急いでいる場合や、先に決まった物件があるというような特別な事情を除いて、私たちは部屋を借りる前には一回その部屋に行って、実際に見てみると思います。これを「内見」と言います。
便利なもので今はネットで部屋の中のパノラマ映像から拡大映像も思いのままで、内見なんて必要ないんじゃないの?という人もいますが、やはり内見は必要です。
内見の意味
今はネット通販があるので気軽に欲しいものを現物を見ないで買うという人も多いですが、やはり家探しはその後の生活に大きな影響があるので、できれば現物を見たいですよね。気に入った物件があったら、不動産業者に問い合わせます。そして家賃などの条件面を確認し、やはり借りたいと思ったらその物件を見に行くことになります。
何件くらい見ればいい?
部屋探しは縁のものです。「部屋を借りたいな」と思ったらすぐにいい物件に巡りあうことができる人もいれば、いつまでたっても気に入るような物件がなく、結局引越しをあきらめるという人もいます。
「内見は何十件でも、多ければ多いほどいい」という人も、「あまり見すぎると混乱して迷うから2~3件までがいい」という人もいますよ。各種の調査でも、多くの人が3件程度で決めていますが、それより多い人も少ない人もいて、これはもう、人によりけりと言うしかないでしょう。
ただ一つだけ言えるとしたら、内見するのは「何件までがいい」という法則はありません。自分がこれだと思える物件に出会うまで、と考えたらいいでしょう。そのためには引越しまでの時間的な余裕が必要です。
たとえ半年くらいかかってもここだと思う部屋が見つかるまでは引越さないという余裕があれば、何件でも内見して、好きなだけ考えられます。
ただ、家賃がかからない実家暮らしならともかく、すでに賃貸住宅に住んでいて更新の時期に引越しを考えている人や、新入学、新社会人を機に別の町に引越すという場合には、そんな悠長なことは言っていられません。しかし、その場合でも焦って最初の内見で決めてしまうのではなく、何件か見て回ったほうがいいのは間違いありません。
内見にかける時間
一件あたりの内見にかけられる時間も人それぞれです。早い人はぱっと見て決めてしまうし、あちこちチェックをして30分くらい時間をかける人もいます。
内見時のチェックポイント
内見をする場合、絶対にチェックしてほしいのが、臭いです。こればかりは写真には写りません。カビの臭い、タバコの臭い、下水の臭いなど、気になる臭いがないか、感覚を鋭敏にしてください。
また、窓の下の壁や押入れの中はカビがないか、目視でチェックします。できれば水回り、排水のようすなども実際に水を流してチェックしたいところです。排水溝自体が老朽化している場合など、思わぬ大事故になってしまった時、保障問題でもめるのはいやですよね。
不動産業者との付き合い方
内見をする際に、あまり何件も見せてもらうのは悪いんじゃないかとか、急かされるようでゆっくり見られないとか、不動産業者に気を使ってしまうということもあると思います。なんとかお互い気持ちよく、そして悪徳業者にひっかからないように話を進めたいものです。
内見についてきてもらう?
不動産業者にはその町で昔からやっているような個人事業型の業者と、テレビでCMを流して手広く全国チェーン展開しているような業者、その中間のようなある地域で何店舗か構えているような業者があります。
部屋探しが初めてという人なら、駅のターミナルビルの中など便利な立地で店舗もガラス張りだったりして明るく清潔なイメージの大手業者が入りやすいかもしれません。
ただ、昔からやっていておじいさんが一人で店番をしているような業者は、最初は敷居が高いのですが、大家とのつながりが深く、一般には出回らないような掘り出し物件を実は抱えていたりするので、どちらがいいとも一概には言えません。
基本的に内見の際には大手業者であれば、車を出してくれて何件か一緒に見て回ってくれることが多いと思います。でも、一人で店をやっているような個人事業型だと、お客さんを内見に連れて行っている間にほかの客が来たらみすみす逃してしまうことになるので、物件の地図と鍵だけ渡されることもあり、そうなると一人で内見をすることになります。
ついてきてもらう場合のメリット・デメリット
営業マンが車を出してくれて何件かまとめて回ってくれる場合、一番のメリットはなんと言っても楽なことです。知らない町をウロウロする必要がないですからね。また、部屋についてからもいろいろな質問にその場で答えてもらえるので、話が早いです。
コミュニケーション能力に自信がある人なら、車の中であれこれ世間話をしつつ「実は今、隣の駅のほうが家賃の割にはお得」とかいい情報を得られるかもしれません。
その一方で、車で回られてしまうとわからないことがたくさんあります。たとえば、近所にちょっと柄が悪い人がたむろしているような場所があるとか、駅までの間の踏切が開かずの踏切だとか、周囲の環境はその家の間取りと同じくらい、あるいはそれ以上に生活に影響してきます。
車だと素通りしてしまったり、見せたくないものはわざと避けて通ったりする場合もあるので、引越してから「しまった!」ということになる危険性もあります。
さらに、内見の際にあまり待たせるのも悪いような気がしてゆっくり見られないということもあります。たとえば、すでに冷蔵庫やソファ、ベッドなどある程度の家具家電を持っている場合、それらを設置するためのスペースがあるかどうかメジャーでゆっくり測りたいと思っても、「次の内見の予定があります」なんて言われたらゆっくりしていられませんよね。
あなたがたとえどれだけ迷惑そうな顔をされても、きちんと納得がいくまで調べることができるという鉄のハートの持ち主ならばいいのですが、やはり時間に余裕を持って内見する時間を事前に決めておく方がいいですね。
ついてきてもらわない場合のメリット・デメリット
人数が少なかったり、忙しかったり、あるいは物件が業者の店舗の目と鼻の先にあるというような場合には、地図のコピーと鍵を渡されて、「一人で見てきて」と言われることもあります。また、中には鍵は郵便ボックスの中に入れておくんで帰る時にはまた入れていってください、というセキュリティ的にどうなの?という不動産屋もあります。
こういう場合、不安を感じる人もいると思いますが、よくあることなので特に心配になる必要はありません。逆に一人のほうがゆっくり物件の周辺を探索できたり、家の中のサイズを測ったり、細かい傷やカビのあとのチェックもできるのでいいという人もたくさんいます。
ただし、「この古いエアコンは付け替えてもらえるのか」「洗面台のドアの立て付けが悪い」など、細かい部分の聞きたいことはいちいちメモにして後で訊ねなければいけないので、面倒と言えば面倒です。
安易に申込書を書かない
内見に行った後、「じゃあとりあえず申込書だけは作っておきましょう」と言われることがあります。「この部屋は人気なのですぐに借り手がついてしまいますよ」とか「申し込むだけ申し込んでおいたほうがいいですよ」なんて言ってすぐに申込書を書かせたがる業者がいますが、これはちょっと要注意です。
なぜなら、申込書には当然のことながら個人情報がいろいろと書かれています。それを不動産業者に提出してしまった後、どう使われるかわかりません。また、手付金を払えと言われるケースもあるので、本当に気に入ってここに決めたいと思う物件でないなら、「よく考えてからまた来ます」と一旦保留にすることをおすすめします。
部屋探しはその先しばらくの生活を左右します。とても重要なことですから「こんなことを言ったら悪いかな」と気を遣うよりも、自分が納得するまで探すことを優先しましょう。