中古マンションを買う側と売る側、どちらも誤解していることが多いのが、「住宅ローン特約」という制度です。この制度の間違った解釈により、中古住宅の売買では度々トラブルが起こります。
この間違った知識を払拭すべく、今回はこの住宅ローン特約について解説します。
住宅ローン特約とは
住宅ローンというのは、購入する物件が具体的に決まってからでないと、ローンの申し込みができません。そのため、中古マンションを購入する場合においても、売買契約が締結してから正式に住宅ローンに申し込みをします。
このように、売買契約の後に住宅ローンの申し込みをしてから本審査を受けます。当然審査で融資不可となってしまうケースもあります。そうなると、資金繰りが出来ずに買えない状況が発生するので、買主としてはキャンセルするしかありません。
通常であれば、売買契約後のキャンセルは手付け解約となり、預けておいた手付金をペナルティとして没収されます。手付金の相場は、だいたい物件価格の1割~2割とされているので、2,000万円の中古マンションだとしても、200万円~400万円が没収されます。
しかし、それではあまりにも買主側が可哀想だということで、特例として住宅ローンの審査で承認がおりない場合に限り、一定の期間内であれば、違約金なしでキャンセルすることができるというのが「住宅ローン特約」という制度です。
そのため、契約事項内で「住宅ローン特約」を設定していなければ、住宅ローン審査で通らなかった場合、手付金などの違約金を支払うことになります。
住宅ローン特約は中古住宅の売買では当たり前
ほとんどの人が、売買契約の前に住宅ローンの事前審査を受けていますが、いざ本審査の段階になって「やっぱり貸せません」となることは珍しいことではありません。だからこそ、中古住宅の売買ではほとんどのケースで「住宅ローン特約」を付けます。
しかしそれで安心するのはまだ早いです。実は、この住宅ローン特約にも様々な種類があり、契約書内の文言ひとつでまったく違った解釈をすることも出来てしまいます。
最近、この住宅ローン特約に関するトラブルで多いのが、「提携銀行の住宅ローンに限り、住宅ローン特約が適用される」というパターンです。
こうやって文字にすれば、多くの人が「提携銀行に限り」の部分に疑問を抱くかもしれません。しかし本当の売買契約時には、サラッと聞き流してしまう人がかなりいます
提携銀行の住宅ローンとは
提携銀行とは、仲介や売主となっている不動産業者(仲介業者)が提携している銀行のことです。提携しているからといって、審査が緩くなったりすることはありませんが、通常の適用金利より優遇されたり、申し込み手続が簡素化されているなどのメリットがあります。
また契約(申込)実績を増やすことで、その不動産会社は次回更新時に、さらに優遇金利で提携出来る可能性があります。そうなると他の不動産会社との差別化にもなるので、不動産会社としては、なるべく提携銀行の住宅ローンを使って欲しいというのが本音です。
自分で探した住宅ローンは「住宅ローン特約」の適用外
しかし今は過去最低金利と言われるほど、住宅ローンの金利は下がっています。もちろん、提携銀行の住宅ローンもそれなりに金利は低いのですが、やはりネット銀行などの超低金利には到底かないません。
そのため不動産会社の提携住宅ローンは利用せず、自分たちで探した住宅ローンを利用する人が急増しています。たしかに住宅ローンほどの高額な貸付になると、わずか0.1%でも低金利の商品を選びたくなるはずです。
ここで十分注意しておかなければならないのが、自分で探した銀行の住宅ローンでは、たとえ審査で融資不可と判断されても、「住宅ローン特約」の対象にはならないということです。
住宅ローンであれば、何でも特約が適用されると誤解する人は多いですが、そうではないということです。
提携銀行の住宅ローンだけではなく、すべての住宅ローンに対して「住宅ローン特約」を付けるケースも増えているので、そのような契約なら問題ありませんが、ここを見落としてしまうと後で大きなトラブルになるかもしれないので注意しましょう。
住宅ローン特約の内容は必ずチェック
住宅ローン特約を付ける場合、契約書や重要事項説明書に詳しい内容が記載されています。ただ契約書には難しい言葉で書かれていることも珍しくありません。
- (例)提携金融機関に限る
- (例)市中銀行に限る
このように、契約書を見てもよくわからない場合は、具体的な銀行名を記載してもらえるようにお願いしてみてください。それに対して難色を示すような不動産業者であれば、契約そのものを見直すのが良いかも知れません。
チェックする項目は「詳しい銀行名」と「住宅ローン特約が有効となる期限」の2ヶ所です。
住宅購入は人生においても大変大きな契約です。トラブルや失敗を招かないように、契約は慎重に、ローン特約の事項は必ず最初に確認することをおすすめします。大手住宅メーカーに限らず、信頼できる業者を選んで円滑に契約をすすめることが大切です。