家を売却する前に受ける査定には、大まかな相場を出すだけの「簡易査定(机上査定)」と、実際に査定員が調査をしにくる「訪問査定」の2種類があります。
訪問査定では、建物の劣化状況や周辺の生活環境などがチェックされ、詳細な査定額が算出されます。
この査定額もとに、家の売り出し価格を決めることになるので、少しでも高い評価を得ておきたいところです。
このページでは、家の査定評価を上げるためのアピール戦略と、訪問査定時に実際にチェックされる箇所について、詳しく解説します。
家の査定評価を上げるためのアピール戦略
まずはもっとも重要な「家の査定評価を上げるためのアピール戦略」から解説します。
訪問査定時にどのような箇所をチェックされるか気になる人は、次のブロックを読んでください。(長くなるので後で説明しています)
このページで解説する「査定額」に関してですが、1つだけ誤解しないように注意してほしいことがあります。
「査定額」というのは、「この家なら○○円くらいで売れるだろう」という予想金額に過ぎず、「実際に売れた時の価格」とは異なるものということです。
ですから、査定額より高く売れることもあれば、査定額より低い金額での売却となることもあります。
しかしそうは言っても、「最初の売り出し価格」を決める重要な指標となるので、高い評価を得られた方が良いに決まっています。
以上の点をふまえた上で、家の査定評価を上げるためのポイントを解説していきます。
訪問査定時にやるべき基本対応
まずは訪問査定を迎えるにあたって、必ずやっておくべき基本的な対応を紹介します。
といっても、普段より少し丁寧に掃除や片付けをやるだけなので、そこまで特別なことはありません。
- 玄関の靴を片付けて少しでも広く見せる
- 屋内のゴミや荷物はできる限り目に付かないところへどける
- すべての部屋の窓を開けて換気をしておく
- お風呂やトイレなど水回りの臭い対策をする
- 査定時はすべての部屋の電気をつけて明るくする(昼間でも)
- カーテンも全開にしておく
とにかく大事なのは、「家を広く、明るく見せること」です。
そのために、部屋に置かれている荷物などをできる限り少なくして、たとえ昼間であっても電気はすべてつけておきましょう。
空間を広く見せるためには、「物を少なくする」ことが大事です。
例えば玄関に家族の靴が並べられている場合、それを靴箱に片付けたとしても、玄関自体の広さは変わりません。
しかし、査定員が受ける印象としては、靴が片付けられた状態の方が、確実に「広く」見えます。
大事なのは、見に来る人の印象を良くすることなので、訪問査定の前には面倒臭がらずにできる限り整理整頓をしましょう。
これは、売却を始めた後に内覧希望者が来た際もまったく同じです。
不動産業者に対してアピールすべきこと
次は、訪問査定にきた不動産業者に対してアピールすべきことを解説します。
訪問査定にくる査定員は、そのまま売却を行う際の担当者(営業マン)になることもあるので、家の良さをしっかりとアピールする必要があります。
不動産業者側が何よりも気にすることは、「後々トラブルになりそうな箇所はないか?」という点です。
買主目線であれば、「家の間取りはどうか?」 「駅まで徒歩何分か?」など、家の利便性や周辺環境を重視すると思いますが、不動産業者の場合は違います。
何よりも困るのが、売却後にトラブルが発生して揉めることなので、まずはその可能性をチェックします。
例えば、
Aさん「ガス給湯器が1ヶ月前に突然止まったけど、その後は問題なく使えています」
Bさん「ガス給湯器が1ヶ月前に突然止まり、その後は問題なく使えていますが、念のために新品に交換予定です」
このような2人がいた場合、当然ですがBさんの方が高く評価されます。
築年数がある程度経過した家であれば、何らかの不具合があって当然なので、それにどう対処したかが評価されると覚えて下さい。
たまに査定員に対して、家の不具合を隠そうとする人がいますが、そのような不誠実な対応をすると業者からの信頼を失いますし、万が一後でバレた場合にはトラブルになります。
不動産業者は、家の売却が完了するまでのパートナーとなるので、しっかりと信頼関係を築けるように、誠実に対応しましょう。
なお、戸建てを高く売りたい人は、「おすすめ不動産業者」の記事もあわせてチェックしてみてください。
業者選びで失敗すると数百万損するケースもあるので、ぜひ参考にしてもらえばと思います。
過去のリフォーム、修繕歴を時系列でまとめておく
不動産業者の印象を良くするためにおすすめなのが、過去のリフォームや修繕歴などを、時系列でまとめておくことです。
例えば、
- 平成22年5月 外壁塗装のリフォーム
- 平成24年4月 シロアリ防腐処理を実施
- 平成27年8月 ガス給湯器を新品に交換
- 平成29年9月 住宅診断(ホームインスペクション)を実施
このような感じで、過去に家のリフォームや修繕を行ったことがあれば、アピール資料としてまとめておきましょう。
外壁塗装のリフォーム費用にどれくらいかけたとか、ガス給湯器は○○メーカーの新商品を設置したとか、わかる範囲でかまわないので、なるべく詳しいメモを用意しておくとよいです。
訪問査定の際に、部屋の掃除などを入念に行う人は多いですが、このような資料を用意する人はかなり少ないです。
査定というと、ただ終わるのを待つだけの「受け身」のイメージが強いですが、家の評価を左右する重要な場面なので、このような資料を用意して「攻め」のアピールもぜひ行いましょう。
ちなみに、こちらが用意したメモをろくに見ず、評価として反映させないような査定員であれば、「この不動産業者はダメだな」と判断することができるので、二重の意味で役に立ちます。
訪問査定で特にチェックされる箇所
続いては、訪問査定時にチェックされる箇所について詳しく解説します。
大きく分けて次の4つの箇所がチェックされますが、売主個人の努力ではどうにもできない部分もあるため、すべてを気にする必要はありません。
- 家の屋内に関する評価
- 家の屋外に関する評価
- 家が建つ土地の評価
- 家の周辺環境への評価
また、これら4点がすべて同じ配分で評価されるわけではありません。
戸建て住宅の場合、基本的に建物自体よりも土地に対しての評価が重要視されるので、おおまかに「土地7割、建物3割」くらいの配分で評価されます。
売却するのが築10年以上の戸建てなら、もっと土地の割合が大きくなり、「土地8割、建物2割」程度の評価となります。
これらを踏まえた上で、査定に影響するポイントを解説していきます。
家の屋内に関する評価
家の屋内で査定時にチェックされるポイントは、以下の5つです。
- 間取り
- 時代のニーズ
- 動線
- 劣化状況
- 機能性
間取り
間取りは真っ先に見られるポイントであり、もっとも査定に影響する部分です。個性的な間取りよりも、誰でも使いやすい一般的な間取りの方が評価されます。
例えば25帖の広いリビングが自慢の家だったとしても、広すぎてあまり一般的な間取りとは言えません(その分他の部屋が狭くなる)。それよりも16帖~18帖くらいのリビングの方が、査定としてのポイントは高いです。
時代のニーズ
屋内の間取りや設備が、時代のニーズに合っているかも大事なポイントです。
例えば和室が多い家、トイレがウォシュレットではない家などは、今のニーズとは違っていることになり、マイナス評価となってしまいます。
動線
動線は大きな欠点がない限り、査定価格にそこまで反映されません。
ただしリビング内に階段がある場合などは、好き嫌いがハッキリ分かれるので、マイナス評価になるケースが多いです。
劣化状況
キッチン、バスルーム、洗面台など水回りや、床下、天井裏などの手入れが悪く、腐食や損傷が見られる場合は、当然マイナス評価となります。
ただし一般の不動産会社が査定をする際には、床下や天井裏まで入りこんで調査することはほとんどありません。
機能性
機能性とは、扉や襖(ふすま)の開閉、コンロや食器洗い機など、各種設備類が正常に機能しているかという評価です。
特にドアや障子の開閉が悪いと、建物のゆがみや地盤沈下などが疑われるので、あまりにひどい場合は専門の業者を入れて調査することもあります。
家の屋外に関する評価
家の屋外で査定時にチェックされるポイントは、以下の4つです。
- 屋根
- 外壁
- 基礎
- 駐車場
屋根
屋根材の損傷がないか、塗装が剥がれて見た目が悪くなっていないか、雨どいの破損がないかなどがチェックされます。
といっても、査定員が屋根に上って実際にチェックすることはほとんどないので、あくまでも目視で確認できる範囲でのチェックです。
外壁
外壁の塗装が剥がれていないか、クラック(亀裂、ヒビ割れ)が入っていないか、コケが発生していないかなどがチェックされます。
特に注意したいのが、外壁に入ったクラックです。幅0.3mm以上、長さ1m以上のクラックがある場合は、何か重大な問題があるかもしれないと判断され、詳しい検査を求められる可能性があります。
基礎
基礎も外壁と同じで、クラックがないかを厳しくチェックされます。基礎にクラックがあるということは、地盤が沈下している可能性があるため、大掛かりな検査となることもあります。
もし地盤沈下の兆候が見つかった場合は、家の査定額は大きく下がってしまいます。
駐車場
駐車場の評価としては、駐車台数や使い勝手などが見られます。車が必須な地域であれば最低2台が必要とされ、1台しか駐車できない場合はマイナス評価となります。
また、縦列よりも並列で駐車できる家の方が評価は高いです。堀車庫なども良い評価ではありません。
家が建つ土地の評価
家が建つ土地の査定時にチェックされるポイントは、以下の5つです。
- 接道状況
- 方角
- 土地の形状
- 隣地
- 日当り
接道状況
新たに家を建てるには、「幅員4m以上の道路に、2m以上接していなければならない」という接道義務があるので、最低条件としてこれをクリアしてなければなりません。接道がない土地は売り出しても評価がかなり低くなります。
また、前面道路と接している間口が広ければ広いほど高評価となります。
方角
接道に似ていますが、敷地に道路が接している方角を指して、「南向き」や「西向き」などいう呼び方をします。
一番評価が高いのは南向きで、続いて西向きと東向きが同程度、一番評価が下がるのが北向きの土地です。
土地の形状
正方形や長方形の土地が基準となり、それ以外の形状の土地は変形地として評価が下がります。道路との高低差がある土地もあまり良い評価ではありません。
道路から1m上がっている場合はあまり気にする必要はありませんが、逆に1m下がっている土地は雨水の浸入などが懸念され、マイナス評価になることが多いです。
隣地
隣地が現状どうなっているかも評価に大きく影響します。例えば、隣地が駐車場などは良い評価だと思ってしまいますが、必ずしもそうではありません。
隣が月極駐車場ということは、将来的にそこにマンションやアパートが建つ可能性があります。それよりも普通に戸建て住宅が建っているほうが、将来的な心配が低いという点ではプラスとされます。
ただし、隣地が市が管理する公園などの場合は、半永久的に公園である可能性が高いので、これは大きくプラス評価となります。
日当り
日当りは、南側に日照の妨げになるような建物があるとマイナス評価となります。
例えば3階建て住宅やマンションなどがあると、日照確保の邪魔になるので評価が下がってしまいます。
家の周辺環境への評価
家の周辺環境で査定時にチェックされるポイントは、以下の3つです。
- 交通の便
- 近隣の施設
- 地域性
交通の便
都会になればなるほど査定に大きく影響するのが、交通の便です。最寄駅(バス停)からの距離は、本当に評価を大きく左右します。
基準は徒歩10分圏内です。例としてあげるなら、徒歩10分~15分でマイナス5ポイント。徒歩15分~20分でマイナス10ポイントの評価です。
逆にマイカーが必須の地域になれば、あまり交通の便は重要視されません。それよりも車で移動するのに便利な地域が高い評価を得ます。
近隣の施設
近くに買い物ができるスーパーがあるか、小学校や病院までの距離が近いかなど、生活するのに便利な施設がどれくらいそろっているかがポイントとなります。
病院、市役所、銀行、スーパー、コンビニ、公園、学校、保育所などが徒歩圏内に多いほど、高評価となります。
地域性
地域性というのは、その街で人気が高い地域にあたるかどうかという意味です。この地域性については、戸建てとマンションでは違った評価をされることがあります。
例えば、マンションであれば駅の近くにあることが重要視されますが、戸建ての場合は「街そのもののブランドイメージ」などが重要視されるため、単純な利便性だけでは計れない部分が出てきます。
査定価格はどうやって決められるのか
一般的に戸建てとマンションでは、売却査定の方法が異なります。
- マンションの場合:過去の取引事例+時点修正
- 戸建ての場合:過去の取引事例+時点修正+事情補正
マンションの査定であれば、どこの不動産業者に依頼をしてもだいたい似通った査定額になる傾向です。
しかし、戸建ての場合は査定をする業者によって査定額に大きな差が出ることがあります。
時点修正や事情補正とは?
時点修正とは、参考にする過去の取引事例から経過している年数を考慮して、現在の価値を試算することをいいます。
この時点修正は、マンション査定でも適用するのが一般的なのですが、事情補正をマンション査定に適用する業者はそう多くありません。
事情補正とは、参考にする過去の取引事例となった物件と、今回査定依頼をお願いする物件とを比較して、査定に大きく関係してくるような事情(間取り、日照、地域性など)を考慮して査定額を算出することをいいます。
例えば、「間取りの違い」「土地の形状」「接道の状況」「地盤の強弱」などがあります。
このなかでも一番わかりやすいのが、土地の形状だと思います。
同じ50坪の土地でも、台形みたいな形の土地と長方形のような形の土地では、明らかに長方形の土地が資産価値が高いからです。
このように戸建ての場合は、マンションと違って物件ひとつひとつに特徴があります。
その特徴を何処まで査定額に反映させるかは、査定を依頼している業者によって異なるため金額に大きな差がでることがあるのです。
そのため、戸建てを売却する場合は、マンション売却以上に業者選びが重要となります。
積算法で査定する業者も
積算法とは、土地と建物を別々に査定算出する方法のことです。土地の価格は、国土交通省が公表している「公示地価」を参考に算出。
建物の価格は、建物を建てるときにかかる建築費用を現在の価値に置きなおす「原価法」などを参考に算出します。
業者を比較する場合は、同じ査定方法で判断しないと、どちらが良いのか判断できません。金額に目がいきがちですが、査定方法もしっかりチェックしておく事をおすすめします。
売主の態度も査定されている
ここまで、査定のポイントをまとめてきましたが、最後にもう一つ忘れてはいけないことがあります。
それは、訪問査定時には、「売主の態度」もしっかりとチェックされているということです。
もし売主の人柄や態度に問題があった場合、後々買主との間でトラブルになる可能性が考えられます。
不動産業者は「トラブルになること」をもっとも嫌いますので、たとえ物件の状態に問題がなくても、売主の態度が悪い場合はかなり低い評価を出してくることがあります。(これはわざと契約をしないためにです)
基本的に不動産の売買は「個人間同士の取引」なので、引き渡し後のトラブルに関しては、不動産業者は関係ないのですが、それでもトラブルが起こった場合には、「○○不動産の仲介で買ったら(売ったら)最悪だった」と言われてしまうことがあります。
このようなトラブルがあると、会社の信頼性を大きく損ねることになってしまうので、不動産業者側も「態度が悪い売主は避けよう」と考えるのです。
不動産業者と売主の関係は、家の売却が終わるまでのパートナーと呼べるものなので、当たり前の話ですが、「不動産業者を下に見る(横柄な態度を取る)」ようなことがないように注意しましょう。
もちろん、不動産業者を過度に持ち上げる必要はありません。一般常識として、失礼のない態度でいれば大丈夫です。
まとめ
今回は家売却の査定について詳しく解説しました。
読んでもらえばわかる通り、査定評価の対象となる箇所については、売主の努力では対応できない部分も多々あります。
ですから、前半で解説した「家の査定評価を上げるためのアピール戦略」さえしっかり抑えておけば問題ないでしょう。
また、訪問査定というのは、業者側が家を査定するだけでなく、「売主が不動産業者を査定する場」でもあります。
少なくとも2、3社は訪問査定に呼ぶことになると思うので、どの業者が一番頼りになりそうかしっかりチェックしておきましょう。
実際に家を売却するまでには、「購入希望者の内覧」というイベントも待っているので、訪問査定はその練習と思えば緊張せずにのぞめると思います。
しっかりと信頼できる業者を見つけて、できる限り家を高く売りましょう。