※この記事ではマンションを例に解説していますが、戸建ての場合でも同様です。
中古マンションの売却時、多くの人が頭を悩ませるのが「売却価格の設定」です。
間違った売値を付けてしまうと、数百万円単位で損をする可能性があり、さらに買い手が見つからない原因にもなります。
このページでは、中古マンションの売り出し価格の決め方と、売れない場合の値下げ時期について詳しく解説します。
これからマンションを売り出す人や、売却活動中だけどなかなか問い合わせが入らないという人は、ぜひ参考にして下さい。
- 【目次】売値の付け方と値下げ時期について
中古マンションの売り出し価格の決め方
中古マンションの売り出し価格を決める際、ほとんどの人は「業者の査定額」を基準にすると思いますが、これはあくまでも目安価格でしかありません。
もっと高く売れる可能性もあるし、逆にもっと安くしか売れない可能性もあります。
大事なのは、自分のマンションの売値を業者任せにせず、自身の希望もふまえてキチンと設定することです。
そこでおすすめなのが、売り出し価格を次の3つに分けて考えるという方法です。
- 「希望価格」=売れたら理想的という強気な希望価格
- 「相場価格」=この金額なら売れるだろうという市場価格
- 「最低価格」=これ以上は下げられないという限界価格
事前にこの3つを決めておくことで、中古マンションの売却がとてもスムーズになります。
まずは業者の査定相場を調べる
3つの価格の説明に入る前に、まだ業者の査定を取っていない人は、先に一括査定サイトを使って業者が出す相場価格を調べる必要があります。
業者の査定相場を基準として、先ほどの3つを考えていくので、まだの人は早めにやっておきましょう。
ここでのポイントは、できる限り正確な相場価格を知るために、最低でも3社から5社程度の業者を比較するということです。
面倒に思うかもしれませんが、一括査定サイトを使えばすぐ終わります。
各業者から届いた査定額の平均値を出して、それを業者が出す相場価格と考えましょう。
「希望価格」は強気に設定
最初に説明する「希望価格」というのは、「これくらいで売れたら嬉しいな」という、売主にとってのベストな売値のことです。
3つの価格の中で一番強気な価格となり、基本的には業者が出した相場価格よりも高値で設定します。
ただし、あまりに市場価格とかけ離れた金額にしてしまうと、「あの物件は高い」「あの売主は強欲だ」というイメージを持たれる可能性があるので、目安としては「相場価格の1割増しくらい」をイメージして設定するとよいでしょう。
例えば、業者の査定相場が3,300万円だったとして、住宅ローンの債務が3,580万円残っている場合なら、この住宅ローンを完済できるように3,700万円くらいで設定しておくといった感じです。
上記の設定だと、不動産業者に支払う仲介手数料やその他費用などを、すべて売却価格でまかなうことができます。
また、実際にマンションを売却する際には、必ずと言ってよいほど買主からの値下げ交渉がありますので、それを見越して少し高めに設定しておくという考え方もありです。
補足:問い合わせがなくても1ヶ月は様子見を
不動産業者が物件情報を公開し、それが中古マンション市場に浸透するまでには、約1ヶ月ほど時間がかかります。
そのため、もしなかなか内覧の問い合わせがなかったとしても、開始から1ヶ月間は販売価格を変更せず、様子を見て下さい。
希望価格が高すぎたかもしれないと考え、初期の段階で値下げをしてしまうと、「あの物件は人気がないのかな」「売り急いでいるのかも」と、買主に足下を見られてしまう可能性があります。
不安になる気持ちはわかりますが、値下げをするにしても戦略的にやるべきなので、この段階で焦って値下げするのはやめましょう。
「相場価格」を決めるコツ
相場価格というのは、「この金額であれば問題なく売れるだろう」という価格です。事前に一括査定で調べた相場価格と近い金額になります。
先ほどの「希望価格」は強気な設定でしたが、こちらの「相場価格」は妥当な金額ということになります。
一括査定以外にも、同じマンションで他に売り出されている部屋があれば、その価格を参考にするのも良いでしょう。
もし同じマンションで他に売り出し中の物件があるなら、その部屋を仲介している不動産業者に対して、売却の相談をしてみるのもおすすめです。
契約はせずとも、その部屋に対してどれくらい問い合わせや内覧が入っているのかを聞いてみて下さい。
1ヶ月で3件から5件の内覧が入っているのであれば、その売り出し価格で間違っていないと判断してOKです。
内覧数が月6件以上入っている場合は、もう少し高めの売却価格を設定してみるのも面白いです。
逆に内覧数が1、2件しかない場合は、もう少し値下げをする必要があるかもしれません。
このように、同じマンション内で別の部屋が売りに出ている場合は、それを参考にして売値を考えるのも良い手です。
「最低価格」の考え方
3つ目の「最低価格」というのは、もうこれ以上は売値を下げられないという限界価格のことです。
例えば、「これ以上価格を落としてしまうと住宅ローンの残債が払えない」というような、売主側にとってギリギリ限界の価格なので、どんなに悪くてもこの金額までで売却したいという値段に設定します。
相場価格と比較して、どの程度まで下げるかは状況次第ですが、一般的に考えて1割程度の値下げは考えておいた方がよいでしょう。
もしそれでも買い手がみつからなければ、仲介している不動産業者がダメな可能性があるので、契約を終了して別の不動産業者を探した方がよいでしょう。
※何も特別な事情はなく、相場より1割も安くしているのに売れない場合は、仲介している不動産業者に問題がある可能性が高いです。
売買が不得意な業者かもしれないので、こちらの「マンション売却のおすすめはどこ?」を参考に、業者を選び直しましょう。
値引き交渉を前提に設定すること
3つの価格について解説しましたが、それぞれの価格を決める際は「値引き交渉がある」ことを前提に決めて下さい。
不動産のように高額な物を買う場合は、ほぼ必ず値引き交渉が入るからです。
買い手から値引き交渉があった際、「1円たりとも値引きはできない!」という姿勢では、なかなか話がまとまりません。
ある程度の値引きには応じた方が売れやすいので、最初から値引き交渉前提で、少し高めの金額を設定しておくことが大切です。
補足:端数を落とすのがコツ
販売価格を決める時のコツですが、端数を少し落として「お得感」を演出しましょう。
具体的には、3,000万円で売ろうと思っている物件であれば、「2,980万円」というように、少しだけ値下げするということです。
このような値付けは、普段からスーパーなどで買い物をする主婦の方ならよくわかると思いますが、いざ自分が売り手側になってみると、「キリよく3,000万円で売ろう」と考えてしまうものです。
- 3,000万円 →2,980万円
- 2,500万円 →2,480万円
- 2,000万円 →1,980万円
このように端数を少し値下げするだけで、ぐっとお得感が出ますので、金額を決める際はあえてキリの良い数字は避けましょう。
売れない場合の値下げタイミング
続いてはマンションがなかなか売れない場合に、「値下げをするタイミング」について解説します。
売主としては値下げは避けたいものですが、いつまでも売れないままの状態ではマンションの価値が下がってしまいます。
かといって、なんとなくの感覚で適当に値下げをしてしまうと、本来売れるはずだった値段よりもかなり安くなってしまい、結果として数百万円の損になることもあります。
値下げをするにしても、キチンと時期を考えて戦略的に行う必要があります。
小刻みな値下げは逆効果になる
中古マンションの場合、値下げを考える時期の目安は、物件情報を公開してから2ヶ月~2ヶ月半くらいが良いでしょう。
2ヶ月経たないうちに値下げをするのは少し早すぎますし、かといって3ヶ月経過すると不動産業者との仲介契約が更新されてしまうので、その手前くらいで検討するのがベストだからです。
今回解説した3つの価格設定を活用すると、最初の希望価格から2回の値下げ余地があります。
1回目の値下げに関しては、物件公開後2ヶ月~2ヶ月半を目安に行うのが良いと書きましたが、逆に言うとどんなに遅くとも3ヶ月経つ前に1回は値下げをしましょう。
それでも売れず、2回目の値下げを考えるなら、1回目の値下げから3ヶ月後を目安とします。
- 1回目 …2ヶ月~2ヶ月半
- 2回目 …5ヶ月~5ヶ月半
値下げを検討するのと同時に、不動産業者を変更するかどうかも考えますが、もし業者を変更するなら、一旦値下げはやめて様子を見るという判断もありです。
業者が変わることで、今まで反応が悪かった物件でも、急に内覧の問い合わせが来るようになった…というケースはよくあります。
「値下げ」と「業者変更」は、マンションが売れない場合の切り札とも言える手段なので、どちらか一方を行ったら、もう一方は少し様子を見るという考え方がおすすめです。
小刻みな値下げは逆効果になる
値下げ幅に関しては、基本的に最初に決めた3つの価格をもとに考えますが、中には少しでも高い金額で売れるように、小刻みに値下げをする人もいると思います。
しかし、これは逆効果になりかねないので注意が必要です。
- 3,500万円 →3,400万円 →3,280万円
- 3,500万円 →3,280万円
この2つのパターンであれば、絶対に後者の方を推奨します。
細かい値下げを何回もくり返してしまうと、買い手側に不信感を与えてしまいますし、「もう少し待てばまた値下げするかも」と思われてしまう原因になります。
先週3,500万円で売られていたマンションが、今週見たら3,400万円になっていて、さらに翌週見たら3,280万円まで値下げされていた…。
このようなケースでは、何か問題がある物件(いわく付きの物件)と思われてしまう可能性もあるので、注意が必要です。
不動産業者に問題がないかも要チェック
以上がマンションを売り出す際の価格設定と、値下げするタイミングについて覚えておきたいポイントです。
売り出し価格を大きく間違ってしまうと、いくら良い物件で売れ残る可能性が高くなります。そして一度売れ残った物件は、買主側もチェックしているので、自然と敬遠されるようになってしまいます。
売り出し価格は、高すぎても低すぎてもダメなので、このページの前半で解説した通り、しっかりと業者の査定相場などを調べてから決めるようにしましょう。
また、もう一つ気をつけなければいけないのが、仲介契約をしている不動産業者の動きです。
いくら適切な売値をつけたとしても、業者の広告活動がしっかりされていなければ、買主まで情報が届きません。
それでは値下げしても意味がないので、
- 広告宣伝活動をしっかり行っているか
- 十分な数の不動産サイトに掲載されているか
- 販売活動レポートはしっかり提出しているか
- 今後の販売戦略を考えてくれているか
最低限この4つについては必ず確認しておきましょう。
1つでも満足できない項目があれば、不動産業者の変更も視野に入れて、今後の販売戦略を見直しましょう。
そもそもの話ですが、仕事がデキる業者であれば、マンションの売値に関しても適切なアドバイスをくれるはずです。
もし今契約している業者が、明確な理由も説明せずに、とにかく「もっと値下げしましょう!」とだけ言ってくるような業者なら、今すぐ契約を終了して、別の業者を探すことをおすすめします。
このような業者に捕まって損をしないためにも、大切なマンションの売値に関しては、売主自身がしっかりと考えて決めることが大事です。