やハシゴがあっても建築基準法によりその名称を分けて、分類することになっています。見た目や住み心地はそれぞれでかなり違うので、混同されやすい物件について説明しておきます。
メゾネット
3階建て以上のマンションの中に、ワンフロアでなく上下階にまたがった造りの物件を言います。一つひとつの住戸の室内に専用の内階段があり、マンションなのに室内は戸建てのようになっています。
ロフト
居室の天井を高めにして、その一部を2層にしたスペースの部分をロフトと言います。小屋裏収納や屋根裏部屋のようなもので、書斎や寝室として使われることが多く、移動式のハシゴなどで上り下りします。居室としての建築基準を満たさないため、上下階に居室があるメゾネットとは異なるものです。
テラスハウス・タウンハウス
室内の形状がメゾネットと似ているため混同されやすいですが、マンション内にあるメゾネットタイプの物件との違いは、その建物全体で判断します。テラスハウスやタウンハウスは、一戸建ての住宅が隣家とつながっている連棟式の2階建ての住居を言います。
そのうち、専用の庭やテラスがあるものをテラスハウス、庭や駐車場を共有するものをタウンハウスと呼び分けています。
ロフトではない!メゾネットの正しい意味
室内に階段がある部屋をメゾネットというのではありません。それだと、ロフト付きの物件がメゾネットになってしまいます。ロフトとは屋根裏部屋や小屋裏収納と呼ばれるスペースで、建築基準法ではロフト部分の天井までの高さが1.4m以下、さらに床面積はその階の面積の1/2未満であることが決められています。
省スペースのロフトとメゾネットの2階は全く異なり、上階は下の階と同様きちんとした居室で、普通の戸建てのように何部屋もあるところもあり、窓やベランダがあったり、トイレも上下階にある物件もあります。
テラスハウスはメゾネットになるの?
テラスハウスの室内はメゾネットタイプの室内とよく似ています。ただし、高層のマンションではなく、2階建ての連棟式住宅や長屋建ての造りをテラスハウスと呼んでいます。テラスハウスは直接玄関から外に出られ、専用の庭やテラスが全ての住戸に設けられています。その辺がメゾネットタイプのマンションとは異なります。
住み心地はどんなところが魅力?メリットは?
マンションなのに、室内は一戸建ての造りになっているところが大きな特徴であり魅力です。なぜメゾネットが人気なのか、その理由とメゾネットタイプを選ぶメリットについて説明します。
バリエーションが豊富
メゾネットタイプの中には、室内にある階段が隣家と接する端に設けられているものや、部屋の中央にらせん階段になっているもの、リビングから吹き抜けになっているなど、様々な造りになっています。
また、間取りも様々で、下に水周りで上がリビングだけという物件や、下がリビングと水周りと和室、上が2部屋の子供部屋と主寝室と納戸などの4SLDKという物件など、単身向けから家族世帯向けまでバリエーションが豊富です。
室内階段があるため一戸建て感覚が味わえる
耐火構造がしっかりしていて高層階では見晴らしが良く、それなのに一戸建て感覚が味わえ、家賃は一戸建てよりは割安、そんなところが人気の秘訣でしょう。一戸建てでは庭の手入れや周辺道路の清掃など、全て自分でやることになりますが、共同住宅のマンションならそのような煩わしさがありません。
オートロックや管理人が24時間常駐、宅配ボックスや監視モニターなどがあれば、一戸建てよりも防犯面で安心できると思う人も多いでしょう。日中に子どもが留守番で一人になることがあっても心配せずに外で働くことができる、と就業の選択肢が広がったという人もいます。
足音など階下に気兼ねをせずにすむ
家族に人気のあるポイントとして、子供部屋を上階にすれば、多少の物音や足音は階下の別の住人にまでは届かない、ということが挙げられます。あまりにうるさくしては隣室には聞こえてしまいますが、間に納戸や収納スペースがあり、直接居室同士が接していなければ防音面もまずまず安心できます。
フラットタイプで下の階の住人に聞こえてしまうのでは、と子どもの動きを制限することなく、物音を立てるたびに叱らずにすむのは親にとっても子にとってもメリットが大きいでしょう。
吹き抜けタイプは開放感がある
吹き抜けがあれば上から下が見通せたり、下から上に声をかけることもできます。家事で上と下を行き来しているときでも、子どもの様子をすぐ確かめることもできます。何より吹き抜けがあると、通常のフラットタイプの間取りでは感じることのできない頭上での広がりが感じられ、面積以上の開放感を味わえるでしょう。
部屋の独立性がある
フラットタイプの居室でテレビを見たり音楽を聞いたりしていれば、音が漏れて聞こえることもありますが、階が違えば気にならなくなります。子どもたちが寝た後にリビングのホームシアターで映画を楽しむこともできます。
このように上と下の部屋の独立性があることから、電話の話し声も、テスト勉強も、楽器の練習も、あまり気にならないというメリットもあります。
トイレが2か所あるのは便利
間取りによっては上と下にトイレがあるのは家族の人数が多い家庭では助かります。朝、同じような時間に起きて一斉に電車で通勤や通学するなら、一分一秒を争うときにトイレが2か所ある便利さは計り知れません。
メゾネットのどんなところがデメリットになるの?
良い面づくしのメゾネットに思えますが、反面、不便に感じたりデメリットになることもあります。自分の生活ではどんなことがデメリットになりやすいか考えて、物件選びの参考にしてください。
洗濯や掃除など家事動線が長くなる
メゾネットの物件には上階に広くバルコニーを設けているところがあります。そういう物件では少しでも日当たりの良いところに洗濯物や布団を干したいので、開放的なバルコニーに物干し台を設置している人がほとんどです。
そうなると、水周りが下の階にあると洗濯物をその都度持っていって上で干すことになります。階段の上がり下りが面倒で、リビングのベランダに物干し竿を設置して小ぢんまりと干す家庭もあります。
上の階に掃除機を持って移動するのが面倒だったり、大きな掃除機では階段の掃除がしづらいため、もう一台小型のものを購入することにもなりがちです。大型で吸引力も良いものを下の階で使っているのに、上の階では物足りないような気がしながらも、それを我慢しながら使うようなことも起こります。
主婦にとってはどうしても家事動線が長くなり、階段の上り下りがきつく感じることがあります。
段差があるためバリアフリーではない
大きな家具は引越し業者が壁や階段頭上を保護して運び入れたことと思いますが、それがないと、簡単に素人が家具の入れ替えをしようと思わない方が良いです。事前にしっかりとした家具のレイアウトを考えておく必要があります。
バリアフリーではないので、足にケガをして松葉杖が必要になったりしたときは段差があると危ないです。重たいものを持って階段を上り下りするときにも、段差を踏み外さないように気を付けましょう。
赤ちゃんや病人の様子をすぐに見られない
フラットな床なら他の部屋で寝ている赤ちゃんの様子や介護する病人がいればすぐに様子を見に行くこともできますが、階が分かれているとなかなかそうもいきません。階段の上り下りがつい億劫になってしまい、頻繁に様子を見に行かなくなったり、逆に心配でおちおち下にいられない、ということもあるでしょう。
結局は日中のほとんどをリビングで過ごすことになったり、上の階の様子がすぐ分かるようにモニターを設置したり、ということになるようです。
上のベランダに干したものの様子が分からない
日中の主婦はリビングで過ごすことが多いでしょう。そうなると、上のバルコニーに干した布団や洗濯物の様子が見られず、風で煽られてぐちゃぐちゃになっていても、万一飛ばされてしまっていても、気が付かずに洗濯物を取り込むときに、愕然とすることがあります。
目の前で洗濯物がハタハタと揺れていれば、強風になったので洗濯物を取り込もう、と気が付くのですが、目の前に揺れる対象のものがなければ、風が出てきても気づかないことも多く、布団バサミで干しておいた布団が飛ばされて一階の庭に落ちていた、ということもあります。
リビング側のベランダと逆方向にあるバルコニーでは、頭上から布団が落ちても気づけません。もし階下に人がいたら危険極まりないため、しっかりとロープやひもで固定してください。
階段の往復が面倒で各人のものが下の部屋に集まる
これは一戸建てでもありがちですが、それぞれの所有物全てを二階の各自の部屋に置いておくと、いちいち階段を上り下りして取りに行くのが面倒になり、必要なものがどんどんと下のリビングに置きっぱなしになる傾向があります。
使い終わったらその都度各自の部屋に戻すように言っても、結局は守られなかったり、リビングに各自のものを置くための収納を増やしたり、ということになります。それがどんどんと増えると、もはや上の部屋は寝るときしか使われない、という状況に陥ることもあります。
せっかくの広々としたリビングがなかなか片付かない状況にもなり、こんなことならフラットタイプの方がスッキリと暮らせた、と思う人もいます。
まとめ
メゾネットタイプは戸建て感覚が味わえるのに、実際の戸建てを借りるより賃料が安いため人気の物件です。しかし、せっかくの間取りを活かしきれずに、収納部屋となってしまったり、広いバルコニーを有効利用できず、サンダルすらも置いていないということもあります。
年頃の子どもがいる家庭では、部屋の独立性が保たれるのがメリットと感じることもあるでしょう。このように、家族構成や部屋数によっても住み心地は異なるため、メリットやデメリットをよく知った上で、適した間取りの物件を選んでください。