マンション売却の理由で一番多いのが「住み替え・買い替え」による売却です。
より広いマンションに引っ越すケースや、実家のそばに引っ越すケースなど様々ですが、住み替えに共通する大きな問題として、
- 「売却」と「新居の購入」のどちらを優先するか?
- 住宅ローンの残債をどうするか?
の2つがあります。
ただ売却するだけではなく、新居のマンションも同時に購入しなければならないので、スケジュール調整などで苦労する人が多いです。
このページでは、できる限りスムーズに住み替えが終わるように、アドバイスと注意点を解説するので、ぜひ参考にして下さい。
- 【目次】住み替え・買い替えが理由の売却
売却と新居の購入どちらを優先するか?
住み替えで一番頭を悩ませるのが、今住んでいるマンションをどのタイミングで売りに出すのか?という問題です。一度売りに出してしまったら、そう簡単に後戻りはできなくなるからです。
もちろん途中で気持ちが変わって、売るのをやめるということもできますが、一度売りに出してしまうと内見希望のお客さんがつく可能性がありますし、なにより近所の方たちに売りに出したことを知られる可能性があります。
売却依頼をした不動産会社との契約問題などもあり、一度売りに出したらそう簡単には引き下がれないのが不動産売買です。ですので、売りに出すタイミングはしっかりと検討しておく必要があります。
この点を踏まえた上で、「売却」と「新居の購入」どちらが先なのかという問題ですが、これは当事者の状況によって変わるので、一概にどちらが先とは決められません。
例えば、「転勤が決まり、引っ越す時期も決まっている」というケースであれば、「売却」を優先した方が良いでしょう。一方で、「引っ越しの時期は決めてないが、気に入った物件があれば住み替えしたい」というケースの場合は、「購入」を優先することになります。
ざっくりと理由別で分けるなら、
- 期限が決まっている住み替えなら「売却」を優先
- 間取りなど住居自体の問題による住み替えなら「購入」を優先
と考えるのがよいでしょう。
住み替え先が中古マンションの場合はさらに注意
「売却」と「購入」のどちらを先にするかという問題の他に、もう一つ注意したいことがあります。それは、住み替え先のマンションが新築か中古なのかという点です。
もし住み替え先が新築の分譲マンションであれば、特に難しいことはありません。マンションの引渡し日に合わせてすべてのスケジュールを組めばよいでしょう。
一方で、住み替え先が中古マンションの場合には注意が必要です。なぜかというと、新築のマンションに引っ越す場合と比べて、引っ越しの時期(引き渡し時期)の調整が必要だからです。
中古マンションに住み替える場合、
- 購入を予定しているマンションの売主
- 現住居を買ってくれる購入予定者
- 住宅ローンを借りている金融機関
- 新たに住宅ローンを借りる金融機関
上記の4者の都合やタイミングを調整しないといけないので、一筋縄ではいきません。
通常の不動産売買よりもかなり神経を使うと思いますので、少しでも早い段階から万全の準備をしておきましょう。
この後でまた詳しく説明しますが、現住居の売却時期と、住み替え先の中古マンションの購入時期がズレてしまうと、余計な出費が増えてしまうので注意が必要です。
マンションを売るなら築10年前後が売り時
少し話はそれますが、売却時の金銭的な面で考えた場合、マンションの住み替え時期として一番理想的なのは「築10年」を目安にすることです。
なぜならマンションの場合、築5年以内の「築浅物件」か、あるいは築10年以内までのマンションを第一希望とする購入者が圧倒的に多いからです。
ご存知のように、今はインターネットを使ってパソコンやスマホから簡単に物件検索ができます。この時、多くの人が「検索条件」を指定して物件を探しますが、検索条件のトップ3と言われているのが、「駅からの徒歩時間(徒歩何分か?)」、「築年数」、「価格帯」です。
価格帯は人それぞれなので別ですが、駅からの徒歩時間と築年数については、「駅から徒歩10分圏内」、「築10年以内」という条件がもっともニーズが多いです。
そのためネット上で検索された時に、「築10年」と「築11年」のマンションでは、購入希望者に物件情報を見てもらえる可能性が大きく変わってしまうのです。
当然ですが、より良い条件でマンションを売却するためには、できるだけたくさんの人に見てもらった方が有利なので、築10年というのを1つの目安に考えるのがおすすめです。
とてもシンプルな理由ですが、これは非常に重要なことです。
住宅ローンはどうすればよいか?
もう一つの大きな問題が、「今住んでいるマンションの住宅ローンをどうすればよいか?」という問題です。
住宅ローンがどういう状況かによって、今後の対応が大きく変わってくるので、すぐに正確な状況を調べましょう。
- 現在も住宅ローンを返済中
- 現金で買ったのでローンは組んでいない
- 住宅ローンはすでに全額完済している
住宅ローンの状況を分類すると、大きくこの3つに分けることができます。
2と3の状況であれば問題ありません。そのまま新しく購入するマンションの住宅ローンを申し込んでください。
問題となるのは、「現在も住宅ローンの返済中」というケースの住み替えです。
まだ住宅ローンの残債が残っている場合、「いくら残っているのか?」を正確に確認した上で、「今のマンションがいくらで売れるのか?」を査定をとって調べる必要があります。
例えば住宅ローンの残債務が2,500万円残っている状態で、マンションの売却査定が2,200万円しかない場合、足りない分を現金で補填しなければならない可能性があります。
これは実際に査定を取ってみないと予想できないので、住宅ローンの残債がまだ残っている人は、早めに査定を使って自分のマンションの相場価格を調べておきましょう。
残債務を下回ったときはどうすればいい?
もしマンションの売却査定額が、住宅ローンの残債務を下回ってしまった場合はどうすればよいのでしょうか?(実際問題として、多くの人は下回ります)
もっともシンプルな解決策は、「足りない分を現金などで補填する」ことです。仮に手元に現金がなくても、親族などから一時的にお金を借りて補填することができれば、問題なくマンションを売却することができます。
一方で、「補填できる現金の目処が立たない」というケースは注意が必要です。なぜなら住宅ローンを貸してくれている金融機関は、必ずマンションに抵当権をつけているからです。
この抵当権というのは、万が一住宅ローンの返済による損失がでた場合に、そのマンションを差し押さえするためのものです。
仮に、「2,500万円の住宅ローンが残っているのに、2,200万円でしかマンションが売れなかった」としたら、融資をしてくれた金融機関は損をしてしまいますよね。このような場合、金融機関はマンションの売却を許可してくれません。
たとえ自分名義のマンションであっても、抵当権を持ってる金融機関の許可がない限りは、勝手に売却することはできないからです。
住み替えローンなどを利用して対応を
もしこのような状況になってしまった場合、どんな対策があるのでしょうか?考えられるのは下記の2つです。
- 不足分は月々分割で返済を続ける
- 不足分を上乗せして、新しく購入するマンションの住宅ローンに組み込む
前者は銀行の許可をもらうのが非常に難しいので、現実的には後者の「新しく購入するマンションの住宅ローンに組み込む」が主な対策方法となるでしょう。
「他のマンションのローンの残りを、新しいマンションのローンに組み込むことなんてできるの?」、と不安に思うかもしれませんが、このようなケースはよくあります。
実際にそれを専門としている住宅ローン商品として、「住み替えローン」というものもあります。すべての銀行で取り扱いをしているわけではありませんが、三井住友銀行やりそな銀行などでは取り扱いがあります。(2017年8月現在)
利用するには色々な条件がありますが、今回のようにローン残債の補填が難しい場合には役立つと思うので、選択肢の一つとして覚えておきましょう。
ただし、住み替えローンが使えたとしても、結局は不足した分を上乗せして支払うことになるので、返済が大変なことには変わりありません。
この負担をできる限り少なくするためには、今住んでいるマンションを高値で売ることが最重要なので、仲介契約を結ぶ不動産業者は慎重に選びましょう。(不動産業者の選び方については最後に説明します)
住み替え、買い替えでかかる主な費用
続いては、マンションの住み替えでかかる主な費用について説明します。
下記の表では、売却・購入ともに3,000万円の売買だと仮定して、概算費用を算出しています。これらの費用を合計すると、売りと買いの両方で、約300万円程度の費用がかかる計算になります。
さらに諸費用として、引っ越しや仮住まいにかかる費用も計上しておかなければなりません。
売却時にかかる諸費用
仲介手数料 | 売却価格の3%+6万円+消費税 |
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売買契約時の印紙代 | 約10,000円(売却価格による) |
抵当権抹消費用 | 20,000円~30,000円(司法書士による) |
繰上返済手数料 | 15,000円~25,000円(金融機関による) |
※抵当権抹消費用と繰上返済手数料は、住宅ローン借入がある場合に必要となります。
購入時にかかる諸費用
仲介手数料 | 購入価格の3%+6万円+消費税 |
---|---|
売買契約時の印紙代 | 約10,000円 |
登記費用 | 約30,000円 |
住宅ローンの諸費用 | 600,000円~1,000,000円 |
火災保険費用 | 300,000円~500,000円 |
固定資産税や管理費 | 日割計算で支払います |
仮住まいと引っ越し費用
仲介手数料 | 家賃の1ヵ月分 |
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敷金・礼金 | それぞれ家賃の1ヶ月分 |
前家賃 | 家賃1ヵ月分 |
カギ交換、火災保険など | 25,000円~35,000円 |
退去時のクリーニング代 | 40,000円~60,000円 |
引っ越し費用 | 100,000円~200,000円(場合によっては2回) |
先ほども説明しましたが、住み替え先が中古マンションの場合は、売却と購入の両方を同時に進めるのが難しくなります。
今のマンションを売却してから、新居が決まって引っ越すまでに3ヶ月かかったと仮定すると、仮住まいの費用だけでも60~70万円ほど必要となります。
それに加えて、引っ越し料金が2回分かかりますので、諸費用だけでも80~100万円ほどの出費になってしまうことがあります。
売却と購入の時期がズレればズレるほど、かかる費用は増えていくので、できる限り短い間隔で住み替えを終わらせたいところですね。
住み替えの際によくある失敗例
マンションの住み替え時には非常に多くのトラブルが起きます。
売却と購入のどちらか1つだけでも大変なのに、それを2つ同時期にするのですから、トラブルは起こって当たり前くらいの考えでいた方がよいでしょう。
ここではよくある失敗例を挙げるので、住み替えをする際にはぜひ注意して下さい。
買いたい物件はあるのに、売りに出してるマンションが全然売れない
買いたい物件はあるのに、自分たちのマンションが売れないので頭金や手付金を払えず、お目当ての物件は他の人に先を越されてしまった…、という話はよくあります。
物件の買い手がなかなか見つからない場合は、本当に適性価格で売りに出しているのか、不動産業者が十分な販促活動をしてくれているのかを見直してみましょう。
マンションの売却がスムーズに進むかどうかは、契約している不動産業者(仲介業者)の良し悪しでかなり左右されるので、売りに出してから3ヶ月以上してもまったく手応えがない場合は、別の業者に依頼することも検討しましょう。
売買契約後すぐに引っ越せると思っていた
売買契約が終わったあと、すぐに新居に引っ越せると思っている人が多いようですが、実はこれは間違いです。
基本的には、住宅ローンの決済と同時に物件の引渡しとなりますので、ある程度の期間が必要なこともあります。
それを知らずに引っ越しの予定を組んでしまうと大変なので、必ず事前に引き渡し時期を確認しましょう。
新居に荷物が入りきらない
これは一軒家からマンションへ住み替えする場合に特に注意が必要です。
間取りが同じ3LDKや4LDKだとしても、戸建てとマンションでは広さが違いますので、戸建てに住んでいたときの荷物がそのまま全て収まるとは限りません。
住み替えの際には、できる限り不要な荷物を処分しておきましょう。その方が引っ越し料金も安くなるのでお得です。
購入を急ぎすぎて二重ローン生活に
良い物件があったからといって、すぐに飛びつくのは危険です。「自分たちのマンションもすぐに売れるだろう」と考えて、良い物件に対して買いを入れてしまうケースがありますが、万が一売れなかった場合は後が大変です。
自分たちのマンションが売れるまでの間、2つの住宅ローンの支払いを続けることになってしまうので注意しましょう。
中古マンションだからといって固定資産税が安いわけではない
住み替え先のマンションが今住んでいるマンションよりも古い場合、「築年数が経過しているから固定資産税は安いだろう」と考える人がいますが、これは間違えです。例え築年数が古いマンションでも、ビックリするような固定資産税の請求がくることもあります。
マンションの固定資産税は、マンションの価値を世帯で均等に割って算出されます。
そのため、マンションの敷地が広かったり、いままでのマンションよりも世帯数が大幅に少ない物件へ引っ越すと、戸建て住宅並みの固定資産税の請求がくることがあるので注意しましょう。
売却と購入は同じ不動産業者に依頼するべきか?
住み替えの際には、売却と購入を同じ不動産業者に依頼するのか?それともまったく別の不動産業者に依頼した方がよいのか?で意見がわかれがちです。
同じ業者に依頼するメリットもあれば、別の業者に依頼するメリットもあるので、どちらがおすすめとは断言できませんが、購入する物件が今住んでいる地域と離れているならば、迷わず別の業者に依頼しましょう。
同じ不動産業者に依頼した方が手間は省けますが、やはり地域が変わると、その土地の売買事情などは把握しきれるものではありません。
多少面倒に思っても、購入先の地元の不動産会社を頼ることをおすすめします。
まとめ
ということで、今回は住み替え・買い替えについて詳しく説明してきましたが、大きな問題となるのは「売却・購入のタイミング」と、「住宅ローン」の2点です。
前者に関しては、正直に言って運もからんできますので、ピッタリ調整するのは難しいかもしれません。一方で後者に関しては、できる限りマンションを高く売ることで、負担を小さくできる可能性があります。
そのためには、マンションの売却に強い不動産業者を見つける必要があるので、住み替えが決まったらなるべく早めに査定を行いましょう。
査定を取る際のポイントについては、他の記事でも解説していますが、
- 一社ではなく複数社から査定を取って比較すること
- 大手だけと決めつけず、その地域に詳しい業者を探すこと
この2つが特に重要です。
おすすめなのは、一括査定サイトを使って大手と地元業者の両方の査定を比較し、実際に自宅に呼んで詳しく話を聞くことです。
多少面倒に感じるかもしれませんが、業者選びは非常に重要なので、必ず2、3社程度は自宅に呼んで、詳細な査定額を出してもらいましょう。
いくらで売れるか目安がわからないと、住宅ローンの残債をどうするかの方針が決められないからです。
ちなみに都会にある物件と、地方にある物件とでは、不動産業者の選び方も多少変わってきます。簡単に説明すると、都心部にある物件については大手が強く、地方にある物件については地元の業者の方が強いケースが多いです。(絶対というわけではありません)
もし今住んでいるマンションが東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、京都にあるなら、「SREリアルティ(旧ソニー不動産)」がおすすめです。理由は「両手仲介をしない」という大きな特徴があるからです。
これは売り手に有利なサービスなので、対応地域の人はSREリアルティを候補に入れておきましょう。
一方で地方に住まいがある人は、なるべくたくさんの業者を比較して、その中から良さそうな業者を見つけるしかありません。これに関してはマンション一括査定サービスの老舗である「マンション.navi」が強いです。
不動産の一括査定サイトは他にも色々ありますが、特におすすめできるのはこの2つなので、これから査定を取るという人はぜひ試してみてください。
査定を取るのは少し面倒ですが、なるべく多くの業者から取って比較した方がいいので、時間がある人は複数使ってみるのもありだと思います。
住み替えの場合、単純な「売却」と違ってやることが2倍あるので大変ですが、なるべくスムーズに住み替えが進むように、準備をしっかりやっていきましょう。