2027年度の開業を目指すリニア中央新幹線により駅の建設が予定されている地域の地価がどのような状況になっているのか解説します。
現時点で地価が上昇しているのは東京(品川駅)、愛知(名古屋駅)、神奈川(橋本駅)で、今後期待されているのが中間駅の設置が予定されている長野県の飯田市です。
最新データをもとに地域ごとの地価がどうなっているのか解説していくので、ぜひ参考にしてもらえばと思います。
リニア新幹線の計画ルート
まず最初にリニア新幹線の概要を簡単にまとめておきます。リニア新幹線は東京~大阪を最短67分で繋ぐことが予定されています。
しかし大阪までの全線開通は早くても2037年とされており、まだ20年ほど先の話しになってしまいます。
その先がけとして2027年の開通を目指しているのが東京~名古屋でわずか40分で結ぶ予定です。現在の新幹線が約1時間40分かかるので、約60分短縮することができることになります。
この時間短縮によりさらにビジネスエリアが広がり、経済が活性化されることが予想できます。
リニア新幹線の停車駅
現時点で東京~名古屋間では、以下の6都市に停車することが決まっています。
- 東京都港区品川(品川駅)
- 神奈川県相模原市緑区(JR橋本駅併設予定)
- 山梨県甲府市大津町付近
- 長野県飯田市上郷飯沼付近
- 岐阜県中津川市千旦林付近
- 愛知県名古屋市(名古屋駅併設予定)
このように6駅に停車予定となっているのですが、ターミナルとなるのは東京(品川駅)、神奈川(橋本駅)、愛知(名古屋駅)の3都市で、山梨、長野、岐阜の3地域は中間駅となることが計画発表されています。
出典:http://www.linear-chuo-shinkansen-cpf.gr.jp/
各地域の地価変動について
それでは先ほどの6地域の地価がどうなっているのか、それぞれ個別に紹介していきたいと思います。その前にリニア新幹線の予定ルートが発表された2013年9月と工事着工が開始された2014年7月の地価変動を見てみましょう。
2013年 | 2014年 | 変動 | 変動率 | |
---|---|---|---|---|
東京都港区 | 861.2 | 903.6 | 42.4 | 4.92% |
神奈川県相模原市 | 39.8 | 40.3 | 0.5 | 1.32% |
山梨県甲府市 | 20.6 | 20.1 | ▲0.5 | ▲2.31% |
長野県飯田市 | 13.5 | 13.2 | ▲0.3 | ▲2.77% |
岐阜県中津川市 | 14.2 | 14 | ▲0.2 | ▲1.39% |
愛知県名古屋市 | 297 | 326 | 29 | 9.75% |
※変動率以外の単位は万円です。
この時はターミナルとなる3都市だけが上昇しており、中間駅となる3都市はリニア新幹線の影響がでているようには感じませんでした。
これを踏まえて2019年現在の各地域の地価変動を見ていきましょう。各地域の地図は駅周辺の地価の変動率を矢印の色で表しています。
※参考URL:https://tochi-value.com/
東京都港区(品川駅)
東京では品川駅がリニアのターミナル駅となることが決定したこともあり、2013年以降もずっと上昇傾向にあります。
ただしこれらの地価上昇は決してリニアだけが影響している訳でなく、2020年の東京オリンピックの影響もかなり大きいと推測できます。
都内全体に地価が上昇していることを考えれば、そこまでリニア新幹線が地価上昇に強く影響しているとは考えづらいものがありますし、すでにリニア新幹線における影響は市場に反映されたと想定するのが現実的だと思います。
2018年の品川駅周辺の地価上昇率は7.2~7.7%で、2019年は9%となっています。
神奈川県相模原市(橋本駅周辺)
神奈川県では新駅が予定されている相模原緑地域で高い上昇率を見せています。
これまで相模原から都心部まで電車で1時間以上かかっていたのですが、リニアを利用するとわずか数分(予定では5分程度)で到着できるようになります。
今後を見据え都内からの移住する人も増えてくることでしょう。
新駅が予定されている橋本駅周辺ではすでに再開発が進んでおり、今後ますます地価の上昇が予想されています。
多くの不動産情報サイトや雑誌などでもリニア開通による市場への影響を特集していますが、揃って注目度NO1とされているのが、橋本駅周辺でもあり人気の高さを伺い知ることができます。
出典:https://diamond-fudosan.jp/articles/-/191505
2018年の橋本駅周辺の地価上昇率は7.1~10.9%で、2019年は6.9~13.3%となっています。
山梨県甲府市
山梨県の新駅予定地は、甲府市大津町付近とされています。大津町は市街地からかなり離れた場所にあり、周辺は農地や工業団地が多くあります。
今後リニア駅ができることで、品川や名古屋のように大きな再開発が計画される可能性はありますが、現時点ではそのような構想は予定してないようです。
ただ土地は十分にあり新駅の近くに新たな競技場を建設する計画があるらしいのですが、地価に大きく反映するほどの影響は今のところ出ていません。
そのため地価の変動もほとんど起こっておらず、あまりリニア新幹線の影響は感じられないというのが現状です。
甲府市全体でみると地価の下落は年々大きくなっており、リニア新駅が大津市近郊にできることでさらに人口が分散されることになりそうです。
結果的に市街地の土地需要は減少することが予測でき、そうなると一段と甲府市全体の不動産価値が下落する恐れが高くなります。
2018年の甲府市大津町周辺の地価上昇率は▲0.6~0.0%で、2019年は▲0.7~0.0%となっています。
長野県飯田市
長野県の新駅予定地は、飯田市上郷飯沼付近とされています。
品川駅からの距離は約180kmなので所要時間は15~20分程度の予定ですが、こちらも山梨県と同じように市街地からはずいぶんと離れた場所が新駅の予定地となっています。
そのため地価の上昇もほとんど期待できず、どちらかというと下落傾向にあるようです。周辺の地域よりも下落率は低いものの、今後も大幅な地価上昇は期待薄というところでしょうか。
しかし、まだ構想段階ですが飯田市がJR東海に対して特急列車の乗り入れを求めているそうです。
もし実現すれば中心地へのアクセスも向上するので、これまで想定されてた以上にリニア駅としての影響が期待できるのではないかと思います。
2018年の飯田市上郷飯沼周辺の地価上昇率は▲1.2~0.7%で、2019年は▲0.9〜0.0%となっています。
岐阜県中津川市
岐阜県の新駅予定地は中津川市千旦林付近とされています。山梨や長野と比べると比較的市街地寄りに新駅の候補地があります。
リニアの新駅候補となったことで、すぐ近くに地価変動の調査ポイントが新設されています。
ここ数年は前年比プラスマイナス0の年もありましたが、市街地までのアクセスが良いこともありリニア駅の発表後、上昇傾向にあります。
これは中津川市がリニア駅開業に向け、市をあげての再開発事業に取り組むことを宣言しているのも関係しているのではないかと思います。
2018年の中津川市千旦林周辺の地価上昇率は0.0%で、2019年は2.8%となっています。
愛知県名古屋市(名古屋駅)
名古屋駅にリニアの新駅も併設されることが決定しています。とくにリニアの新駅ができる西口の地価上昇率が目立つのですが、東口でもかなり高い上昇率となっています。
これまで新幹線で2時間近くかかっていたのが、リニアが開通することでわずか40分へと短縮できるのですから、たしかに大きな経済効果が期待できます。
そのため不動産投資も活発になっており、ここ数年名古屋駅周辺の地価は上昇を続けています。
移動時間が大幅に短縮することで、今後は名古屋が第二の経済都市になると予想する専門家も少なくありません。
地価の上昇率をみてもわかる通り、品川~名古屋間のリニア開通で一番恩恵を受けているのは、名古屋市だと言って間違いないでしょう。
2018年の名古屋駅周辺の地価上昇率は12.3~25.1%で、2019年は7.9〜26.5%となっています。
不動産投資を考える上での注意点
地価上昇率だけを見ると、東京品川駅や愛知県名古屋駅周辺の地価が大きく上昇しているように見えますが、これはリニア新幹線だけの影響ではなく、東京オリンピックや再開発プロジェクトが大きく影響していると考えられます。
そのため東京オリンピックが終了してしまうと地価が下落するかもしれないリスクを考慮しておく必要があります。
現在リニアの影響を受けている地域は神奈川の橋本駅周辺ですが、予定ルートが発表されたタイミングではそこまで高い地価の上昇が見られませんでした。
まだ影響が受けていない地域も、今後地価が上昇していくかも知れません。また2037年には大阪まで延伸予定なので、まだまだ不動産投資のチャンスはあります。
不動産投資を検討している人は「アパート経営の利回りと収益性」で成功するためのポイントを解説しています。
初心者でも分かりやすい内容となっているので、ぜひ参考にしてもらえばと思います。