無駄なコストを削減し、建設費用を安く抑えたローコスト住宅というのがあります。
近年、多くの住宅メーカーが格安の戸建住宅を手がけており、「コミコミ1,000万円以下の家」などのキャッチコピーを見かけることもあります。
この記事では「土地代込みで1,000万円以下の家は建てられるのか」「ローコスト住宅の間取りはどのようになるか」などを紹介します。
なるべく費用を抑えて家を建てたい人は参考にしてください。
土地代込みで1000万円以下の家は建てられるか?
広告などで見かける「コミコミ1,000万円以下の家」には、土地代や諸費用などが含まれていないケースがほとんどです。
土地を購入し、家が完成するまでの費用をすべて含めると1,000万円を超える可能性があります。
現在の市況ではほぼ実現不可能
土地代込みで1,000万円以下の家を建てることは、現在の市場では難しいかもしれません。
広告などで見かける「1,000万円以下の家」は土地代が含まれていないケースが多く、実際は土地の購入費用が別途かかる可能性があるからです。
また「建物価格1,000万円」と表記されている場合は、土地代に加えて付帯工事費・諸費用も別途加算されます。
注文住宅の費用内訳は以下の3項目があり、それぞれの割合は以下の通りです。
- 本体建築工事費(建物価格):70%以上
- 付帯工事費:15〜20%ほど
- 諸費用:10%ほど
本体建築工事費とは建物そのものを建てる費用のことで、費用の7割以上を占めます。
付帯工事費は外構工事や配管工事といった建物以外の工事費用を指し、費用の2割ほどを目安とするとよいでしょう。
したがって、建物本体価格が1,000万円の場合、総額は1,400万円前後になると予想できます。
ほかにも、ハウスメーカーの表示価格が1,000万円であっても「外構工事は含まれていない」「オプションで追加費用がかかる」などのケースも少なくありません。
表示価格のみで判断すると、結果的に予算を超えてしまう可能性があるため注意が必要です。
建物価格だけでほぼ予算上限に達してしまう
このように、家を建てるときは建物価格の他にさまざまな費用がかかります。
予算が1,000万円以下だとすると本体建築工事費を700万円ほど、付帯工事費を200万円ほどに抑えなければなりません。
そのような価格で家を建てられるハウスメーカーは少なく、建物本体価格のみで予算の1,000万円に達してしまうケースが多いでしょう。
建物価格が1,000万円台になると、依頼できるハウスメーカーの選択肢も増えてきます。
※予算別のカタログ特集ページ一覧
登記費用や仲介手数料などの諸費用もかかる
予算の10%ほどを占める諸費用の内訳は、ハウスメーカーや工務店との契約で発生する手数料、不動産取得にかかる税金、ローンに関する費用・税金、保険料などです。
また土地を購入する場合は、不動産会社への仲介手数料や印紙代、登記の登録免許税なども必要となります。
諸費用はいくつもの項目があり、それぞれの金額はさほど大きくないものの、合算すると予想以上の出費になるケースも少なくありません。
家を建てるときは、工事費用以外にもさまざまな費用がかかることを覚えておきましょう。
格安住宅を販売しているハウスメーカーの間取り例
ローコスト住宅に多いのは、ハウスメーカーがあらかじめ間取りのパターンを決めている「規格型」です。ここでは、ローコスト住宅の間取り例を建物価格とともに紹介します。
なお、これから紹介する間取り例は、執筆時点の情報です。最新の内容に関しては公式サイトにてご確認ください。
870万円25坪2LDK(はなまるハウス)
群馬県や栃木県、茨城県、埼玉県、福岡県、佐賀県の注文住宅を手がける「はなまるハウス」では、建物価格870万円から家が建てられる「はなまるプラン」があります。
1階は16.5帖の広々としたリビングと水回り、2階は7.2帖の洋室と12.5帖の洋室があり、2階の広い洋室は間仕切りを付けて2部屋にすることも。
子どもの成長にあわせて個室をつくるなど、ライフスタイルに合わせた部屋数を調整できます。
990万円20.54坪2LDK(パパまるハウス)
株式会社ヒノキヤグループが手がける「パパまるハウス」では、建物価格990万円の平家プランがあります。
14帖のリビングと6帖の洋室、6帖の和室で構成された2LDKで、洋室と隣接するウォークインクローゼット付き。
また広々とした洗面室は、室内干しをするランドリールームとして使うこともできます。
996.6万円19坪1LDK(ひら家専門店IKI)
ケイアイネットクラウド株式会社が手がける「ひら家専門店IKI」は、格安でガレージ付きの平家を建てられるプランがあります。
間取りは、仕切りのない広々とした16.2帖のリビングと、6帖の洋室で構成されたワンフロア。
水回りを一直線にならべる、キッチンの隣にパントリーを設けるなど家事効率をアップするさまざまな工夫がほどこされています。
1320万円32坪4LDK(らくらくハウス)
「らくらくハウス」は熊本県に拠点を構える、ローコスト住宅専門店です。4~6人家族にぴったりな4LDKの住宅を建物価格1,000万円台で建てられるプランがあります。
1階部分は11帖のリビングと5帖のキッチン・4.5帖の和室、2階部分は6帖の洋室と5.1帖の洋室2部屋で構成されています。
和室は客間としても使えるため、友人や両親などが泊まりにきたときも安心です。
1426万円30.05坪4LDK(ニコニコ住宅)
「ニコニコ住宅」は、創業50年を迎える新潟の老舗建設会社、ダイエープロビス株式会社が運営する住宅プロジェクトです。
雪国でも安心して暮らせる高品質なローコスト住宅を手がけており、建物価格1,000万円台で2階建て・4LDKの住宅を建てられるプランがあります。
1階部分は14.1帖のリビングと4.5帖の洋室、2階部分は5.2帖の洋室と6帖の寝室、5.2帖の洋室で構成されており、3帖のウォークインクローゼット付きです。
超ローコストで家を手に入れるためのアイデア
現状では総額1,000万円以下で家を建てるのは難しいものの、費用を節約するためにできる工夫はあります。
ここでは、土地購入費用を抑えるコツや中古物件のリノベーションなど、なるべく安くマイホームを手に入れるアイデアをまとめました。
土地を購入ではなくレンタルして家を建てる
土地の購入費用を抑えたい場合、レンタルした土地に自己所有の住宅を建てられる「定期借地権」という制度を利用するとよいでしょう。
頭金が少なくても家を建てられる、土地の固定資産税がかからないなどのメリットがあり、定期借地権を利用してマイホームを購入する人が増えています。
定期借地権とは?
「定期借地権」とは、ほかの人が所有している土地を期限付きでレンタルできる制度です。下記の3種類があり、住宅用の場合は①の「一般定期借地権」が該当します。
①一般定期借地権:期間50年以上、満了時に建物を取り壊して土地を返還する
②事業用定期借地権:期間10年以上50年未満、満了時に建物を取り壊して土地を返還する
③建物譲渡特約付借地権:期間30年以上、満了時に建物を相当の対価で地主に譲渡する
期間や土地の返還方法、利用目的、契約方法などは種類によって異なり、一般定期借地権は50年以上の長期にわたって土地を借りることが条件です。
契約時に決めた期間の更新・延長はできませんが、借主が同意すれば50年以上の契約を新規で締結することはできます。
なお、契約が終了したときは建物を取り壊し、土地を更地にして貸主に返還しなければなりません。
定期借地権が向いている人は?
浮いた土地代を建築費用に充てたい人や、住宅ローンの借入額少なくしたい人などは一般定期借地権の利用がおすすめです。
契約時にかかる費用は保証金(敷金)や登録免許税などで、土地を取得するためにまとまった金額を用意しておく必要がありません。
契約後は月々の土地代を地主に支払っていくイメージで、最初に支払った保証金は契約終了時に返還されます。
また「いずれ実家に戻らなくてはならない」「定年後は引越しを考えている」など、住む期間が限られている人にも適しています。
一般定期借地権は利用目的の制限が設けられていないため、土地に建てた住宅を売却したり、賃貸として貸し出したりすることもできるからです。
また借主からであれば、契約の途中解約を依頼することもできます。
一部の建築工程を自分で行う
作業の一部をDIYで行い、費用を抑える方法もあります。新築でDIYできる箇所は、主に内装やエクステリアなどです。
玄関アプローチにレンガを敷く、ウッドデッキをつくる、芝生を張るなどの簡単な外構工事であればDIY初心者の人でも比較的取り組みやすいでしょう。
しかし、住宅購入費用の大部分を占めるのは建物の構造や外装にまつわる施工です。それらは高度な技術や専門知識が必要となるため、経験者でない限りDIYで行うのは難しいかもしれません。
内装・外構工事の一部を自分で手がけるのみでは、大幅なコストダウンにつながりづらいものの「数万円だけでも費用を抑えたい」「予算を10万円ほどオーバーしている」などの場合は効果的です。
格安の中古物件を購入してリノベーションする
近年、格安の中古物件を購入して新築のようにリノベーションをする人が増えています。
国土交通省の「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」によると、住宅の購入資金の平均は以下のとおりです。
- 注文住宅(土地購入):5,436万円
- 中古戸建住宅:3,340万円
立地などの条件にもよりますが、ほとんどの場合は新築より中古物件のほうが購入費用が安く済むケースが多いでしょう。
リノベーションの内容によっては新築と同様かそれ以下の値段で、内装をきれいにつくり替えることもできます。
中古物件のリノベーションで費用を抑えるコツ
とはいえ、中古物件はそれぞれ建物の状態が異なり、場合によっては修繕費用が高くなることもあります。
配管や建物の構造部分など、見えない部分が傷んでいたとしても、内見でそれらを見極めるのは難しいからです。
費用が安すぎたり築年数が古すぎたりする物件はすぐに契約を決めず、可能であれば専門家に物件の状態を評価してもらうなど、対策を取るとよいでしょう。
競売物件を購入してリノベーションする
「競売物件」とは、ローンの滞納などで差し押さえられ、裁判所経由で強制的に売却された不動産のことです。
一般的な物件よりも3〜4割ほど安く購入できるため、費用を抑えて中古物件を購入したい人に適しています。
しかし、競売物件は内覧ができない、欠陥があっても責任を追及できないなどのデメリットがあります。
裁判所が作成した「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」などの書類のみで物件を判断しなければならず、設備が壊れていたり激しい損傷があったりしてもすべて自己責任です。
「家の中は荒れていないか」「どの程度メンテナンスが行われているか」といった内部の状況は購入後でないとわからないため、慎重に判断する必要があります。
加えて、競売物件には物件や鍵の引き渡し義務がありません。住人が退去を拒んでいたり、不法占拠をしていたりする場合は、自分で交渉する必要があります。
お金を払って退去をお願いしたり、裁判所に強制執行の申立てをしたりと、一般的な物件にはないリスクがともなう可能性があることを覚えておきましょう。
格安住宅で後悔しないための注意点
ローコスト住宅を購入するときは価格の安さを優先するあまり、住宅の品質や保証などを見落とさないようにすることが大切です。
また賃貸など、住宅を購入する以外の選択肢があるかどうかも十分に検討しましょう。
誇大広告に騙されないよう冷静になること
近年、テレビCMやWeb、チラシなどさまざまな媒体でローコスト住宅の広告を目にします。
「土地代込みで1,000万円以下の家は建てられるか?」でも紹介したように、広告に記載されている金額は建物価格のみであったり、外構工事が含まれていなかったりするケースがほとんどです。
また「キッチンや浴室などの設備費用がまるごと記載されていなかった」「標準仕様に最低限の設備が含まれていない」など、オプションの追加を前提とした価格設定の可能性もあります。
広告の金額を鵜呑みにせず、「建物価格のほかにどんな費用がかかるのか」「標準仕様の設備はどのグレードか」などを必ず問い合わせましょう。
営業マンの強引な誘導に注意する
ハウスメーカーと打ち合わせをしていると、担当者が設備や間取りなどの希望を聞き、新しいプランを提案してくれることがあります。
その際、強引にプラン変更をすすめたり、契約を急かしたりする担当者は要注意です。
担当者のペースにまかせて急いで契約を進めると「追加費用がかかるかを聞きそびれてしまった」「金額があやふやなまま契約してしまった」などの失敗につながりかねません。
こちらの質問に時間をかけてしっかりと答えてくれたり、その場で回答できない項目でも後から提示してくれたりと、依頼主のペースに合った誠実な対応をしてくれるハウスメーカーを選びましょう。
将来的なメンテナンス・保証をしっかり確認する
ローコスト住宅を購入するときは、保証やアフターサポートの内容・期間をしっかりと確認しましょう。
ハウスメーカーによっては保証期間が短すぎたり、アフターサポートの内容が不十分であったりするケースも見受けられます。
最低限のグレードの設備でつくられている住宅だからこそ、定期的なメンテナンスは必要不可欠です。
保証内容が薄すぎるとメンテナンス費用がふくらみ、かえって多くのコストがかかる可能性があるため注意しましょう。
断熱材の量・グレードに注意する
ローコスト住宅のなかには、断熱材の量を減らしたり、グレードを落としたりすることでコストを削減しているケースがあります。
断熱性能の低い住宅は、外の気温がそのまま室内に伝わるため、冷暖房をつけている時間が通常の住宅よりも長くなるかもしれません。
光熱費が高くなる、過ごしづらい空間になるなどのリスクがあるため、断熱性に関してあらかじめ担当者に問い合わせておくとよいでしょう。
本当に今家を建てるべきなのか考える
このように、最低限の設備を取り入れてつくるローコスト住宅は、一般的な住宅にはないデメリットが発生する可能性もあります。
値段の安さを最優先にしたい人や、住宅へのこだわり強くない人などは適しているものの、細部までこだわった住宅をつくりたい人にとっては物足りないと感じるかもしれません。
たとえば、居心地のよい住まいを妥協せずつくりたいのであれば、中古住宅を購入しリノベーションしたり、住宅購入費用を増やしたりする方法が適しています。
また、今すぐに家を建てるのではなく「住宅を建てるのを少しだけ遅らせて貯蓄をし、ワンランク上の設備を導入する」「戸建住宅の賃貸を借りる」などの方法もあります。
住宅に求める機能やデザインなどを洗い出し、本当に今住宅を建てるべきなのかを考えることも大切です。
格安住宅に関するよくある質問
ここでは、ローコスト住宅を建てるときによくある質問を紹介します。建てたあとにありがちな後悔や3Dプリンター住宅の課題などをまとめました。
格安住宅を建てた後に、やっぱり恥ずかしいと後悔する人は多い?
価格が安いからといって、必ずしも住宅の品質が低いわけではありません。
ローコスト住宅も一般的な注文住宅と同じように厳しい建築基準法に基づいて設計されているため、著しく住宅性能が低下することはないからです。
また多くのハウスメーカーでは、営業を効率化したり諸経費を削減したりと、無駄なコストを省くことでリーズナブルな価格を実現しています。
品質の高さと価格の安さを両立したローコスト住宅も多く、近年は安っぽく見えないおしゃれな外観のもの少なくありません。
建築の知識が豊富な人でない限りは、ローコスト住宅かどうかを見極めるのは難しいでしょう。
3Dプリンターで安く家を建てることはできる?
「3Dプリンター住宅」とは、モルタルやコンクリート、強化繊維プラスチック、ガラス繊維強化石膏などの材料を使い、3Dプリンターによる印刷でつくられた住宅です。
建築費用が安く、デザインの自由度が高いことから新たな建築技術として開発が進められています。
しかし、建築基準法が定める強度を満たす住宅はまだなく、日本ではまだ3Dプリンター住宅を建てるのは難しいでしょう。
海外ではすでに販売が開始されている国もあるため、日本でも今後普及が進んでいくと予想されています。
プレハブ住宅やコンテナハウスに長く住むことは可能?
近年「タイニーハウス」と呼ばれるコンパクトな住宅が流行しており、海上コンテナでつくられたコンテナハウスや、プレハブ住宅などを見かけることがあります。
国税庁が定める耐用年数によると、コンテナでつくられた家は耐用年数34年、金属造のプレハブでつくられた家は耐用年数19〜34年ほどです。
近年は高性能のコンテナハウスも登場しており、サビや雨漏りを防止するために定期的なメンテナンスを行えば、長く住み続けられるものもあります。
まとめ
広告などで見かける「コミコミ1,000万円以下の家」は、建物価格のみが記載されているケースが多く、ほとんどの場合はさらに付帯工事費や諸経費などが加算されます。
費用をすべて含めて1,000万円以下にするとなると、建物価格を700万円ほどに抑えなければなりません。
現在の市場ではそのような値段で注文住宅を建てるのは難しいでしょう。
ただし、建物価格のみであれば1,000万円台からも検討できるので、気になる人はこちらの予算別のカタログページを活用してみてください。
※予算別のカタログ特集ページ一覧