入居中は何も問題がなく過ごしていても、いざ退去のときになって問題になりやすいのが敷金返還に関するトラブルです。
敷金は退去時に部屋や設備に何の問題もなければ全額返還される、または多少は修繕費を払ったにしても大半のお金は戻ってくるだろうと思っていたのに、実際はそうではなかったことでトラブルとなります。そんなことにならないように常日頃から気をつけて対策できることがあります。
なぜ退去時に敷金トラブルになりやすいのか
入居中に自分が壊してしまった設備やキズを付けてしまった箇所に対しては弁償しなければならないのはわかります。しかし、壁紙や畳の全面張り替えや交換ということになると、自分が汚したのはほんの一部であるのに、全額を自分が負担するのは納得いかないというのはごもっともです。
そもそもその賃貸の部屋は、大家さんの持ち物で商売道具です。退去する自分が次の入居者のために全てを新品にする必要があるのか、と疑問に思うことでしょう。しかも、その交換費用がやけに高い気がして、不動産会社と貸主が結託して自分を騙そうとしているのではないか、ということからトラブルになることもあります。
預けた敷金のほぼ全額が修繕費として相殺?
預けた敷金のほぼ全額が修繕費として差し引かれた精算書が届き驚くケースは多いです。余計な費用まで支払わされているのではないか、貸主はどのくらい支払っているのか、気になるところですね。
ひどいところでは換気扇の交換、シーリングライトの交換などの費用まで含まれていたとか。自分が壊した覚えのないものや、古くなり買い替えが必要な設備の購入費まで持たされたのではたまったものではありません。
精算書の内容も、ただ修繕費とだけ書かれていて内訳金額がわからないのでは納得がいくわけがありません。明細が記載されていても、世間一般の内装工事代金よりも高額すぎる、もっと安い業者は手配できなかったのかなど、不満が噴出することもあります。
敷金精算書が後日郵送されてきてその合計額に驚き、詳しい内訳書を再発行してもらうよう伝えると、途端に「あれは間違いだった。大家の分も入っていた」と訂正する業者もいるようです。
国土交通省のガイドラインによると
冷蔵庫裏のクロスの電気焼けの跡や日光による壁紙や畳の日焼けは通常損耗と言われ、借主が気をつけて生活をしていても自然に劣化していくものとして入居者に修繕や交換の義務はないとされています。
入居者が負担するのは、不注意で壊してしまった設備や、カビや普段の清掃では落ちない汚れが付いてしまった場合の修繕費用です。また、壁紙や畳の交換費用も、入居年数に応じて借主と貸主の負担割合の例が定められています。
二つの義務
部屋を借りる際に覚えておきたい二つの義務があります。それが部屋をきれいにして返す原状回復と、きれいに使う善管注意義務です。
原状回復義務の正しい意味とは?
不動産の賃貸借契約で使われる言葉です。「借りた部屋を退去するときは入居当時の状態にすること」という意味です。ここが厄介で退去時のトラブルになりやすい部分です。
なぜなら、国土交通省の提示するガイドラインがあるにも関わらず、広く全国的に知れ渡っていないことが多く、不動産管理会社も大家に周知していないため、昔ながらのやり方を押し通すところもまだまだあります。
善管注意義務って何のこと?
これは特に不動産に限った用語ではなく、善良な管理者の注意義務の略語で、賃貸で使われる意味では、簡単に言えば「借りた部屋はきれいに使うこと」ということです。大げさに考える必要はなく、普通に暮らし普通に掃除していれば何の問題もないことです。
日常の生活を見直そう!敷金全額返還のために
退去のときに戻る予定の敷金を、次の入居費用の足しにしようと当てにしていた場合は、ほとんど返金されないとショックです。では、敷金を少しでも多く取り戻すためにはどうしたらいいのでしょうか。
大前提として家賃は滞納しないこと!
敷金は、入居時に担保として家賃の滞納があった時や退去時の修繕費用のために当てられるものです。敷金全額返還を目指すなら当然家賃は滞納しないことが肝心です。常日頃から収支計画を立てて無駄遣いをせず身の丈に合った生活をしましょう。
家具を入れる前に写真を撮っておくこと
元からあった設備を壊してしまったり、床や柱や壁などに傷をつけてしまったら修繕費用がかかります。一方入居前からあった傷に対しての修繕費は払う必要がありませんが、記憶も曖昧で何の証拠もないときには、支払わざるをえなくなってしまいます。
そうならないためにも入居が決まり家具を搬入する前には、室内をチェックして傷の箇所の写真を残しておくとよいでしょう。不動産会社では退去時のトラブルを少しでも減らすために、入居時のチェック表を用意し、傷等がある場合に事前に申告するようにしているところもあります。
汚れを溜めない
目立つ汚れをつけないようにすることが大切です。目立ってくる前に気がついたときに手入れをしておけば強力な洗剤も使用せず掃除をする時間も短くすみます。
汚れが目立っていよいよ気になり我慢ならなくなって重い腰を上げるというのでも、定期的に掃除を行えればいいのですが、それがどんどん通常になっていくと、たいした汚れでは気にならなくなってしまいます。
汚れを溜めると固くこびりついて落としづらくなり、場所によってはプロの手を借りることになってしまいます。そうならないためにも生活の中で最後にさらっと掃除する癖をつけておくとあとになってから困りません。
日常生活の中でルーチンワークとするのが良いのですが、いつも朝ギリギリに起きて慌てて飛び出していくようなタイプの人は毎日行うのが難しいでしょう。曜日を決めて、少しの時間を掃除のために割くことを心がけてください。それがのちに何万円かの差になるのですから。
故障した設備はすぐに連絡
インターホンや電気のスイッチ、エアコンやガス給湯器など何か不具合が起きたときに、あまり使わない機能だし業者を呼ぶのも面倒だからと、そのままにしておくといざ退去の段階で修理ができなくなってしまうこともあるようです。
設備の交換になってしまい入居者にも落ち度があると言われてしまえば、ある程度の負担をすることが考えられます。入居中に不具合を申告してその都度直してもらえば、その時の修理代は全額大家の負担になります。その都度連絡をして修理してもらうようにしましょう。
喫煙場所は一箇所に!換気扇の下で
部屋とキッチンの境目のドアを開けっ放しにしてタバコを吸うと煙が全部の部屋に行き渡ることになり、ヤニ汚れが全体的についてしまいます。全室のクロス交換になるとその分余計に修繕費がかかります。
タバコを吸う場所は1箇所に決め、なるべく台所の換気扇の下で吸うなどして、全部の部屋に煙が拡散するのを防ぎましょう。
フローリングは傷をつけないよう保護する
フローリングの上で家具を引きずったり、キャスター付きの椅子で移動したりすると、フローリングの材質にもよりますが、きちんとワックスなどで保護をしていないと、すぐに傷だらけになってしまいます。
その傷の大きさや深さにより、一部のリペアですむ場合もあれば全面交換が必要になってしまうこともあります。フローリングの床材はピンキリで、賃貸用の物件なら安いものが使われることが多いのですが、中には防音効果の高い高価な材質のフローリングを使う物件もあります。
思いのほか高い修繕費用が請求されることがありますので、普段から傷をつけないように心がけましょう。
自分でやれる簡単な修復はやっておくこと
壁や長押にフックを取り付けるためにネジやクギ穴を開けてしまったところは、目立つ穴があれば爪楊枝を埋め込んでカッターで表面を平らに削り、周囲の木材と同じ色に調合した絵の具を塗るなどして補修しておきましょう。
壁紙の剥がれがある部分も放っておくと折り目の癖がついてしまいます。気がついたら早めに木工用ボンドなどで補修しておいた方が良いです。
結露やカビやサビ、水垢に気をつける
窓につく結露を放っておくとカビの原因になったり、周りのクロス壁がしわになって浮いてきたり波打ったりすることがあります。浴室も換気を行わずいつも湿った状態ではカビが生えてしまいます。
台所周りも濡れた缶をそのまま放置しているとサビの跡がついたり、いつも食器が溜まっていたりするとシンクに水垢が付きます。使い終わった後に水滴をふき取る習慣があれば綺麗な状態を保つことができます。
毎回の拭き取りが面倒なら、何日かおきに傷のつきにくい洗剤で磨いてください。排水口なども雑菌がついて水の流れが悪くならないように掃除をして除菌しておきましょう。
まとめ
自分が壊したものもなく、家賃も滞納せず、普通に暮らし普通の掃除をしてさえいれば、敷金は全額返ってくるはずです。そのためには、気がついたときにこまめに掃除をするのが一番です。
しかし、そうは分かっていながらなかなか実行できない人も多いでしょう。誰も人が出入りしない部屋は荒れ放題になってしまいますよ。たまには親や知人を招待して部屋の状態をチェックしてもらってください。
見るに見かねて掃除をしてくれるかもしれません。きれいになったらなるべくその状態を保つ努力をしましょう。