不動産の売買で、「契約後にやっぱり気が変わって契約そのものを破棄したい、白紙に戻して欲しい」と言った場合、手付け放棄などにより、金銭的なペナルティを受けるのが当然だと思う方が多いはずです。しかし契約した相手や場所によっては、違約金などを払わずに契約を白紙撤回することができる場合があります。
それが今回解説する「クーリングオフ制度」です。
クーリングオフと聞けば、飛び込み営業や通販商品などを思い浮かべる方も少なくないと思いますが、実は不動産の売買においても、クーリングオフ制度を適用できる場合があります。今回はこの点について解説します。
クーリングオフの対象となる条件
まずはクーリングオフの対象となる条件から確認しましょう。重要なのは「契約した相手」と「契約したときの場所」です。
売主が宅地建物取引業者である
クーリングオフの条件に該当するのは、売主が「宅地建物取引業者」であることです。つまり売主が一般個人であり、宅地建物取引業者が仲介しているだけという物件の場合は、クーリングオフの対象とはなりません。
しかし最近は、中古マンションを安く買い取り、自社でリフォームをして中古マンションとして販売している業者も少なくありませんので、そういったケースだとクーリングオフの対象になる可能性が高いです。
契約した場所はどこ?
そしてもう1つ重要になるのが、契約を交わした場所です。
例えば、突然自宅に不動産会社の営業マンが訪問してきて、「残り1部屋だけですから」などと口車に乗せられて、思わず契約をしてしまった場合は当然クーリングオフの対象となります。
しかし契約を交わした場所が、宅地建物取引業者の事務所や、関連施設(モデルルームや売り物件)などであれば、残念ながらクーリングオフは認められません。
さらに細かく説明すると、仮に契約した場所が自宅や勤務先の会社だったとしても、それが買主側の希望の場所であれば、当然これもクーリングオフは認められません。しかし、売主の希望によってファミレスや喫茶店で契約を交わした場合は、クーリングオフの適用となります。
いまいち良く解らない部分もあるかもしれませんが、とにかく不動産売買においても、クーリングオフという制度が存在していることだけは頭に入れておいてください。
クーリングオフ制度を知らずに、売主や仲介業者から言われるままにキャンセル料としての違約金を支払わないようにしましょう。
売主側も他人事ではない
クーリングオフは、買主だけを救済するための制度だと思っている人も少なくないようですが、決してそんなことはありません。売主側としてもある程度の知識をもっておかなければ、損をすることもあります。
最近は、スマホひとつでネット上の様々な情報が手に入る時代です。買主側が突然契約をキャンセルしてきて、「クーリングオフ制度」を主張してくることも十分に考えられます。
もちろん先ほど話したように、売主が個人の場合、クーリングオフ制度は適用外なのですが、表面的な部分だけを読んで誤解している買主もいるかもしれません。また、買主が見たサイトが間違った記事を掲載している可能性もあります。そうなると、取れるはずの違約金も取れなくなります。
売主側としても、クーリングオフ制度の正しい知識をある程度知っておくことが求められる時代なのです。
クーリングオフの適用期間は8日間
一般的にクーリングオフが適用できるのは、商品を購入したときから8日間だと思っている人が多いのではないでしょうか。きっとクーリングオフについてネットで調べても、8日間と書いているサイトが多いと思います。
しかし今回のケースだと、実際に契約をした日から8日間ではありません。買主が宅地建物取引業者から 「申込の撤回や契約解除について説明を受けた日」から8日間です。
売る側も買う側も、クーリングオフ制度が適用されるケースなどの基本的な知識は、常に念頭に置くことでトラブルを回避できます。また、契約の際に少しでも不明確な点は、そのままにせずに確認しながら進めていくことをおすすめします。
※国民生活センター「クーリングオフ」
http://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/coolingoff.html