使っていないのに固定費が発生している不要な土地や家について、処分に困っている人もいると思います。このような不動産はどこかに寄付できないのでしょうか?
実際、寄付することはできますが、相手を見つけるのが難しいです。しかし可能性はゼロではないので、これから紹介するところに相談してみてください。
また、この記事では相続放棄についても解説します。売れそうにない家や土地なら相続したくないと考える人も多いと思いますので、合わせて確認しておきましょう。
売却できない土地を寄付する方法は?
いざ相続した実家の家や土地を売却しようと思い売りに出してみたが、半年経っても、一年経っても買い手が見つからない。
こんなケースが地方部において急増しています。
若者流出による過疎化問題、少子高齢化問題、日本戸建て住宅の耐用年数問題など、理由は数多くあります。
今回は、売れない家の処分方法について考えてみたいと思います。処分といっても「もうこの土地いりません!」と簡単に手放すことはできません。
考えられる方法としては「寄付」という形で誰かにもらってもらう方法です。寄付する先として考えられるのは、市区町村などの自治体、隣近所などの個人、そして法人企業などが考えられます。
自治体へ寄付
「不要な家や土地は自治体に寄付すれば良い」とインターネットには、このような情報が多数書かれたサイトがあります。しかしこれはあまりにも軽率な発想だと思います。
残念ですが、売れない家や土地を寄付します!と申し出ても、「本当ですか!ありがとうございます」と快諾してくれる自治体はほぼ皆無だからです。
よく考えてみてください。自治体にとって、誰も買い手が付かないような家や土地を受け入れるメリットがあるでしょうか?
不動産には毎年固定資産税という税金が掛かります、使用用途がない不動産を寄付されても、そうした税金の出費が増えるだけです。
もちろんタイミングよく、田舎への移住計画を町おこしのプロジェクトにしている自治体などであれば、寄付を喜んで受けてくれる可能性はあります。
自治体に寄付できる場合の流れは以下になります。
- 専門の窓口にて相談する
- 自治体による調査が入る
- 受け入れ可能と判断されれば必要な手続きへと移行する
このような流れなのですが、ほとんどの場合、2の調査段階にまで進むことはないと思ったほうがいいでしょう。
自治会や町内会へ寄付
自治体よりも寄付を受け付けてくれる可能性が高いのが、自治会や町内会に寄付をする方法です。公民館を建てたり、ゲートボール広場などにする利用方法があるからです。
不動産の名義人には法人格が必要であるため、これまで自治会や町内会という組織が、土地の名義人となることは出来ませんでした。
ですが、地方自治法の改正があり、市町村長に地縁団体として認められることで法人格扱いとみなされ、土地名義人となることができるようになりました。
ですので、まずは自分が寄付をしようと思っている自治会や町内会が、地縁団体の認可を受けているか調べてみましょう。
もし地縁団体としての認可を受けてないのであれば、土地の寄付も現実的に厳しくなってしまうでしょう。
隣近所の個人へ寄付
個人への寄付というのは、隣地の所有者に格安、もしくは無償で所有権を譲渡するという意味です。
いくらタダといえ、買い手もいない土地を欲しいという人はそうそういないので、隣地の所有者というのが一番現実的な考え方だと思います。
これであれば接道がなくて売れないような土地であれば、隣地へ譲渡することで接道の問題は解決できる可能性もあります。
ただし、隣地の個人へ寄付する場合、譲渡対象の不動産評価額が110万円以上になると、寄付する相手に税金が発生する場合があるので、その点もしっかりと説明しておかなければなりません。
譲渡時の登記費用などは、相手に負担してもらうようにしましょう。それと、いくら譲渡といっても後々トラブルになる可能性があるので、譲渡(贈与)契約書を作成しておくことをおすすめします。
法人へ寄付
法人といっても、普通の一般企業(営利法人)もあれば、公共団体や社団法人などの公益法人もあります。
学校やお寺、NPO法人となれば、地域や教育への発展に繋がることから、税金に関しても優遇されることになっています。このような優遇制度もあることから、公益法人の方が寄付を受け付けてくれる可能性は高いと思います。
しかし税金が非課税となるためには、条件が決められており、その条件に沿う法人先でなければなりません。
これがネックとなり、よほど有益性がある土地でなければ、営利法人も公益法人も寄付を受けてくれる可能性は高くないというのが現実的です。
相続放棄するするには
不動産を相続することになったが、売却できず、寄付もできないというケースもあるでしょう。そういったとき、最後の手段として考えられるのが「相続放棄」することによって、不要な不動産を相続しないという方法です。
ここからはこの相続放棄について解説していきたいと思います。
手続きの流れと期限
まず相続放棄をする場合、知っておかなければならないのが相続放棄できる期限と手続き方法です。下図をみて頂ければわかるように、相続が発生してから3ヶ月以内というのが相続放棄をする期限となります。
また、いったん相続してしまった土地や家は、相続後に放棄することはできません。ですので、相続の手続きまでに放棄するか相続するかの決断が必要となります。
ただ相続を放棄するのは、売却などとは違い、相続人すべての同意が必要とはならず、いち相続人だけが、自分の相続分だけを放棄することも可能です。
3ヶ月を過ぎても相続放棄できるケースもある
一応のルールとして、相続放棄の期限は「相続開始から3ヶ月以内」と説明しましたが、必ずしも3ヶ月を過ぎてしまったら相続放棄ができないという訳ではありません。
最終的に裁判所などの判断になってしまうので、どういったケースが必ず該当するという断言ではできませんが、例えば相続相手が亡くなっていることを知らなかった場合、または相続した財産の中に該当する不動産があることや、その他の借金(負債)があることを知らなかった場合などに審理の対象となります。
そもそも相続する財産の中に該当不動産があることを知らなかったり、その他の借金があることを知らなかったのであれば、相続放棄を検討する余地すらなかったと判断してもらえるからです。
相続放棄に掛かる費用
相続放棄の手続きは決して難しいものではありませんので、相続人個人でも十分対応できる内容です。もし個人で相続放棄の手続きをするのであれば、それらに掛かる費用は3,000円程度です。
しかし、司法書士や弁護士に依頼する人が多いのも実情です。そうした場合の費用目安としては、3,000円とは別に代行費用がかかります。
- 司法書士に依頼する場合・・・3~5万円
- 弁護士に依頼する場合・・・・5~10万円
相続放棄をする際の注意点
ちょっと面倒な不動産を相続してしまう恐れがあるとき、この相続放棄はとても便利な制度だといえます。しかし、相続放棄するにあたり注意しておかなければならないこともあります。
土地や家だけ放棄することはできない
相続放棄を検討するとき、絶対に知っておいて欲しいのが、不要な家や土地の不動産だけを相続放棄することはできないということです。
つまり「預貯金や株券などは相続するが、家や土地はいらない」という相続放棄は原則不可能ということです。
亡くなられた方の財産は、必ずしも現金や不動産とは限りません。もし亡くなられた方が借金を負っていたとしたら、その負債もすべて負の財産として相続することになるのです。
例えば
- 現金・・・・300万円
- 不動産・・・実家の建物と土地(不動産価値はほぼ0)
- 借金・・・・500万円
このよう場合、現金の300万円は相続するが、価値がない不動産と500万円の借金は相続を放棄するということはできません。
この場合は、現金・不動産・借金をすべて相続するか、もしくはすべてを放棄するかの二択です。これは相続するけど、これは相続しない!という良いとこ取りはできないということです。
生命保険は相続財産ではない
ちなみに、生命保険はここでいう相続財産とはみなしません。ですので、相続放棄したからといって、生命保険が受け取れなくなるということはありません。
ただし珍しいケースで、生命保険の受取人が亡くなった本人となっている場合に限って、生命保険は相続財産となりますので注意してください。
それと生命保険の契約内容によっては、医療保険(入院給付金、休業補償、手術給付金)などが受け取れるものもあります。
こうした給付金などを相続人が受け取ってしまった場合、遺産を相続したとみなされ、相続放棄ができなくなることもあるので、こちらも注意が必要です。
相続放棄しても管理義務は残る
実家の建物や土地などの不動産を相続放棄したからといって、それらの管理義務がすべて消滅するわけではありません。もしあなた以外に相続する人がいれば、その人が以後管理をするようになります。
しかし今回のように相続人すべてが遺産相続を放棄してしまった場合、誰がその借金などを債権者に分配するのでしょうか。そういった面倒な手続きを代行しなければならないのが、当然ですが相続する予定だった人です。
相続放棄した不動産は勝手に国の持ち物になる。と思っている人が多いでしょうがそれはありません。
誰かが相続人にかわり、適切な手続きをしなければ相続人がいない不動産が国の所有となることはないのです。さっきの借金でもそうです。誰も手続きをしてくれる人がいなければ、誰がどうやって債権者に分配するのでしょうか。
つまり適切な手続きを踏んで、放棄した不動産が国の所有物になるまで、相続する予定だった人の誰かが管理や手続きをしなければならないことになっています。
もしこの手続きの最中に、土地が荒れ隣近所に迷惑をかけてしまったのであれば、その賠償責任は当然、相続する予定だった管理者となります。
こうした面倒な手続きなどを嫌う相続人も多く、そうした場合は裁判所に「相続財産管理人を選任」してもらう手続きをしなければなりません。
相続財産管理人とは、相続予定だった人にかわり、すべての手続きや管理を代行してくれる人のことをいいます。最終的には裁判所が「相続財産管理人」を選出するのですが、一般的には弁護士などが選ばれることになります。
相続財産管理人を申し立てする際の注意点
相続人に代わり面倒な手続きや管理をすべて代行してくれて、その責任まで負ってくれるのであれば、ぜひこの制度を利用したいと思うでしょう。
しかし、ここで問題があります。
この手続きを申請する場合、書類などの費用とは別に「予納金」を収めなければならないのです。この予納金の額は決まっておらず、残された遺産の内容によって、裁判所が決定するのですが、一般的には50万円~100万円ほどになります。
この予納金が何に使われるのかというと、相続財産管理人が手続きや管理をする上での報酬や経費となります。かなりまとまった金額なので、この予納金を支払ってまで相続放棄を選択するのが良いのか?それをしっかりと見極める必要があります。
まとめ
売れない家や土地などの不動産は、最終的に自治体などに寄付をすれば良いと思っている人もいると思いますが、今回の記事を読んでそれが現実的に難しいことだと理解頂けたのではないでしょうか。
売れない不要な土地などの不動産を無償だからといって引き取ってくれる自治体などはほぼ皆無です。
だったら最終的に相続放棄すれば良い。と思ってもそう簡単に相続財産から開放されるものではありませんし、それなりの費用が掛かることも理解頂けたと思います。
つまり何が言いたいのかというと、相続した不要な不動産を簡単に寄付したり、相続放棄したりはできないということです。どんなに安価でもいいので、通常の不動産売買で売却するというのが、一番手も掛からず、現実的だと思います。
不動産の相続については、こちらの「土地や実家を相続した時の手続きと税金、売却方法まとめ」にて、詳しく解説していますのであわせて参考にしてください。