「つなぎ融資」という言葉は聞いたことあるものの、具体的な内容までは知らないという人が多いようです。そこで今回は「つなぎ融資」について解説していきたいと思います。
「つなぎ融資」が関係してくるのは、以下のようなケースの方たちです。
- 新築の戸建て住宅を購入する人
- 住宅の買い替えを検討している人
もちろんどちらも住宅ローンを利用する人が対象です。新築戸建てにしても買い替えにしても現金一括払いので購入を検討してるのであれば、つなぎ融資は関係してきません。
そもそもつなぎ融資ってどんなもの?
具体的な解説に入る前に、そもそもつなぎ融資とはどういう制度なのか、簡単に説明します。
つなぎ融資とは、住宅ローン融資が実行されるまでの間、どうしてもまとまったお金が必要な際に、一時的にそれらの代金を融資してもらうことをいいます。例えば土地購入資金だったり、住宅メーカーに払う着工金などがその類に当ります。
基本的に住宅ローンというのは引渡し時に全額融資となりますので、その前に「土地代金の支払いが必要だから先にその分を融資してください」というのは出来ません。そのため土地代金などは一時的に別のローンで借入を行い、住宅ローンの融資が実行された時点で借りていた「つなぎ融資」を全額返済するという流れになります。
「つなぎ融資」という名の通り、一時的につなぎとして借りるローンのことですね。
新築の戸建て住宅を購入する人の場合
新築の戸建てと言っても、建売住宅もあれば注文住宅もあります。基本的につなぎ融資が必要になるのは注文住宅の方です。
建売住宅の場合、すでに建物が完成していることがほとんどなので、それらの建物を購入するときは住宅ローンが一括融資されます。しかし注文住宅の場合は空き地にいちから建物を建てていくことになります。この場合多くの住宅メーカーは着工金や中間金の支払いが建築請負契約の条件となっています。
先ほども説明しましたが、住宅ローンの融資時期というのは、建物が完成した後です。そうなると建築業者へ支払う着工金や中間金は自分たちで現金を用意しなければなりません。
着工金や中間金は業者によって違いますが、平均すると請け負い代金の2割~3割程度です。3000万円の建物であれば600万~900万円をそれぞれ着工金と中間金で支払うことになります。
この時、「完成して住宅ローンの融資が実行された時点で一括で支払ってくれれば良いですよ」、という住宅メーカーはほぼないと思ってください。地元の工務店に依頼しようが、全国的に有名な大手ハウスメーカーに依頼しようが、ほとんどが着工金や中間金での一時精算という制度を採用しています。
そうなると着工金や中間金を、住宅ローンとは別に用意しなければなりません。それが「つなぎ融資」と言われるものです。つまり注文住宅で家を建てる人のほとんどがつなぎ融資を利用していることになります。
住宅の買い替えを検討している人
戸建ての注文住宅とは別に、自宅の買い替えを検討している人もつなぎ融資が大きく関係してきます。つなぎ融資といえば、戸建ての注文住宅ばかりクローズアップされていますが、買い替え時にもつなぎ融資が必要になる場面があるのです。
自宅の買い替えを検討しているとき、一番悩むのが「売り先行」と「買い先行」のどちらが良いのだろう、ということだと思います。
- 売り先行とは…今の自宅を売却してから、新居を購入する方法
- 買い先行とは…先に新居を購入してから、今の自宅を売却する方法
さて売り先行と買い先行では、どちらのシーンでつなぎ融資が必要になるでしょうか?
答えは「買い先行」の場合です。
買い先行というのは、先に新居を購入することですから、当然新居の売主へ購入代金を支払わなければなりません。「自宅を売却する計画なので、それが売れてから払います」なんてことは通用しません。
ですので、今の自宅の売却予想額の7割~8割程度を先に借入れして、それを新居の購入資金として充当しておき、実際に自宅が売れた時点で全額返済するという方法を取ります。
ただ通常の住宅ローンとは違い、金利は比較的高めに設定されていますし、すべての金融機関で「買い替え時のつなぎ融資」に対応してくれる訳ではありません。
買い替えローンを扱ってる金融機関を自分で探すのもよいですが、仲介をお願いしている不動産業者が提携している金融機関などにお願いするのが一般的です。
しかし、提携している金融機関を利用する場合、多くが買取保証をつけることが条件になってるケースなので、よく確認しておくようにしましょう。
ここまでの説明で、「つなぎ融資」がどのようなケースで必要になるのか、大まかなことは理解して頂けたと思います。ですのでここからはつなぎ融資についてもっと具体的に掘り下げて行きたいと思います。
つなぎ融資が使える住宅ローンと使えない住宅ローンがある
土地購入資金や着工金などの支払いに、つなぎ融資が使われることは多いですが、実は住宅ローンの中にはつなぎ融資を扱って無い金融機関もあります。
もっとわかりやすく言えば、一般的な金融機関で、「土地代金や着工金が必要なのでつなぎ融資お願いします」と言った場合、以下のような答えが返ってくる可能性があります。
- A銀行「わかりました。では土地代金や着工金はつなぎ融資で対応しましょう」
- B銀行「それは出来ません。土地代金や着工金はご自身でご用意ください」
住宅ローンの審査に申込むとき、「つなぎ融資が必要ですか?」という項目は基本ありません。いざ自分がつなぎ融資を利用したいと思った時、申込んだ金融期間がB銀行のような対応だったらどうでしょう?考えただけでも恐ろしくなりますよね。
しかし実は、B銀行のような対応をする金融機関は珍しくありません。大手の中でもつなぎ融資を行っていない金融機関は意外と多いです。特に、ネット銀行については、多くがつなぎ融資には対応してないと思っていたほうがよいでしょう。
また、同じ金融機関内でも、住宅ローン商品によってはつなぎ融資に対応している、していないという違いがあるケースもあります。同じくフラット35という商品でも、つなぎ融資ができる金融機関もあれば、つなぎ融資には対応してないという金融機関もあります。
もし自分が借入する予定の金融機関が決まっているならば、事前に必ず確認しておきましょう。
つなぎ融資が使えない金融機関の場合、どうしたらのいいのか?
つなぎ融資は使えないけど、どうしても金利が低いネット銀行で住宅ローンを借りたい、という人もいると思います。そんなときはどうしたらいいのか説明します。
一般的な方法としては、地方銀行や信用金庫など、つなぎ融資に対応してくれる住宅ローン商品を見つけます。そしてその銀行で住宅ローンを借りる手続をとり、土地購入や着手金などを融資してもらいます。
その後、最終的に建物が完成した時点で本命の住宅ローン商品から融資を受け、一時的に利用していた地銀や信金の住宅ローンを全額返済する、というやり方をする人が多いようです。
もちろん住宅ローンを2回組むことになりますので、それだけ手間も掛かりますし、契約時の手数料など余分なお金も掛かります。それらの手間や契約時の手数料などまで含めて考えたうえで、どちらがお得なのかを精査しなければなりません。
つなぎ融資の金利は割高である
つなぎ融資のことを住宅ローンのサービスの一部だと思っている人が多いようですが、それは違います。
住宅ローンの中には、たしかに住宅ローンのサービスの一部として分割融資などに対応している商品もありますが、ほとんどの金融機関が住宅ローンとつなぎ融資は別のローンを使います。
例えば、住宅ローンの金利が1.0%だったとします。しかしつなぎ融資には多目的ローンなどを使用しますので、当然金利が高く設定されています。一般的には3.0%くらいで考えておくと良いでしょう。そうなるとつなぎ融資の金利だけでも相当な額になってしまいます。
例として、土地代金で1000万、着手金で700万、中間金で700万の合計2400万円をつなぎ融資で支払ったとします。そして半年後に住宅ローンでつなぎ融資部分を全額返済したとしても、6ヶ月分の金利は当然発生します。
土地代金と着手金が6ヶ月、中間金で3ヶ月の利息が発生すると考えた場合、利息分だけで約30万円、それに事務手数料や印紙代まで含めると約40万円ほどの金額になります。
つまりつなぎ融資を利用するために別のローンを利用すると、約40万円ほどの諸経費が必要になるということです。
つなぎ融資を利用する場合のスケジュール
ここではつなぎ融資を利用する場合のスケジュールについて説明していきます。
- 金融機関に住宅ローンの仮審査を依頼する(仮審査で承認を受ける)
- 土地を探す
- 土地が見つかったら金融機関で土地分のローンを組んで売買契約を締結する(※1)
- 住宅メーカーと建築請負契約を締結
- 住宅ローンとつなぎ融資の申込みをする
- 金融機関で審査が行われ承認がでる
- つなぎ融資を受け着工金を支払う
- 工事の着工開始
- つなぎ融資を受け中間金を支払う
- 工事完了!竣工検査や完成検査を受け登記を済ませる
- つなぎ融資で残金を支払う
- 住宅の引渡しを受ける
- 住宅ローン融資が実行されたら、つなぎ融資分を一括返済する
※1.土地分のローンは住宅ローンに組み込める場合もありますが、住宅ローンとは別にローンを組むこともあります。
以上がつなぎ融資の基本的な知識となります。
少し長くなってしまいましたが、これから新築の戸建てを購入する人や、家の買い替えを検討している人には大事な内容なので、ぜひ覚えておいて下さい。
つなぎ融資が使えないことがあとで判明すると面倒なことになりかねないので、事前に金融機関に確認することをおすすめします。