マンションを売買する際に必要な書類の1つ「重要事項説明書」について、雛形を用意して解説しています。
この説明は買主に対して行われるので、マンションを売却して新しく住まいを購入する人は理解しておく必要があります。
書類全部を理解するのは難しいので、最低限チェックが必要な項目だけでも理解しておきましょう。
- 【目次】重要事項説明書の記載事項と注意点
重要事項説明書の雛形
重要事項説明書とは、宅地建物取引士(注※)が不動産の売買契約を行う前に、買主に必ず説明を行うよう宅地建物取引業法で義務付けられているもので、宅地建物取引士が記名捺印したものを説明した上で交付します。
実際の雛形のサンプルは以下になります。
手続きは資格を持っている者しか行うことができず、説明の際には必ず宅地建物取引士(宅地建物取引主任者)証を提示しなければなりません。
その説明を聞いた買主がすべての項目に納得したら、重要事項説明書に署名捺印します。この手続きが完了しないと、売買契約に進むことができません。
(注※)宅地建物取引業法の改正により、平成27年4月1日から
「宅地建物取引主任者」は「宅地建物取引士」へ名称が変更されました。
重要事項説明書の内容
一般的な重要事項説明書は、大きく分類すると以下の8つの項目に分けられています。
項目 | 内容 | ポイント |
---|---|---|
取引業者の確認 | 宅地建物取引士の資格者 | 説明者は資格免許を提示してくれたか |
物件の基本的情報 | 物件の名称や所在地 | 物件名や所在地に間違いありませんか |
登記関連の確認 | 所有者の確認、抵当権の記録などを確認しましょう | |
法令上の制限 | 都市計画の有無、地域による高さ制限など | 都市計画道路の有無、隣に高層マンションが建つ可能性などについて調べておきましょう |
ライフラインの情報 | 電気、水道、ガスなど、ライフラインについて | 中古マンションの場合、水道や電気が引いてないことはありませんので、ガスの種類に注目しておきましょう |
マンション取引の場合 | 敷地の権利 | マンション敷地の権利関係を確認してください |
共有・専有の確認 | 共有・専有の規制や制限を確認しておきましょう | |
管理費・修繕積立金の確認 | 管理費、修繕積立金の支払い状況、今後の予定など | |
修繕工事の内容と計画 | これまでの修繕工事、今後の修繕計画について | |
その他の制限 | 災害区域など | がけ崩れや河川の氾濫などの指定区域になっていないか |
契約条件 | 契約解除や違約金 | 契約を解除するときの罰則、手付け解除などの詳細を確認 |
その他 | 特約などについて | 瑕疵担保責任、住宅ローン特約等の内容を確認 |
マンションと戸建て住宅で別々に重要事項説明書があるのが基本ですが、なかには両方同じ内容の重要事項説明書を使用している不動産業者もあります。
マンションの場合は、表題部分に「重要事項説明書(区分所有建物)」という文言が入っているはずなので確認してください。
同じ書類を使っている場合、マンション売買とはまったく関係がないような項目も多数見受けられるので注意しましょう。
最低限チェックしておくべき項目
重要事項説明書には難しい専門用語がびっしりと書かれており、文面を見ただけで読みたくなくなる人も多いでしょう。
本来は隅々まで読んでチェックして欲しいのですが、それはさすがに難しいと思うので、最低限チェックしておくポイントを紹介しておきます。
マンション敷地に関する権利
分譲マンションといっても、実は土地の契約には複数の種類があります。
一般的なのは、土地の「所有権」をマンションに住んでいる人が共同で所有するが一般的です。
しかし中には、土地を借りてマンションを建てているケースもあり、この場合の土地の権利は「地上権」や「借地権」となっているはずです。
仮に地上権や借地権となっている場合は、それに関する地主との取り決めがあるはずなので、どのような内容になっているかを把握してから契約するようにしましょう。
共有部分に関する規約
マンションでは世帯別に所有している「専有部分」と、マンション全体が所有管理している「共有部分」に分けられます。マンションのエレベーターだったり、玄関ホール、駐車場などが共有部分に該当します。
マンションごとに共有部分のルールや規律が作られていますので、しっかり把握しておくようにしましょう。
例えば共有スペースの掃除を月に1回住民たちで実施する決まりになっており、不参加の世帯は罰金1万円という規則があるマンションもあります。
専有部分に関する規約
専有部分とは、主に所有者が暮らしている部屋のことを指しています。ですので、部屋の模様替えをするのは自由ですが、マンションによっては専有部分のリフォーム工事でも、管理組合の許可が必要なケースがあるので確認しておきましょう。
例えば個人の所有だとしても、勝手にペットを飼うことができなかったり、防音性能が高いフローリングに変更しようと思っても、床のリフォーム工事を禁止している場合などがあります。
修繕積立金に関する規約
マンションを快適に維持するために修繕積立金は必要不可欠です。
ただ管理組合がずさんで修繕計画が壊滅的になっているケースも珍しくありません。修繕積立が計画的に実施されているのか、また今後積立金が値上がりする予定はないのか?などをチェックしましょう。
またマンションの修繕積立金に滞納がある場合、新たに購入した買主に支払い義務が引き継がれることになります。後々のトラブルを避けるためにも、滞納金が無いかチェックしておきましょう。
管理会社や管理費について
マンションの管理は、委託を受けている管理業者が実施しているケースがほとんどです。どういった管理会社なのかチェックし、インターネットなどの口コミなどで評判を調べておくのは買主としては当然のことです。
こちらも修繕積立金と同じで、滞納金があると買主へと支払い義務が移行しますので注意してください。
契約の解除(手付解除)
一度契約が成立してしまうと、簡単に契約を破棄することはできません。買主都合による場合は手付金の放棄、売主都合の場合は受け取った手付金の倍返しするのが契約を破棄の条件になります。
ここでは契約解除の罰則(ペナルティ)の詳細、または契約解除できる期限などを確認しておきましょう。
瑕疵担保責任
中古物件の売買で、「瑕疵(隠れた欠陥)」があった場合、原則として売主は損害賠償に応じる義務があり、その瑕疵が原因で契約の目的(物件の引き渡しなど)を達せられない場合は、買主は契約の解除をすることができることになっています。
ここで注目すべきポイントは瑕疵担保の内容や適用期限です。
しかし2020年に完全施行となる民法改正により、この瑕疵担保責任という項目はなくなります。新たに「契約不適合責任」という項目に変わり、売主の責任や義務は瑕疵担保責任よりも厳しくなることが決定しています。
住宅ローン特約
買主が住宅ローンを利用する場合では当たり前のように「住宅ローン特約」が付加されている契約になっています。
ただ内容は売主と買主の双方の話し合いで変更することもできるので、自分にとって不利な内容になっていないかチェックしておきましょう。
まとめ
不動産の売買においてトラブルとなる原因は、契約書や重要事項説明書に記載されている内容を理解せずサインしてしまうことが多いので注意してください。
実際のところ書類すべてを理解してチェックするには、不動産に関する専門知識をもっていないと厳しいと思いますので、最低限チェックすべき項目だけは理解しておきましょう。
もし宅地建物取引士に説明が分かりにくい場合は、遠慮なく質問してからサインするようにしてください。