建築条件付きの土地を購入するメリットとデメリット

建築条件付きの土地を購入するメリットとデメリット

『建築条件付きの土地』と聞くと、建物に制限が掛かる「条件」だと思っている人が多いですが、そういう意味とはまったく違います。

建築条件付きの土地とは、「指定された工務店やハウスメーカーなどの建築会社でしか、家を建てることができない土地」という意味です。

つまり、建築条件付きの土地を販売しているのは、その建築会社や提携している不動産会社というわけです。

「A建築会社で家を建ててくれるのであれば、この土地を売ってもいいよです」と、あらかじめ建築会社が決められています。そのため「紐付き土地」とも呼ばれます。

今回は、この建築条件付きの土地について、わかりやすく解説します。

【目次】建築条件付きの土地の購入について
  1. 建築条件付き土地を購入するメリット
    1. 近隣の平均相場よりもかなり安価で販売されている土地が多い
    2. なかなか売りに出ないような好立地の土地が多い
    3. 建売住宅と違い建築過程を自分の目でチェックできる
    4. 好きな区画や価格の土地を選ぶことができる
    5. 建築会社と同じなのでつなぎ融資の必要がない
    6. 建築条件付きの方がローンが通りやすい?
    7. 近隣も同じタイミングで引っ越してくる
  2. 建築条件付き土地を購入するデメリット
    1. 好きな建築会社で家を建てることができない
    2. 家の性能や施工レベルに問題がある建築会社が多い
    3. 注文住宅のはずなのに間取りや設備品の制限が多い
    4. 買主の弱点を業者側に握られている
    5. 時間的な余裕がなく自分のペースで家づくりができない
  3. まとめ

建築条件付き土地を購入するメリット

建築条件が付いている土地は、家を建てる建築会社が決められているため敬遠されがちですが、その1点を除けば意外と多くのメリットがあります。

  • 近隣の平均相場よりも、かなり安価で販売されている土地が多い
  • なかなか売りに出ないような、好立地の土地が多い
  • 建売住宅と違い、間取りを決めたり、建築過程を自分の目でチェックすることができる
  • 早い段階で購入すれば、好きな区画や価格の土地を自由に選ぶことができる
  • 土地販売会社と建築会社が同じなので、つなぎ融資を利用する必要がない
  • 開発分譲地が多く、近隣も同じタイミングで引っ越すのでコミュニティが作りやすい

近隣の平均相場よりもかなり安価で販売されている土地が多い

近隣の土地価格相場と比較すると、建築条件が付いている土地は割安で売りに出されているケースが多いです。

例えば近隣の土地相場が1坪250,000円だとしたら、建築条件付の土地だと坪198,000円など、200,000円を切る価格設定もあります。

1坪あたり50,000円ほど違ってくれば、50坪~60坪の土地だと250万円~300万円も安く土地を買うことができる計算です。

この土地の安さに惹かれて、問い合わせの電話や土地見学にくるお客さんが後を絶ちません。

「なぜこんなに土地を安く販売できるのか」という疑問が出てくると思いますが、それは、単純に建物の建築費で損失をカバーできる仕組みになっているからです。

土地の坪単価を相場より50,000円安く販売しても、家の建築代金を坪あたり50,000円高めに設定しておけば、これで土地損失の分はカバーできてしまうカラクリです。

なかなか売りに出ないような好立地の土地が多い

なぜ建築条件をつけてまで土地を売り出すのか。それは、その土地の立地や周辺環境に自信があるからです。

建築条件をつけてでも、お客さんが買いたいと思う土地だからこそ、建築条件付の土地でも成り立つというわけです。

逆の言い方をすれば、建築条件をつけてでも売れる土地を狙い、土地所有者から好条件で土地を買い取っているということです。

また最近増えてきているのが、これまで市街化調整区域だった地域にある農地(田んぼや畑)を安価で買い取り、そこを開発申請して分譲団地として販売しているケースです。

よく新聞折込みチラシなどに、「春光の郷」、「希望ヶ丘団地」などの名前がついている分譲団地が売出されていますのが、その多くが元々農地や山林だったりします。

農地や山林であれば安価で買い取ることができるので、開発費を費やしてでも安値で土地を分譲できるのです。

田んぼや畑は、まとまった広さがなければ開発申請することができないので、1人の所有者の農地だけでは開発申請をすることができません。まわりの農地も買い取り、ある程度の広さを確保してから宅地へと変更するのが一般的です。

市街化調整区域の農地は、言い方は悪いですが二束三文でしか売れません。それを見越して50,000円~100,000円で買い取り、宅地造成してから坪200,000円や300,000円で売出せば、開発費用が掛かったとしても大抵損はしません。

さらに、家の建築でも利益を出すことができる仕組みになっています。

建売住宅と違い建築過程を自分の目でチェックできる

建売住宅と比較されることが多い、建築条件付の新築住宅ですが、大きく違う点が2つあります

  • 間取りを自分たちで決めることができる
  • 建築過程を自分の目でチェックできる

建売住宅は、ご存知のように、すでに完成している家を土地付きで購入する方法です。

建築付き土地であれば、家を建てる業者は指定されますが、間取りや仕様などはある程度自由に決めることができ、土地に基礎を組む段階から家の引渡しまで過程をチェックすることができます。

仕様書と違う材料が使われていないか、予定通りのスケジュールで工事が進んでいるか、どんな理由で工事が遅れてしまったのかなど、それらの過程を自分の目でチェックできるのは大きいです。

好きな区画や価格の土地を選ぶことができる

建築条件付きの土地といっても、1区画だけ販売されている土地もあれば、5~20区画の中規模、100区画以上の大規模分譲団地などもあります。

分譲開発されている団地すべてに建築条件がついているのであれば、購入する時期が早ければ早いほど、自分の気に入った土地を購入することができます。

もちろん角地などのほうが坪単価は多少高めに設定されていますが、建築条件付き土地の場合、1軒でも多くの新築マイホーム住宅が建っていることを印象づけるのが最優先課題なので、角地だとしても割と手ごろな価格設定にしてあります。

何区画かの中規模以上の分譲地において、比較的人気になりがちなのは、土地の形状が良い区画や角地です。

ただ、片隣が空き地になっている区画には注意が必要です。将来的にアパートが建てられたりする可能性もあります。

そのなかでも比較的安価で販売されるのが、道路に面している区画や、両隣に区画がある場所、土地の形状が悪い区画などです。

分譲地が必ず建築条件が付いているとは限りませんが、多くの分譲地は建築条件がついている可能性が高いと思います。ですので、建築条件がついている分譲地を検討するのであれば、なるべく早い段階で決断しほうが、好きな土地を選べてお得だと思います。

建築会社と同じなのでつなぎ融資の必要がない

建築条件付きの土地を販売しているのは、ほとんどが条件指定されている建築会社です。なかには不動産会社と提携している場合もありますが、個人の地主が土地を売り出すのに、建築条件などをつけることはまずありえません。

そうなると土地と建物の販売会社が同じと言うことになるので、住宅ローンも同時に組むことができます。その場合、つなぎ融資などを利用しなくてすむので、多少ですがつなぎ融資分の利息が浮きます。

建築条件付きの方がローンが通りやすい?

これは不動産営業マン時代に経験による管理人の個人的な見解なのですが、建築条件付の方が住宅ローンが通りやすい傾向にあると思っています。

すべての金融機関がという訳ではありませんが、基本的に土地開発して分譲するのであれば、土地開発をする際に多額の費用がかかります。当然開発販売する業者もその費用を銀行から借入れしています。

つまり、融資している銀行にとっては、その土地が売れなければ債権を回収できなくなってしまう恐れがあるということです。そのため、多少住宅ローンの審査が甘くなるのではないかと思いますし、実際にそのようなケースを何度か経験したことがあります。

以前編集長が大手ハウスメーカーで注文住宅の営業マンをしていたとき、地元の某S銀行に住宅ローンの申込みをしたお客さんがいました。そのお客さんはS銀行の審査に落ちてしまい融資を受けることができませんでした。

しかし、その同じ人が建築条件が付いている土地を他のハウスメーカーから購入することになり、その業者が提携していた同じS銀行に住宅ローンの申請を出しまいした。

すると、わずか4ヶ月くらいの期間しか経っていなかったのに、S銀行で住宅ローンを借りることができました。

たしかに管理人が勤めていた会社の方が、建築費総額は高かったのですが、それでも300万円ほどです。さらに、担保価値としては言うまでもなく当社の住宅の方が上でした。

その時は腑に落ちませんでしたが、当時の上司に「分譲地の方が審査に通りやすい」という話を聞き、納得したのを今でもよく覚えています。頭の片隅にでも覚えておくといいかもしれません。

近隣も同じタイミングで引っ越してくる

その建築条件付きの土地が分譲開発しているのであれば、近隣の人は同じ時期に家を建てた人ばかりなので、地域のコミュニティが出来上がってないのは引っ越す側としてはプラスだと思います。

すでに地域のコミュニティが出来上がっている街に、あとになって入っていくのはストレスにもなりますし、なにかと大変なことだらけです。

学校で言えば新しくクラス替えがある新年度に転校しているようなもので、学期の途中で転校するよりも格段に馴染みやすいと言うことです。

建築条件付き土地を購入するデメリット

建築条件付きの土地では、建築会社が限定されるデメリットに目がいきがちですが、じつはそれ以外にもあまり知られていないデメリットがあります。

  • 自分の好きな建築会社で家を建てることができない
  • 家の性能や施工レベルに問題がある建築会社が多い
  • 注文住宅のはずなのに、間取りや設備品の制限が多い
  • 買主の弱点を業者側に握られてる
  • 時間的な余裕がないので自分のペースで家を建てることができない

好きな建築会社で家を建てることができない

建築条件付きの最大のデメリットは、やはり自分が気に入った建築会社で家を建てることができないことです。これ以上のデメリットはないでしょう。

土地と建物を天秤にかけたとき、圧倒的に土地を選ぶ人が多いのが現状です。

たしかに、家は後々リフォームすれば、ある程度理想の家に近づけることはできますが、土地の環境や立地はどうすることもできません。ですので、家よりも土地を重視したいと考える人が多いのも、仕方がないことなのかもしれません。

家の性能や施工レベルに問題がある建築会社が多い

家単体で売ることができる自信がないから、良い立地の土地を建築条件付きで販売しているという考え方にもなります。

管理人がハウスメーカーに勤めていたときから、建築条件付の土地を販売している会社のことをずっとそう思ってました。

これは管理人が住んでいる街の話しなのですが、やはり元ハウスメーカーの営業マンという目線からみて、家の性能や施工レベルが低い建築会社に限って、建築条件が付いている土地を扱っているイメージがあります。

もちろん大手の積水ハウスやダイワハウスが、ときどき建築条件付きの土地を販売していることもありますが、全国展開しているような大手ハウスメーカーは別として、地元規模で営業している建築会社だと、どうしてもそう思えてしまいます。

注文住宅のはずなのに間取りや設備品の制限が多い

建築条件付きの場合、建物にあらゆる制限が設けてあることもあります。注文住宅を建てるのに、自由に設備や間取りを変えられないということです。

木造住宅にしか対応してないというのはまだ良いとしても、間取りを自由に決めることができなかったり、キッチンなどの設備品も指定されたリストの中から選ぶようになっているケースが多いです。

言い方は悪いですが、「え!?こんな工事も対応できないの?」というような制限もあります。

極端な例かもしれませんが、リビングのフローリング材を指定したとき、その材木は提携している業者が扱ってないので、別途取り寄せとなれば高額になりますと言われることもあります。

一階の一部を美容室などの店舗にしようと思い、店舗部分だけ打ちっぱなしのRC造にして欲しいと打診したら、対応してないので出来ないと言われたケースもあるようです。

注文住宅という売り込みですが、建築条件付きの注文住宅となると、「建売住宅と注文住宅の中間」と考えておくのが妥当かもしれません。

買主の弱点を業者側に握られている

建築条件付の土地の場合、施主は「良い立地の土地を格安で売ってもらえる」という弱みを握られているのと同じです。どうしてもその土地が欲しいと思っている買主の場合、ある程度のことを妥協してでも、その土地が欲しいと思うはずです。

当然、それを業者側も理解しているので、業者主導で話が進んで行きます。

施主が、「どうしても来年4月に子供が小学校に進学するので、それまでに家を完成させたい!」と訴えても、業者側が「他の住宅の建設もあるので、それは無理です」と言われてしまいえば、もうどうすることもできません。

分譲団地の規模によっては、建築請負契約から工事開始まで何もせずに3ヶ月や半年待たされたりするケースもあるようです。

ですが、「無理なら他の業者に依頼する」とはいえませんよね。

表面上はお客さん扱いしてくれますが、いざ問題が発生した場合など、いっきに立場が逆転してしまう恐れがあります。土地という最大のウィークポイントを握られてしまっている以上、この立場が逆転することはありません。

時間的な余裕がなく自分のペースで家づくりができない

建築条件付の場合、その多くが土地の契約をしてから3ヶ月以内に家の間取りや仕様を決めることになっています。この3ヶ月という期間ですが、実際に家を建てた経験がある人ならわかると思いますが、相当短いです。

管理人がハウスメーカーの営業マンだったころ、間取りから仕様をすべて決めるまで、隔週ごとの週末に打ち合わせをして2ヶ月~3ヶ月くらいは掛かってました。

しかも、これはあくまでもスムーズに進んだ場合です。なにかトラブルが起これば到底3ヶ月という期間では終わりません。仮にトラブルが起こらなくても、優柔不断なご夫婦であれば3ヶ月というのは相当厳しいです。

なぜこのようなタイトなスケジュールになっているのかというと、大手のハウスメーカーの営業マンは、1年間に5棟くらい新築住宅の契約が取れれば御の字なのですが、分譲開発を手がける会社の営業マンだと、年間5棟では追いつきません。

大規模な分譲開発の土地を売りにだせば、最悪、同時期に5組のお客さんを抱えていることもあります。つまり、悪い言い方をすれば、1組のお客さんにそこまで時間を割くほど余裕がないということです。

期限内に間に合わなかったらどうなる?

すべての業者が期間を3ヶ月に設定しているわけではありませんが、万が一決められた期限内に請負契約に至らない場合は、土地契約そのものが白紙になるのが一般的です。

このような契約のことを、「解除条件付き契約」といいます。よく知られているところでは「住宅ローン特約」などが同じです。

住宅ローンの審査が通らなかったら、無条件に契約が解除されるのと同じで、この場合も期限内に家の請負契約まで行かなければ、土地契約からすべて白紙撤回となります。

土地の売買契約時にこれらの説明は絶対にありますので、自分たちが納得いくまで説明を受けて理解しておきましょう。

まとめ

今回解説したように、建築条件付き土地でマイホームを建てるのであれば、建築会社を指定されるという大きなデメリットに対して複数のメリットもあります。

しかしあまり難しく考えず、2つのことを念頭に考えればおのずと答えは見えてくるはずです。

その2つというのは、以下の2点です。

  • その建築会社で納得できるか
  • その土地はどうしても譲れない土地なのか

この2点だけに絞って考えれば、そう難しくありません。

今回はこれ以外にも、費用や期間の問題を取り上げましたが、これらは正直どうにかなる問題です。

その建築会社が建てる家で納得できるのであれば問題ありませんし、どうしてもその土地が欲しいのであれば他に検討する余地はありません。

「土地」と「家」のどちらに比重を置いているのかだけを、ハッキリと決めておけば大きく悩む必要はないので、家造りを始める前に、ある程度の方針を決めておくことをおすすめします。