「注文住宅の一戸建てを建てることは決まったけど、ハウスメーカー・工務店・設計事務所(建築士)の、どこに頼むのが自分たちに合っているのだろう?」と、悩んだりしてませんか?
依頼先の住宅会社によって、工法や構造も違いますし、契約の流れも異なるので、まずはこの3社の違いについて学んでおくことが大事です。各住宅会社の特徴を理解すれば、おのずとどこに依頼すべきなのかという答えも見えてくるはずです。
この記事では、各住宅会社が建てる家の特徴や価格などを詳しく解説しますので、この内容を参考にして、理想の家の実現に向けて家づくりを進めていきましょう。
- 【目次】ハウスメーカー・工務店・設計事務所を比較
ハウスメーカー、工務店、設計事務所は何が違うのか
ハウスメーカー・工務店・設計事務所(建築士)の違いに関して、明確に答えられる人は少ないと思います。
「作っているものは同じ家だから、そんなに大きな違いはないだろう」、と思っている人もいるかもしれませんが、この3社はまったく異なります。
3社の違いを表にまとめましたので、まずはこちらをご覧ください。
ハウスメーカー | 工務店 | 設計事務所(建築士) | |
---|---|---|---|
価格 | 坪単価40~65万 | 坪単価45~60万 | 坪単価55~75万 |
工法 | ○ | ▲ | ◎ |
外観 | ○ | ▲ | ◎ |
間取り | ○ | ○ | ◎ |
工期 | 3ヶ月~6ヶ月 | 4ヶ月~6ヶ月 | 4ヶ月~6ヶ月 |
保証 | ◎ | ▲ | ▲ |
このように比較してみると、工法の自由度や住宅に関する部分を見ると、一番融通が利くのは設計事務所だということがわかりますが、価格の面では一番高額になってしまいそうですし、メンテナンスやアフターの心配もあります。
このように各住宅会社によって一長一短があるので、どこに依頼しても同じだと思い契約してしまうと、予想していなかった部分で問題が起こってしまうことがあります。
ハウスメーカーの特徴
テレビCMなどもやっていて、知名度という面では軍を抜いています。大量仕入れや工場でプレカットを行い、仕入れや建築のコストを抑える努力をしています。
しかしその反面、宣伝広告費はもちろん、営業所や営業マンにかかる経費が多く、それらの費用が坪単価に織り込まれているので、最終的に割高な価格になってしまいます。
大手やローコストなど、さまざまなハウスメーカーがあるので、価格や工法は比較的自由に決めることができます。
モデルハウスや資料カタログなどが充実しているので、家のことがまったくわからなくても、完成後がイメージしやすいというのもハウスメーカーの強みです。
工務店の特徴
工務店は、地元を中心に戸建て住宅を建てている会社のことです。数県にまたがり大規模な営業を展開している工務店もあります。
最近では、大規模展開している工務店のことを「ビルダー」と呼んだりもします。ハウスメーカーのように大掛かりな宣伝広告はしていませんし、営業所も小規模ということで、坪単価はハウスメーカーよりも安価に設定されているケースが多いです。
住宅の工法は木造住宅が多く、ハウスメーカーほど自由に工法を選ぶことはできません。
工務店は規模が小さいため、倒産リスクがつきまといます。工務店自体の質にも差があり、良い工務店と悪い工務店があるという話しは以前からずっと言われ続けています。
管理人の地元にあった一番大きい工務店も、土地開発した団地の地盤沈下と崖崩れにより、その保証問題に耐えれるだけの体力がなく倒産してしまいました。
設計事務所(建築士)の特徴
ハウスメーカーと工務店は比較的似ているのですが、この設計事務所(建築士)というのは、まったくの別物だと考えてください。
簡単に言うと、ハウスメーカーや工務店というのはあくまでも家を建ててもらう依頼先です。しかし設計事務所というのは、依頼先というよりも代理人と考えたほうが適切だと思います。
例えば、あなたが一級建築士の資格を持っているとします。しかし建築関係の仕事には就いておらず、別の仕事をしています。
そのような状況で自分の家を建てるとなったらどうするでしょうか。ハウスメーカーなどに依頼せずに自分で間取りを設計して、こだわりがある材料をなるべく安く仕入れ、知り合いの大工さんや職人さんに依頼して家を建てると思います。
つまり、あなたに変わってそれをやってくれるのが「建築士」というわけです。
よって、ハウスメーカーや工務店にある「標準仕様」というものは一切ありません。すべてを1から組み立てて作りあげていくのが設計事務所の特徴なので、本来の意味での注文住宅というのは設計事務所だけかもしれません。
住宅会社3社の違いをもっと詳しく解説
簡単にハウスメーカー、工務店、設計事務所の違いを解説しましたが、なんとなく理解できたでしょうか。
ここからは、3社の価格・工法・間取りについて、もう少し詳しく解説します。
ハウスメーカーをより詳しく解説
ハウスメーカーといっても、大手ハウスメーカーもあれば、ローコスト住宅を売りにしているハウスメーカーもあり千差万別です。家を建てる工法は木造住宅が主体なのですが、軽量鉄骨や輸入住宅を扱うハウスメーカーもあります。
家を建てると思い立ったとき、まず住宅展示場に行くと思います。これらの住宅展示場にある住宅は、基本的にハウスメーカーが多く、その中に1棟か2棟くらい地元の工務店の住宅が入ってる、ということが多いようです。
ですので、誰しも「家を建てる=ハウスメーカー」というように考えるのが自然なことだと思います。展示場に足を運び、実際の家を見たり触れたりしながら、マイホームへの夢を膨らませることができるのもハウスメーカーの強みです。
しかし、ハウスメーカーの種類は日本全国で40社~50社もあるといわれ、その中でも大手と呼ばれる業者だけでも10社以上あります。
その中から、「どのハウスメーカーが自分たちの一番理想とする家を建ててくれるのか」、「予算内で建てることができるハウスメーカーはどこなのか」を選ぶことになり、その業者の選出が注文住宅を建てるときの第一の難所と言われています。
ハウスメーカーの価格
ハウスメーカーの価格にはバラつきがあります。積水ハウスや大和ハウスのような大手ハウスメーカーは、坪単価60万円を切ることはまずありません。タマホームなどのローコスト住宅であれば坪単価40万円前後です。
同じ40坪の家でも建築価格1,500万円で建てることができる場合もあれば、3,000万円近くかかるケースもあるということです。
値引き交渉に応じてくれるハウスメーカーも多いのですが、だいたい坪単価で2万円~5万円くらいだと考えておきましょう。ただし、見積り額から一切値引きには応じてくれないハウスメーカーもあります。
ハウスメーカーの工法
ハウスメーカーの工法は自由度が高いです。木造と鉄骨造に分かれていて、積水ハウスや大和ハウスは軽量鉄骨メイン、住友林業やタマホームは木造がメインとなっています。
同じ木造でも、軸組み工法や、2×4工法などに分けられており、自分たちが希望する工法を扱うハウスメーカーと契約するのが一般的です。
各工法の違いや特徴については、ハウスメーカーの展示場へいけば営業担当の人が詳しく教えてくれますし、自社の特徴についても話をしてくれると思いますので、木造軸組工法で建てると決めていたとしても、なるべく多くのハウスメーカーから話を聞くことをおすすめします。
ハウスメーカーの間取り
木造軸組であれば、比較的自由に決めることができますが、2×4など仕切りや壁面にパネルを使う枠組壁工法やパネル工法では、どうしても間取りの制限を受けやすくなります。
そのため、間取りこだわりがある場合は、木造軸組工法を採用しているハウスメーカーを選ぶことをおすすめします。
工務店をより詳しく解説
ここでいう工務店とは、地元密着型で営業している建築会社のことを指します。○○工務店や、▲▲建築会社という名称の会社でも、家づくりの方法がまったく異なるケースがあります。
たとえば、○○工務店は自社で設計士や工事部門まで抱えている会社なのに対し、▲▲建築会社は基本的に図面や住宅の仕様だけを決めて、工事などはすべて地元の大工さんや建築会社に外注するやり方の会社です。
当然、会社としての信頼度はすべて自社でまかなっている○○工務店の方が上です。
地元密着型の工務店は、建築中も引渡し後も何でも相談できるという強みがある反面、やはり会社としての体力は大手ハウスメーカーに敵いませんので、何かあったときに倒産というリスクが考えられます。
工務店の価格
工務店の価格帯は、大手ハウスメーカーよりも低く設定してあります。坪単価では40万円~50万円ほどの会社が多く、ハウスメーカーのように坪単価70万円という高額なケースはほとんど見受けられません。
最近テレビCMなどでも目にする機会が増えた、「建築費700万円台」という超ローコスト住宅は、地元密着型の工務店だったりします。
大手ハウスメーカーよりも安いけど、ローコスト住宅よりは少し高い。ちょうど大手ハウスメーカーとローコスト住宅の中間的な価格帯、と考えておけば良いでしょう。
工務店の工法
工務店のほとんどが木造軸組工法です。たまに木質パネル工法や、2×4を取りいれている工務店もありますが、基本的には現場でいちから作り上げていく「軸組工法」を採用している会社が多いです。
軸組工法以外だと、工場である程度生産して現場で組み立てるという方式が多いため、工場をもたない工務店はどうしても軸組工法が多いようです。
工務店の間取り
木造軸組工法が多いため、間取りの自由度はハウスメーカーと変わらず、2×4などのハウスメーカーよりも制限を受けることが少ないと思います。
よほど特殊な間取りになると、設計士や現場の職人さんのレベルの問題になりますが、一般的な間取りであれば問題なく建てられます。
ハウスメーカーも地元の大工さんや職人さんたちが建てるので、そう考えれば地元密着で長年営業されている地元工務店の方が、腕の良い大工さんや職人さんを抱えている可能性が高いのかもしれません。
工務店にはコストを抑えるため注文住宅と謳いながらも、ほとんど間取りが決まっている「規格型住宅」を扱っている業者もあります。そうなると注文住宅のように自由に間取りを決めることができないので注意しましょう。
設計事務所(建築家)をより詳しく解説
プロの建築士が、相談~引渡しまで一環して施工・管理をしてくれるのは、とても心強いですよね。つまり、建築家に支払うお金は建築費ではなく設計・相談・管理費だと思ってください。
そのため、工事の請負契約は設計事務所とではなく、施工してくれる建築業者と締結することになるので、設計事務所の仕事は利益を出すことではなく、あくまでも依頼主が満足する家を建てることにつきます。
手抜き工事や安い木材を使ったとしても、工事代金は設計事務所ではなく施工業者に払うので意味がありません。
設計事務所に依頼した場合は、何もないところから家作りを始めることになりますので、使う木材や設備品などをすべて自分たちで決めていくことになり、まさにオールハンドメイド住宅という言葉がぴったりです。
ハウスメーカーや工務店であれば、少しだけ予算がオーバーしてしまったからといって、構造の一部分の木材だけグレードを落とすことはできませんが、設計事務所であれば問題なくできます。
設計事務所の価格
オールハンドメイドなので高いイメージがありますが、「この予算内でおさめて欲しい」といえば、その予算内で建てることができるプランニングをしてくれますので、ハウスメーカーや工務店よりも価格の融通がききます。
ですが、ハウスメーカーや工務店であれば間取りやプランニングが建築費に組み込まれていますが、設計事務所の場合は別途費用が発生します。そういった部分が、高額になってしまうというイメージを与えているのかもしれません。
設計事務所に依頼したときの相場としては、建築代金の1割程度だと考えておけばいいでしょう。これが建築家に支払う報酬ということになります。
設計事務所の工法
設計事務所に依頼すれば、工法も自由に決めることができます。ただし建築家にも得意・不得意があります。一級建築士だから家のことはなんでも知ってるというわけではありません。
医者でも内科や耳鼻科など、専門とする箇所が違うように、建築家にも木造住宅が得意な人もいれば、RC造や狭少住宅のプランニングを得意としている人もいますし、電気設備に弱かったり、法規事項に弱い人もいます。
相談から引渡しまで一貫して担当してくれるので、設計事務所と契約する場合に一番大事なことは担当者との相性です。この部分は、ハウスメーカーや工務店よりも大事になるでしょう。
ハウスメーカーを選ぶのと同じように、依頼する設計事務所や建築家は、慎重に選ぶ必要があるということです。
設計事務所の間取り
設計事務所は、間取りも自由に作ることができます。ハウスメーカーや工務店で自分の希望とする間取りがNGだと言われたら、最後に頼るところは設計事務所しかありません。
ハウスメーカーや工務店ができないことでも、柔軟にやってくれるのが設計事務所の強みでもあります。
弱点をあげるならば、ハウスメーカーのように実際にあるモデルハウスなどを見学して、実感することが難しい点です。たまたま引渡し間近の家があれば見せてもらえますが、都合よくあるものではありません。
実物をみて決めることができない分、いざ完成してみたら「イメージよりもリビングが狭く感じた」、などの失敗談はよく耳にします。
気に入った間取りのモデルルームがあるのなら、建築士にお願いして一緒についてきてもらいましょう。
ハウスメーカーには建築士ということを伝えなければ、「モデルルームを見学にきた人」くらいにしか思われませんし、みなさん同じことをよくやられていますので問題ありません。
それぞれのスケジュールと契約方法の違い
ハウスメーカーと工務店はスケジュールに大きな違いはありませんので、ここではハウスメーカー&工務店と、設計事務所(建築家)を比較します。
まずはハウスメーカー&工務店(上段)と、設計事務所(下段)の、「相談~引渡しまで」の流れをご覧ください。
設計事務所では、まず「設計委託契約」と、「監督委託契約」をしなければ、話が先に進まないことがわかると思います。設計事務所は設計を請け負うことが仕事なので、ハウスメーカーや工務店のように、「納得できた段階で契約してください」というわけにはいきません。
上記でも説明しましたが、設計事務所とは工事に関する請負契約は一切交わしません。あくまでも工事を請け負うのは施工業者ということになるため、ここでもまた手付金の支払いが発生することになります。
相談から完成引渡しまでの期間は、おおむね以下のように考えておくと良いでしょう。
ハウスメーカー
6ヶ月~10ヶ月(工期は3ヶ月から6ヶ月)
工務店
6ヶ月~12ヶ月(工期は4ヶ月から6ヶ月)
設計事務所
8ヶ月~14ヶ月(工期は5ヶ月~7ヶ月)
より細かい打ち合わせが必要な、設計事務所の期間が長くなるのは仕方ありませんが、工務店では一度に抱えきれる現場に限りがあるため、繁忙期などは工期が大幅に伸びる傾向が強く見られます。
まとめ
まずはハウスメーカー&工務店で建てるのか、それとも設計事務所の建築家にまるごと代理依頼をお願いするのか、という二択のどちらか決めるところから始めましょう。
上記でも説明しているように、ハウスメーカー&工務店と設計事務所(建築家)では、相談~引渡しまでのスケジュールがまったく異なります。
まずはどちらに依頼するのかを始めの段階でに決めることで、そこから先のスケジュールも自然と決まっていくと思います。
ハウスメーカー・工務店・設計事務所(建築士)それぞれ特徴を理解して、自分に合った会社を見つけることが、満足のいく注文住宅づくりへの第一歩だと思うので、家族で話し合って慎重に決めるようにしましょう。