この記事では20坪程度の土地に家を建てようとしている人向けに、目安となる間取りや費用、建てる際のポイントについて解説します。
デットスペースを上手に活用したりするなど工夫をすることで、20坪の家でも夫婦と子ども1人で問題なく暮らすことできます。
20坪程度の土地に家を建てようと検討している人は、ぜひチェックしてみてください。
20坪の間取りと費用相場
坪単価で計算するのであれば、建物の面積に比例して建築費用も安くなると考える人が多いのですが、それは少し間違いです。
20坪の家も40坪の家も同じようにキッチンやバスルームは必要です。
20坪の家だからといってキッチンやバスルームが安くなるわけではなく、どちらも同じコストがかかります。
つまり建物面積が小さくなるにつれ、同じ住宅会社でも坪単価はアップすると考えるのが一般的になります。
では、実際の費用相場をみてみましょう。
大手ハウスメーカー | |
---|---|
本体工事価格(建物のみ) | 1,540万円 |
総建築費(建物+付帯工事+諸経費) | 1,850~2,100万円 |
ローコスト住宅 | |
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本体工事価格(建物のみ) | 1,000万円 |
総建築費(建物+付帯工事+諸経費) | 1,300~1,400万円 |
20坪の家となると思いもよらない費用が発生するケースも珍しくありません。
例えば土地の面積が小さいことで、建築資材を置くスペースがなく、近隣の空き地を借りたり、近所の家の庭先をお借りすることもあり、それらの費用も発生することがあります。
ですので、上記で紹介している金額はあくまでも平均的な相場であり、さらに100万円~200万円ほど多めの予算組みをしておくのがベストです。
家の形で建築は違ってくる
なるべく費用を抑えたいのであれば、家のデザインを工夫するという方法もあります。
例えば一般的な2階建て、より狭い敷地にも対応できる3階建て、そして平屋を比較した場合、どれも同じ20坪の家なのですが、建築費は数百万円単位で変わってくることもあります。
簡単にそれぞれの特徴を表にまとめたので、参考にしてください。
ニ階建 | 三階建 | 平屋 | |
---|---|---|---|
坪単価 | 安い | 高い | 普通 |
土地の広さ | 普通 | 狭い | 広い |
耐震性 | 弱い | 高い | 高い |
バリアフリー | 普通 | 悪い | 良い |
狭小地や不整形地 | 普通 | 悪い | 良い |
20坪の家となれば、すべてが希望通りという訳にはいかないことも多いです。
何かを妥協する場面も多くなると思うので、自分たち家族にとって家づくりで優先したい項目を明確にしておくことが大事になります。
- 家族が集まるLDKは広めにしたい
- 自分だけの個室が欲しい
- 家族みんなの生活動線を意識した間取りにしたい
など、どのような家にしたいのかが決まっていれば、20坪の家でも快適に暮らせるマイホームを建てることができます。
まずは色んな住宅会社のカタログを見て、自分たちが希望するマイホームのこだわりを形にしていくことから始めてみましょう。
※予算別のカタログ特集ページ一覧
二階建て
同じ二階建て住宅でも、一階と二階の面積が同じ総二階建てもあれば、二階より一階の面積が広い部分二階の家もあります。より費用を抑えたいのであれば総二階建てをおすすめします。
ここでは二階建ての間取りプランについて、ハウスメーカー別に紹介していきます。
リガード
- 本体価格:1,800万円
- 家族構成:3人家族(夫婦+子ども)
- 間取り:2LDK
- 延床面積:67.70m2(20.4坪)
日当たりを考慮してなのか、1階に夫婦の寝室と子ども部屋、2階にリビングという間取りになっています。
さらにリビングに開放感を持たせたかったからなのか、2階リビングにも関わらずロフトを設けることで天井高を確保できており、かなり快適な空間づくりができていると思います。
難点をあげるなら、20坪という限られた面積なので仕方のないことですが、1階の主寝室にしか目立った収納スペースがない点です。
D'S STYLE(ディーズスタイル)
- 本体価格:1,500万~2,000万円
- 家族構成:2人家族(夫婦)
- 間取り:1LDK
- 延床面積:61.65m2(18.6坪)
1LDKの間取りなので、各スペースがそれぞれかなりの広さを確保できています。
とくに気になったのが1階玄関入ってすぐ土間があり、そこに2階への階段を設置してあることです。
この土間&階段スペースとLDKを仕切らないことで、1階のLDKがすごく広がりを持つことができています。
そして1LDKにしたことで、2階の洗面所やバスルームもゆったり確保できており、家事がしやすい間取りになっているのではないでしょうか。
三階建て
狭小地でも敷地内に駐車スペースを確保したい場合など、3階建てという選択肢があります。
3階建てにすることで、15坪ほどの敷地でも20坪の住宅を建てることが可能になります。土地の値段が高い都心部などでは、3階建ての狭小住宅を多くみかけます。
ジェネシス
- 本体価格:1,430万円
- 家族構成:不明
- 間取り:2SLDK
- 延床面積:68.31m2(20.6坪)
都心の狭小住宅を得意としているジェネシスは、ローコストの予算にも対応しています。
1階と3階に各自の部屋を配置し、家族が集まるLDKを2階にしているのが間取りが特徴的です。わずか20坪の間取りでありながら2世帯住宅としても使える間取りになっています。
BLISS(ブリス)
- 本体価格:1,500~2,000万円
- 家族構成:3人(夫婦+子ども)
- 間取り:2LDK
- 延床面積:69.47㎡(21.01 坪)
東京23区内を中心にローコストの狭小住宅を得意としていて、自由設計なので、希望に合った間取りをお願いすることもできます。
今回紹介する3階建て住宅は、わずか20坪の間取りの中にしっかりと趣味(楽器演奏)の部屋を確保できているのが特徴です。
ただし2階リビングのLDKは約9帖と少し狭めです。恐らく子どもがある程度成長しており、各自の部屋で過ごす時間が多いことを考慮してのことだと思います。
平屋
2階建てや3階建ての20坪住宅だと、かなり手狭なイメージですが、平屋の20坪であればそこまで珍しくありません。
とくに独身でマイホームを持ちたい人、子どもが独立したあと老後のご夫婦にとっては20坪の広さがあれば十分に快適なマイホームを建てることができる広さです。
ヤマダホームズ
- 本体価格:1,000~1,500万円
- 家族構成:2人(夫婦)
- 間取り:2LDK
- 延床面積:66.66m2(20.1坪)
こちらの物件は子どもたちが独立し、夫婦二人になったことで建て替えをされたそうです。
本来であれば1LDKでも不自由ないのでしょうが、子どもたちが孫を連れて泊まりに来ても良いようにしっかり来客用の部屋も確保されています。
LDKも16帖ほど広さを確保してあり、各居室も十分な広さを取ることができている20坪平屋ではオーソドックスなタイプの間取りになっています。
クレバリーホーム
- 本体価格:1,000~1,500万円
- 家族構成:1人
- 間取り:1LDK
- 延床面積:71.21m2(21.5坪)
1人で住むには十分すぎる広さの間取りになっています。
LDKに隣接する畳コーナーまで含めると2LDKともいえる間取りですが、一人で暮らされていることもあり、あえて1LDKとして紹介させて頂きました。
特徴はやはり生活の大半を過ごす広いLDKにあり、来客がきても玄関までの導線を最小限に抑えてあることで、コンパクトにまとまった暮らしやすそうな平屋住宅です。
さらに屋根裏収納へと昇る階段を寝室に設けたことで、LDKや玄関ホールをすっきり見せることができています。
3LDKや変形地
20坪の住宅となれば、どうしても1LDKや2LDKの間取りの家が多くなってしまいます。
それでも3LDKを希望する人もいれば、ビルトインガレージがある20坪住宅の間取りなど、少しかわった20坪住宅の間取り例をいくつか紹介しておきます。
YKKホームズ(3LDK)
- 本体価格:1,500~2,000万円
- 家族構成:3人(夫婦+子ども)
- 間取り:3LDK
- 延床面積:70.79m2(21.4坪)
敷地面積13坪に建つ3階建て21坪の家です。13坪の敷地にしっかり駐車場まで確保できていて、3LDKの間取りに驚きました。
それでLDKも14帖ありますし、4.5畳の和室含め夫婦の寝室と子ども部屋もちゃんとあります。
ですが、やはり収納スペースという面では間取り図を拝見する限りは不足しているように感じます。
BLISS(ビルトインガレージ)
- 本体価格:不明
- 家族構成:不明
- 間取り:3LDK+ビルトインガレージ
- 延床面積:70.91m²(21.45坪)
敷地面積はわずか11.9坪に建つ、驚きの狭小住宅です。
狭小地の課題でもある駐車スペースをビルトインガレージにすることで解決し、それでいて3LDKの間取りを延床面積21坪で実現するのですから、すごい提案力だと思います。
家の中にいながら、いつでも大好きなクルマを鑑賞できるのですから、まさに夢のマイホームではないでしょうか。
BLISS(変形地)
- 本体価格:1,500~2,000万円
- 家族構成:3人(夫婦+子ども)
- 間取り:2LDK
- 延床面積:64.44m2(19.49坪)
普通なら敬遠されがちな16坪弱のL字型の土地ですが、変形地での建築経験も豊富な住宅会社だからこその素晴らしい住宅になっています。
こちらの物件は本当に狭小住宅のお手本のような間取りになっており、玄関入ってすぐの通路にしっかり収納とトイレスペースを確保、突き当りのL字部分をうまく利用したキッチンの配置も絶妙です。
ただ1つだけ残念だと感じたのが、2階のバスルームに面した脱衣所がないことです。
冒頭で言ったように20坪となると、100%の希望は難しいので何処かを妥協しなければならないので、これは仕方ない部分なのだと割り切るしかありません。
ここまで20坪の家の間取りを紹介してきましたが、中にはちょっと狭くて厳しいと感じている人もいるのではないでしょうか。
もし20坪が厳しいと感じている人は、以下の記事を参考にしてみてください。この記事と同じく参考となる間取りを紹介しつつ、建てる際のポイントをまとめています。
20坪の家を建てる際のポイント
ここからは20坪の家を建てる際、気をつけておくべきポイントなどを整理してお伝えしていきたいと思いますので、マイホーム作りの参考にして頂ければと思います。
部屋別の必要な坪数目安
まずは間取りを考えるにあたり、各スペースの必要坪数を知っておくようにしましょう。これを知っているだけで、間取りを考えるのがすごく楽になります。
2LDKの20坪の家を建てるとして、各スペースの目安となる必要坪数を計算してみましょう。
玄関 | 1.0坪 | トイレ1階 | 0.5坪 |
---|---|---|---|
廊下・ホール | 1.5坪 | LDK | 6.0坪 |
階段 | 1.5坪 | 主寝室 | 3.0坪 |
洗面所 | 1.0坪 | 子供部屋 | 2.5坪 |
バスルーム | 1.0坪 | 収納 | 2.0坪 |
合計 | 約20.0坪 |
※施工床に換算される玄関ポーチ、バルコニーなどは含めていません20坪ほどの住宅の場合、圧倒的に2階リビングの家が多くなります。
これは少しでもLDKを広くしたいという現代のニーズに合わせている結果だと思います。
1階にLDKをもってくると玄関やバスルームなどがあるため、どうしてもLDKの広さを確保しづらくなります。
ですので、2階にLDKをもっていき、1階を各居室とする住宅がどうしても多くなります。
さらにLDKを広くしたい場合は、思い切ってバスルームや洗面所などを1階に設置するという方法もあります。
引き戸を有効活用し住みやすくする
20坪のように延床面積が限られている住宅の場合、ちょっとした工夫で居住スペースを広く確保できることがあります。
例えば室内のドアはすべて引き戸にすることで、ドアの開閉スペースを減らすことができるのでデッドスペースを最小限に減らすことができます。
ただし、開き戸に比べて引き戸の方が気密性や遮音性で劣る部分もあるので、そうしたデメリット部分までしっかり理解したうえでドアの種類を決めるようにしましょう。
土地の探し方
建ぺい率60%の用途地域であれば、2階建て20坪の家を建てるのに、単純計算で17坪の土地が必要になります。
一般的には土地の形状は正方形や長方形が理想だと言われているのですが、狭小住宅に限ってはそうとは限りません。
特に駐車場まで敷地内に確保したいのであれば、縦長や横長の土地の方が駐車スペースを確保しやすくなります。これは20坪の3階建て住宅を建てるときにも同じことが言えます。
正方形の狭小地であれば、どうしても駐車スペースはビルトイン式になりがちですが、そうすると2階や3階の建物面積も広くなり、建築費が余計にかかってしまうからです。
それより横長や縦長の土地を探し、駐車スペースを建物と切り離すことで、建物面積を最小限に抑えることができます。
収納スペースを確保する
居住スペースの広さにばかり気を取られてしまうと、どうしても収納スペースが不足してしまい、居住スペースに物が散乱し、ただでさえ小さな狭小住宅がより狭く感じられます。
建物内にはデッドスペース呼ばれる部分が数多く存在します。例えば階段下や床下です。このようなデッドスペースを収納として活用することで、最低限の収納を確保することができます。
こうした提案力のある住宅会社に依頼することで、狭小住宅でも快適に暮らすことができるようになります。
間仕切りを減らす
室内のそれぞれの空間を広くみせる工夫の1つに間仕切りを減らすというものがあります。
間仕切りとは、部屋と部屋の間に設置してある柱や壁のことで、この間仕切りを減らすことで各スペースを広くみせることができます。
よく子どもが小さいときは部屋を仕切る壁を取り外しておき、子どもが成長したら壁をつくることを提案する住宅会社がありますが、原理としてはそれと同じです。
もちろん構造的に外せない柱や壁もあるので、そうした家づくりを得意としている住宅会社に相談するのが一番です。
カタログ請求などで、各住宅会社の雰囲気を確認し、空間づくりが得意そうな住宅会社を探すようにしましょう。
その他にも階段とリビング部分の間仕切りを取り除き、リビング階段にすることで以下の画像のように雰囲気が全然違って見えてきます。
20坪の家を建てる際の疑問、質問
20坪の家づくりに関して、今回紹介しきれなかった部分や、ネットなどで良く質問されている内容などをまとめてみました。
ハウスメーカーと工務店どちらがおすすめ?
ハウスメーカーと工務店、どちらに依頼しても20坪の家を建てることはできますが、より柔軟に対応してくれるのは木造を主体としている工務店です。
ただし、3階建てを希望するのであれば、ローコスト住宅はあまりおすすめしません。
3階建てになると構造計算が必要になるので、一部のローコスト住宅では対応できないと断わられることがあります。
もし変形地などの場合は、より柔軟に対応してくれる設計事務所や建築事務所へ相談するようにしましょう。
小さい家だと工事期間も短くなる?
建物が小さくても工事期間は一般的な住宅とほとんどかわりません。逆に狭小住宅の場合だと工期が長くなってしまう恐れの方が高いです。
理由は敷地に余裕がないので、木材置き場などの問題で効率よく工事を進めることができないケースもあるからです。
家が小さいと耐震性が弱くなったりしませんか?
もちろん一定の耐震性を確保してないと建築許可がおりませんので、最低限の耐震性は確保されていると考えて問題ありません。
ただし、変形地などに建てる特殊なデザインの住宅になると耐震性という面では総二階などに比べ弱くなってしまう部分があるのも事実です。
小さな家だからこそ、なるべくシンプルなデザインになるよう間取りを工夫しなければなりません。
ただし3階建て住宅にする場合は、構造計算が不可欠なので、耐震性もしっかりと確保されています。
まとめ
今回は20坪の家を建てる際のポイントについて解説しました。
建築費はハウスメーカーで2,000万円、ローコスト住宅であれば1,400万円くらいを目途に考えておくようにしましょう。
20坪の住宅だと間取りの提案やデッドスペースの活用など、狭小住宅の建築経験が豊富な住宅会社にお願いする方が安心ですが、地元の工務店にお願いする場合はとくに気をつけておく必要があります。
ハウスメーカーや工務店選びで迷っているなら、まずは気になる業者からカタログを取り寄せ比較検討してみてはどうでしょう。