家や土地の売却をするとき、どのように売却査定の価格が算出されているかご存じでしょうか。
戸建て住宅の場合、築年数が20年を超えるようだと建物の価値はほぼゼロに近いといわれています。そして、その家が建っている土地の価格メインで売買されるのが一般的です。
つまり、実家など古い建物や土地を売却しようとする場合、土地の価値がわかっていれば、おおよその売却価格を知ることができます。
あまり知られていないことですが、土地の価格の出し方は1つではありません。
一般的に物を売る場合の価格というは2つあり、1つは「査定価格」、2つ目が「実勢価格」なのですが、土地の場合には4つから5つの価格があります。
ここでは土地の価格について詳しく解説しますので、自分で土地の価格を調べてみましょう。
土地の価格はどうやって決まるのか?
冒頭で書いたように、土地には価格がいくつもあります。そのため土地の価格はわかりづらく、何も知識がない状態で売却すると、相場よりも安く売却してしまうこともあります。
例えば、売却の相談をした不動産会社からこう言われたらどうでしょうか。
『この価格は、国や県が公表している「路線価」と、「固定資産税」の土地評価額を参考に、売却(買取)価格を算出しました』
きっとほとんどの人が、「この価格がこの土地の適性な価格なんだろうな」と思うはずです。
国や県が公表しているデータと、固定資産税の評価額をもとにして売却価格を算出しているわけですから、国や県がウソのデータを公表するということはありえないと思うのが普通です。
正確には間違いではありませんが、一般的に売買されている実勢価格よりも大幅に低い金額になっている可能性が高いです。
次も同じような例で、このように言われたらどう感じるでしょうか。
『国や県が公表している「公示地価」や、「基準地価」を参考に売却価格を算出しました』
この価格も、実勢価格とは少し違っているケースが多いので、あまり信用できない価格です。
では、次はどうでしょう。
『ここ半年ほどの近隣の「実勢価格」を参考に、売却価格を算出しました』
さきほどから「実勢価格」という言葉がたくさん出てくることからも、これは信用できそうと思うかもしれません。ですが、これもさほど信用度は高くありません。
ここまでにもすでに、土地の価格として、「固定資産税評価額」、「公示地価・基準地価」、「実勢価格」という、3つの価格がでてきました。この他にも「相続税評価額」や、「鑑定評価額」などがあります。
このように1つの物(土地)に対して、4つも5つも基準となる価格があることを「一物四価(一物五価)」といいます。
土地の価格というのは、この4つも5つもある基準価格をうまく考慮しながら、理想的な売却予想価格を算出します。そうすることで、実際に売れる価格に近い価格が出せます。
まずは、この基準となる価格について詳しく解説していきます。
実勢価格
もっとも一般的な売買価格に近いのが、この「実勢価格」です。実勢価格とは、実際に売買が成立した取引価格のことを言います。
極端な例ですが、隣の空き地が1ヶ月前に売却され、50坪2,000万円で売買が成立した場合を考えてみましょう。
このときの1坪あたりの単価は、
2,000万÷50(坪)=40万円
という計算になります。これが一番具体的な売却目安金額と言えます。
このように、実際に売買が成立した取引価格のことを「実勢価格」といいます。ちなみに、不動産会社のHPなどに掲載されている売却土地の価格は実勢価格ではなく、あくまでも売主が希望している「販売希望価格」ということです。
実勢価格は不動産会社に問い合わせをしなくても、国土交通省のHPから誰でも簡単に検索することができます。
国土交通省HP「不動産取引価格情報検索」
http://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet
近隣で実際に取引されている価格なので、売却時の指標としてはある程度信用ができる価格です。ただしいくら近隣といっても、土地の形状や接道によって価格が大きく変わるので注意が必要です。
公示地価や基準地価
公示地価は「国」、基準地価は「県」が発表している、土地の評価基準価格のことをいいます。
公的なものとしては一番信頼がおける指標だと思います。実際、公示価格や基準地価を参考に土地の査定額を出している業者もいます。
公示地価は、国から依頼を受けた不動産鑑定士2名が、1月1日時点でそれぞれの鑑定ポイントにある土地の評価調査をおこない、その結果を元に国土交通省の土地鑑定委員会が公示地価などを決定し、それを毎年3月に公表します。
基準地価も同じように、調査員があらゆるデータをもとに評価し算出した土地価格のことで、こちらは毎年7月1日時点の調査結果を9月に発表します。公示地価とは半年のズレがあるため、公示価格の補正的な役割も担っています。
ただし、鑑定ポイントしか評価額が算出されていないため、自分の土地と算出ポイントまでの距離が遠い場合は、正確な価格とは言えません。そのため、鑑定ポイントとの距離が重要となります。
公示地価も実勢価格と同じように、国土交通省のHPから確認できます。
相続税路線価(相続税評価額)
基本的に日本国内の道路には、1㎡に対する価格がつけられており、これを「路線価(ろせんか)」といいます。
路線価は、あくまでも相続税の算出基準とされているもので、売買向きの指標ではありません。
ただし銀行が住宅ローンの融資をする場合に、土地の評価基準とすることも多いので、知っておいても損はないのが路線価といえます。
これが実際の路線価が書かれた図面です。この路線価は国税庁のHPへアクセスすれば、誰でも無料で日本全国の路線価をみることができます。
(国税庁HP:http://www.rosenka.nta.go.jp/)
目の前にある道路の路線価が100,000円だとすると、土地は1坪約3.3㎡なので、
100,000円×3.3㎡=約330,000円(1坪)
という計算方法です。
路線価はすべての道路についているわけではなく、あくまでも主要道路のみに表示されているものです。そのため、路線価がついていない道路も数多くあり、そのような場合は基本的に固定資産税に一定の倍率をかける「倍率方式」によって算出されます。
固定資産税評価額
固定資産税評価額とは、その名の通り固定資産税や都市計画税などを算出するときに用いられる「基準額」のことをいいます。
基本的には市区町村が管理しており、公示価格の7割程度に設定されています。そのため土地の売買に関する価格と比べ、かなりかけ離れた評価額となっていますが、そこから逆算すればおおよその売買価格を知ることはできます。
ただし、土地の持ち主には毎年固定資産税の納付書が送られてきて、そこに書かれている土地の評価額というのがこの数字なので、一番目にする機会が多いことから、この価格を自分の土地の相場だと思っている人も少なくありません。
不動産鑑定士の評価額
これは第三者的な立場にある不動産鑑定士が依頼を受けて、その土地の適正な販売価格を算出したものです。自分の土地を売買しようと思ったときには、この価格が一番信頼でき、売却にも適している価格という判断で間違いありません。
ただし、鑑定士に依頼するため別途で費用が発生するので、一般的な土地売買ではこのような業者に依頼することはありません。
土地の売買価格の算出方法について話をしてきましたが、土地には色々な算出方法があるので、査定を依頼した不動産業者がどの方法で査定するかによって査定額が異なります。
ただし、どの方法で査定したとしても、最終的には実勢価格(過去の取引価格)などをみて価格調整するので、差定額が大幅に変わることは滅多にありません。
土地を高く売るための5つのポイント
せっかく売却するのですから、少しでも高値で売りたいというのが本音だと思います。
戸建てやマンションであれば、「リフォーム済」や「マンションの管理状況」などによって相場よりも高値で販売することも可能ですが、土地だけだと比較材料がないため、価格に大差はないと思っている人が多いです。
しかし、管理人が不動産会社の営業マンだったころ、他の業者で1,050万円という査定だった土地を1,500万円で即日契約したことがあります。
そこで、土地を少しでも高値で売却するためのポイントを5つ紹介します。これは実際に不動産会社で働いていたとき、売主のみなさんにも話していた内容です。
- 査定は地元業者も含めた複数の業者にお願いする
- 売却の理由は購入希望者になるべく言わないようにする
- 古い家付きの土地はかならず測量してから売買する
- 土地のおすすめポイントを自分なりにまとめておく
- 一般売却する前にプレ販売する
この5つのポイントについて詳しく解説していきます。
査定は地元業者も含めた複数の業者にお願いする
まず絶対に守って欲しいのが、売却相談や査定は1社だけで決めてしまわないことです。家やマンションの売却と同じように、複数の業者で相談や査定をしてください。
ここでの注意するポイントは、地元の不動産業者も必ず入れて相談や査定をすることです。地域性などは地元業者でなければわかりません。
管理人が1,050万円の土地を1,500万円で即日売却できたのは、その土地のある地域が市内で一番人気が高い地域であり、しかも売り地が極端に少なく、ハウスメーカーなどがこぞって土地を探している地域だということを知っていたからです。
地元にはプレミアム的な地域が必ず存在しており、それは路線価や公示価格には反映されません。地元の業者であれば、そういったことまで考慮して査定額を算出してくれます。
地元業者に売却の依頼をおすすめしている訳ではありませんが、大手不動産業者にはわからない土地の情報を持っていることもあるため、地元の業者を含めて査定をすることが、土地を高く売るためのポイントになります。
もし大手不動産業者に売却を依頼したいという場合でも、そのプレミアム的な情報を業者に伝えれば、その情報を基に独自に調査を開始して、それに見合った査定額を再提出してくれるはずです。
そのため、個人的には相談や査定をする業者は、最低で3社、できれば5社くらいから査定を取るのがベストでしょう。
複数の不動産業者から査定をとる場合には、一括査定サイトを使うと便利です。
最近の一括査定サイトにはたくさんの業者が登録されていて、そこには地域密着型の不動産業者も含まれているため、大手との査定額も簡単に比較することができます。
無料で使える一括査定サイトはこちら
売却の理由はなるべく言わないようにする
次の高く売るためのポイントは、「売却理由はなるべく購入希望者には言わないこと」です。
例えば、購入希望者から売却理由を聞かれたとき、「自分たちが家を建てる予定だったのですが、急遽転勤がきまってしまって」や、「相続した土地で月極め駐車場として貸していたのですが、急にまとまった現金が入用になったので…」というように、購入希望者にしっかりと売却理由を伝えてしまったとします。
すると買い手側としては、「あと200万円値下げしてもらえれば、すぐにでも購入してもいいのですが」と、値引き交渉のネタにしてしまう可能性があります。
なので、売却理由を聞かれた場合は、「生活のサイクルがかわるので…」というように、曖昧なごまかし方をしておくようにしましょう。
もちろん、これはあくまでも購入希望者に対してなので、売却を依頼する不動産会社にまで理由を隠す必要はありませんが、不動産会社にも口止めをしておくことを忘れないようにしましょう。
古い家付きの土地はかならず測量してから売買する
基本的に、土地の売買には「公簿売買」と「測量売買」の2種類があり、不動産会社を介しての土地売買であれば「公簿売買」が主流です。
公簿売買とは
法務局などで入手できる登記簿に記載されている土地の面積で売買契約をするやり方
測量売買とは
実際に土地を測量した面積をもとに売買契約をするやり方
測量売買にも「確定測量」と、「現況測量」の2種類があります。
確定測量は費用もかかり、隣接している地主の立会いも必要なのでやる必要はありませんが、不動産会社の営業マンでも簡単な現況測量くらいは出来ますので、売却依頼をする不動産会社にお願いして現況測量をするようにしてください。
理由は2つあります。
- 実際に登記されている面積と誤差が生じるケースが多々ある
- 売却後のトラブルを避けるため
昔の測量技術は、今とは比べ物にならないほど質素なものでした。ですので、登記簿に記載されている土地の面積が全然違っていることは、決して珍しいことではありません。
特に、相続した実家の土地のように、古くから所有している土地に関しては顕著です。最近の区画分譲されているような土地であれば、ほぼ誤差はありませんが、境界もはっきりしていないような土地であれば、売却前に一度測量しておくことをおすすめします。
もし万が一、測量したことによって75坪だと思っていた土地が、本当は80坪あったらどうでしょうか。坪20万円と考えても、5坪の差で100万円の損をしてしまいます。
逆のパターンでも同じです。登記簿には50坪となっているのに、実際には45坪しかなかったら、これもまた大問題となってしまいます。
このように、測量売買することで売却後のトラブルを未然に防ぐこともできます。
契約上は「公簿売買」と記載されているので問題ではありません。しかし、土地を買った人の立場になって考えれば、そのせいで家の面積を削る必要が出てきたりするのですから、気分の良い売買ではなかったという思いが強く残るでしょう。
土地のおすすめポイントを自分なりにまとめておく
売却したい土地のアピールポイントを、自分なりにまとめておくようにしましょう。そこまで難しく考えなくても大丈夫です。
シンプルに「南向き」、「角地」、「前面道路が広い」などでもいいですし、「買ったときは角地だから隣の土地より坪10,000円ほど高かった」などでもかまいません。
もちろん、「駅やスーパーが近い」、「学校や病院が近い」、「近隣が良い人ばかり」などでも大丈夫です。とにかく、その土地を買ってこれから家を建てる人にとってプラスだと思うことなら、何でもいいので書き出しておきましょう。
そのアピールポイントがまとまったら、査定依頼する業者や購入希望者に配布しましょう。そうすることで、その情報が集客のネタになったり、物件を購入するきっかけにもなります。
一般売却する前にプレ販売する
これは管理人独自のやり方なのですが、情報公開する前に地元のハウスメーカーにすべての土地情報をFAXやメールで送信してもらいましょう。
送信するタイミングは、売却依頼する不動産会社が決まり、情報公開をする前にやるのがおすすめです。
管理人はハウスメーカーの営業マンも経験していたことがあるのですが、ハウスメーカーの営業マンは日々土地を探しています。もちろん、「自分のお客さんに頼まれて」です。
しかし、ネットに公開されている土地情報は、あまり重要視していません。なぜなら、その土地情報は誰でも見ることができるので、土地探しを依頼しているお客さんも見ている可能性が高いからです。
しかし、不動産会社から「情報公開前の売却希望物件」というFAXやメールがきたらどうでしょう。間違いなく営業マンは注目します。
さらに、情報公開前の物件なので、価格も1割くらい高めに設定することもできます。
タイミングによっては反応がないこともありますが、「情報公開前」というプレミアム的なポイントを自ら付与することで、高く売却できる機会を作れるかもしれません。
土地の査定方法や売却ポイントのまとめ
土地査定の方法は多数あり、それぞれの業者が独自のやり方で算出していますので、価格に差が生じます。
そのため、1社だけに売却の相談や査定依頼をするのではなく、なるべく複数の業者に相談・査定をすることが最も大事なポイントです。
通常の売買で買主が決まらなかったときや、業者買取を検討するのであれば、なおさら査定価格の比較が重要です。業者買取は通常売買以上に業者によっての価格差が大きいと言われているからです。
大手一括見積りサイトを利用すれば、1度の依頼だけで複数の業者から査定を取り寄せることができるので、手間も省けるはずです。
適正な価格で土地を売却できるように、不動産業者がどんな査定方法で価格を出しているのかを把握して、土地の売却で損をしないようにしましょう。