節税効果は抜群!しかし思わぬ落とし穴も?

節税効果は抜群!しかし思わぬ落とし穴も?

とてつもなく大きなマンションを目の前にして、思わず見上げてしまったことはないでしょうか。

「従来のマンションと比べて際立って高い住居用高層マンション」を「タワーマンション」と呼び、一般的なマンションとは区別することがあります。

階数などの決まった基準があるわけではありませんが、一般的には「20階以上で高さ60m以上」のマンションが、タワーマンションに該当します。

超高層の建物といえば、都心部の駅周辺のファッションビルやオフィスビルをイメージすると思います。しかし最近では、都心部のビル群にとどまらず、超高層化しているマンションが多数つくられています。

その傾向は特に、東京の湾岸部の再開発地域に顕著にみられます。

タワーマンションがそびえる地域は一等地であることが多く、家賃も相場より高くなります。数千万円から億単位に至るまで、軒並み高価格帯で売買されています。

そんなタワーマンションを活用した「タワーマンション節税」が今、大きな注目を集めています。文字通りに節税対策のひとつなのですが、なんと、1億円で購入したタワーマンションの課税評価額が2千万円になることもあるようです。

これはつまり、1億円の現金を相続する場合に比べて、課税評価額が五分の一になるということを意味します。

これほどまでに高い節税効果を持っているタワーマンション節税とはいったい、どのようなものなのでしょうか。今回は、タワーマンション節税について考えてみたいと思います。

タワーマンションの規模にもよりますが、一般的なマンションと比べると割高な印象があることは否めません。したがって、「タワーマンションを購入できるのは富裕層だけだし、自分には関係ない」と考えている不動産オーナーがいたとしても無理はありません。

もしあなたがそのように考えているとしても、一度、この記事に目を通してみてください。きっと、自分にも関係する話題だということが分かっていただけるはずです。タワーマンション節税の話題は、誰しもがいつかは直面することになる「相続」がテーマだからです。

それでは、「タワーマンション節税」について、順を追って見ていきましょう。

相続税法が改正され、大幅増税となった

タワーマンション節税が注目を集めている背景には、相続税の大幅増税があります。

相続税の税体系が大きく変わったのは2015年1月です。控除額が減らされたことに加え、一部の税率も変更となりました。

まず、大きく変わったのが基礎控除額です。基礎控除とは、相続税を計算する課税価格から一律に引くことができる額で、法定相続人の人数によって定められています。

・相続税制改正前(2014年12月まで)
5000万円+1000万円×法定相続人の人数

・相続税制改正後(2015年1月から)
3000万円+600万円×法定相続人の人数

具体的なケースにあてはめて、どのくらいの増税になっているのかを見てみます。以下の計算は、各ケースごとの基礎控除額です。

相続財産の課税価格がこの基礎控除額を下回っている場合には、相続税を収める必要はないことになります。

<法定相続人が2人>
・2014年12月まで・・・5000万円+1000万円×2人=7000万円まで課税なし
・2015年1月から・・・3000万円+600万円×2人=4200万円まで課税なし

<法定相続人が3人>
・2014年12月まで・・・5000万円+1000万円×3人=8000万まで課税なし
・2015年1月から・・・3000万円+600万円×3人=4800万円まで課税なし

法定相続人が3人の場合、2014年12月までは8000万円以上の人が相続税を納めればよかったのですが、2015年1月からは4800万円以上になるのであれば、相続税を納める必要が出てきます。

改正前は4%の人しか相続税の課税対象とはなっていませんでした。つまり、相続税は一部の資産家にしか課税されない税金だったのです。

しかし、改正後はより一般の人にまで課税対象が広がったと言えます。法定相続人が3人の場合、4800万円から8000万円の資産を持っている人が新たに相続税の課税対象となります。

日本人は土地を所有している人が多いため、8000万円には届かないものの、4800万円以上の資産価値にはなり得る人が多くいます。

これまでは相続税の納税対象にならないケースであったとしても、これからはそうもいきません。大幅に課税対象が広がったことは、まぎれもない事実です。

そこで効果的な節税対策として注目を集めているのが、タワーマンション節税なのです。

また、相続税については一部の税率も改定されたのですが、ここでは解説を省きます。タワーマンション節税を理解するために知っておきたいポイントは、基礎控除額が変更され、相続税の課税対象となる幅が広がったという点です。

不動産の評価方法は4種類!

基礎控除額の範囲内に収めることができれば、相続税を納める必要がありません。

不動産を所有している場合には、購入した価格に課税されるのではなく、相続時に改めて計算された資産価値に対して課税されます。

現金の価値は額面通りなので一目瞭然です。しかし、不動産の資産価値は刻一刻と変動しているため、現金のようにはいきません。計算しなおす必要があります。

不動産の資産価値を計算する方法は、大きく分けて4つあります。

  1. 市場価格(時価)
  2. 公示価格
  3. 路線価
  4. 固定資産評価額

どの指標を使用するのかによっても資産価値は変わってきますが、相続税を計算するための資産評価は、国税庁が毎年発表する「路線価」を用いることになっています。路線価は毎年7月1日に国税庁のホームページで発表されます。

基本的には、路線価に面積を乗じて計算をします。地形によっては他の数値を用いて補正を行いますが、路線価が不動産の相続税評価額を計算するうえでの基準となることには変わりありません。

そして、市場で販売される際の価格(時価)と路線価には差があることをおさえておいてください。路線価は、市場価格のおおよそ80%に設定されています。

タワーマンション節税の概要

ここまでは、タワーマンション節税を理解するために必要な前提知識をご紹介してきました。

いよいよ本題に入ります。タワーマンション節税とは、いったいどのような仕組みの節税方法なのでしょうか。

さきほど、「お金の価値は額面通りだが、不動産の価値は計算しなおす必要がある」と述べました。このことも、タワーマンション節税を理解するうえで重要なポイントとなります。

2億円の現金のみが遺産となる場合と、1億円の現金と1億円で購入したタワーマンションを合わせた2億円が遺産となる場合では、相続税評価が全く異なります。

現金が2億円の場合は、もちろん2億円の評価となります。一方で不動産を所有している場合には、すでに説明した通り、改めて計算する必要があります。

マンションが遺産に含まれている場合には、建物部分と土地部分の評価は別々に行います。

「マンションは地上に接していないのに、どうして土地部分の評価が関係あるのか」とお考えの読者もいるでしょう。マンションを購入する際には、専有部分(部屋)だけでなく、その部屋に該当する土地部分の権利も購入します。

一階以外のマンションは土地に接して建てられているわけではありませんので、もちろん、土地そのものを購入するわけではありません。専有部分に対応する土地を利用する権利(敷地権)を購入するということになっています。

マンションの登記簿を確認してみてください。専有部分とは別に「敷地権」についても登記がなされているはずです。

法律的には専有部分と土地部分は分けられないと考えるため、相続税を計算する際には、マンションの専有部分の評価に加えて、土地の評価もしなければなりません。

「高層階の専有部分であったとしても土地の上に立っているものと考えて、評価額が決定される」と覚えておくとよいでしょう。

土地部分については、専有部分(部屋)の面積でマンションの敷地面積を按分し、各専有部分に対応する持ち分が決まります。

専有部分が向いている方角や階などは考慮に入れません。単純に専有部分の面積に応じて決まります。売買価格も関係ありませんので、人気がある部屋だからと言って敷地部分の評価額が高くなってしまうということもありません。

マンションが高層であればあるほどに部屋が増え、その専有面積に対応する敷地の割合は少なくなるため、土地の評価額が自ずと低くなります。大きなタワーマンションであれば、それだけ節税効果が高くなるわけです。

マンションの専有部分の評価額は、固定資産税評価額となります。固定資産税評価額は、市場価格の70%程度です。つまり、購入時に支払った額よりも、相当に低い評価がなされることになります。

現金額と不動産評価額の差を利用する

タワーマンションは、高層階の方が市場価格が高くなる傾向にあります。高層階は眺望がよいなどといった理由から需要が高まるのでしょう。

固定資産税評価額は、何階の部屋であったとしても同じ建物内であれば一律です。そのため、どの階の専有部分なのかは評価額に影響を与えません。

より多くの現金をタワーマンションの購入に使うことができれば、そのぶんを不動産の評価額に圧縮できるため、高級で、かつ高層階のマンションのほうが節税効果は高くなります。

資産家が現金をタワーマンションに代えたがる理由は、ここにあります。現金を持った状態で相続が発生するまえに現金を不動産に代えてしまうことで、高い節税効果を生み出そうと考えるのです。

タワーマンションを所有するだけでなく、賃貸をすることによって、さらなる節税効果を見込むことも可能です。

「貸家」であれば、評価額が減額される仕組みがありますし、土地についても同様に、評価が下がります。

そしてさらに、「小規模宅地等の特例」という制度もあり、この特例の条件にあてはまれば、もっと大きな節税を実現することができます。

所有しているだけでも節税効果があるのですが、それだけにとどまらない節税効果を期待できることが、タワーマンション節税の人気を後押ししているのです。

行き過ぎた節税には要注意

しかし、2015年11月に国税庁から、タワーマンション節税に対するチェックの目を厳しくするとの方針が示されました。

税金を安くする対策のはずが、かえってペナルティを受けることになってしまったら元も子もありません。タワーマンション節税を行う場合には、細心の注意が必要になったと言えます。

もっとも、タワーマンション節税は法律に則って行われているわけですから、決してルール違反ではありません。それなのにどうして、国税庁がチェックを強化しようとしているのでしょうか。

タワーマンション節税はあくまでも税金を節約する方法なのですが、行き過ぎた節税行為は、租税回避行為としてみなされる可能性があります。要するに、外見上はルールの範囲内であったとしても、「ルールの悪用」として判断されてしまうこともあるのです。

「行き過ぎた節税行為」の具体例をあげてみましょう。

相続が開始する直前にタワーマンションを被相続人が購入し、相続人がそのタワーマンションを相続したとします。この段階で相続税が発生しますが、現金の相続よりも節税できるということはこれまでに見てきた通りです。

そして、相続税を納めて間もないうちに相続人がタワーマンションを売却してしまうのです。そうすれば、タワーマンションを換金するのですから、現金を相続したのとほぼ同じことになります。

法律に抵触する行為ではありませんが、ちょっとやりすぎな印象はどうしてもぬぐえないでしょう。

ルールの範囲内とは言えども、タワーマンションを所有する意思はなく、はじめから相続直後に売却する意図が透けて見えます。

納める相続税の計算は相続財産である不動産の評価が基礎となりますので、現金を相続するよりも納税額が安くなることを利用した、まさにタワーマンション節税そのものです。

こういったケースでは、タワーマンションの購入が租税回避行為とみなされる可能性があります。

節税を目的としたタワーマンションの購入は悪いことではありません。ただし、上記のようにあからさまな節税行為は、相続税を払いたくないがためにタワーマンションをわざわざ購入したと思われてしまいます。

国税庁側からすれば、相続開始直前にタワーマンションを購入し相続開始後すぐに換金してしまえば、現金の相続と変わらないということなのでしょう。それでは納税における公平性に欠けるため、公平な納税を実現するための是正措置が必要だと考えるのも理解できます。

国税庁の指摘を受けてしまうと、節税をした意味がなくなってしまいますし、悪質だと判断されればペナルティが課されることも考えられます。

そうなってしまうと、せっかくの節税がかえってよけいなコストを生む結果になりかねませんので、タワーマンション節税を行う際には、計画的に慎重に行う必要があります。

それでは、上記の事例において租税回避行為としてみなされないためには、相続前後でどのくらいの期間、タワーマンションを所有していればよいのでしょうか。

しかし、この疑問に対する明確な答えはありません。法律に明文規定があるわけではないからです。「行き過ぎた節税行為かどうか」は、あくまでも国税局が判断することになります。

このあたりが、タワーマンション節税の難しいところでもあります。

もし、タワーマンション節税を行いたいと考えている場合には、専門家に相談することをおすすめします。

タワーマンション節税に限らず節税対策のすべてに言えることですが、しっかりとした計画を持って、準備を怠らないようにすることが肝心です。

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