注文住宅を建てるとき、真っ先にぶつかる壁が業者選びです。逆の考え方をすれば、依頼する業者さえ決まってしまえば、あとは意外とトントン拍子に進んでいきます。
業者を決める際は、「知名度が高いハウスメーカーだから安心」や、「地元では有名な老舗工務店だから安心」という決め方は、あまりおすすめしません。
自分たちに合う業者選びというのは、そう単純ではありません。「なんとなく」で業者を決めてしまうと、自分の希望していた家が建てられない場合や、トラブルなども起こりやすくなります。
そこで今回は、業者選びの中でも特に知っておきたいポイントや、選ぶ際の注意点を解説しますので、参考にしていただければと思います。
業者選びの基本
業者選びの基本となるポイントは5つあります。
- 構造や工法
- 費用
- 信頼
- 営業マンとの相性
- 土地
これら5つのポイントを総合的に判断して、最終的に依頼する業者を決める人がほとんどです。それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。
構造や工法
構造や工法は、真っ先に考えるべきポイントです。
積水ハウスのような大手ハウスメーカーになれば、木造や軽量鉄骨など、複数の工法の住宅商品がありますが、基本的に1社があつかう工法は「木造軸組工法」、「2×4工法」、「軽量鉄骨」のどれかに絞られています。
そのため、自分の希望に合った工法を取りあつかってない業者は、最初に除外することができます。
デザインにも違いがある
家のデザイン性も業者によって特徴があります。家の外観(デザイン)を気に入って業者を決める人も実は少なくありません。
セキスイハイムのように屋根が平らで四角形の家は、他のハウスメーカーで建てることは難しいですし、一条工務店のようにレンガを基調としたデザインも同じです。
タマホームやアイフルホームのようなローコスト住宅は、独特のデザイン性をなくし、建設中も自社の横断幕を出さないケースがあります。
つまり、ローコスト住宅になればなるほど、建物の個性がなくなるということです。
構造や性能も業者によって違う
構造や性能というのは各ハウスメーカーの色が強くでる部分でもあります。構造や性能的な部分に目を向ければ、こちらで業者を決める人も少なくないことがわかります。
耐震性能や、高気密・高断熱住宅を売りにしているハウスメーカーも多く、健康住宅と呼ばれる住宅も、構造や性能に特徴があります。
免震住宅の一条工務店や三井ホーム、制震住宅の積水ハウスや大和ハウスなど、耐震性能という面だけをみても、ある程度ハウスメーカーを絞れるはずです。
免震住宅や制震住宅については、別記事「注文住宅の地震対策(耐震性や免震構造)の強さや費用について」という記事で詳しく解説してます。
費用
資金的な問題も、業者選びには欠かせません。業者選びの最終判断をするとき、費用が決め手となることは良くあります。
ここで重要なのは、「自分たちが建築費に充てることができる費用がいくらなのか」を、明確に試算しておくことです。
建物に充てることができる予算が2,000万円なのに、坪単価70万円のハウスメーカーを候補に残しておいても意味がありません。
希望する間取りで「どれくらいの広さの坪数になるのか」、「自分たちの予算はどれくらいなのか」、この2つが明確になれば、自然と候補となるハウスメーカーが絞れてくるはずです。
35坪の間取りの家で、建物予算2,000万円であれば、外溝工事費や諸経費を2割と考えれば、「坪単価50万円」が1つの目安になります。
坪単価50万円×35坪=1,750万円、外溝費と諸経費で350万円だと、「合計2,100万円」になります。100万円くらいであれば、値引き交渉でなんとかなるでしょう。
住宅展示場に騙されない
ただし、そこで注意することは、住宅展示場を見ただけで判断しないことです。住宅展示場というのは、オプション品をフル装備させて、豪華にみせるために作ってあるからです。
営業の人が坪単価50万円といっても、住宅展示場と同じ家を作ろうと思えば、オプション込みで坪単価が60万にも70万円にもなってしまいます。
ですので、住宅展示場へ行く際は、かならず標準仕様とオプションの違いを担当者に聞くようにしましょう。
信頼
信頼といっても色々な意味合いがあります。地元の大手企業だから信頼できるという人もいれば、全国展開している大手ハウスメーカーだから信頼できるという人もいます。
そのひとつの目安になるのが、実際にそのハウスメーカーで家を建てた人たちの口コミや評判です。インターネットを活用すれば、簡単にハウスメーカーの評判や口コミ情報を調べることができます。
ただし、インターネットの口コミ情報というのは、どこの誰が書き込みしたのかわかりませんので、すべてが本当の情報ばかりだと思いこむのは危険です。
そういった情報の中には、5年前や10年前の情報も混ざっています。どの情報を信用して、どの情報を信用しないかは、自分の判断に頼るしかありません。
アフター保証制度の充実度
信頼といえばアフターメンテナンスや保証制度も大きく関係しています。新築戸建ての場合は最低でも10年保証がついているのは当たり前ですが、それは会社があってこその話です。
その会社が倒産してしまったら、満足な保証やアフターメンテナンスを受けることさえ困難になってしまいます。
依頼する会社が、5年10年と存続することを最低条件として考えなければなりませんし、担当の営業マンが転勤してしまったときでも、十分なメンテやフォローをしてくれるのかを精査しておくと安心でしょう。
見学会や内覧会で信頼度を見る
ハウスメーカーでは、建築途中の家を見学できる「建築見学会」や、「完成見学会」というイベントを頻繁に行っています。
参加すると半日潰れてしまうことから、なかなか参加したがらない施主が多いですが、このイベントはハウスメーカーの対応や信頼度をみるための絶好の機会となります。
最低でも、契約するハウスメーカーの見学会には、時間を作って参加するようにしましょう。
見学会のチェックポイントは別記事「施工業者と内覧会(見学会)に行くときのチェックポイント」で詳しく解説してますので参考にしてください。
営業マンとの相性
担当してくれる営業マンとの相性もとても大事です。営業マンの人柄を気に入ったから、そのハウスメーカーと契約したという人も多いです。
営業マンの人柄も大事ですが、どれだけ自分たちの目線で話をしてくれるかを見極めましょう。
経験豊富な営業マンであれば、施主の意図することを汲み取り、最適なマイホームを提案してくれるはずですが、専門用語などを頻繁に使う営業マンは、ただ自分の知識や経験をアピールしたいだけです。
入社したばかりの新人営業マンが担当になる際には、しっかり経験のある営業マンがサポートに付いてくれるか確認しましょう。誠意や努力は伝わってても、絶対的な知識と経験はカバーできません。
管理人が勤めていたハウスメーカーでも、入社して2ヶ月目から一人立ちして営業しなければならなかったので、中には経験が乏しい営業マンもいることは覚えておきましょう。
土地
土地を理由にハウスメーカーを選ぶ人の多くが、建築条件付きの土地を購入して、その土地を販売しているハウスメーカーで家を建てるしか選択肢がなかった、というパターンです。
その地域に家を建てたいからといって、深く考えずに建築条件付きの土地に飛びつくのはおすすめしません。最悪の場合、欠陥住宅や手抜き住宅を掴まされてしまうことがあります。
もし建築条件付き土地の購入を検討しているなら、十分にそのハウスメーカーの工法や構造について調べましょう。
建築条件付きの土地であっても、交渉次第で建築条件を解除してくれることもあります。一般的にその場合は、解除料として土地代金が坪あたり5万~10万円ほど高くなります。
建築条件付きの土地に、条件と違うハウスメーカーで家を建てたいという場合は、ダメ元で建築条件解除の交渉をしてみましょう。
個人で交渉するより、建築を依頼したいハウスメーカーの営業マンに交渉を頼んだ方が、成立する可能性は高いです。
建築条件付きとは
分譲されている土地を購入した場合、その土地を販売している、もしくはその土地販売会社が指定しているハウスメーカーでしか家を建てれないと決まっている土地のこと。建築費で利益を出せることもあり、土地代金は通常よりも割安に設定されていることが多い。
設計担当者のレベルも大事
ハウスメーカー選びのポイントとしてはあまり紹介されていませんが、設計担当者のレベルもすごく大事です。自由設計がウリの注文住宅となれば、特に重要となります。
管理人も長年ハウスメーカーで注文住宅の営業マンをしてましたが、担当になる設計士は毎回違ってましたから、本当に設計士の大事さを身をもって何度も体験しました。
「大手ハウスメーカーの設計担当者だから、任せておけば大丈夫だろう」、と考えている施主は多いのですが、決してそんなことはありません。
大手ハウスメーカーだからこそ、設計経験が浅い新人設計士も多く存在しています。
一級建築士の資格を持っている設計士さんでも、1年や2年という経験が浅い人の場合は、営業マンの方が仕様や制限に詳しいこともありました。
言われた通りの設計しかできず、お客さんの意図することを汲み取ることができない設計士も多くいます。
図面を書くのは上手いけど、お客さんとコミュニケーションを取りながら、そのお客さんがどのような間取りの家を望んでいるのかを聞き出したり、意図を汲み取ることができないような設計士もいます。
そのような人が担当の設計担当者になった場合、施主との信頼関係を築くことができないので、間に営業マンを介して交渉をしなければならず、営業マンにも施主にも負担となってしまいます。
色々な設計士がいる
ちなみに一級建築士だからといって信頼しすぎるのも危険です。設計士にもそれぞれ得意不得意があります。図面を書くのが得意な人もいれば、戸建てよりもマンションなどの設計に長けている人もいますし、役場への資料作りが得意な設計士もいます。
それに、ハウスメーカーの設計士というのは、大手になるほど人員が不足していて、設計士一人で複数のお客さんを担当することも多いです。
そのため、許容を超えた仕事量を抱えて遅くまで残業したり、休日に出勤しながら対応しているケースもあります。過酷な労働環境のために離職者も多く、別のハウスメーカーへ転職する設計士もいます。
同じように、戸建てのハウスメーカーからの転職であればそこまで問題ではないのですが、これがマンションデベロッパーなどからの転職であれば、戸建ての設計経験はほとんどないというケースもあります。
設計というのは、経験がものをいう職業です。どんなに知識があっても実務経験が乏しければ問題も発生しやすくなります。
ハウスメーカーを選ぶときは会社の質や営業マンとの相性も大事ですが、設計担当者の質やレベルにも気をつかっておくようにしましょう。
まとめ
ここまで業者を選ぶ際のポイントや注意点を解説しました。間取りや内装などで妥協する部分はあっても、業者選びでは妥協してはいけません。
業者選びで妥協をしてしまうと、注文住宅づくりを進めるにあたり、「これはできない」という状況になってしまったりと、足かせになる場合が多いです。
解説してきたポイントは全て重要なので、不安な方はもう一度この記事を見直して、しっかりと業者選びをしていきましょう。
今回解説した方法で業者を絞りきれなかったり、自分で業者を選定する時間がないという方は、時短の裏技として、インターネットの一括資料請求サイトを利用するといいでしょう。
この一括資料請求サイトは、自分の希望している条件や予算に合った業者の資料を、一回の入力で簡単に取り寄せることができます。
まずはこのようなサイトを使って、ある程度絞ってから、この記事で解説した方法でしっかり精査していくのが、近道かもしれません。
注文住宅づくりは、一生に一度あるかないかの大イベントなので、後悔の残らないよう、ひとつひとつしっかりと自分の判断で決めて進めていきましょう。