太陽光発電システムの基本的な考え方を理解すれば、以下のような疑問を持つ人もいると思います。「ウチは昼間共働きで留守なんだけど、それでも太陽光システムを設置するメリットはあるの?」
言いたいことは良くわかります。たしかにこれまでの太陽光発電システムの考え方としては、昼間は発電した電力でおぎない、余った電量は売ってしまう。
さらに夜は深夜割引などの安い電力で賢く生活することで、より光熱費の削減効果があると言われていたからです。
つまり昼間は家を留守にしてる家庭において、高い金額を出してまで太陽光発電システムを設置するメリットがあるのだろうか?ということです。今回はこの疑問について考えていきたいと思います。
- 【目次】昼間留守の家で太陽光発電システムは必要?
太陽光発電システムで創った電気は貯蓄することができない
わかりやすいように説明すると、昼間の時間帯に太陽光システムで創った電気は、昼間のうちに使うしかなく、使い切ることができなかった電力は、売電契約している電力会社に売ってしまうというのが、太陽光システムの基本的な考え方です。
例えばAM10時~PM15時までに、10kwの電気を太陽光システムで創ることができたとします。しかしその時間帯で使う家庭内消費電力は6kwだったとしましょう。
当然10kw-6kwなので、4kwの電力が余ったことになります。この余った電力のことを「余剰電力」といい、売電契約している電力会社に売ることができたのです。
本来なら、この余った4kwの電力は、その家庭で夜に使うのが理想なのですが、残念ながら太陽光システムは電気を蓄えておき、あとから使うことができません。ですので、余った電力はその日のうちに売ってしまわければならないのです。
それだったら、昼間は共働きで家に誰もいない家庭は、太陽光システムを設置しても、ほとんど意味がないと思う気持ちも良くわかります。しかしまったく無意味というわけじゃありません。
たしかに太陽光発電システムで創った電力を、自分の家で使う機会は少ないかもしれませんが、それだけ多くの電力を売ることができるからです。
10kw発電して、余った4kwを売るのに比べ、共働きで昼間家に誰もいない家庭だと10kw発電したら9kwほどを売ることができます。
もちろん売電による収益もそれだけ増えることになり、毎月の売電収益で十分に太陽光システムの恩恵を受けることができるからです。
つまりこういうことです。
- 昼間家に誰かいる家庭=創った電気は使えるだけ使い、余った電力は売電する
- 昼間家に誰もいない家庭=創った電力のほとんどを売電することで高い収益を得る
というのが、これまでの太陽光発電システムの基本的な考え方でした。これにより、昼間は家に誰もいない共働き世帯でも、太陽光発電システムの恩恵を十分に受けることができていました。
しかし2017年現在では、これとは少しばかり事情が違ってきています。
蓄電池の普及で創った電力を蓄えておくことが可能に
2017年現在、太陽光発電システムで大きく変わったことが2つあります。
- 売電買取単価が下がり、売電と買電の釣り合いが逆転している
- 蓄電池の登場で、必ずしも売電することが最大限の利益ではなくなっている
どういった意味なのかは、このあと詳しく解説していきます。
売電買取単価が下がり、売電と買電の釣り合いが逆転している
これまでの売電買取単価は、最大48円という時期もありました。しかし年々買取単価は下落するいっぽうで、2017年現在の買取単価は28円~30円となっています。
買取単価が下がってしまったことで、利益が少なくなったというのも理由の1つですが、もっと大事なのは電気を買う単価と、電気を売る単価が逆転してしまったことです。
東京電力の料金プランで解説するなら、一般家庭が多く契約している「従量電灯B」というプランがあります。このプランだと電気の単価は「120kWhをこえ300kWhまで=26円」「300kwhを超えた分=30円」となっています。
さて良く考えてみてください。2016年までの売電単価は、31円~33円でした。しかし2017年では28円~30円です。
東京電力が販売してる電気料金1kw30円をついに、下回っているのです。つまりこれまでは、自分たちが買う電気よりも、太陽光システムで創った電力を高く売ることができていたのが、ついに買う電気の方が高くなったことになります。
だったら、太陽光システムで創った電気は売るよりも、自分たちで全部使ってしまった方が得だということです。
そこで注目したいのが、太陽光システムで創った電力を蓄えておくことができる蓄電池の存在です。
蓄電池の登場で、必ずしも売電が最大限の利益ではなくなっている
この記事で、太陽光システムで創った電気は、その日の内に使わないと貯めておくことができないという話しをしました。しかしそれは数年前までの話しです。ここ2年~3年で事情が大きく変わりました。その立役者となったのが、蓄電池システムの登場です。
もともと蓄電池システムはあったのですが、とても一般家庭が手を出せるような金額ではなく、実用的とは到底いえませんでした。
それがスマートハウスの登場により、一般家庭の太陽光システムに大きな変化がうまれたのです。
これまでとても高価だった蓄電池が、一般家庭でも設置できるくらいの価格まで下がったことが特に大きいです。
蓄電池があれば、昼間に発電したエネルギーをその蓄電池に貯めておくことが可能になります。
つまり冒頭で説明した、昼間に10kw発電し、6kwしか日中に使うことができなくても、余った4kwを蓄電池に蓄えておき、それを太陽光で電気を創ることができない夜間の時間帯に使用することが可能になったというわけです。
要するにこれまでは、せっかく創った電力を使い切ることができず、勿体ないから売電していたのですが、これからは必ずしも売電する必要がなくなります。
とくに売る電力単価より、買う電力単価のほうが高くなっているのですから、売るよりもすべて家庭内で使い切るほうが得をします。
さらにこれから普及が進むであろう、電気自動車への充電も蓄電池に蓄えた電力から賄うことができるので、実質ガソリン代0円ということになります。
ただ1つ問題があるとしたら、いくら蓄電池が安価になったといっても、やはり数十万円単位の初期投資費用が掛かることです。
蓄電池は今後どこまで安くなる?
蓄電池が安価になったとはいえ、まだ高価な買い物であることに違いありません。2017年現在の蓄電池の平均価格は5kwタイプで120万円~150万円ほどなので、かなり高額な出費となります。
1kwに換算すると、1kwの単価は約25万円ほどだと思ってください。管理人の正直な感想としては、やっぱりまだまだ高すぎます。
せいぜい1kwあたりの単価が10万円、高くても12万円を切ってこないと、なかなか蓄電池の普及は進まないのではと思っています。
今蓄電池を設置してる家のほとんどが、新築時に設置した家ばかりです。とくにスマートハウスを建設した家の多くは、蓄電池を設置してるそうです。
そして気になる情報が1つあります。今後の新築住宅事情は2020年基準にて、大きく変わります。
2020年基準とは、簡単に言ってしまえば省エネ基準が厳しくなり、それに適合してなければ建築許可がおりないってことです。
国としても当然この2020年基準を全面的に押しだすことになるでしょう。そこで提案してるのが、蓄電池の価格をもっと下げることです。
国としての理想は2020年基準が開始されるまでに、蓄電池の1kwあたりの導入コストを90,000円にすることです。今の設置コストがkwあたり25万円ほどなので、大きく下回ります。
仮にkwあたり90,000円を実現することができれば、5kwタイプでも50万円切ってきますし、もっと容量が大きな10kwオーバーの蓄電池の購入も十分に検討できる価格帯だと思います。
そうなると太陽光発電システムを設置しなくても、昼間共働きの家は蓄電池だけ設置しておけば良いことになります。
蓄電池を設置し、電気料金が安い深夜帯に電気を蓄え、それを電気代が高いデイタイムなどに使用すればいいからです。
このように蓄電池が今後の太陽光発電システムのカギを握ってるのは間違いなさそうです。