2016年4月からスタートした電力の自由化ですが、約1年が経過した現在の状況はどうなっているのでしょうか。
国の発表によると、電力会社を変更した世帯数は全国で188万世帯にのぼります。全体でいうと3%程度の数字です。この数値は少し前のものなので、現在はもう少し増えているかもしれませんが、それでも予想よりは少ないのではないでしょうか?
認知度は高いが、実際に電力会社を変更した人は少数
188万世帯といえば、三重県や福島県の人口と同等です。そう聞くと、それなりに多いという印象に変わるかもしれませんが、日本全国の世帯数は約5,400万世帯なので、割合でいえばまだまだ少ない状況です。
100世帯のうち電力会社を変更したのは3世帯未満ということになるので、あれだけ話題になっていたからには、もっと普及すると思っていた人が多いのではないでしょうか。
これは電力の自由化が開始されたことを知らない人が多数いたということではありません。ある調査データによると、電力自由化を知っていると回答した人は、全体の90%を超えています。つまりほとんどの人は、電力の自由化がスタートしたことは知っていたのですが、実際には電力会社を変更しなかったのです。
電力管内別に詳しく見てみると、以下のようになっています。
変更率 | |
---|---|
東京電力 | 4.70% |
関西電力 | 3.80% |
北海道電力 | 3.40% |
東北電力 | 1.00% |
中部電力 | 1.90% |
北陸電力 | 0.50% |
中国電力 | 0.20% |
四国電力 | 0.60% |
九州電力 | 1.60% |
こうしてみると、大都市圏での変更は少しずつ進んでいるようにもみえますが、地方圏での変更は、ほとんど行われていないことがわかります。あれほど街頭で大々的に勧誘キャンペーンを展開していたことを考えると、やはり想像以上に少ないという印象を持ちます。
新規参入してきた企業数は、全国で350社ほどあると言われていますが、この顧客層を350社で奪い合いをして成り立つのでしょうか。
近い将来、新規参入してきた企業の合併や統合、さらには提携などが増えていく可能性が高いです。
もちろん合併や統合をしても、消費者に負担が来ることは考えづらいです。しかし、いつも使っている銀行が他の銀行と合併したり統合するは、少し不安を感じたり、通帳やカードの交換など手間もかかります。きっとそれに近いことは起こるでしょう。
なぜ新電力への変更が進まないのか?
「電力の自由化は認知しているが、自分の家は変更していない」というケースがほとんどではありますが、ではいったいなぜ新電力への変更は進まないのでしょうか?
やはり理由は大きく3つだと思います。
- メリットがはっきりと見えてこない
- 手続が面倒
- 将来的には検討するが、今は静観している
実際に電力会社の変更を検討した人も、いまだに変更には至っていないのが現状です。
理由は、やはり現段階で大きなメリットを感じないことではないでしょうか。「年間で5,000円電気料金が安くなる」など、企業側も明確な数字を出してアピールをしていますが、年間5,000円ということは、1ヶ月換算すると400円程度しか安くなりません。
それなのに、電力会社を比較検討する時間や手続の手間、新しいシステムを理解する時間など考慮した場合、それがメリットとは感じません。
ここ最近ネットでも、NHKが受信料の値下げを検討するという発表がありましたが、それも50円というビックリするような額です。「たった50円値下げされても・・・」というのが多くの方の本音ではないでしょうか。どうも行政や大手企業と、国民の考えに開きがあるようです。
電気料金だと、月々2割これまでよりも安くなるという好条件であれば、間違いなく変更する人も増えるに違いありません。
電力自由化がもっと世の中に浸透するには時間がかかりそうです。もしも電力会社の乗り換えを考えている場合は、どの程度節約できるか会社ごとにシミュレーションなどができるので、実際計算してみることもおすすめします。