マンションを少しでも高く売却するためには、資産としての価値が高くなるタイミングをしっかりと見定めることが重要です。
マンションの資産価値はさまざまな要因によって上下しますので、資産価値に影響する要因をあぶりだし、ある程度の将来予測を立てておくことが求められます。
今回取り上げる「2020年問題」は、マンションの市場価値に関する注目すべき話題です。今後のマンション売却を検討するうえで重要な指標となり得ますので、本コラムを通じてどのような問題なのかをぜひ理解してください。
特に築古のマンションは今後売却が難しくなってくると思うので、マンション買取業者への売却を含めて、なるべく早めにどう扱うかを決めておく必要があります。
マンションの2020年問題とは?
東京オリンピックが開催される2020年を契機として、マンション価格が一気に下落するだろうとまことしやかに囁かれています。
今現在、東京を中心とする都市部では、オリンピック開催に向けたインフラ整備が着々と進んでいます。
地下鉄の延伸計画や圏央道(首都圏中央連絡自動車道)の開通などに加えて、ビルや高層マンションの建設計画も相次いでおり、不動産業界はにわかに活況をていし、都心部は今よりも便利で利用しやすい街になることが期待されています。
インフラの充実でより暮らしやすくなることによって、周辺地域の不動産需要が増えていきます。そうなれば、必然的にマンションを含む不動産価格は上昇していきますよね。
実際のところ、都心部のマンション価格はどんどんと上がっています。
現在の都市計画は、東京オリンピックに向けた準備の側面が強く、現在見られるマンション価格の上昇は、オリンピック開催に伴う経済効果を期待してのものだと言えます。
したがって、マンション価格はオリンピックが開催される2020年まで上昇し続けるだろうと考えられています。
しかし逆を言えば、オリンピックが終わることによって、不動産価格が上昇するひとつの理由がなくなってしまうことになります。
このように考えると、上がり続けたマンション価格の上昇が2020年を境に止まるだけではなく、マンション価格が下落を始めるだろうとの予測がたちます。
これが、マンションの2020年問題の概略です。もう少し詳しく見ていくことにしましょう。
外国人投資家の「爆買い」による価格上昇
現在、マンション価格は上昇の一途をたどっています。不動産経済研究所のデータによれば、マンション価格は2009年のリーマンショック以降から上昇傾向にあります。
2015年1月~11月の東京都区部のマンション平均価格はなんと、6,750万円にも上ります。
先ほど、オリンピック開催に伴うインフラ整備をマンション価格上昇の理由としてあげましたが、他にも理由があります。
それは、外国人によるマンションの「爆買い」です。
「爆買い」とは、主に中国の富裕層が大量に、かつ高額の買い物を日本ですることです。2015年の流行語大賞に「爆買い」が選ばれたほど、その勢いのすさまじさは大きなインパクトを持っています。
中には、晴海のタワーマンションの縦一列をすべて購入したいという強者まで現れているようです。
みずほグループの不動産専門シンクタンクである都市未来総合研究所の調べによると、2014年は外国企業による日本の不動産取得額が1兆円近くにも及びました。これは、前年の2013年と比べると、およそ3倍もの額です。
このことは、海外マネーが日本の不動産に向かっていることを意味しています。つまり、外国人投資家たちは、「日本の不動産を購入すれば儲かる」と判断しているのです。
その背景には、円安傾向にある為替動向のため、日本の不動産が割安に感じられていることがあります。
そしてやはり、オリンピック開催に伴う経済波及効果への期待が大きいことも無視できません。
オリンピック後にマンション価格は暴落する?
しかし、マンション価格の上昇は、未来永劫続くわけではありません。
不動産需要の要因がオリンピック開催にあるのだとすれば、オリンピックが終わると共に需要は低下し、マンション価格も下落すると考えるのは当然のことです。
外国人たちは日本のマンションを投資用物件として購入するわけですから、賃貸などで稼ぐだけ稼ぎ、価格が下落基調に入るまえに売りぬこうとするはずです。
売却をせずに資産として保有するケースが多いとしても、新規購入件数は減っていくでしょう。
そうなれば、不動産を購入する海外マネーは減り、「爆買い」が後押しをしていたマンション価格は下落していきます。
少子高齢化もマンション価格の下落要因になる
マンション価格が2020年を境に下落する根拠はオリンピックの終了だけではなく、深刻度を増すばかりの「少子高齢化」も要因として考えられています。
医学の発展などで人の寿命は伸びている一方で、子供が増えていない状況のため、日本の人口は、2008年以降どんどん減り続けています。
政府としても重要課題として少子高齢化問題に取り組んではいますが、なかなか成果が見いだせていないのが現状です。
2010年には1億2800万人ほどあった人口は、2050年には9700万人程度にまで落ち込むと予想されています。
人口が減れば、当然のことながら、住宅需要は落ち込みます。ところが、2020年のオリンピックまでにも人口は減少していくにも関わらず、都市開発やインフラ向上などを受け、不動産価格は上昇しています。
裏を返せば、人口が減り住宅需要は減るけれども、インフラ整備などによる価格高騰の期待感から海外投資家がマンションを買い求め、価格が徐々に上がっていくという構図があるわけです。
この状況はまさに、「バブル」だと言えます。今後のさらなる価格上昇への期待が需要を支えているのであって、実体としての需要と供給が合っていないからです。
2020年のオリンピック後にこのバブルがはじけるだろうというのが、2020年問題の本質です。
「爆買い」が価格を上げ、「爆買い」が価格を下げる?
さきほどあげた外国人投資家の「爆買い」は、マンション価格を上げる要因になるとともに、一方では価格下落にもつながりかねないという二面性を持っています。
外国人には日本人と同じように物件を管理するという意識が乏しく、マンション管理組合に対して、定められた管理費や修繕積立金を支払わないケースが多発しています。
また、マンションを購入した外国人が民泊ビジネス展開し、禁止されている又貸し行為を公然と行うといった問題も報告されています。中には、行政から何度も指導を受けたにも関わらず、それに従わなかったために逮捕された外国人も存在します。
民泊マッチングサービスの代表例である「Airbnb」については、以前に掲載した「Airbnbで事件やトラブル続出!?予想されるリスクについて」の記事にまとめてあります。
オーナーが日本人であれば、注意を促すことで問題の改善がみられる可能性が高いのですが、外国人がオーナーとなる場合には、標準的な日本人とは異なる価値観や文化を持っているため、問題認識の度合いが全く異なります。
さらに、言語の問題もあります。そもそも日本語が話せずにコミュニケーションを取ることが難しい場合もあるでしょう。そうなるともはや、話し合いそのものが困難です。
また、滞納している管理費を督促したものの、借主名義が海外のペーパーカンパニーのために回収ができなかったという話さえもあります。
そのような状況では、他の住民に対して迷惑がかかってしまうばかりか、区分所有者で構成される管理組合の運営がままなりません。
外国人オーナーが多数を占めるとトラブルが起きやすくなると共に、問題解決がスムーズにはいかないことがあることから、マンションの買い手が付きにくくなってしまいます。
その結果として、マンションの資産価値は下落していくという悪循環に陥る可能性があります。
「爆買い」によって外国人オーナーが増えたことで、マンション管理組合が機能不全に陥り、その結果として資産価値が下がるという、なんとも皮肉な結果になりかねないのです。
もちろん、すべての外国人オーナーがトラブルを起こしやすいわけではありません。今回はあくまでも、一般論としてご紹介しています。
2020年問題を踏まえた売却計画
これまで見てきたように、2020年まではマンション価格が上昇し、それ以降は下落していくことが予想されています。
マンション売却計画を練るうえで、2020年は見逃せないターニングポイントになることは間違いなさそうです。
この2020年問題を踏まえると、売却を優先的に検討すべきなのは築古マンションでしょう。
築年数が経過したマンションはただでさえ、新築物件よりも大きな割合で資産価値が下がり続けます。そこに2020年問題の要素が加われば、暴落と言えるほどの大幅な価格下落もあり得ます。
したがって、築古マンションを将来的に売却したいと考えているのであれば、できるだけ早い段階で売却を検討しておいた方が賢明かもしれません。
需要がなくなってしまったマンションはなかなか売ることができず、最悪のケースでは、管理費だけがかさむ負の遺産になってしまうこともあるので、業者買取を含めて、早めにどうするか決める必要があります。
売れないマンションを確実に売却する方法については、別ページで解説しているのでぜひ参考にしてみてください。