この20年の間に、日本は未曾有の大震災に2度も襲われました。その被害の大きさは、人々の人生に対する考え方や価値観を大きく変えるのに十分なものでした。
では、2度の大震災によって、人々の住宅に関する価値観はどのように変化したのでしょうか?
阪神大震災の被害
まず、阪神大震災による住宅被害を見てみましょう。
住宅被害の全体
阪神大震災では、10万戸以上の住宅が全壊し、半壊や一部破損を入れると約64万戸の住宅が被害に遭いました。また、マンションでは、大規模被災マンションは172棟、被災マンションの合計は2532棟に上りました。
地震保険・国の補償
関東や東海地方ではなく、関西で大規模な地震被害を想定していた人は、当時ほとんどおらず、地震に備えて保険に入るという考えは浸透していませんでした。そのため、阪神大震災が発生した時点で地震保険に加入していた人は、兵庫県でわずか4.8%という低い割合でした。
住宅を失った人々は国からの援助を期待しましたが、「個人資産への公的資金の投入」は憲法違反になるとして聞き入れられませんでした。結果として、国からの補償としては全壊の場合は最高で100万円、半壊の場合は60万円が支給されただけでした。
東日本大震災の被害
では、東日本大震災による住宅被害は、どのようなものだったのでしょうか。
住宅被害の全体
東日本大震災による全壊住宅は、約12万戸。半壊や一部破損の住宅を入れると、約120万戸の住宅が被害に遭いました。また、震災後すぐの報告では、立て直しが必要となる大規模被災マンションはなく、被災したマンションは全体で約1200棟とされていました(その後の報道では、全壊扱いのマンションもあったようです)。
地震保険・国の補償
東日本大震災で大規模な被害を受けた地域の地震保険加入率は、12~33%。阪神大震災よりも加入率が高かったため、保険金を受け取ることができた人も多かったようです。しかし、国からの補償はやはり住宅被害すべてを補えるものではありませんでした。一例をあげると、建て替えや新規購入に対しての補償金額は200万円です。
大震災による人々の意識の変化
2つの大きな震災を経て、人々の「住宅=資産」という考えが大きく変化しました。特にローンで住宅を購入することへの不安感が増しました。
震災による二重ローン
ローンで購入した住宅が全壊しても、ローン自体が消えるわけではありません。また、家自体がなくなっているので、それを売ってローンを完済することもできないため、これまでのローンと新しく建てた家のローンを支払うという「二重ローン」を負うことになる人が出てきました。
このような現実を目の当たりにしたことによって、毎月払う金額が同じならば、賃貸よりローンを組んで住宅を購入しよう、と考えていた人々の意識が変わったといえるでしょう。
戸建よりもマンション?
また、震災後の住宅購入の傾向として、戸建住宅よりもマンション(特に耐震構造がしっかりしている建物)の購入希望が増えているようです。しかし、海沿いや埋め立て地に建てられているマンションの購入希望者は減少傾向にあるようです。これらは、東日本大震災による津波の被害が大きかったためだと考えられます。
震災後、住宅に対する人々の価値観が変わりましたが、反面、価値観が多様化したとも言えます。特にマンションに対しては、需要が高まった一面もありますので、売りたい人にとってはチャンスが増えました。
もし所有しているマンションがなかなか売れなかったとしても、「売りにくい条件のマンション」だと決めつけずに、インターネットなどを上手に利用して、様々な価値観の購入希望者を探してみましょう。
ちなみに、売れにくいマンションの特徴は、リンク先のページで解説していますので、気になる人は一度確認してみて下さい。