マンションの売却契約を結んだ後に行う手続きについてまとめています。銀行やマンション組合への連絡や新居への引っ越し準備など決済日までにやるべきことはたくさんあります。
決済日に必要な書類も含めて、最後の最後まで気を抜かずに進めていきましょう。
なお、結んだ売買契約を解除する方法も解説しています。何らかの事情で売買契約を解除したい人も参考にしてください。
- 【目次】売却契約後の流れと決済時の準備
売買契約後の必要な手続きと確認事項
売買契約日から決済日までは、平均すると1ヶ月くらい期間が空きます。この間に売主としてやっておくべきことが多数あります。
万が一、決済日に間に合わないと物件の引渡しができず、契約違反として違約金を請求されることもあります。最後まで油断せずに、万全の準備をしておくようにしましょう。
銀行への連絡
基本的に売買契約を締結した時点で、決済日が決まっていると思います。
自分が住宅ローンの融資を受けている金融機関に連絡をして、決済日を伝えておきましょう。銀行は一括返済の日までキッチリ利息を請求してきますので、決済日が確定しないことには銀行も必要書類を作成することができないからです。
それと同時に抵当権を外す手続きも必要で、銀行側に書類を用意してもらう必要があります。
金融機関によっては住宅ローンに関する資料が、銀行の支店などでは管理されておらず、本店などで一括管理しているケースもあります。そのため、準備に2週間ほどかかることもあります。
ギリギリになって連絡しても必要書類が間に合わない可能性があるので、どんなに遅くても決済日の2週間前までには連絡を済ませておくようにしましょう。
マンションの管理組合に連絡
分譲マンションには管理組合があって組合員として登録されています。売却する際には組合を脱退する手続きが必要になります。
脱退するためには「組合員資格喪失届出書」を提出しなければなりません。その際、管理費や修繕積立金の滞納がないことも確認しておくようにしましょう。
後になって買主から「積立金の滞納があり、自分たちに請求された」なんてトラブルはよくあります。余計なトラブルを避けるためにも、管理費や積立金の滞納がないことを確認しておきましょう。
注意して欲しいのが親から相続したマンションを売却する場合です。滞納しているケースが多いので、しっかり確認しておきましょう。できれば、支払い状況が確認できる証明書を発行してもらうようにしてください。
住宅ローン審査状況
買主側の住宅ローン進捗具合も大切ですが、ここでの審査は自分が買い替えをする場合の住宅ローンの審査確認です。
もし買い替えをするための売却であれば、当然新居の購入に住宅ローンを借りることになると思います。自分の住宅ローンが通らず、マンションの売却ができないなんてことを避けるためにも、しっかり確認しておきましょう。
買い替えをするための売却であれば、買主側だけでなく、売主側の住宅ローン特約も契約書に記載しておくことも忘れないでください。
引っ越し準備
売買契約~決済までは通常であれば1ヶ月程度は期間が空きますので、決済日を決めてから引っ越し業者を探しても通常は間に合います。
しかし売却時期が引っ越しシーズンである3月~4月だった場合、予約がギッシリ詰まっていて希望の日に引っ越しできない場合もあります。最近では、希望する日に引っ越しができない「引っ越し難民」も発生しています。
引っ越しが完了しないと物件の引渡しができません。これは立派な債務不履行となり、契約解除されても文句はいえません。そうならないように売買契約前の早い段階から引っ越し業者を探して、事前見積もりを取っておくようにしてください。
決済時に必要な書類を準備しておく
ここでは決済日までに準備しておく書類について解説していきます。必要なものとあると喜ばれるものがあるので確認していきましょう。
権利証
不動産権利証は必ず必要になります。売買契約の時点の必要書類として紹介しているので、この段階で紛失に気付く人は少ないと思いますが、以下の対応方法を紹介しておきます。
- 公正役場で本人確認をしてもらう
- 司法書士にお願いする
費用をなるべく抑えたい人は自分で公正役場に出向き、手間を抑えたい人は司法書士に依頼するのがベストだと思います。
各種精算金の明細
各種精算金とは固定資産税やマンションの管理費・修繕積立金などのことです。固定資産税は基本的に1月1日時点の所有者に対して請求されますので、年の途中で売却する場合は日割り計算のうえ、買主側に残り日数分を請求することができます。
マンションの管理費や修繕積立金を滞納しているにも関わらず、そのままマンションを売却する人や、相続した物件で管理費や積立金の滞納があることを知らずに売りに出してしまう人もいます。
滞納分がある場合、買主には隠さず伝える必要があります。その際、滞納している金額分を売買価格から相殺するのが一般的です。ちなみに滞納した状態で売買してしまうと、滞納分は買主側に請求されトラブルになるので注意してください。
管理費や修繕積立金は返金されるの?
マンション売却において売主から「支払った修繕積立金は返金してもらえるの?」という趣旨の質問をされることがあります。
確かに自分たちはもう住まないのですから、これまで支払った修繕積立金は返金して欲しいと考える気持ちは理解できます。
しかし、売却するからといって管理費や修繕積立金を返金してもらうことはできません。修繕積立金はマンション所有者全員の財産にあたるので、一人の所有者が自分の分だけ返金して欲しいという主張は通らないのです。
その他必要書類
決済当日には印鑑証明書が必要です。しかし、売買契約時にも印鑑証明書は取得しているはずなので、二度手間にならないよう、売買契約時に必要枚数分を取得しておくと良いでしょう。
基本3ヶ月以内に取得したものとなっているはずなので、売買契約から決済日まで3ヶ月期間が空くことは稀です。
そしてこれは必須ではありませんが、買主にとって有益と思われる書類なども持参して渡してあげると喜ばれます。例えばIHコンロや食器洗い洗浄機の取り扱い説明書だったり、マンションの定例集会の議事録や年間スケジュールなどの冊子類など。
マンション購入時の販促用パンフレットなどが残っていれば、そういった物も喜ばれますので、決済日までに探して準備しておきましょう。
1度結んだ売買契約を解除するには?
一度売買契約を締結すると、簡単に契約を白紙に戻すことはできません。いくら残金の決済が終わってないといっても、売主と買主双方とも契約を解除するためにはそれなりのペナルティーを負わなければなりません。
もし売買契約後に、やっぱりこの取引を白紙に戻したいと思ったとして、どのようなペナルティーが課せられるか知っておきましょう。
売主都合で契約解除するケース
売主の個人的都合で契約を解除したいのであれば、売買契約時に受け取っていた手付金の倍額を買主側に違約金として支払うことになります。
売買契約時に手付金として200万円受け取っていたのであれば、その200万円とは別に、さらに200万円用意して合計400万円を違約金として支払うことになります。
これを「手付けの倍返し」といいます。
今回は200万円という設定で話しをしましたが、手付金は物件価格の1割から2割が相場だと言われています。
そのためマンションの売却価格が3,500万円であれば、手付金として700万円を支払う買主だっています。そうなると売主、買主双方ともに、契約を白紙撤回するためには700万損をすることになるのです。
そのため、手付金の額は慎重に決めなければなりません。実際に携わった売買契約では、手付け解除として800万円を支払ったケースもありました。
買主都合で契約解除するケース
買主の個人的都合で売買契約を白紙撤回したいのであれば、売買契約時に支払っておいた手付金を売主側に違約金として支払うことになります。つまり契約時に支払った手付金は、売買契約を解除しても買主には戻らないということです。
これを「手付け解除」といいます。
ただし、引渡しをするための改修工事に着手している場合は、この「手付け解除」だけでは済まず、実費分を請求されることになるので注意してください。
決済日当日に必要なもの
マンションの売却もいよいよ最終段階です。あとは残金の決済と物件の引き渡しを無事終えるだけになりました。最後の最後ですが、一番大事な部分なので、必要書類の準備不足などが起こらないように、万全の準備をして迎えるようにしましょう。
必要なもの
決済日当日に準備して持参するものは、以下の4つです。
- マンションの権利証
- 実印と印鑑証明書
- 本人確認書類(免許証など)
- マンションのカギ
ここまで説明してきたものばかりですので、今さら改めて解説する必要はないかと思います。とくに権利証は紛失していれば、再発行までに時間が掛かりますので、早い段階で有無を確認しておきましょう。
そしてマンションのカギですがスペアキーも含め、家族が持っているもの全てを渡せるように準備しておいてください。
必要なお金
決済日当日、支払い分のお金も持参しておきましょう。
- 仲介手数料の残金
- 振込み手数料
- 司法書士への報酬費
基本的には買主から受け取る残金があるので、売主が用意するケースは少ないでしょう。
買主への気配り
無事残金の決済と鍵の引渡しが終わったら、長かったマンション売買に関する手続きはすべて終了となります。しかしここで気を抜く前にもう1つやっておいて欲しいことがあります。
それは買主への気配りです。
不動産業者で営業マンをしていたとき、売主の方にお願いしていたのが買主への感謝のお手紙です。便箋1枚程度でかまいませんので、買って頂いた感謝の気持ちを手紙にして部屋においておくようにしてください。
買主は夢のマイホームを手に入れワクワクした気持ちで新居へとやってきます。しかし荷物がすべて運び出された部屋というのは寂しいものです。そこに1枚の手紙と花瓶に一輪のお花があるだけで雰囲気は全然違います。
きっと買主の人も「良い人から買うことができて良かった」と思ってくれることでしょう。
買主と売主の関係はお金の授受と鍵の引渡しが終わればすべて終わりという訳ではありません。もしかすると売主も知らなかった雨漏りや腐食など、思いもよらない瑕疵(欠陥)がみつかることもあるでしょう。
そのようなときに、気配りの有り無しでは買主が売主に抱く印象は全く違ってきます。買主に良い印象をもってもらうことで購入後の不具合でも穏やかな話し合いで解決することができるのです。
まとめ
売買契約から決済日までは、1ヶ月ほどの期間しかありません。この間に必要書類の準備をしたり、いろいろと連絡を済ませておく必要があります。
準備する書類の中には、すぐに再発行してもらえないものもあるので、売買契約が終わった時点で、決済日までに準備しておく書類を一通り確認しておくようにしましょう。
漏れがあると終わりに近づいていた売却活動を、最初からやり直すなんてこともあるので注意してください。最後の最後まで気を抜かずマンション売却を成功させてください。