注文住宅は自由設計が特徴の1つですが、階段をどこに配置するかで間取りや生活動線が大きく変化します。
階段にはさまざまなタイプがあり、選ぶ種類によって家の雰囲気もガラリと変わってしまうことがあります。
生活しやすい間取りづくりのためにも、階段についての知識を知っておくようにしましょう。
間取りを考える際のポイント
良くありがちなのが、広々としたLDKを最優先にし、そのあと玄関やお風呂、トイレなどの配置を決定していくパターンです。
しかし、住みやすく理想的な間取りの家にするためには、配置を決めていく順番にポイントがあります。
設計士によって多少の違いはありますが、まずは玄関の位置と階段の位置を最初に決めていくケースが多いです。
また、なるべく廊下などの無駄な共用スペースを減らしてコンパクトな家を希望するのであれば、2階の間取りから決めていくパターンも珍しくありません。
2階の間取りを先に決めるということは、必然的に階段の位置もおおかた決まっているのと同じです。
玄関と階段の位置さえ決まってしまえば、もう間取りづくりは7割から8割完成したのも同然なのです。
それほど玄関と階段が間取りにおよぼす影響は大きいということを覚えておきましょう。
ただし階段の位置を決めるといっても、難しく考える必要はありません。
「リビング階段が良い」「玄関ホールに階段をつくって吹き抜けにしたい」など、施主として希望を営業担当や設計担当に伝えるだけでOKです。
ベストな階段の位置はどこ?
間取りの中でどこに階段を配置するのが一番理想的なのでしょうか?
実際、このような質問が多いのですが、コンパクトで効率の良い家を希望するのであれば、階段の位置はなるべく間取りの中心付近に配置するのが理想的です。
理由は、階段の位置が極端に家の端っこにあると、2階の廊下部分が多くなる傾向にあり、それだけ無駄なスペースが出来てしまうからです。
その点、階段が家の中心付近にあれば、2階の廊下スペースを最小限に抑えることができるので、建物の坪数を抑えることができ、生活動線の良い間取りにすることができます。
家の中央付近に階段がある間取り
家の端に階段がある間取り
上の2枚の画像では、中央付近に階段がある家の大きさは28.06坪、家の端に階段がある家の大きさは31.83坪なので、約4坪近く違うことがわかります。
あくまでも目視での計算ですが、端に階段がある方の家は、2階の廊下部分だけで2.5坪~3.0坪ほどあるのに対し、もう1枚は2階廊下の面積は0.7坪程度だと思われます。
幅や長さはどれくらい必要なのか?
階段の幅や高さなどについては建築基準法で最低限のサイズが決められています。
- 階段幅:75㎝以上
- 踏面(ふみづら):15㎝以上
- 蹴上(けあげ):23㎝以下
階段を緩やかにしたい場合
階段を緩やかにしたい場合は、階段の段数を増やすのが有効です。
一般的な階段の段数は13段から14段なのですが、最近の戸建て住宅は天井が高いタイプが人気なので、階段の段数も14段から15段取ることも珍しくありません。
同じ設置面積で段数を増やすと、当然それだけ急な階段になってしまいますので、段差を増やすのであれば、なるべく階段全体の面積を増やして段差を緩やかにすることが大切です。
一般的に14段の階段サイズが1.8m(幅)✕1.8m(奥行)の1坪タイプなのに対し、奥行きを少し広くした1.8m(幅)✕1.25m(奥行)にすることで、かなりゆったりした段差にすることができるようになります。
建物全体の坪数に換算すると、わずか0.25坪程度の違いでしかりません。
踊り場、手すりの必要性は?
安全性の問題もあり2000年6月の法改正で、手すりの設置が義務づけられています。
デザイン的にどうしても手すりを設置することが嫌であれば、下の画像のように透明な壁を設置するという方法もあります。
安全性といえば踊り場も同じです。
1階から2階へとストレートに続く階段は、設置面積を最小限にすることができ、予算を抑えるうえでも有効な手段なのですが、万が一足を踏み外した場合、そのまま1階まで転げ落ちてしまう危険性があります。
その点、途中に踊り場あるタイプの階段であれば、もし足を踏み外しても踊り場までの落下で済みます。安全性という面でも踊り場を設けることは、とても大事です。
階段下の有効活用法
近年、マイホームの建物面積は少しずつ小さくなっており、今では30坪前後の家を建てる人が増えています。
このようにマイホームをコンパクトにすることで、1番頭を悩ませるのが収納スペースの問題です。
なるべく家はコンパクトにしたいが、十分な収納スペースは確保したいというのが本音だと思います。そんなときに有効活用してほしいのが、階段下のスペースです。
1階と2階をつなぐ階段の下には、必然的にデッドスペースができてしまうので、その部分をトイレや収納にすることで無駄なスペースを有効活用することができます。
ストレート階段でも、階段下をトイレにすることはできますし、本棚などの収納スペースにするなど、いろんな活用法があります。
3階建て住宅での階段設置
都心部などでは土地が高く面積的な問題もあり、3階建て住宅の需要が増えています。ここでは3階建て住宅を建てる場合の階段設置について触れておきたいと思います。
3階建て住宅を建てるとき、守らなければならないのが直通階段の設置義務です。
直通階段というのは、1階から3階まで連続的につながる階段のことです。
つまり1階から2階へ続く階段は建物の北側、2階から3階へ続く階段は建物の南側というように、各階ごとに階段を分けて設置することは認められていません。
これは火災や地震などの災害時の避難通路を確保するため、法律で決められているからです。
ただし、公共の施設ほど厳しくはなく、戸建て住宅の場合は2階リビングなども増えてきたことで、ある程度は配慮してくれる自治体も増えているようです。
よほど複雑な間取りでなければ多少階段の位置がズレていても確認申請をパスできるケースもあるようなので、住宅会社の営業さんや設計士さんに相談してみましょう。
階段の位置
ちょっと昔まで、階段といえば玄関を入ったすぐの場所に設置してあることが多かったのですが、最近はリビング階段を希望する人が増えています。
ここ数年で建物の断熱性能が大幅に向上したことで、リビングに階段を設置しても、建物全体の断熱性がしっかり確保できるようになったのが、増加している理由の1つです。
リビング階段
少し前まではリビングに階段を設置すると、冷気や暖気が2階へと逃げることで、冷暖房の面で問題があると指摘されてきました。
しかし、先ほど説明したように家の断熱性が向上したことで、冷暖房の心配をする必要がなくなったことでリビング階段のニーズが増加しています。
リビング階段のメリットは、家族のコミュニケーション機会が増えることです。
子供は思春期になると帰宅しても自分の部屋にこもってしまい、家族同士が顔を合わせる機会も減ってしまいがちです。
しかし、リビング階段にしておくことで、2階の自分の部屋にいくためには必ずリビングを経由しなければならず、自然と家族が顔を合わせるような導線の間取りにすることができます。
玄関ホール階段
玄関を入ってすぐのホール部分に階段を設置するタイプです。
リビング階段のように、各部屋に直結しているわけではないので空調や防音を気にする必要が少ない点がメリットにあげられます。
ただし、階段の位置を配慮しておかなければ、来客を玄関先で対応している場合、2階へあがるときに女の子であればスカートだと注意が必要です。
また玄関近くに設置することが多いため、階段下にトイレを設置してしまうと来客時にトイレに行くことができないというケースもあります。
階段の種類と値段
階段の種類は大きく3つに分類できます。
- 箱型階段
- オープン階段
- フローティング階段
それぞれの特徴について、簡単に解説していきます。
箱型階段
多くの住宅会社で標準仕様となっているのが、こちらの箱型タイプの階段です。
特徴としては、段板と段板の間の蹴込(けこみ)があるので、階段下を収納やトイレなどのスペースとして活用することが容易です。
おしゃれさには欠ける部分がありますが、リーズナブルな価格と実用性の高さから多くの住宅会社が今でも標準仕様としています。
箱型階段の費用ですが、標準仕様なのでオプション料金が発生することはありませんが、階段の木材をこだわれば別途料金になります。
一般的に階段部分には集成材などが使われることが多いので、これを無垢材などに変更するのも別途料金となる可能性が高いので気をつけましょう。
オープン階段
蹴込がなく、対面が透けてみえるタイプの階段のことをオープン階段といいます。スケルトン階段やストリップ階段も呼び方が違うだけで、基本は同じだと思ってください。
デザイン性の高さから、最近はこちらのオープン階段を採用する家が増えていますが、多くの住宅会社ではオプション扱いになるので、別途費用がかかります。
階段の下が完全にオープンになっているので、空間を広くみせる効果があるのと、光を採りこみやすく、部屋全体を明るくみせるという特徴があります。
階段の材質も複数あり、木材、スチール、アルミなどから選ぶことができ、階段を木材にして手摺部分だけスチールにするなどの複合タイプも可能です。
料金としては、一般的な箱型階段が20~30万なのに対し、オープン階段だと40~60万円くらいしますので、オプション費用として別途20~30万くらいを考えておくのが良いでしょう。
フローティング階段
基本的にはオープン階段と同じなのですが、階段が宙に浮いているように見えるタイプのことをフローティング階段といいます。
先ほど触れていますが、上の画像のような階段は規制が厳しくなったのでほぼつくることができませんが、壁側に手摺を設置したり、透過性の高いガラスなどを設置すればOKです。
しかし、一般の住宅会社ではあまり積極的には対応してくれないと思うので、このようにデザイン性の高い住宅を希望するのであれば、大手のハウスメーカーや工務店よりも、自由度の高い建築家などに依頼することをおすすめします。
階段のタイプ
階段のタイプも複数あり、それぞれのタイプで占有する面積が異なったり、階段下のスペースを有効活用する用途が違ってきます。
どれが自分たちにあっているのか比較しながらチェックしてみてください。
ストレート階段
踊り場がなく、1階から2階まで直線になっている階段。
デザイン性が高い割に安価なため、最近のリビング階段にはこのストレート階段が多く利用されています。
面積を抑えようと思えば、0.75坪(1.5帖)ほどに抑えることもできるが、そうなると勾配が急になり、転倒や落下のリスクが高くなるので気をつけましょう。
階段下のスペースをトイレや本棚にしたり、多くの用途に向いているタイプです。
- 占有面積:1.5帖~2.5帖
- 価格:20~30万円
折り返し階段
踊り場を拠点に180度折り返しているタイプの階段です。その形状から「U字階段」や「コの字階段」という呼び方をすることもあります。
折り返し部分が踊り場になっているタイプと、上の写真のように階段になっているタイプがあります。
設置するための面積を抑えることができ、コストも安価なことから20年~30年ほど前の住宅に多く採用されていました。
階段下にトイレを設置したいのであれば、こちらの折り返し階段にするのが一般的です。
- 占有面積:1.75帖~2.25帖
- 価格:20~35万円
かね折れ階段(L字階段)
踊り場を拠点に90度折れ曲がるように階段が配置されているのが特徴です。
その形状からL字階段などと呼ぶこともあり、建物の壁際(端っこ)に設置されるケースが多く見受けられますが、最近はリビング階段として用いられることも多くなっています。
ストレート階段と折り返し階段の中間的なスタイルですが、ストレート階段よりも面積を抑えることができ、折り返し階段のように階段下に収納を作りやすいことから人気の高いタイプです。
- 占有面積:1.75帖~2.0帖
- 価格:20~30万円
らせん階段
デザイン性の高さもあり、根強い人気のらせん階段ですが、予想以上に場所を取るのと、費用が高いことで実用化される家はあまり多くありません。
らせん階段は省スペースで済むので狭小住宅に最適と紹介しているサイトを良くみかけますが、実際には折り返し階段と同じくらいのスペースが必要になります。
- 占有面積:1.5帖~2.0帖
- 価格:50~100万円
カーブ(アール)階段
緩やかなカーブを描きながら2階まで続くのが特徴で、ヨーロッパなどのお屋敷を想像してしまいそうな豪華で優雅な雰囲気があります。
カーブ階段の多くは輸入住宅などに採用され、玄関を入ってすぐの大きなホールにとてもマッチします。
ただし既製品はほとんどなく、多くの場合はオーダーメイドになってしまうので、費用はかなり割高になります
- 占有面積:1.5帖~2.0帖
- 価格:50~100万円
注文住宅の階段に関する質問
注文住宅の階段に関して、今回紹介しきれなかった部分や、ネットなどで良く質問されている内容などをまとめてみました。
おしゃれでかっこいい階段のデザインは?
最近はテレワーク推進の影響もあり、ワークスペースを希望する施主が増えています。そこで階段部分を有効的に活用したテレワークスペースをいくつか紹介します。
階段下を活用する
デッドスペースになりがちな階段下をテレワークのスペースとして希望するケースが増えています。
上の画像のように段差をつくり窓を設置してあげることで、狭い・暗いというイメージを払拭することができます。
階段の踊り場を活用する
階段の踊り場を0.5帖~0.75帖ほど広くしてあげるだけで、立派なワークスペースを確保することができます。
景観が良い立地であれば、大きな窓を設置してあげることで、とても素晴らしい快適な作業スペースになります。
これほどの景観をみながらであれば、仕事もはかどりますし、子供の勉強スペースとしても重宝しそうです。
スキップフロアにする
階段の途中にスキップと呼ばれるフロアをつくることができます。
踊り場を活用するタイプと違うのは、スキップ部分がリビングに面していることで、その下を収納スペースとして活用できる点です。
在宅ワークを想定した家づくりのポイントは、こちらの記事で詳しく解説しているので、興味がある人はあわせてチェックしてみてください。
リビング階段は光熱費が高くなる?
20年ほど前の家は今のように高気密高断熱住宅ではありませんでしたので、リビング階段にすることで冷暖房の効きが悪く、光熱費が高くなるというデメリットがありました。
しかし、今の住宅は断熱性も高いので、リビング階段にしても極端に光熱費が上がることはありません。
その他にもリビング階段のデメリットとして、「リビングの音が2階に響く」「料理の臭いが2階に届いてしまう」という問題もありましたが、今の住宅は遮音性も高いですし、24時間換気システムが設置されているので、これもあまり気にする必要はありません。
設置面積が一番少ない階段はどれ?
床面積を一番少なく抑えることができる階段のタイプは、ストレート階段です。
間取り図を書くときに方眼紙を用いるのですが、方眼紙の1枠が0.5帖となり、2枠で1帖、4枠で1坪です。
ストレート階段の場合、段数や勾配にもよりますが、最小面積だと方眼紙3枠に収めることができます。
まとめ
間取りづくりのポイントとなる階段の種類やタイプについて紹介してきました。
ただ1階と2階をつなぐ階段と考えるのではなく、デザイン性や機能性など、自分たちが階段に求めるものを明確にしておくことで、階段選びはそう難しくありません。
そして階段の設置場所が、間取りに大きく影響してくるので、階段を設置する場所は良く考えて決めるようにしましょう。