マンションの売買契約を結ぶ時は何に注意すればよいのでしょうか?
この記事では売買契約書の見本となる雛形を用意して、確認しておきたいポイントを分かりやすく解説しています。普段目にする機会のない書類だと思いますので、ぜひ目をとおしておいてください。
売却時に必要な書類に関しても、あった方がいい書類を含めて解説しています。こちらも漏れがないよう合わせてチェックしておきましょう。
- 【目次】売買契約書の注意点と売却時の必要書類
売買契約書の注意点
売買契約書は、専門用語が多く使われており、中身をみても内容がよく理解できない、注目しておくべきポイントがわからないという人も少なくありません。
そこで今回は契約書の雛形を使って、契約書のなかでも確認しておきたいポイントをピックアップしているので、売買契約書をチェックするときの参考にしてください。
売買契約書の雛形
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売買契約書(A)
売買契約書(B)
契約書のチェック項目リスト
不動産売買では、売主がいれば買主もいるので、売主側の希望する要望ばかりでなく、買主側の要望も契約書に記載されています。
何も確認しないでサインをしてしまうと買主に有利な契約になってしまうこともあるので、必ず契約書にサインをする前に最低限の内容はチェックしておく必要があります。
以下でチェックすべき項目をまとめた表を作成しています。必要な人はダウンロードすることもできますので、ぜひチェックしておきましょう。
売買契約書のチェックポイント
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売買契約書で確認すべきこと
ここでは契約書のチェックポイントをより詳しく解説しています。ただし、契約の内容や仲介業者によっては、内容が異なることもありますので、不明な点は、仲介業者に確認するようにしましょう。
売買金額や手付金等の額、支払い方法と予定日
売買金額や手付金など、金額に関する項目は一番間違いが発生しやすい箇所です。契約書を作成しているのは、仲介業者の社員さんですので、ちょっとした入力ミスなどがおこりえます。
「契約書だから間違いはないだろう」と決め込まずに、必ず金額や小数点など、細かくチェックしておくようにしましょう。それと支払い方法や予定日に関してもチェックしておいてください。この日付が間違っていると、後々大きなトラブルになる可能性があります。
厳しいことを言うようですが、たとえ入力ミスで契約書が間違っていても、それにサインをした時点で、その契約書は有効になります。
契約書を作成した仲介業者は謝ってはくれるでしょうが、責任は取ってくれないことを認識しておいてください。あくまでもサインをした本人の自己責任です。
付帯設備等の確認
元不動産業者の営業マンだった立場から言いますが、この付帯設備のトラブルは本当に多いです。
あとになって、「あれは残しておいてくれるはずだった」とか「あれは撤去してくれるはずだった」など、言った言ってないの水掛け論になってしまいます。
すべては契約書に書かれていることが最終決定なので、例え口頭で「エアコンはすべて残しておきます」という約束を売主と交わしていても、契約書に書かれていなければ、文句は言えても債務不履行による契約解除にはなりません。
付帯設備に関しては、一覧表を作成してもらい、細かく取り決めをしておくことをおすすめします。また付帯設備の取り決めをするときは、メモだけでなく、ボイスレコーダーなどで録音しておき、家に戻ってから細かくメモと照合するようにしましょう。
付帯設備一覧表をダウンロードできるようにしておきますので、内覧や打ち合わせの際に持参し、自分でも内容を書き込めるようにしておきましょう。
付帯設備一覧表
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ローン特約
買主側が住宅ローンを利用するときに発生するのがこの「ローン特約」という項目です。ローン特約とは、買主が住宅ローンの融資を受けることができなかった場合につき、無条件で契約を解除できるという特例処置のようなものです。
ただし住宅ローンの仮審査で買主がウソの申請をしていたり、必要な手続きを怠ったことにより住宅ローンが借りれなかった場合は、ローン特約には該当しませんので、そういった注意書きがしっかり記載されているか確認しておきましょう。
またローン特約が有効となる期限を設けないと、いつまでも特約が有効になってしまうので注意してください。
ローン特約といっても、売主と買主の合意によって決めることができる項目なので、特約の内容は自由に変更することができますし、双方の合意があれば特約をつけない売買契約を結ぶこともできます。
瑕疵担保責任
瑕疵担保責任とは、売却したマンションに瑕疵(見えない不具合など)が発覚した場合、売主は売却後であっても一定期間は修理・修繕の損害賠償責任を負うというものです。
例えば腐食などの自然劣化により配管から水漏れが起こったとします。配管の状態を売主が知ることができません。これを瑕疵といいます。この場合、瑕疵担保責任の期限内であれば、買主は修理や交換の費用を売主に損害賠償請求できることになっています。
正直売主としては、あまり歓迎できない項目の1つなのですが、この「瑕疵担保責任」をつけておかなければ購入者は不安で、いつまで経っても買い手が決まらない可能性があります。
瑕疵担保責任を売買契約事項に盛り込むかは、売主と買主の話し合いによって決めることができます。
どうしても瑕疵担保責任を付けたくないという売主は、「売買価格から30万円値引きするので瑕疵担保なしの契約でダメでしょうか?」というように、買主に交渉することもできます。
売主としては契約書に記載されている、瑕疵担保責任の範囲や期限をしっかりとチェックしておくようにしましょう。
ただし業者買取のように売却先が個人ではなく不動産会社や買取専門業者の場合は、売主が瑕疵担保責任を負う必要がありませんので瑕疵担保責任が不安な売主は、業者買取を検討するのがおすすめです。
瑕疵担保責任の変更について
瑕疵担保責任ですが、じつは2020年の民法改正により撤廃されることが決定しています。今後は「契約不適合責任」という名称に変更となり、これまでよりもさらに、売主にとって厳しい内容の責任が課せられることになります。
この民法改正については、別記事の「マンション売買時の瑕疵担保責任、危険負担について」にて、さらに詳しく解説していますので合わせてチェックしてください。
債務不履行
債務不履行とは、売主または買主が契約上の義務を守らなかった場合、その契約を解除できるという内容です。
通常は債務不履行によって契約を解除すると、違約金の支払い義務が発生します。この場合の違約金の支払い額などについて書かれているので、よく確認しておくようにしましょう。
一般的には売買代金の1割から2割くらいの額に設定されていることが多いようです。
売買契約時の必要書類や必要なもの
必須ではありませんが、なるべくなら準備しておいた方が良い資料などについても紹介します。
必要な項目については詳細を解説しているので、合わせてチェックして下さい。
- 印紙代と仲介手数料の半金
- 本人確認書類(身分証名書)
- 実印と印鑑証明書
- 登記済権利書、または登記識別情報
- 固定資産税通知書、および納付書
- マンションの管理規約等
印紙代と仲介手数料の半金
印紙代は売買契約書に添付するもので、売買金額によって添付する印紙の額面が異なります。一般的なマンション売買であれば、1,000万円から5,000万円の間だと思うので、印紙代は10,000円と考えておけば問題ないでしょう。
不動産売買価格 | 印紙税額 |
---|---|
10万円以下 | 200円 |
50万円以下 | 200円 |
100万円以下 | 500円 |
500万円以下 | 1,000円 |
1,000万円以下 | 5,000円 |
5,000万円以下 | 10,000円 |
1憶円以下 | 30,000円 |
5億円以下 | 60,000円 |
10憶円以下 | 160,000円 |
【注意】
買主から手付金を受け取るとき、売主は領収証を発行しなければなりませんが、この領収証に添付する収入印紙については準備する必要はありません。非営利のものは非課税とされているので、売主が個人の場合は収入印紙を添付する必要がないからです。
仲介手数料に関しては、売買契約時に半金、引渡し時に残りの半金を支払うのが一般的です。3,000万円で売却する場合の仲介手数料は、最大で消費税込みの1,036,800円ですので、半金の518,400円を準備しておくようにしましょう。
仲介手数料の計算式(※売買金額が400万円超の場合)
売買価格×3%+6万円+消費税
ここで記載している計算式は、宅建業法で決められている最大額です。不動産業者によっては、これよりも安い手数料に設定していることもありますが、これ以上高い仲介手数料を請求されることはありません。
登記済権利書、または登記識別情報
わかりやすく言えば不動産の権利書です。売買契約時にこの権利書が必要なわけではありませんが、マンションの所有者はっきりさせるための書類だと思ってください。
不動産権利書を紛失してしまっているケースは珍しくありません。とくに親から相続したマンションなどに関しては、権利書がどこにあるのかわからないというケースが多々あります。
もちろん権利書がなくても売買契約を実行することは可能ですが、仮に自分が買主だった場合、権利書も持ってない人から不動産を買うでしょうか?数千万円もする高価な買物です。きっと怖くて、そんな売主から不動産を買おうという気にはならないと思います。
もし権利書を紛失してしまった場合、どのようにすれば良いのでしょうか。主な方法は以下の2つです。
公証人役場で本人確認をしてもらう
必要な書類を揃え、公証人役場へ出向けば本人確認をしてくれます。公証人役場に出向く手間がかかりますが、費用面などを考えれば一番無難な方法だと思います。手数料などの費用として数千円ほどが必要になります。
司法書士にお願いする
公証人役場に行くのが面倒な人は、司法書士にお願いして本人確認してもらう方法があります。手続きのほとんどは司法書士が代行してやってくれますので、煩わしさはありませんが、司法書士への報酬は高くなります。費用は司法書士にもよりますが、50,000円から100,000円ほどかかります。
固定資産税通知書および納付書
中古住宅や中古マンションの売買では、売主がすでに納付を終わらせている固定資産税については、売主と買主で日割り負担するのが一般的です。
そのため、納付済みの固定資産税を計算する目的と納付をしっかり終わらせているかを確認するため、固定資産税通知書や納付済証が必要となります。
この納付済み証明証を紛失してしまっている人も少なくありません。税金なので領収書を再発行してもらうことはできませんので、この場合は役場の窓口へ出向き、納税証明書を発行してもらうようにしましょう。
マンションの管理規約等
該当マンションの規律等が記載されている管理規約は絶対必要な書類の1つです。もし紛失してしまっている場合は、マンションの管理組合に相談し、新たに一冊譲ってもらいましょう。
その他
ここで紹介するものは、売買契約時に必須ではありませんが、準備できるのであれば、なるべく持参しておいた方が良い書類などです。
建設図やパンフレット
マンション建築時の間取り図や設計図、さらには販促用のパンフレットなど、残っているものは買主に渡してあげると喜ばれるので、ぜひ準備できるものは持参して欲しいと思います。
リフォーム工事の履歴や見積もり書
マンション全体のリフォームや塗装工事などはもちろん、個人で実施したリフォームがあるのなら、それらの工事内容や見積もりがわかる書類を準備しておきましょう。
マンション会合の議事録など
今後のマンション修繕計画だったり、会合によって決まった規約など、それらがわかる議事録などがあれば、一緒に渡してあげるのがよいでしょう。ただし管理組合が上手く機能してないと思うのであれば、無理に書類を用意する必要はありません。
まとめ
売買契約時の必要書類についは、仲介してくれている不動産業者が一覧表のようなものを渡してくれるはずです。しかし売買契約書のチェックポイントについて、仲介業者が「ここはしっかりチェックしておいた方が良いですよ」とは教えてくれません。
もっといえば、仲介業者にしてみれば契約書を隅々まで熟読されたくないと思っているケースが多いと思います。別に契約書にて悪さをしているわけではありませんが、契約書を隅々までチェックされて質問されたりするのを好まない営業マンが多いからです。
しかし数千万円という高額な売り買いをしているのですから、売主も買主も不備がないかチェックするのは当然のことです。今回は契約書でチェックしておくべきポイントだけを選んで紹介していますので、ぜひ参考にして頂ければと思います。
最後になりますが、不動産契約でトラブルが多いのが付帯設備の取り残しに関する内容です。
あとになって「言った」「言ってない」の水掛け論になることも多いので、なるべくなら打ち合わせや契約時には、証拠となるボイスレコーダーなどを準備するなどの対策をとるようにしてください。