家やマンションを売却する際は、仲介してくれる不動産業者と「媒介契約」を結ぶことになりますが、どの契約方法にするかで迷っている人も多いと思います。
「一般媒介」、「専任媒介」、「専属専任媒介」の3種類がありますが、状況に応じてどれが適するかは変わります。
自分の状況に合った契約を選ばないと、なかなか売却が進まず損をしてしまうかもしれないので、注意が必要です。
このページでは、
- よくある売却理由別のおすすめ
- 金銭的な問題があるケース
- 物件に問題があるケース
- 土地ありのケース
この4つの状況の中から、よくある事例16個をあげて、最適な方法を解説します。
きっとあなたと似た状況もあると思うので、ぜひ参考にしてください。
※このページで解説するのは、仲介業者との契約方法についてです。
仲介業者自体の選び方については、「物件を高く売るための仲介業者選び」のページで解説しているので、ぜひ参考にして下さい。
一般媒介・専任媒介契約の基礎知識
まずは知識がない方向けに、媒介契約の基礎知識から解説していきます。すでに大まかな内容を理解している方は、このブロックは読み飛ばしてください。
媒介契約には、
- 一般媒介
- 専任媒介
- 専属専任媒介
の3つの契約方法があり、それぞれの条件は下記となっています。
一般媒介 | 専任媒介 | 専属専任媒介 | |
---|---|---|---|
複数の業者へ同時依頼 | ○ | × | × |
レインズへの登録義務 | 義務なし | 7日以内 | 5日以内 |
自分で買主を見つける | ○ | ○ | × |
売主への状況報告義務 | 義務なし | 2週に1回以上 | 1週に1回以上 |
契約の有効期間 | 自由 | 3ヶ月 | 3ヶ月 |
売主側から見た場合、一般媒介>専任媒介>専属専任媒介の順で、より自由度が高い契約になっています。(左側の方が高い)
特に重要なポイントは、「複数の業者へ同時に依頼できるかどうか」という点で、「一般媒介」だけが唯一可能となります。
「専任媒介」と「専属専任媒介」に関しては、そこまで大きな違いはありませんが、より条件が厳しい専属専任媒介を選んであげた方が、「仲介業者側としてはやる気が出る」という点だけ理解しておきましょう。
では、各契約について重要な点をそれぞれ解説していきます。
一般媒介契約とは
売主にとっても、不動産業者にとっても、条件が一番ゆるく設定されているのが「一般媒介契約」です。
上記の図にあるように、
- 売主は複数の業者と同時に契約してOK
- 売主は自分で直接買主を見つけてきてもOK
という条件になっています。
その代わり、不動産業者側からの状況報告義務や、レインズへの登録義務などがないので注意が必要です。
業者側としてはやる気が出にくい契約である
一般媒介の最大の特徴は、複数の不動産業者に同時に売却依頼ができるという点です。
これをメリットに感じる人もいるかもしれませんが、不動産売買においてはデメリットに働くことも多いので注意が必要です。
不動産業者側からすると、「うち以外の業者から売れる可能性があるから、本気で売却活動をしにくい」ということになりますので、専任媒介の人に比べて手を抜かれてしまう可能性が高くなります。
(※業者側は成功報酬なので、自社経由で物件が売れない限り、手数料は1円も得られません)
そうなると、積極的に広告宣伝費を使うことができないので、どうしても専任媒介に比べてモチベーションが下がってしまうというわけです。
したがって、業者側が積極的に動かなくても売れるような人気物件(立地が良い物件や築浅物件)には向きますが、それ以外の物件では不向きなケースもあります。
一般媒介はどんな物件の売却に向くのか?
一般媒介が適しているケースとしては、
- 特に人気が高いエリアにあるマンション
- 築年数が経ってる古民家や僻地の物件
- 任意売却や競売の危機にある物件
このような物件が当てはまります。
それぞれについて簡単に解説します。
特に人気が高いエリアにあるマンション
人気エリアにある物件の場合、広告宣伝に力を入れなくても、購入希望者側が勝手に情報を見つけて問い合わせてくれます。
この場合は売主側が強い立場なので、あえて一般媒介を使って複数の業者に情報をバラまき、強気の交渉をするという考え方です。
立地が良い物件だけに限られますが、高値で売却できる確率が上がります。
築年数が経ってる古民家や僻地の物件
築年数が古いマンションや僻地にある物件を売るのは、専任媒介で契約したとしても簡単なことではありません。
特に古民家の場合、立地などの条件よりも、買う人の個人的な好みが大きく影響するため、日本全国から広く買い手を探すことが重要になります。
このようなケースでは、一般媒介を使ってできるだけたくさんの業者に売却依頼を出した方がよいケースもあります。
任意売却や競売の危機にある物件
任意売却や競売の危機にあるということは、残された時間はあまり多くありません。
一つの不動産業者にしぼって売却活動をするよりも、地元不動産業者や任意売却専門の業者など、手広く依頼して情報を集めるべきです。
複数の業者に依頼することになるので、一般媒介契約しか選択肢はありません。
専任媒介契約とは
専任媒介契約では、特定の1社とのみ仲介契約を結びます。
上記の画像にあるように、同時に複数の業者へ依頼する事はできません。(自分で直接買主を見つけることはできます)
その代わりに、不動産業者側に「レインズへの登録義務」と、「売主への定期的な販促状況の連絡義務」が発生するので、一般媒介に比べてしっかりと売却活動に取り組んでくれるという安心感があります。
売主・仲介業者ともにバランスが良い契約
専任媒介契約では、売主と不動産業者は1対1の関係であり、他のライバル業者がいないため、お互いの信頼関係が深くなります。
不動産業者側も本気で売却活動に取り組んでくれるので、一般媒介に比べて広告宣伝に使う費用が多くなり、雑誌や広告チラシなど目立つ位置に掲載してくれます。
また「内覧希望の連絡」や「価格交渉の連絡」など、全ての連絡窓口が1本化されるので、業者とのやり取りもスムーズです。
さらに一般媒介と違い、売主への定期的な状況報告義務があるため、「契約したのに何もせず放置される」というリスクが低くなります。
売却活動を成功させるには、売主と仲介業者(営業マン)の信頼関係が非常に重要なので、一般媒介に比べればどちらにとってもバランスが取りやすい契約だと言えます。
ただし囲い込み(両手仲介)を狙う業者には注意!
しかしその一方で、万が一悪質な業者と専任媒介契約をしてしまった場合、まったく売却活動が進まずに時間を無駄にしてしまう可能性もあります。
仲介業者の中には、仲介手数料を2倍取るために、「囲い込み(両手仲介)」を狙う悪質なところもあるので注意しましょう。
(※「囲い込み(両手仲介)」についてはこちらの解説ページをご覧下さい)
このような悪質業者に捕まってしまうと、なかなか内見の予約が入らず時間を無駄にしてしまうので、おかしいと感じたらすぐに別の業者に変えましょう。
仲介業者との契約は3ヶ月更新となるので、ダメな業者や悪質業者に当たってしまった場合は、契約を更新せずもう一度業者選びからやり直すのがベストな選択です。
専任媒介はどんな物件の売却に向くのか
専任媒介は、3つの契約の中で一番バランスが取れた内容になっているので、誰にでもおすすめできる契約方法です。
特に物件に問題がなく、また売却まで急いでいるなどの特殊な事情が無い限りは、専任媒介を選んでおけばよいでしょう。
それ以外に一応意識しておきたい点としては、「もしかしたら親戚や知人に売れるかもしれない」というケースです。
専任媒介の場合、他の業者と同時契約することはできませんが、自分自身で買い手を見つけてくることはできます。
そのため、もし親戚や知人の中から購入希望者側が見つかりそうな場合は、専属専任媒介ではなく、専任媒介にしておきましょう。
専属専任媒介契約とは
専属専任媒介契約は、前項の専任媒介の条件をさらに厳しくしたものです。
上記の図にあるとおり、売主は特定の1社としか契約できず、さらに自分自身で買主を探してくることもできません。
したがって家やマンションを売却する際には、契約中の不動産業者に対して必ず手数料を支払うことになります。
専任媒介と比べてどちらが良いのか?
「専任媒介」と「専属専任媒介」、名前も似ていますが、内容も非常に似通っています。
専任媒介 | 専属専任媒介 | |
---|---|---|
複数の業者へ同時依頼 | × | × |
レインズへの登録義務 | 7日以内 | 5日以内 |
自分で買主を見つける | ○ | × |
売主への状況報告義務 | 2週に1回以上 | 1週に1回以上 |
契約の有効期間 | 3ヶ月 | 3ヶ月 |
一番大きな違いは、自分で買主を見つけることができるかいう点だけで、あとはわずかな期間の差でしかありません。
しかしこのわずかな違いが、「業者側のやる気」に大きな影響を与えます。
先ほど書いたように、この専属専任媒介契約を結んで不動産を売却した場合、売主は必ず仲介業者に手数料を払うことになります。
つまり仲介業者からすると、「もっとも優先するべきお客様」になるということです。
この点をあまり理解していない人が多いので、ぜひ覚えておいて下さい。
「なかなか仲介業者がやる気を出してくれなくて…」と悩んでいる方は、契約内容を変更して専属専任媒介にすれば、もしかしたらやる気を出してくれるかもしれません。
(もちろん、業者自体を変えて、もっとやる気があるところを探すというのも有りです)
専属専任媒介はどんな物件の売却に向くのか?
専属専任媒介は、売主と仲介業者の結びつきがもっとも強い契約方法です。
そのため、
- 相続物件
- 競売や任意売却になりそうな物件
- 売却前のリフォームを検討している物件
など、いわゆる「訳あり物件」を売却したい場合に、選ぶのをおすすめしています。
なぜかというと、上記の様な訳あり物件の場合、売却中や売却後にトラブルが発生する可能性があるため、事情を詳しく知っている一社だけに任せた方がスムーズだからです。
もちろん、状況によっては一般媒介の方が適するケースもあるのですが、大まかな目安として「訳あり物件などに適している」と覚えておきましょう。
ここまで3つの媒介契約について、基礎知識を解説してきました。
それぞれの契約ごとに、メリットとデメリットがあるので、最低限の知識はおさえておきましょう。
では次のブロックからは、よくある事例16個を使って、どの契約方法を選べばいいのかを解説していきます。
よくある売却理由別のおすすめ
まずは家やマンションの売却理由としてよくある6つの事例について解説します。
「築3年」や「築25年」といった設定が出てきますが、これはあくまでよくある例としての数字なので、厳密にではなく多少アバウトに考えて下さい。
それでは解説していきます。
1.住み替え・建て替えする予定なので高く売りたい
住み替えや建て替えやの時期が決まっているのであれば、「専属専任媒介」契約で早く売るのがベストだと思います。
専属専任媒介だと、仲介業者も優先的に自社のホームページで宣伝してくれますし、広告チラシなども目立つように載せてくれます。
また専属専任媒介であれば、あらかじめ売却活動の期間を決めておき、それまでに買主が見つからなければ「業者側に買い取ってもらう」という契約を交渉することもできます。
(※これを「買取保証サービス」と言います。すべての業者が対応している訳ではありませんが、専属専任媒介なら交渉しやすいはずです)
買取金額については、普通に売るよりは安くなってしまいますが、目安として売却相場の2~3割引くらいで買い取ってくれれば上々です。
あまりに安い金額だと損するので、必ず媒介契約を締結する前に、買取保証の金額を決めておきましょう。
一方で、もし住み替えや建て替えの時期を急がないのであれば、複数の業者を比較できる「一般媒介」で様子をみるのもありでしょう。
ただしいつ売れるかが予測できないので、住み替えや建て替えのタイミングに合わせるのはかなり難しいと思います。
2.築3年の築浅物件だが、離婚や転勤などを機に売却したい
築浅物件の売却でおすすめなのは「一般媒介」契約です。
マンションでも戸建てでも、築浅物件は人気が高く需要が多いので、よほど的外れな売却価格でなければ、短い期間で売ることができます。
そのため、不動産業者自体の宣伝力やブランド力はあまり関係してきません。放っておいても勝手に内見予約が入るからです。
築何年くらいまでを築浅とするのかは、個人の価値観によって違ってきますが、一般的には「築3年~築5年以内」を築浅物件として紹介する業者が多いように感じます。
したがって、築5年までの物件であれば、まずは一般媒介で広く買い手を探してみるのがよいでしょう。
なお立地的に人気のエリアであったり、大手ゼネコンやハウスメーカーで建築した物件に関しては、築10年くらいまでは市場で高い人気があるので、すぐに買主が見つかる可能性が高いです。
3.立地は良いが築25年と少し古く、和室が多い戸建て
今戸建てを売ろうと考えている人の中には、このパターンに該当する人はかなり多いと思います。
この物件で想定できる「買主側の用途」は3つあります。
- そのまま住む
- リフォームをして住む
- 立地が良いので解体して新築用地として購入する
想定できる買主の幅が広いので、宣伝活動もできる限り広範囲で行うことが重要です。
そのため、まずは「一般媒介契約」で探してみることをおすすめします。
不動産の場合、「立地が良い」というだけでかなりの優位性があるので、一般媒介で探してもそれなりの引き合いがあるはずです。
その中から希望に合う条件が見つかれば良しですし、もし見つからなければ専任媒介に切り替えて、広告戦略を見直すという流れが良いでしょう。
4.近所の人や会社の同僚などに知られずに売却したい
マイホームを売却する際、近所や友人、会社の同僚などに知られたくないという人もいると思います。
特に田舎だと売り出していることがあっという間に広がってしまい、アレコレと事情を詮索されてしまいがちです。
このようなケースでは、一般媒介は多数の業者に情報が漏れてしまうので、当然不向きです。
他人からの余計な詮索を避けて家やマンションを売却したいなら、「専任媒介」契約が良いでしょう。
また契約を結ぶ際は、なるべく大手の業者を選びましょう。
他人に売り出しを知られたくない場合、不動産サイトでの情報公開や、折込みチラシ、オープンハウスなどの宣伝活動を控えることになるので、もとから多くの顧客を抱えている大手業者に依頼しないと、なかなか買い手が見つからないためです。
なお「専属専任媒介」を選んでも構わないのですが、このようなケースでは、事情を知っている一部の知り合いから「売って欲しい」と打診をうけ、内々に売却を済ませてしまうということもよくあるので、ここは専任媒介にしておく方が賢い選択肢だと思います。
(※専属専任媒介にしてしまうと、知り合いに直接売却することができなくなります)
5.空き家になっている実家の売却
「空き家になっている実家を売却したい」という相談の多くは、相続絡みの不動産です。
かなり築年数が経過している物件が多いので、売却活動も長期化することを想定しておきましょう。
もし立地が良いなら、先に解体してしまい、更地として売り出す方が良い場合もあります。
このケースでは、「一般媒介」契約をおすすめします。
最近は都会から移住しての田舎暮らしなどが流行っているので、地元だけに目を向けるのではなく、離れた場所に住む人にまで情報を届けることが、早期売却への近道だと考えるからです。
ですので、一般媒介で選ぶ仲介業者としては、宣伝力がある「大手不動産会社や大手フランチャイズの看板を掲げている地元業者」がおすすめです。
一括査定サイトなどを使って広く業者にアプローチし、その中から宣伝力が強うそうな業者を何社か選んで、とにかくたくさん露出できるように意識しましょう。
それでもなかなか売れない場合は、売却価格は下がってしまいますが、「業者買取」を利用することも考える必要があります。
(※「業者買取」についてはこちらのページで詳しく解説しています)
6.相続した不動産を売却するか賃貸にするかで迷っている
家やマンションを相続したものの、売却するか賃貸にするかで迷っている人も多いと思います。
このようなケースだと、「決着がつくまでに時間がかかる」という理由から、仲介業者に敬遠されてしまいがちです。
その問題点をクリアするためには、「専属専任媒介」契約をが適しているでしょう。
最終的に売却するにせよ、賃貸として貸し出すにせよ、「うちが仲介(または管理)できる」と業者側に思ってもらうことが必要なので、一番拘束力が強い専属専任媒介で契約を結び、こちら側の本気度を示しましょう。
業者側は成功報酬でしか利益が得られないので、「中途半端な売主」と思われてしまうと、本気で対応してくれません。
ですから専属専任媒介を選ぶことで、業者側にもメリットを作ってあげる必要があります。
また専属専任媒介にすれば、「賃貸にした場合の収支シミュレーションを出して欲しい」などと、多少無理なお願いをしても、応じてくれる可能性が高くなります。
わがままを言う分、「必ずあなたの会社へ手数料を払います」という姿勢を見せてあげましょう。
(※売却か賃貸かで迷っている人は、「マンションを賃貸で貸すのと売るのはどちらがお得?」のページもあわせて参考にして下さい)
金銭的な問題があるケース
続いては、金銭的に問題があるケースの売却について、どの媒介契約を選ぶべきか解説します。
競売になりそうな物件や、住宅ローンが残っている状態での売却など、よくある4つの事例を解説するので参考にしてください。
7.競売になりそうなのですぐに売却したい
住宅ローンの滞納などにより、裁判所から「競売開始決定通知」という書類が届いて、慌てて相談に行ったという話はよく聞きます。
万が一競売にかけられてしまうと、かなり低い金額で家が処分されてしまうので、絶対に避けたいところ。
住宅ローンを滞納した場合、滞納している期間に応じて以下の順に書類が届きます。
- 金融機関からの「催告書」、「督促状」
- 金融機関から「期限の利益の喪失」
- 保証会社から「代位弁済通知」
- 裁判所から「差押通知書」
- 裁判所から「競売開始決定通知」
- 裁判所から「競売の期間入札通知書」
上記のうち、最初に届く「催告書」や「督促状」の段階であれば、まだ自分の意志で家を売却することができます。
あるいは、2番目の「期限の利益の喪失」という書類が届いてしまったとしても、債権以上の金額であれば売ることはできます。
しかし「競売開始決定通知」の段階まできてしまうと、基本的には「競売」か「任意売却」かしか選べないので、ここまで来る前にどうにかしたいところです。
このようなケースでは、仲介業者と密に連携して行動する必要があるので、「専属専任媒介」契約がおすすめです。
やはり業者側からすると「訳あり物件」となりますので、少しでもやる気を出してもらえるように、専属専任媒介を選ぶ方がよいでしょう。
さらに言うと、業者を選ぶ際には、「任意売却」の実績が豊富な業者を選ぶのがベストです。
できれば通常の流れで売却したいところですが、仮に任意売却になってしまったとしても、競売にかけられるよりはマシです。
このようなケースで物件を売るには、過去の実績や経験がとても重要なので、一括査定などを利用して「任意売却が得意な業者」を紹介してもらうのがベターでしょう。
中には「競売物件はお断り」と話を聞いてくれない業者もいるかもしれませんが、根気よくサポートしてくれる業者を見つけましょう。
(※住宅ローン滞納時の競売については「住宅ローンが払えないから売りたい」のページで詳しく解説しているので、あわせて参考にして下さい)
8.任意売却になったためすぐに売りたい
任意売却とは、住宅ローンの支払いが苦しくなって差し押さえや競売になりそうな際に、事前に融資を受けている金融機関の承諾を得た上で、通常と同じく一般仲介によってマイホームを売却する方法です。
差し押さえや競売に比べると、任意売却の方がまだ高値で売却できる可能性があります。
少しでも高く売れれば、残る住宅ローン(借金)の額を減らすことができるので、とても大事なことです。
このケースでは、選択できるのは「専任媒介」か「専属専任媒介」契約のどちらかとなり、「一般媒介」は選べません。
なぜかというと任意売却では、融資を受けている金融機関と仲介業者が協議しながら売却価格等を決めていくことになるので、金融機関との窓口を一本化する必要があるためです。
専属専任媒介を選んだ方が業者側も積極的に動いてくれますので、信頼できそうな業者を見つけたら、素直に専属専任媒介を選ぶのが良いでしょう。
9.住宅ローンが残っている状態での売却
「住宅ローンが残っている状態でも家を売却することはできますか?」、という質問をよくもらいますが、売却は可能です。
ただし条件があります。
- 残っている住宅ローンの残債務よりも高い金額で売却する
- 売却価格がローンの残債務より低い場合は、足りない分を預貯金等で支払う
上記のうち、どちらか片方をクリアできるのであれば、普通に売ることができます。
この場合は、少しでも高値で売却できるように、まずは「一般媒介」を使って幅広く買主を探してみましょう。
もしどちらの条件もクリアできない場合は、通常の売却ではなく「任意売却」という形になるので、選べるのは「専任媒介」か「専属専任媒介」のどちらかとなります。
(※任意売却については前項の「8.任意売却になったためすぐに売りたい」を参照して下さい)
なお、任意売却という形で売却するためには、そもそも住宅ローンを滞納していなければなりません。
かといって意図的に滞納するとあなたの信用情報に傷がついてしまうことになので、安易に任意売却を選ぶのはおすすめできません。
住宅ローンの返済で困った際は、金融機関や不動産業者とじっくり相談した上で、まずは通常の売却で残債を返済できないか検討してみましょう。
10.1週間以内や1ヶ月以内など、すぐに現金化したい
病気や海外転勤、あるいはリストラなど、急なトラブルによってお金が必要になり、やむなく自宅を売却するという人もいると思います。
しかし一般的な不動産の売買では、現金が手元に入ってくるまでかなりの時間がかかります。
もし1ヶ月程度の余裕があるなら、「一般媒介」契約で複数の業者と契約した上で、相場よりも1割から2割程度安く売り出してみるのがよいと思います。
絶対とは言えませんが、相場よりもお買い得な物件であれば、買主も比較的早く見つかるはずです。
一方で1週間程度しか時間がなく、非常に急いでいる場合は、通常の売買では間に合いません。
このケースでは「業者買取」を利用して、最短で現金化を目指すしかないでしょう。
業者買取であれば、最短数日で現金化できますが、売却価格は一般的な相場の6~7割程度になってしまうので、注意が必要です。
(※「業者買取」についてはこちらのページで詳しく解説しています)
物件に問題があるケース
続いては物件自体に何らかの問題があるケースについて解説します。
傷んでいる箇所が多い家や、病気や火災などがあった事故物件は、なかなか売却先が見つからないケースも多いです。
仲介業者と相談しながら、業者買取も視野に入れて売却先を探しましょう。
11.傷んでいる箇所が多く、リフォームしてから売却したい
築年数が経過している物件や、ずっと空き家だった物件などは、傷んでいる箇所が多いため、売る前に最低限のリフォームをしたいという人もいます。
単純に金銭面だけを考えるのであれば、傷んでいる物件でもリフォームなどはせずに、そのまま売却してしまう方お得です。
(※リフォームによって売却価格が上がる幅よりも、リフォーム代の方が明らかに高くつくからです)
しかしそれでもリフォームしてから売りたいと言う場合は、「専任媒介」契約をおすすめします。
窓口が多い一般媒介だと、もしリフォーム工事に関してトラブルが起こった場合に、「説明した」「聞いていない」の水掛け論になってしまうことがあるからです。
トラブルを避けるためにも、専任媒介で業者を1つに絞って、リフォームと売却の両方をお願いするのが良いでしょう。
したがって、可能なら不動産部門を持っている地元の工務店やリフォーム会社に、リフォームと売却仲介を同時にお願いしてしまうのがベストです。
そうすることで、リフォーム中でも売却活動や内覧が可能になりますし、なにより仲介手数料やリフォーム費用の値引き交渉をしやすくなります。
業者側は仲介手数料で儲けられるので、「リフォーム費用は安くしてくださいね」と交渉しやすいですし、逆にリフォームで利益取っているんだから、「仲介手数料はまけてもらえませんか?」と交渉することもできます。
似たようなケースとして、「築年数が古く、更地にして売却したほうがいいのか迷っている」という質問もよく受けます。
このケースでも、同じように不動産部門を持つ地元工務店に相談するのが良いでしょう。
工務店であれば、更地にすることで土地を探している新築顧客にもアピールできるので、売却の相談がしやすいはずです。
12.孤独死、火災、自殺などの事故物件を売りたい
孤独死や火災、自殺などがあった事故物件の売却は、想像している以上に大変です。
特に殺人事件や火災によって亡くなった人がいる物件だと、かなり価格を下げても簡単には売れません。
場合によっては半年や1年以上経っても、買い手が見つからないケースもあります。
非常に難しい売却になりますが、まずは「一般媒介」契約で複数の業者に相談してみて、売却価格や売却戦略を決めましょう。
大幅な値下げはやむを得ないので、「どこまで下げられるのか?」という金額と、「いつまで待つのか?」という期間については、あらかじめ決めておいた方がよいでしょう。
どちらかの条件に達しても買い手が見つからない場合は、「業者買取」という選択肢か残されていないと思います。
(※「業者買取」についてはこちらのページで詳しく解説しています)
13.家の傾きや地盤沈下、雨漏り、シロアリ被害などがある家
家の傾きや地盤沈下、雨漏り、シロアリ被害など、問題を抱えているマイホームの売却では、「一般媒介」契約を選ぶのは非常に危険です。
一般媒介だと営業の窓口が広くなるため、後々トラブルが起こった時に、「説明した」「聞いてない」という水掛け論になってしまう可能性があるからです。
問題を抱えている物件だからこそ、その物件のことを詳しく把握している仲介業者に依頼するのがベストです。
このようなケースで適しているのは「専任媒介」契約です。
問題を抱えている物件の場合、なかなか買主が見つからずに、売却活動が長期化する恐れもあります。
仮に1年以上経過しても売れない場合は、最終手段として「業者買取」を選択するケースも出てくるかもしれません。
そうなった時に、自分で買取先の業者を探すことができる専任媒介にしておくのがベターだと思います。
専属専任媒介にしてしまうと、買取業者の介入をOKしてくれない可能性があるので、念のためですが専任媒介にしておきましょう。
あるいは、売却活動がうまく進んでいないと思った段階で、一旦仲介業者との契約は解除してしまい、改めて買取業者を探すという選択肢もあります。
土地ありのケース
最後は物件だけではなく、土地も持っているケースについて解説します。
一般的な「土地付きの戸建て」なら、バランスの良い専任媒介を選んでおけば問題ありませんが、調整区域内にある物件や、畑や山林などを売りたい場合は、また話しが違ってきます。
それぞれに適した方法を解説します。
15.調整区域や接道の問題で建て替え不可の家を売りたい
調整区域や道路(接道)の問題によって、新しく新居を建てることができない土地は思いのほか多いです。
不動産サイトで物件情報を見ていると、たまに「どうしてこんなに安い価格で売りに出ているのだろう?」と、不思議に思う物件を目にすることがありますが、その多くが調整区域にある物件(中古住宅や土地)です。
築古でも建物さえ残っていれば、フルリフォームをして新築同様にすることはできるので、価格次第では売れないこともありません。
しかし土地だけの場合は本当に使用用途が限られてしまうので、かなり価格を下げても買い手がつかないケースがあります。
このような場合は、わずかでも可能性を広げるために、「一般媒介」契約で複数の業者に協力してもらうのが良いでしょう。
建物が残っている状態であれば、カチタスのような再販を得意としている買取業者に相談することで、買取してもらえる可能性もあります。
16.相続した畑や山林などを売りたい
畑や田んぼなどの農地や、山林などを売却する際も、基本的な流れは中古住宅を売る時と同様です。
しかし実際問題としては、かなり条件が良い農地や山林でなければ、なかなか買い手を見つけるのは難しいでしょう。
仮に運よく買い手が現れたとしても、農地転用許可申請や開発申請など、普通の不動産売買ではあまり経験しない作業が必要となるので、そこで何らかのトラブルが発生するリスクもあります。
特に山林の売買では、対象となる敷地が広大なため、境界トラブルなども想定しておく必要があります。
このようなケースでは、一般的な不動産業者ではなく、農地や山林の売買を専門にしている業者を選んで、「専任媒介」または「専属専任媒介」契約で、じっくり取り組んだ方が良いでしょう。
山林の売買に関しては、こちらのページの「山林を売却したい場合」のブロックを参考にして下さい。
媒介契約に関するよくある疑問
ここまで3つの媒介契約について詳しく解説してきましたが、その他によくある質問として聞かれることをまとめてみました。
ぜひ参考にしてもらえればと思います。
専任媒介で囲い込みを確実に防ぐ方法ある?
これは非常に多い相談ですが、囲い込みを100%完全に防ぐ方法はありません。
会社自体はまっとうでも、担当する営業マンが自分の数字を伸ばすために隠れて囲い込みをしているケースもあるからです。
ただし1つだけ例外があって、「うちは片手仲介しか行いませんよ」と、独自のルールを設けている業者がいます。
例えば「SRE不動産(旧ソニー不動産)」がこれに該当しますが、このような業者に依頼すれば、囲い込みを防ぐことができます。
問題は、SRE不動産のようは業者はまだごく少数で、全国で見ても限られた地域しか対応していないという点です。
SRE不動産の場合であれば、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、京都、奈良が対象地域になっているので、この地域内の人はSRE不動産を利用するのがおすすめです。
専任媒介で仲介手数料の値引き交渉をするのはあり?
売主の立場からすれば、不動産業者に支払う仲介手数料はかなり大きな出費です。
場合によっては百万円単位になりますので、できれば安く抑えたいと思う人もいるでしょう。
ですが、仲介手数料の値引き交渉をするのは率直にいっておすすめできません。
不動産業者側は、あくまで成功報酬で売却活動を行っているわけですから、その上で値引き交渉までされると、売却へのモチベーションは下がってしまいます。
したがって、
「仲介手数料を値引きしてもらって得をする」
という考え方ではなく、
「できる限り不動産業者へ協力して、マンションを高く売ってもらう」
という考え方をした方が、売主にとっても得になるケースが多いです。
売主と不動産業者はパートナーなので、相手のモチベーションが下がるような行いは極力避けましょう。
一般媒介で複数の業者と同時契約するメリットは?
3つのうち、唯一複数の業者と同時に契約ができる一般媒介ですが、メリットとしては、
- 気になる業者が複数いる時に「お試し」として契約できる
- ダメな業者が混ざっていても他の業者がカバーしてくれるかもしれない
- 訳あり物件を売る際は、ダメ元で手広く情報を拡散することができる
このような点が考えられます。
1つ目に関しては、いきなり専任媒介契約を結ぶのが不安な場合に、まずはお試し的なイメージで、気になる業者と一般媒介契約を結んでみるという考え方ができます。
ただしこの場合、業者側のモチベーションは低いはずなので、結局時間を無駄にするだけというリスクがあります。
2つ目は読んだままですが、よほど運がよくない限りこのようなケースにはならないので、あまり期待しないようにしましょう。
3つ目は訳あり物件を売る時の考え方です。
そもそも訳あり物件の場合、専任媒介契約を結んだとしても売れる可能性は低いので、それならダメ元で多数の業者に情報を流した方が、売れる可能性は高くなるかもしれません。
これは実際によくあることなので、訳あり物件を売却する際には、一般媒介をおすすめするケースは割と多いです。
一般媒介では何社と同時に契約できるの?
一般媒介で契約を結ぶ場合、特に何社までという上限数はありません。
それなら何十社もまとめて契約すれば…と考える人もいるかもしれませんが、あまり現実的ではありません。
契約する数が多ければ多いほど、業者とのやり取りや、内覧スケジュールの調整などに手間がかかるので、売主の負担は大きくなります。
そのため、まずは3社から5社程度で様子を見るのが良いでしょう。
一般媒介から専任媒介へ変更することはできる?
一般媒介から専任媒介へ変更することは可能です。
一般媒介契約では、特に契約期間の定めがありませんので、もしどこか特定の業者と専任媒介を結びたくなったら、他の業者との契約をすべて終了したうえで、改めて専任媒介契約を結び直せばOKです。
この考え方を利用して、
- 最初は一般媒介契約で複数の業者と契約してみる
- 一ヶ月ほど様子を見て、対応の良い業者を選ぶ
- 選んだ業者と改めて専任媒介契約を結ぶ
という方法で、相性の良い業者(営業マン)を見つける方法があります。
手間と時間がかかる方法ではありますが、慎重に業者を選びたいという人はやってみてもよいかもしれません。
契約期間の途中で業者を変更したくなった場合は?
専任媒介、専属専任媒介契約の場合、原則として契約期間の途中で業者を変更することはできません。
ただし、業者側が認めれば早期に契約を終了することはできます。
売主側が契約終了を求めるということは、業者側としても売れる見込みはほぼないということなので、意外とOKしてくれる業者は多いと感じます。
ただし、場合によっては「これまでに使った宣伝広告費の一部を負担しろ」と求められるケースもあるので、このような場合は大人しく契約期間終了まで待つしかありません。
ちなみに、売主側が契約更新の紙を出さない限り、勝手に契約が更新されることはないので安心してください。
まとめ
今回解説したように、売却する際の状況によって、どの媒介契約が適するかは大きく変わってきます。
立地や物件状況に大きな問題のない、いわゆる「普通の家」であれば、深く考えずに「専任媒介」を選んでおけばOKですが、それ以外の場合はきちんと適する媒介契約を考えましょう。
間違った媒介契約を選んでしまうと、思うように売却活動が進まずに、売主にとっても仲介業者にとっても不幸なことになります。
それからもう1つ大事な点ですが、「どの媒介契約を選ぶか?」の前に、「どの仲介業者を選ぶか?」という問題があります。
家やマンションを売却する際には、むしろこちらの「業者選び」の方が大事なので、しっかり時間をかけて選ぶようにしましょう。
優先順位としては、
- 売却に強い仲介業者を見つける
- 状況に適した媒介契約を選ぶ
という順番になります。
仲介業者の見つけ方に関しては、こちらの「高く売るための仲介業者選び」のページで詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
売却に強く、信頼できる業者さえ見つかれば、不動産の売却はほぼ成功したようなものです。
逆に業者選びの段階で失敗してしまうと、数百万円単位で損をしてしまう可能性もあるので、不動産業者はしっかり時間をかけて選びましょう。