下水道が整備されるまで、多くの家では浄化槽を使用していましたが、最近では下水道が整備されたことで、浄化槽から下水道に切り替える家が多いです。
今は下水道を利用しているという家でも、昔は浄化槽を使っていた可能性が高いでしょう。しかしその場合、今の売主が浄化槽を以前使っていたことを知らずに家を売却することも考えられます。
浄化槽があったことを知らなかったとはいえ、これは土地の瑕疵責任問題となる場合があります。その場合、それらの浄化槽の撤去費用は売主がすべて負担することになります。最悪、契約不履行になることも考えられます。
そこで今回は、古い家の売却でトラブルになることが多い、浄化槽の問題について解説します。
浄化槽と下水道の違い
そもそも、浄化槽と下水道の違いすらよくわからないという方もいると思いますので、まずは下水道と浄化槽の違いを簡単に説明します。
下水道とは
下水道とは、水道(上水道)と同じように、市区町村などの自治体が管理している、公共の下水処理設備のことです。
下水道を使う場合は、水道料金を払うように、下水道の利用料金を支払います。
浄化槽とは
浄化槽とは、主に下水道が整備されてない地域で利用される、汚水や生活排水を処理するための設備のことをいいます。
これは市区町村などではなく、その家ごとに設置しているので、管理も各家庭で行いますので、下水道料金などは発生しません。
浄化槽を設置するためには、初期費用として50万円~70万円ほどかかるので、家を建てるときに下水道が通っている地域であれば、公共の下水道を利用するのが一般的です。
ただし、家を建てたあとに下水の整備が行われ、途中で浄化槽から下水道に切り替えている家もありますが、月々の利用料金のことを考えて、下水道は利用せずに浄化槽を使い続けている家もあります。
下水道の利用料は、地域によって異なりますが、目安としては水道料金の8割程度です。
浄化槽がある家を売却する際の注意点
家を売却するとき、仲介を依頼した会社から必ず「下水道」なのか、それとも「浄化槽」なのかを聞かれます。
自分たちが建てた家なら、下水道か浄化槽なのかわかると思いますが、親が建てた家や、先祖代々から受け継いでいる家の場合、下水道か浄化槽か知らないというケースもあるでしょう。
実際の合併浄化槽の全容
家の売却を考えているのであれば、その家が下水道なのか、それとも浄化槽なのか、もしくは以前は浄化槽で、今は下水道に切り替え済みなのかについて、必ず把握しておくようにしましょう。
この確認を怠ってしまうと、後々損害賠償や浄化槽の撤去費用を請求される可能性があります。
買主が浄化槽を使用するケース
もし売却したい家が浄化槽であれば、買主にも浄化槽であることを告げなければなりません。
浄化槽であることを理解した上で、買主が購入する分には何も問題ありません。特に、後々トラブルになるようなこともありませんので、浄化槽の維持管理費が年間でどれくらいかかるのか、買主に伝えておきましょう。
すでに下水道が整備されている地域にも関わらず、浄化槽を使い続けている場合は、「下水道が整備されているけど、我が家は浄化槽を使っています」ということを買主にかならず伝えておきましょう。
買い主にちゃんと理解してから購入してもらうのと、知らないまま購入するのでは全然違います。
買主が浄化槽を使用しないケース
浄化槽トラブルになりやすいのが、買主が浄化槽を使わない場合です。例えば、購入した土地で新築住宅を建築する場合などは、この浄化槽がトラブルの原因になることが多いので注意しましょう。
というのも、浄化槽が地中に埋まっていると、その場所が地盤沈下の原因になってしまう可能性があるからです。
途中で浄化槽から下水道に切り替えた家も多く、その場合浄化槽を撤去せずに、そのまま地中に埋没処理している家もあります。
埋没処理の方法としては、浄化槽の底に穴をあけ、そこに砂利などを詰め込むのですが、いくら埋没処理をしていても、将来的にその場所が沈下する恐れがなくなるわけではありません。
そのため、新築住宅を建てる場合などは、埋没処理している浄化槽を発見したら撤去してしまうのですが、売買契約の内容によっては、この撤去費用を売主が負担しなければならなくなることがあります。
浄化槽の撤去費用
埋まっている浄化槽の種類にもよりますが、新築工事時の撤去費用であれば5万円~20万円くらいかかります。
5万円程度であれば、なぜ下水道に切り替えるときに撤去しなかったのだろうと疑問に思うかもしれませんが、これはあくまでも新築工事中の撤去なので、これくらいの撤去費用でおさまるという話しです。
通常、普通に家が建っている状態で浄化槽を撤去するのは、とても大変な作業になるので、撤去費用も5万円ではすみません。
このように、撤去費用のトラブルに巻き込まれないためには、売買契約時に買主側に現状をしっかりと伝え、それを理解した上で購入してもらうことが大切です。
もし管理人が売主側の立場であれば、買主に購入後の利用方法を尋ね、新築の住宅を建てるというのであれば、浄化槽の撤去費用として売買価格から、5万円~10万円ほど値引きをしてあげます。
もちろん契約書でも、そのことを記載してもらいますし、あとは浄化槽を撤去するか、そのまま埋没処理した状態で利用するかは、買主側が決めれば良いと思っています。
ニオイ対策はどうすればいい?
浄化槽のある家を売却するとき、内見に来た方に「ニオイが気になる」と言われることが良くあります。ですが、元不動産会社の営業マンして言わせてもらえれば、これは浄化槽だけが原因ではないと思います。
賃貸アパートの内見に行ったことがある人なら、体験したことがあると思いますが、長いあいだ空き家になっている家の多くは、部屋に入ったときに変なニオイがするものです。
そのニオイの原因は、トイレと水道にあります。トイレや水道は、使用していないと下からニオイがのぼってくるので、嫌なニオイが部屋中に広がってしまいます。
ニオイの対策としては、内見の前日に換気をし空気を入れ替えて、トイレや水道を何度か流し、溜まっている水をしっかりと排水しておくことです。これでニオイは大幅に軽減できます。
これは自分たちでやらずとも、仲介を依頼している不動産会社の営業マンにお願いすればやってくれるはずなので、気になる方は頼んでおきましょう。
浄化槽の電源は絶対に切ってはならない
浄化槽がある古家を売却するとき、その家で生活を続けながら売却するのであれば問題ないのですが、その家を空き家状態にして売却するケースもあります。
その場合、誰も住んでないからといって絶対にブレーカーを落としてはいけません。
浄化槽の中には、汚水処理のため、大量のバクテリアが生息しています。このバクテリアこそが浄化槽の仕組みで、もっとも重要な働きをしています。
バクテリアも生き物ですから、酸素が必要で、そのために浄化槽内には常に酸素を循環させる装置がついています。金魚を飼うときのブクブクしているのと同じ原理です。
浄化槽に酸素を送る装置ブロワー
しかし家のブレーカーを落としてしまったら、この酸素を循環させる機械も止まってしまうため、浄化槽内のバクテリアは酸素不足で全滅してしまいます。
バクテリアが死滅することで、浄化槽は何の働きもしなくなり、ただの汚水水槽となってしまいます。
こうなると当然、汚水水槽から悪臭が漂い、家の敷地内だけでなく隣近所にまで、悪臭が漂いクレームの原因になります。
さらに再び浄化槽を使うためには、新たなバクテリアを放流しなければならず、その費用は数十万単位と決して安くはありません。
まとめ
浄化槽がある古民家を売却する際は、かならず買い主に浄化槽の有無を伝えましょう。しっかりと伝えることで、浄化槽のトラブルはほぼなくなります。
もし買い主が浄化槽を使用しないという場合には、撤去が必要になる可能性もあるので、仲介してくれる不動産屋にしっかりとその旨を伝えておきましょう。