土地活用には、賃貸アパートやコインランドリー経営、駐車場経営など、様々な種類があります。
どの土地活用をするかは、地域の周辺環境、初期投資の費用、利用者を見越した事業性など、あらゆる面から事業性を検討し、一番最適な土地活用を考えなければなりません。
その中でも重要となるのが、その業種の事業計画です。
同じ土地活用でも、アパート経営とトランクルーム経営では、利用者層やランニングコストはまったく異なります。
それぞれの業種に見合った事業計画を入手し、それぞれを比較検討しながら、最終的にどの事業で土地活用するのかを決めてく必要があります。
そこで今回は、土地活用を始める際の事業計画の立て方と、資金の調達法について解説します。
事業計画を立てる際のポイント
「自分の年収でどれくらいの資金を借りることができるのだろう?」、「あの土地ならどれくらい金融機関は融資してくれるのだろう?」と、資金的なことを最初に考える人がいますが、これは間違いです。
たしかに、ある程度の資金的なことがわからなければ、どれくらいの規模の事業まで検討していいのかわからないという考え方はわかります。
しかし、土地での収益事業を考える場合、融資をしてくれる金融機関は、まず事業性を重要視します。そのため、何の計画もないまま「どれくらい融資してくれますか?」といっても、金融機関側も返答に困ってしまいます。
まずはお金の問題よりも、
- 自分がどのような事業をやりたいのか
- どれくらいの収益が望めるのか
という事業計画を立てておく必要があります。
ですので、順番としては、「事業を決める」、「事業計画を立てる」、「資金計画と調達」となります。
土地活用の事業計画は、大きく以下の3つにわけて考えるようにしましょう。
- 市場調査
- 事業計画
- 資金調達
市場調査で事業が成り立つのか調べる
自分の土地がある周辺環境などを調査し、どのような事業であれば成り立つのか候補を絞ります。
市街地の中心部に土地があるのでしたら、収益性が高い賃貸マンションやコインパーキングが第一候補となるでしょうし、田舎に土地があるでしたらトランクルームやコンビニ経営、さらにもっと田舎であれば太陽光発電事業などが候補として考えられます。
当たり前のことですが、市街地に近いほど候補となる事業も増え、田舎になるほど土地活用の事業候補は絞られてしまいます。
ただし、すでに同業種のライバル店が進出していたり、賃貸も飽和状態になっている可能性もあるので、そこはその事業の専門家に市場調査を依頼することで、より正確で緻密な調査データを算出してくれるはずです。
事業計画書を比較する
候補となる事業を2つか3つに絞ることができたら、それらの専門業者に市場調査の依頼をし、それぞれの事業計画書を比較しながら最終決定していくようにしましょう。
事業計画書の中身をみて、ただ収支だけで判断してはいけません。初期投資の費用、どれくらいの期間で減価償却できるのか?など、多方面に目をむけて比較するようにしてください。
投資額が大きくなれば、それだけ高い収益が望めるのは当然のことですが、それだけリスクも高くなります。
- 1億円を投資して、毎年1,500万円の利益がでる賃貸アパート経営
- 1,000万円投資して、毎年200万円の利益がでるコインパーキング経営
- 500万円投資して、毎年120万円の利益がでるコインランドリー経営
この上記3つケースだったら、どの事業が一番魅力的なのか比較するのが難しいと思います。
このような投資額と収益がバラバラなケースでも、すぐに比較できる方法があります。それが「利回り」です。
利回りとは、投資した金額に対する年間の収益率のことをいいます。
利回りの計算式
利回り=(年間収益÷初期投資費用)×100
例えば100万円の投資に対して、年間10万円の収益があった場合の利回りは10.0%となります。
この利回りを使い、上記3つの事業例を比較してみましょう。
1億円を投資して、毎年1,500万円の利益がでる賃貸アパート経営
『1,500万円÷1億円×100=15』 利回りは15.0%
1,000万円投資して、毎年200万円の利益がでるコインパーキング経営
『200万円÷1,000万円×100=20』 利回りは20.0%
500万円投資して、毎年120万円の利益がでるコインランドリー経営
『120万円÷500万円×100=24』 利回りは24.0%
このように利回りで比較すると、500万円の投資で毎年120万円を回収できるトランクルーム経営が、投資額に対して一番高い収益性があることがわかります。
同じ利回りで比較する
しかしここで疑問があります。たしかに利回りでみたら、利回り24.0%のコインランドリーが一番効率の良い事業のように見えます。
ですが、コインランドリーといえば24時間ずっと電気を使います。洗濯機や乾燥機はもちろん、店舗内の照明や外看板にエアコンなど、月々の電気代だけでもバカになりません。
それに比べてコインパーキングはどうでしょう?電気代なんて外灯と精算機くらいでおさまるはずです。
コインランドリーの一日の電気代が2,000円、コインパーキングの一日の電気代が300円だったとしましょう。そうするとコインランドリーは1ヶ月30日計算でも、月に60,000円の電気代を負担しなければなりません。コインパーキングだと電気代は1ヶ月9,000円程度です。
コインランドリーの年間の収益は120万円だったので、ここから電気代を差し引くと『120万円ー(60,000円×12ヶ月)=480,000円』となります。
いっぽうコインパーキングも同じように計算すると、『200万円ー(9,000円×12ヶ月)=189万2,000円』です。
それぞれを利回りで計算すると、以下のようになります。
1,000万円投資して、毎年200万円の利益がでるコインパーキング経営
『189万2,000円÷1,000万円×100=18.92』 利回りは18.92%
500万円投資して、毎年120万円の利益がでるコインランドリー経営
『480,000円÷500万円×100=9.6』 利回りは9.6%
説明するまでもなく、本当に収益が高いのはコインパーキングだということになります。このように利回りは、業者によって算出方法が違います。
必要なランニングコストを収益から差し引いたものを「実質利回り」、ただ単に予想収益と初期投資費用だけで算出したものを「表面利回り」といいます。
ただし、アパートやマンション経営のように、どれくらいの入居者が年間通して住んでくれるのかわからないケースもあります。そういった場合に使われる「想定利回り」という方法があることも覚えておいてください。
アパート経営を例に例えるなら、利回りの種類は以下のようになります。
・表面利回りとは
年間の家賃収入に対して投資費用で割る
・実質利回りとは
年間の家賃収入から固定資産税や設備のメンテンナンス費用などのコストを差し引いた収益を投資費用で割る
・想定利回りとは
常に満室状態であることを想定した年間の家賃収入を投資費用で割る
同じ利回りの計算式でなければ、それぞれの事業を比較検討する物差しにはなりません。事業計画書を各業種の会社にお願いする場合には、それぞれの利回りを提示してもらってください。
少なくとも「表面利回りor想定利回り」と、「実質利回り」の2つのタイプの利回りは算出してもらうようにしましょう。
資金の調達方法を考える
検討したい土地活用事業と、それに対する事業計画が完成したら、いよいよ具体的に資金調達のことを考えなければなりません。
土地活用事業を始めるにあたり、どの事業であっても多かれ少なかれ初期投資費用は掛かるものです。それらの費用は「自己資金」か「借入れ金」でまかなうのが一般的です。
今回は資金調達という項目なので、あくまでも借入金を利用して、事業を始めることを前提に考えてみたいと思います。
資金調達の方法や種類などについては、このあとの項目で詳しく解説していきます。
資金調達方法
土地活用事業の資金調達で難しいのは、いかにベストなローン商品を見つけることができるか、という点でしょう。
住宅ローンなどのように、各金融機関の金利や商品を一覧紹介しているサイトも少ないので、どのような事業用ローンがあるのかさえ良くわかりません。
そのためアパート建築業者だったり、コインランドリー業者などから薦められるまま、その金融機関のローンを組む人が多いのですが、せっかくここまで緻密な事業計画を練ってきたのに、一番大事なローン商品だけ業者に任せてしまうのはもったいないと思いませんか。
土地活用事業の多くが、マイホームを買う以上に高額な初期投資費用が掛かります。つまり住宅ローンを組むときと同じように、わずか0.1%でも金利が低く、初期手数料が安いローン商品を見つける努力をして欲しいのです。
仮に3,000万円の借り入れをする場合、金利がわずか0.5%違っているだけで、20年ローンだと、支払い総額はおよそ200万円くらい違ってきます。
少しでも高い利回りを確保するためには、月々の出費の中で一番大きくなる「ローン返済額」を抑えることこそが一番重要となります。
そのためには、「どのようなローン商品があるのか?」、「どういった借り入れ先が候補にあげられるのか?」というのを知っておくだけでも全然違ってきます。
ローン商品と借入先を選ぶ
賃貸アパートをはじめる計画があるとして、その建築資金をどこから借りようと思っていますか?
わりと勘違いしている人がいるのですが、アパートやマンションなどの建築資金は「住宅ローン」として借りられると思っている人がいるようです。
しかし住宅ローンの貸付条件として「自分たちが住むための居住であること」と書かれています。
つまりアパートやマンションのように、人に貸して家賃収入を得ることを目的としている場合、アパートやマンションの建設費用として住宅ローンを利用することはできません。
そのかわり多くの金融機関では、アパートやマンションの建設資金として利用できる「アパートローン」という商品が用意されています。
住宅ローンと比べると若干金利は高めに設定されていますが、それでも他のローン商品と比べると割安な金利で融資を受けることができます。
三井住友信託銀行
アパートローン10年固定金利 | 年3.05% |
住宅ローン10固定金利 | 年2.95% |
※平成29年6月1日現在
このように金利差はわずかですが、すべての金融機関でアパートローンという商品があるわけではありませんし、トランクルームやコインランドリーを開業するのにアパートローンは利用できません。
そういった場合は、「事業ローン」や「多目的ローン」などを利用することになり、アパートローンよりもさらに金利は高めに設定されていることが多いです。
融資の借入れ先について
ローン商品は「アパートローン」or「事業ローン」、「多目的ローン」などを利用することになりますが、借入れ先についても複数の選択肢があります。
- 民間の金融機関
- 公的機関
- 事業者の貸付金
民間の金融機関
都市銀行をはじめ、地方銀行や信用金庫などがあります。金融機関によって金利は違いますが、アパートローンや事業ローンは比較的低い金利で借りることができます。
その反面、用途が決められていない「多目的ローン」や、使いみち自由の「フリーローン」は金利が高いこともありおすすめできません。
事業計画をみて、「これくらいまでの金利だったら許容範囲だろう」という、ボーダーラインを決めておくようにしましょう。
その金利内で借入れできるローン商品がないのであれば、他の金融機関に変更したり、他の事業を視野に再検討するのも一考です。
民間金融機関の候補
都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合、農協(JA)、信託銀行、生命保険会社、損害保険会社など
民間金融機関の融資を利用する際の注意点
どうしても金利が低い変動金利に目がいきがちですが、将来的なことを考え、金利の種類は慎重に決めるようにしましょう。金利が1.0%上昇するだけで事業計画は大きく変わってしまいます。
公的機関
今現在、公的な事業ローンといえばアパートローンの「住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)」と、事業ローンとして利用できる「日本政策金融公庫」の2つがあります。
どちらも公的なローン商品なので、金利も比較的低く設定されており、真っ先に検討するローン商品だと思います。
ただし、最近は民間の金融機関のローン商品もかなり低金利なので、比較検討して、より条件の良いほうで融資を受けるようにしましょう。必ずしも公的なローンだからこちらが優れているというわけではありません。
公的金融機関の候補
住宅金融支援機構、日本政策金融公庫、地方の各自治体など
公的機関の融資を利用する際の注意点
公的機関という名称からもわかるように、国が主導している金融機関になりますので、税や公共料金の未納があると借入れすることはできません。
事業者の貸付金
公的ローンや民間ローンで借入れをするのが普通なのですが、事業によっては業者の貸付制度を利用することもできます。有名なところでいえば、コンビニ経営などが挙げられます。
コンビニの場合、建物を建ててコンビニ側に貸し付ける「建て貸し(リースバック)」という土地活用法があるのですが、この場合のコンビニ店舗建設費等をコンビニ側が無金利で貸し付けてくれる制度があります。別名「建設協力金」ともいいます。
融資の際の手数料も不要で、金利もかからないので、どんな公的ローンや民間ローンより、好条件で利用できるのは言うまでもありません。返済も月々の賃料から差し引かれるので、手間も掛かりませんし、企業側が契約途中で撤退した場合の保証なども備わっています。
一般的にはコンビニやコインランドリーなど、建物ありきりの事業の場合に、この貸付制度を取り扱っている業者が多いようですが、同じ業種でも会社によって貸付制度そのものがない場合もあります。
貸付制度を利用する際の注意点
コンビニなどは売り上げが悪いと早期撤退することも予測できます。そうなったときの貸付金はどうなるのか?など、しっかりと話し合い、それを契約書に明記してもらっておきましょう。
融資の流れと必要書類
「アパートローン 融資の流れ」などで検索すると、自分で金融機関に出向き相談するまでの流れだったり、必要な書類が紹介されていたりします。
しかし、これらのほとんどがしっかり読んでみると、中古のアパートを購入する際にアパートローンを組むという話だったります。
今回はあくまでも土地活用という題材なので、中古アパートを買うという話ではありません。自分がもっている土地にアパートだったり、コインランドリー経営を事業として始めるという話です。
新築でアパートを建てる際、自分で金融機関に融資の相談に行くことなんて滅多にありません。ほとんどアパート建築会社だったり、不動産会社の担当者が金融機関側と話をしてくれます。
もちろん何もしないというわけにはいきませんが、大手アパート建築会社の場合だと、ほとんど話がついているところで挨拶程度に、金融機関の担当者と顔合わせをするくらいです。
自分で相談に行く場合の、融資の流れについても簡単に解説します。
- 事業計画書を入手する
- 事業計画書と土地の謄本や写真を持って金融機関へ相談に出向く
- 2週間ほどで融資担当者から連絡があります
- 前向きに検討してもらえるようなら、改めて融資の本申込みをします
基本的には、このような流れになります。まず大事なのは、事業計画書がしっかりと出来上がっているのかという点です。
必要な書類についても「事業計画書」、「登記簿謄本」、「物件の写真と地図」くらいで問題ありません。その後、正式な申し込み段階になり、所得証明や納税証明などの書類提出を求められることになります。
事前相談の時点で、「正式に申し込みする段階になったら、どのような書類が必要になりますか?準備しておく書類の一覧表などありますか?」と尋ねると、必要書類一式が書かれている書類をもらうことができるはずなので、入手しておいてください。
アパートローンや事業ローン申込み時に必要となる書類一覧
資料 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
運転免許証 | コピーで可 | 本人確認書類 |
健康保険証 | コピーで可 | |
源泉徴収票 | 過去3年分程度 | |
確定申告書 | 過去3年分程度 | 確定申告している場合のみ |
資産証明 | 現金、不動産、証券など | 資産の保有額と合計がわかるように。 |
事業計画 | 業者側からもらっておく | |
住民票 | 2~3枚程度 | |
印鑑証明書 | 2~3枚程度 | |
納税証明書 | 過去3年分 | 税務署で取得可能。金融機関から指定された部分のみ |
給与明細 | 直近3ヶ月分 |
審査基準
アパートローンや事業ローンは、住宅ローンやカードローンと違い、各支店に融資決定権があるプロパー融資にあたります。
そのため、各金融機関や支店によって審査基準は大きくことなり、A銀行ではまったく相手にされなかったのに、B銀行ではすんなり融資が通ったなんてことも珍しくありません。
ただ住宅ローンやマイカーローンなどと違い、かなり細かく審査される商品であることに間違いありません。
住宅ローンやマイカーローンというのは、基本的にその本人の属性(年収や職業、勤続年数、過去の金融トラブルなど)で審査されます。しかし、このプロパーローンの場合、「個人の属性+事業性+バックボーン」という3本柱で総合的に判断されることになります。
バックボーンというのは、事業相手となるパートナーのことを意味してます。コンビニ事業であれば、賃料を払うのはセブンイレブンやローソンなどの大企業ですし、アパート経営でも大東建託やレオパレスという一流企業です。
このようにどんな業者がパートナーなのかというのも、審査基準に大きく関係してきます。
知名度や信頼度が審査に影響する
これは管理人の個人的意見なのですが、以前アパート営業をしているときに感じたことは、「個人の属性30%、事業性30%、バックボーン40%」くらいの判断材料になっているのではと思いました。
実際に金融機関に新築アパートの融資相談に行ったとき、融資の担当者から、「○○さん(企業名)が、30年一括借り上げで賃料を払うということであれば、前向きに検討させていただきます。個人でアパート経営するよりも確実ですからね」と言われたことが何度もありました。
それくらい金融機関側にしてみれば、「どの企業が事業パートナーなのか」ということを重要視しているのだと思います。
つまりアパート経営に限ったことではなく、どの土地活用事業をするにしても、同じ業種でも知名度や信頼度が高い業者のほうが、融資審査では有利になると思います。
失礼な言い方ですが、アパート経営を考えているのであれば、街の不動産会社が30年一括借り上げをするというより、大東建託やレオパレスのような大企業と30年一括借り上げの契約を締結しているほうが、金融機関側としては審査も通りやすくなると思って間違いないでしょう。
まとめ
どういった事業であっても、自分で事業計画を立てるのには限界があります。その業種の独特な見方とかもあるので、調査等は専門業者にお願いするのがベストです。
あとは、どの業者がより詳しく、素人にもわかりやすい事業計画書を提案してくれるのか?という部分で判断するしかありません。
とくに最も重要な判断材料となる利回りに関しては、より厳しい目で「同じ内容で利回りの試算が行われているのか」、「ただの想定利回りで算出されていないか」など、しっかりと確認しておきましょう。
融資に関しては、基本的に事業パートナーとなる業者側が率先してやってくれたり、提携している金融機関を紹介してくれるはずなので、あまり難しく考えすぎる必要はありません。
ただし、事業性を高く見せるためだけに変動金利をすすめてきたり、提携金融機関を強くすすめてくる業者もあるので注意しておきましょう。
もし最初から提携している金融機関を薦められたときは、「公的機関のローンを使用できないのか」について、一度しっかりと確認を取るようにしてください。
何にしても数多くの事業候補の中から、最終的に1つの事業に絞って契約しなければなりません。一度契約してしまうと簡単に後戻りはできませんので、自分だけで判断するのでなく、色々な人に相談したり、アドバイスをしてもらいながら決めていくようにしましょう。