新築マイホームを建てるとき、多くの人がオール電化とオールガスのどちらにするかで迷うかと思います。まずは下記のオール電化とオールガスの比較表をご覧ください。
オール電化 | オールガス | |
---|---|---|
初期費用 | 90~110万円 | 45~60万円 |
基本料金 | 約1,600円 | 約1,000円(都市ガス) 約1,500円(LPガス) |
kWhの単価 | 32円(昼間) 12円(夜間) |
12円(都市ガス) 21円(LPガス) |
安全性 | 火を使わないので安心 | 火を使うので火災の不安 |
災害時 | 復旧が早い | 復旧に時間がかかる |
※KWhあたりの単価、基本料金は平均値ですので、地域や契約内容により異なります
この比較表でもわかるように、ポイントは昼間の高い電気料金に隠されています。
日中は留守がちな家庭であれば、昼間の電気料金が高いオール電化でOKですが、家に居る事が多い専業主婦の家庭では、オールガスの方かお得になるケースが多いです。
このあと詳しく解説しますが、現在の状況だけで決めるのではなく、将来を見据えてオール電化とオールガスを選ぶようにしましょう。
オール電化のメリットデメリット
調理といえばガスコンロ、給湯といえばガス給湯器が主流でした。
しかしこれらの機器をガスでなく、電化製品にすることでガス代をなくし、光熱費削減や火災の予防として広く普及することになりました。
メリット
オール電化住宅のメリットとして、以下のような点があります。
- 光熱費の節約になる
- 火がない安心感
- 手入れが簡単
- 災害時に便利
- 地球環境に優しい
光熱費の節約になる
オール電化住宅にすることで、ガス代と電気代を1本化できるので基本料金を二重に徴収されることがありません。
また、電気料金が安い深夜電力をうまく活用することで、光熱費を大幅に軽減できる効果もあります。
どれくらい節約になるのか、お風呂で比較してみたいと思います。
お風呂1回の目安費用(350ℓで想定)
- エコキュート:80円~100円
- 都市ガス:120円~150円
- LPガス:180円~240円
火がない安心感
オール電化はIHコンロを使用するため、ガスコンロのように直接的に火を使うことがなく、火災のリスクを大幅に軽減することができます。
もちろん漏電などによる火災もあるので、100%火災を予防できるわけではありませんが、小さなお子様や高齢のご両親の同居している場合は大きなメリットになることは言うまでもありません。
調理時だけでなく、暖房器具としてガスや石油を使わないため、ガス漏れや不完全燃焼による一酸化炭素中毒の不安も取り除くことができます。
手入れが簡単
IHコンロはシンプル構造なので、毎日の掃除が楽になったという声を良く耳にします。
火を使用しないので、頑固な焦げ付きもありません。
毎日のお手入れはサッと拭くだけでOKですし、吹きこぼれや油汚れが目立ってきたらクリームクレンザーで擦れば簡単に落とすことができます。
災害時に便利
災害時に電気温水器やエコキュート内の水を生活水として使用することができます。
残念ながら飲料水としては使用できませんが、災害時に自由に使える水があるだけでもトイレや洗顔など気分的にも全然違います。
4人家族であれば、約4日分の生活用水を確保できると言われています。
また災害といえば、ライフライン(水道、電気、ガス)で一番復旧が早いと言われているのが電気です。
そう考えると、より早く日常の生活を取り戻すにはオール電化住宅が一番適していることもわかります。
ライフラインが9割ほど復旧するまでの日数
東日本大震災 | 阪神淡路大地震 | |
---|---|---|
電 気 | 6日 | 2日 |
ガ ス | 34日 | 61日 |
水 道 | 24日 | 37日 |
地球環境に優しい
使用する電力が少なくなれば、それだけ排出するCO2も少なくなります。また、深夜電力をうまく活用することで、発電所そのもので発電する電力量を抑える効果もあると言われています。
とくにエコキュートは、空気中の熱を使いお湯を沸かす方式なので、より自然環境にも優しい製品だと言われています。
デメリット
オール電化住宅のデメリットとして、以下のような点があります。
- 初期費用が高い
- 昼間の電気代が割高になる
- 停電に弱い
- IHコンロには好き嫌いがある
- 電磁波が心配
初期費用が高い
オール電化にするためには最低でもIHコンロと電気温水器を設置しなければならず、それらの初期費用がオールガスに比べてかなり割高になります。
設置する製品やグレードによっても金額は異なりますが、一般的な費用相場としては、
電気orガス | 内容 | 費用 |
---|---|---|
オール電化 | IHコンロ+電気温水器 | 60~80万円 |
IHコンロ+エコキュート | 80~100万円 | |
オールガス | ガスコンロ+ガス給湯器 | 30~40万円 |
ガスコンロ+エコジョーズ | 40~50万円 |
このようにオール電化にすることで、初期費用は2倍くらいになってしまいますし、さらに太陽光発電システムを設置するとプラス120~150万円の費用が掛かります。
また初期費用だけでなく、故障や寿命による交換も視野に入れて検討するようにしましょう。
ガス給湯器に比べ、電気温水器の修理代は割高になります。
昼間の電気代が割高
オール電化住宅のメリットに深夜電力が安いことがありますが、比例して昼間の電気代が割高になるので注意が必要です。
共働き世帯で、日中は家に誰もいないのであれば気にする必要はありませんが、専業主婦や両親と同居している場合は、日中に使用する電力も多く、電気代が高くなりがちです。
家族の生活スタイルに見合う料金プランをしっかり選ぶことが大事です。
停電に弱い
昔に比べると少なくはなりましたが、それでも予期せぬことで地域が停電になってしまうことがあると思います。
災害時の復旧の早さには定評があるのですが、ただの停電でもコンロが使えずに料理ができなくなったり、お風呂にも入ることができなくなってしまうのがオール電化住宅の欠点と言えます。
最近はスマートハウスやZEH住宅の普及により、個人世帯でも蓄電池を設置している家庭が増えてはいますが、それでも全体的にみるとわずかな比率でしかありません。
IHコンロには好き嫌いがある
電気のIHコンロはガスを使わないので火がつきません。そのため中華料理のように強い火力の料理には不向きだと言う人もいます。
また高齢者の中には使い方がわからないという人も多いですし、火をつかない分、鍋が熱くなっているのに気付かず火傷をしてしまうケースも多いようです。
家族構成や誰が主に料理をするのかなど、それらをしっかりと考慮して検討するようにしましょう。
電磁波が心配
昔から言われていることなのですが、IHコンロから発せられる電磁波を嫌う人も少なくありません。
一般家庭において強い電磁波を出す家電製品といえば電子レンジが良く知られてします。この電子レンジに相当する電磁波を出していると言われるのがIHコンロです。
電磁波は発がん性や白血病を誘発するという研究データもあり、とくに小さな子供がいる家庭では心配される人も多いです。
ちなみに電磁波は電子レンジやIHコンロからだけ発せられているものではなく、パソコン、テレビ、スマホなどからも常に出ているものです。
そして電磁波の影響力は、使用する距離が重要だと言われています。
IHコンロで測定したデータを紹介するなら、20cmの距離で約32ミリガウス、これが40cmの距離になると約6ミリガウスまで減少するそうです。
そう考えるとIHコンロよりも、より近い距離で使用するスマホやパソコンからの電磁波のほうがカラダに影響を及ぼしているのではないでしょうか。
オールガスのメリットデメリット
ではここからは、オールガスのメリットデメリットについて解説していきます。
メリット
オールガス住宅のメリットとして、以下のような点があります。
- 都市ガスは安い
- 初期費用が安い
- 設置場所を選ばない
- 災害や停電に強い
- お湯切れの不安がない
都市ガスは安い
都市ガスが利用できる地域であれば、オール電化よりも光熱費を抑えられる可能性があります。
ガスコンロ、エコジョーズ、ガスファンヒーターなどをうまく組み合わせることで、かなりの節約効果が期待できるので、土地から探す人の中には都市ガスの地域に限定して探す人もいるほどです。
初期費用が安い
都市ガスもLPガスも同じなのですが、オール電化に比べて調理コンロや温水器の初期導入コストは半額程度で済ませることができます。
新築住宅を建てるのであれば、土地を買ったり、高い建築費を払うことになるので、少しでも出費を抑えたい人にはオールガス住宅に分があります。
設置場所を選ばない
電気温水器やエコキュートなどは、設置スペースを広く確保しなければならず、そのせいで間取りの制限を受けることも珍しくありません。
その点、ガス給湯器であれば外壁に設置することができるので、ほとんど設置スペースを確保する必要はありません。
都心部になればなるほど、土地の面積が狭くなることが多く、少しでも広い間取りを確保するためにガス給湯器を選ぶケースがあります。
災害や停電に強い
停電になるとオール電化住宅は調理をすることもお風呂やシャワーを利用することもできなくなりますが、オールガス住宅であれば停電時にも関係なく調理することができますし、お風呂もシャワーも使えます。
またLPガスの場合は、小規模の災害であればプロパンガスは利用できますし、万が一プロパンガスに問題が発生しても、交換することですぐに復旧できることもあります。
ただし都市ガスは災害時の復旧には相当な時間が掛かるので、都市ガスとLPガスで大きな差があることは理解しておきましょう。
お湯切れの不安がない
電気温水器やエコキュートは安い深夜電力を利用して、お湯を沸かす方式なので、その湯量を超えてしまうとお湯切れになってしまいます。
年頃の子供がいる家庭は、お風呂の時間帯もバラバラになりがちなので、すぐにお湯切れになってしまう可能性があります。
しかしガス給湯器であれば、瞬間的にお湯を沸かす方式なので、どれだけ使ってもお湯切れになる心配がありません。
デメリット
オールガス住宅のデメリットとして、以下のような点があります。
- LPガスは高い
- 火災や安全面が不安
- 火災保険の割引がない
- 夏場の調理中は暑い
LPガスは高い
オールガス住宅の最大のデメリットといえば、やはりLPガスだと光熱費が高くなってしまう点でしょう。
都市ガスとLPガスでは最低でも2倍ほどの価格差がありますし、地域やガス会社によっては都市ガスの3倍というケースもあります。
都市ガスであれば1ヶ月の電気代6,000円で収まるのに対し、LPガスだと同じ使用量で15,000円くらいの請求がきても不思議じゃありません。
これが毎月なのですから、長い期間で考えるとすごい金額になってしまいます。
初期導入コストが安いからといって安易にオールガス住宅にしてしまうと、毎月の光熱費で大きく損をする可能性があるので注意してください。
火災や安全面が不安
もう1つガスのデメリットとして考えなければならないのが火災や安全面の問題です。
調理コンロは火を使うタイプなので、当然火災のリスクが高くなるのは言うまでもありません。
また小さなお子さんや高齢者のいる家庭では、火の消し忘れや火傷にも注意が必要になります。
火災保険の割引がない
保険会社によってはオール電化住宅だと、火災保険の保険料を割引してもらえることがあります。
最大だと20%ほど保険料が安くなるのですから、この恩恵を受けることができないはデメリットだと言えるのではないでしょうか。
火災保険割引が利用できる会社はそう多くありませんが、2020年1月現在だとセコム損保、SBI損保などがあります。
夏場の調理中は暑い
火を使うので、夏場の調理中などはキッチン全体が熱を持ち暑くなります。
暑くなることで、エアコンの冷房を使う頻度も増え、それだけ電気代が高くなるという悪循環になります。
まとめ
オール電化とオールガスを選ぶ際、1つの目安となるのが在宅時間です。
日中誰かが在宅しているのであれば、オールガス(とくに都市ガス)がお得です。逆に日中だれも家に居ないのであれば、安い深夜電力を使えるオール電化がお得になるでしょう。
ただし、今の状況だけをみて決めるのではなく、子育てをするため在宅時間が長くなる、両親と同居する可能性がある。
このよう場合は必然的に日中も在宅する機会が増えるので、将来的なことまで踏まえて比較検討すると良いでしょう。
今回はあまり触れませんでしたが、太陽光発電システムやZEH住宅などにすることで、オール電化住宅のメリットはさらに増えることになります。
そうした計画があるのでしたら、そこも踏まえて考えなければなりません。