売電システムを利用したローン0円住宅は本当に得なのか?

売電システムを利用したローン0円住宅は本当に得なのか?

戸建て住宅の広告で「住宅ローン0円で新築マイホームが手に入ります」という、折込チラシなどを目にする機会があると思います。

住宅ローン0円で新築のマイホームが手に入るとは、いったいどういう意味なのか、不思議に思う人もいるでしょう。

そこで今回は、このローン0円住宅の仕組みについて解説します。実際に住宅ローンの支払いが0円で、新築のマイホームを手に入れることができるかについて解説していきますので参考にしてください。

【目次】売電システムとローン0円住宅
  1. ローン0円住宅の仕組み
    1. 太陽光発電で住宅ローンが0円になる?
    2. 20kwの太陽光パネルの設置は可能?

  2. ローン0円住宅は可能なのか?
    1. ローン0円のシュミレーション
    2. ローン0円住宅が注目を集めた理由
  3. ローン0円住宅の問題点
    1. 発電量が天候に左右される
    2. 金利が上昇するリスク
    3. 売電収入と税金の話
    4. 初期投資費用が高い
  4. 太陽光の売電収益と住宅ローン審査
  5. ローン0円住宅の相談ができるハウスメーカー
  6. まとめ

ローン0円住宅の仕組み

ローン0円住宅というのは、簡単に説明すると太陽光発電システムで創った電気を売り、その収益を住宅ローンに充当するというシステムだと思ってください。

一般的な家庭の太陽光発電システムというのは、基本的に屋根に設置されていますが、ただ屋根に設置しただけでは、そんな住宅ローンを補えるほどの電気を創ることはできません。

せいぜい月10,000円~20,000円ほどの、売電収入が見込める程度です。

しかし住宅ローンを0円にすると言ってるのですから、当然それだけの売電収入では足りません。よってローン0円住宅というのは、大量の太陽光発電パネルを搭載し、より多くの売電収益を確保する必要があるということです。

太陽光発電で住宅ローンが0円になる?

それでは実際に住宅ローンの支払いを太陽光発電の収益で補うためには、どれくらいの収益が必要なのか計算してみたいと思います。

すでにマイホームを建てるための土地は所有しているという前提で話しをします。ローコスト住宅だと、建物の建築コストは坪あたり40万円で済ませることもできるでしょう。

一般的な戸建て住宅の平均延べ床面積は、坪数にすると35坪程度なので、建築コスト40万円×35坪=1,400万円という計算になります。さらに外溝工事費や、住宅ローン借りいれ時の手数料などもかかるため、諸経費や別途工事費として300万円ほどみておきましょう。

建築コスト1,400万円に、諸経費300万円ですので、単純計算で1700万円あれば家を建てることができます。さてこの1700万円を住宅ローンとして借り入れた場合、毎月どれくらいの返済額になるのでしょうか。

35年全期間固定金利を1.40%で計算すると、月々の住宅ローン返済額は約51,000円となります。平成29年度の売電買取単価は、25円~30円ですので、平均した27円で計算すると、51,000円の売電収益を得るためには、毎月1,890kwの電力を売らなければならない計算になります。

これだけの発電量を確保するためには、管理人の計算では15kw~20kwの太陽光パネルが必要だと思います。つまり一般家庭が屋根に載せている太陽光パネルが、平均すると5kw程度なので、その約3倍~4倍の太陽光パネルが必要になる計算です。

20kwの太陽光パネルを設置することは可能なの?

20kwほどの太陽光システムがあれば、住宅ローンの返済額を売電収益で補える可能性があることはわかりました。では、個人の戸建てに20kwの太陽光発電システムを設置することは、本当に可能なのでしょうか?

答えは「Yes」で、可能といえば可能です。ただし、一般的な戸建ての屋根に20kwもの太陽光パネルを設置するのは難しいです。

ですので屋根だけでなく、駐車場や庭の一部にも太陽光パネルを設置して、やっと20kwの発電量を確保できると思います。

もちろん太陽光パネルの設置枚数が多くなれば、それだけ太陽光システムの初期費用も高額となり、さきほどシミュレーションした、1,700万円で家を建てるという予算組みも変わってきます。

本当にローン0円住宅は可能なのか?

可能なのか?と問われれば、可能だと思います。実際にローン0円というのを売りにしている建築会社も日本中には多数あります。

しかし家の屋根だけでなく、駐車場や庭にまで太陽光パネルを設置すると、やはり気になるのは近所の目です。

太陽光パネルの反射光が原因で、近隣トラブルになる可能性だってあります。そういったことを気にしなければ、ローン0円住宅は現実的に可能だと思います。

太陽光でローン0円のシュミレーション

せっかくなので、管理人の友人が建てた戸建て住宅を例に試算してみたいと思います。

これは管理人の友人にお願いして、実際の発電量と売電価格のリストを頂き、それらの数値をもとにシミュレーションした結果です。

2016年10月に完成した新築戸建て住宅なので、売電単価は24円+消費税(全量買取)

年月日 実質日数 売電量 売電収益
2016年11月 29日 847kwh 21,955円
2016年12月 29日 866kwh 22,447円
2017年1月 34日 963kwh 24,961円
2017年2月 28日 840kwh 21,773円
2017年3月 28日 987kwh 25,584円
2017年4月 33日 1182kwh 30,638円
2017年5月 31日 1312kwh 34,008円
2017年6月 28日 1166kwh 30,223円
2017年7月 33日 1361kwh 35,278円
2017年8月 31日 1407kwh 36,470円

この友人はローン0円住宅を建てたわけじゃありませんが、やはり住宅ローンの返済の足しにできればと思い、ハウスメーカーに薦められ、10kwもの太陽光発電システムを設置したと言ってました。

ちなみに土地込みのマイホーム購入なので、住宅ローン融資額は3,700万円ほどだそうです。土地の購入費を除けば、家の建築費はおよそ2,300万円弱だと言ってました。2,300万円の融資額として考えれば、住宅ローンの返済は月々69,000円ほどになります。

ですので、10kwの太陽光発電システムを設置したとしても、住宅ローンの半分も賄えてない計算になります。発電量が一番あがる8月で、やっと住宅ローンの半分ほどです。

なぜローン0円住宅が注目を集めたのか?

このように10kwの太陽光発電システムを設置しても、住宅ローンの半分ほどしか賄うことができません。ではなぜ、ローン0円住宅がこれほど注目を集めたのか?

それは時期の問題が大きく関係していると思います。ご存知の人も多いかと思いますが、電力の買取価格は年々下がっています。

例えば2012年当時だと、電力の買取単価は1kw42円で、契約期間は10年間でした。それが2017年現在、電力の買取単価は21円(全量買取)まで下がってしまい、契約期間も同じく10年と変わらないままです。

つまり2012年当時であれば、たしかに10kwほどの太陽光システムを設置することで、住宅ローンの大半を賄うことが可能だったのです。

ローン0円住宅には、実は多くの問題点がある

ここまで説明してきたように、買取単価が20円台となった今では、住宅ローンの大半を太陽光発電システムの売電収入でまかなうのは、相当厳しいイメージがあります。

さらに太陽光発電システムのローン0円住宅には、いろいろと疑問に思う問題点があるのです。

  • 発電量が天候に左右される
  • 金利が上昇するリスク
  • 売電収入と税金の話

すぐに思いつくものだけでも、この3つがあります。

発電量が天候に左右される

管理人の地元は、日本の中では日照時間が長い九州にあります。さきほど月々の売電収入の例を出した数字もやはり九州に住む友人の家です。

ご存知のように太陽光発電システムは、天候によって大きく左右されます。そしてもう1つ時期によっても、売電収入の額は大きく違ってきます。

特に冬場は日照時間も短く、売電収入は夏場に比べると大きく減ってしまう傾向にあります。さらに言うと、東北より北側では積雪の問題も考えなければなりません。

太陽光発電システムは、太陽光パネルに雪が積もると、大幅に発電量が下がります。積もった量によっては、ほぼ発電量はゼロになると言っても過言ではありません。

ただでさえ難しいローン0円住宅ですから、これが東北より北側になれば、さらに難しい状況であることが理解頂けると思います。

金利が上昇するリスク

このローン0円住宅というのは、現在の低金利時代だからこそ実現できた夢物語だともいえます。低金利と高額な買取単価が符号したことで、実現できたのです。

もし太陽光の売電収益で住宅ローンを賄おうと思ったら、多くの人が金利が安い変動金利や5年、10年という短期固定金利を選択するでしょう。

5年後や10年後の金利見直し時期に、今よりも金利が上がってることを想定したらさらにローン0円住宅を売電収入だけで補うのは、相当厳しくなります。

5年後や10年後に今よりも金利が下がるのは難しいと思いますし、可能性としては、金利は今よりも高くなることが想定できます。

金利が仮に今より1.0%上昇していたら、月々の住宅ローン返済額は約81,000円ほどになります。さきほどの69,000円から比較しても、約12,000円も返済額が上がってしまうのです。

売電収入と税金の話

発電量と天候や時期の話し、そして金利上昇の話しはローン0円住宅を語るうえで、よく引き合いに出されている話しです。

しかし実はあまり注目されてない問題点がもう1つあることに気付きました。それが税金の問題です。

今の時代、ローン0円住宅を達成するには、最低でも20kw相当の太陽光パネルを設置しなければならないという話しをしました。しかし、20kw相当の太陽光パネルを設置することで得られる売電収益は、俗に言う副収入として税の申告をしなければならないほどとなります。

太陽光発電システムで得ることができる売電収益は、設置方法や設置量によって所得のカテゴリーが違います。事業所得となる場合もあれば、雑所得として計上する場合もあります。

一般的な家庭の太陽光発電システムによる、売電収益であれば雑所得扱いとなるので、もろもろの経費を差し引いて、年間20万円以上の収益があれば税の申告の対象となります。

しかし一般家庭の太陽光システムは、平均して5kw程度の発電量なので、月の売電収益はせいぜい10,000円程度です。

10,000円×12ヶ月なので、年間を通して120,000円ほどの収益しかなく、これくらいの所得であれば、別途確定申告をする必要はありません。

しかしこれが10kwや20kwの太陽光システムとなれば、それだけ売電による収益も増え、年間を通して20万円を超えてしまうので、雑所得として確定申告をしなければならなくなります。

雑所得の税率は約20%

確定申告が必要になると聞いただけでも、嫌だなと感じる人は多いと思います。そうなんです、実際に確定申告を嫌う人は大勢います。

理由はひとつ、面倒だからです。確定申告なんて普通のサラリーマンであれば、会社が代理でやってくれるので個人単位でやる必要がありません。

しかし自分で確定申告をするとなれば、書類の準備や作成に時間を取られてしまいますし、何より追加で税金を徴収されてしまうのが痛いです。

雑所得の場合ですと、税率は約20%と考えてください。つまり、仮にローン0円住宅として毎月5万円の売電収入を得ている場合、確定申告する必要があり、そうすることで売電収入で得た金額の約20%を所得税として税金を収めなければなりません。

月々50,000円×12ヶ月=600,000円の収入を得ていることになります。よって税率を20%とするなら、600,000円×20%=120,000円もの税金を納めることになります。

そうなると実質太陽光発電システムで得ることができる収益は、当初想定していた600,000円ではなく、税金分を差し引いた480,000円ということになります。

※参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/index.htm

初期投資費用が高い

ここまで理解してもらったところで、最後のシミュレーションをしたいと思います。

ここまでの話しをまとめると、今の買取単価20円台であれば、ローン0円住宅を達成するには、最低でも20kw相当の太陽光システムを設置しなければならないことは理解いただけたと思います。

そこで問題となるのが太陽光システムの初期投資費用です。一般家庭のように5kw程度であれば、今はずいぶんと安価になっているので初期投資費用は140万円~170万円ほどで済ませることが可能です。

しかし20kwとなれば単純に一般家庭の4倍です。当然初期投資費用も4倍になるので、少なく見積もっても140万円×4倍=560万円となります。

果たしてこの560万円を住宅ローンに組み込むと、毎月どれくらいの費用を返済していくことになると思いますか?

これまでと同じように、全期間固定1.4%の金利で計算すると、月々の返済額はおよそ17000円弱となります。17,000円×12ヶ月とするなら、1年間の返済額は204,000円ほどです。

先ほど税金などを差し引いた、売電収益は年間で480,000円相当だという話しをしましたので、そこからこの204,000円を差し引くと、480,000円ー204,000円=276,000円となります。

つまり純粋に住宅ローン返済に充当できる売電収益は、1ヶ月に換算すると「276,000円÷12ヶ月」なので、わずか23,000円ほどしかないことがわかります。

20kwもの太陽光システムを設置しても、わずかこれくらいの住宅ローン返済額しか賄えいというのが管理人の考えです。

太陽光の売電収益が住宅ローン審査の対象となる

ここまで太陽光発電システムの盲点をつくような話しばかりしてきたので、最後にメリットとなる話しもしておきます。ただ今回はローン0円住宅としての話しでしたので、太陽光発電システムがダメだと言ってるわけじゃありません。

一般家庭のように、電力の大半を太陽光システムでまかない、余った電力を売電するというシステムについてはおおいに賛成です。

さらにメリットとなる話しとして、最近はこの太陽光発電システムによる売電収入を、住宅ローン審査に加味する金融機関が増えていることです。

つまり太陽光システムによって得ることができる売電収益を、住宅ローン申請者の年収と合算して、ローンの審査をしてくれるというのです。これにより年収が少なく住宅ローン審査に不安をもっていた人でも、住宅ローンを借りられる可能性が大幅にアップすることでしょう。

ローン0円住宅の相談ができるハウスメーカー

物理的には大容量の太陽光パネルを設置すれば、ローン0円住宅は可能です。しかし積水ハウスや住友林業など、大手のハウスメーカーで「ローン0円住宅を建てたいです」といえば、あくまでも管理人の個人的想像ですが、営業担当さんから鼻で笑われてしまう可能性が高いと思います。

そんな嫌な思いはしたくないですよね。だったらある程度ローン0円住宅に理解をもってるハウスメーカーに相談するのが、得策だと思います。

そこで話しを聞いてみて本当に実現可能だと思ったら、その知識を持って大手の積水ハウスやダイワハウスなどに相談にいくと、また違った結果が得られるのではないかと思います。

簡単ですが、ローン0円住宅に理解があるハウスメーカーを2社ほど紹介しておきます。

イシンホーム

すでにローン0円住宅に興味を持っている人であれば、ご存知かもしれませんが、ローン0円住宅の火付け役となったのが、こちらのイシンホームです。

ですのでインターネットで「ローン0円住宅」と検索すれば、真っ先にヒットするのがイシンホームだと思います。それくらいローン0円住宅に力を入れており、2017年現在でもローン0円住宅を提案し続けているハウスメーカーです。

イシンホームは全国展開してるハウスメーカーなのですが、積水ハウスやダイワハウスなどとは違い、フランチャイズ化して全国展開してます。

有名どころでいえばアイフルホームやユニバーサルホームなどと同じシステムです。つまり、地元にイシンホームがあっても、実際その会社というのは、もともとその地域で経営していた○○工務店だったりするわけです。

その○○工務店が、イシンホームの住宅をメイン商品として扱うフランチャイズ契約をしてるということになります。

イシンホームのローン0円住宅の平均坪単価は、50万円~55万円ほどだと言われております。

すごい数の太陽光パネルですが、実際にこれくらいのパネルを設置しなければ、とてもローン0円住宅の実現は無理なのでしょう。

出典:http://www.matsui-sangyou.co.jp/blog/blog_top/20631.html

一条工務店

一条工務店も全国展開している住宅メーカーです。こちらはイシンホームとは違い、自社にて全国展開をしています。

社名からして地元工務店のように勘違いされやすいですが、木造住宅では住友林業につぐ建築シェアを誇っており、大手ハウスメーカーという括りに入るほどの大手です。

こちらの一条工務店の売りは、なんといっても大容量の太陽光発電システムと、業界トップレベルの高気密・高断熱住宅でしょう。

管理人も一条工務店のことは良く知ってますが、高気密・高断熱に関しては本当に昔から力を入れている会社であり、業界関係者からも高い評価を得ています。

ただイシンホームに比べ、建物の建築コストは少々高く、平均の坪単価60万円台になります。

以前はレンガを大量に使った特徴のある概観の家が多く、それにより好き嫌いがはっきりわかれていたのですが、最近の住宅はレンガ風の概観をおさえており、見た目で判断する人が減ったように思います。

それともう1つ言い忘れていましたが、一条工務店といえば免震住宅でも有名ですね。

地震に強く、高気密・高断熱のレベルが高く、それでいて大容量発電にも積極に取り組んでいるので、新築住宅を検討しているのであれば、一度話しを聞いておくだけでも家づくりの参考になると思います。

まとめ

ローン0円住宅は、売電の買取単価が高かった時代であれば、かなり現実味がある話しでした。しかし、今のように買取単価が20円台となっては、いくら大容量の太陽光システムを設置しても、現実的には相当厳しいというイメージです。

今後、買取単価が再度高くなることは、大きな災害や有事が起こらなければ考えられません。そうなると、やはり売電収益で住宅ローンのすべてを賄うというのは、よほど特殊な方法でなければ現実的ではないように思います。

それでも2017年現在もローン0円住宅を宣伝文句にしてる建築会社は多数存在しています。もしこれからローン0円住宅を検討するのであれば、その建築会社に今回提案してるような「税金の話」や「天候や時期の問題」について、しっかりと質問をし、納得ができる回答をしてくれるかで検討するべきだと思います。