断熱材は大きく「繊維系」と「発泡プラスチック系」の2種類にわけることができ、そこからさらに複数の商品に分かれています。
今回は代表的な7つの断熱材について、それぞれの特徴を紹介していきます。それぞれにメリットデメリットがあるので、比較しながらチェックしてもらえばと思います。
繊維系
断熱材といえば「グラスウール」を思い浮かべる人も多いかと思います。グラスウールやロックウールなどが、繊維系断熱材になります。
その名の通り、ガラスや岩を細かく繊維状にし、その間に空気を閉じ込めることで断熱効果を発揮する素材です。
最近では「鉱物系繊維」と「木質系繊維」にも分類されるようになっています。
グラスウール
出典:https://quohome.com/workblog/?p=567
断熱材=グラスウールと言われるほど、多くの住宅に採用されている断熱材です。
ガラスや砂などの鉱物系繊維で作られているため材料費が安価で、シロアリ被害も少ないことから多くのマイホームに採用されています。
最近は他の断熱材の性能があがっており、グラスウール=断熱性能が低いと思っている人も多いのですが、グラスウールにも「10K」や「16K」などのグレードがあり、繊維密度が濃く厚みを出すことができれば、性能もそれに比例してアップします。
メリット
- 価格が安く流通量が多い
- 吸音性能があるため防音性が高い
- ガラス繊維なので火やシロアリに強い
- 軽くて変形性があるため施工しやすい
デメリット
- 湿気に弱い
- 湿気を吸うことで繊維が下に垂れるため隙間ができやすい
- 他の断熱材と比較すると断熱性能が低い
ロックウール
出典:http://www.nagaoka-j.com/mokuzou.html
グラスウールと同じように繊維が内包された袋を壁に詰めていくタイプの断熱材で、「鉄鋼スラグ」や「岩石」が原料となっています。
グラスウール同様に耐火性や防音性に優れているのが特徴で、湿気を吸収しやすいというデメリットも同じです。
ただグラスウールよりも断熱性に優れており、価格面では少し割高になっています。今は使用できなくなったアスベストの代替品としても、広く使われています。
国内メーカーで作られているロックウールの多くが岩石ではなく、鉄鋼スラグを原料したものです。
特に火に強い断熱材なので、近年は外張り断熱材として使用されることが増えています。
メリット
- 防音性に優れている
- 鉱物系繊維なのでシロアリに強い
- 不燃繊維なので耐火性がある
- グラスウールより断熱性能が高い
デメリット
- 湿気に弱い
- 湿気を吸うことで繊維が下に垂れるため隙間ができやすい
- アスベストと似ているので悪いイメージがある
セルロースファイバー
出典:https://nakazato.exblog.jp/16402305/
グラスウールとロックウールは「鉱物繊維系」だったのに対し、こちらは「木質繊維系」の断熱材です。
新聞やダンボールなどの古紙、おがくずやパルプなどの木材が原料となっています。繊維系の中では高い断熱性があるのですが、グラスウールなどと比較して割高です。
自然の木材が原料でもあり、体に優しく、耐火性・防音性、調湿性、防虫効果にも優れているため需要が伸びています。
グラスウールやロックウールは、ボード状やマット状に加工されたものを壁に詰め込むタイプですが、セルロースファイバーは画像のように綿状になっており、壁内部へ吹き付けていきます。
そのため隙間が発生しにくく、高い断熱効果が期待できます。
メリット
- ホウ酸が混ぜてあるので防虫効果がある
- 湿気対策に優れている
- 調湿性が高く結露に強い
- わずかな隙間でも施工可能
デメリット
- コストが高い(グラスウールの2~2.5倍)
- 専門業者による施工が必要
- 充填式なのでリフォームに向いてない
発泡プラスチック系
発泡プラスチック系断熱材は、プラスチックの中に独立した無数の細かい気泡にガスを閉じ込めることで、断熱性能を発揮します。そのため閉じ込めているガスの気泡の数や大きさによって断熱性能に違いがでます。
硬質ウレタンファーム
出典:http://www.sotobari.org/about/index.html
出典:https://nkym-aaa.com/blogs/archives/457
板状に整形された商品、繊維系のセルロースファイバーと同じように建築現場で吹き付け施工する2つのタイプがありますが、今は吹き付けタイプの需要が高いです。
最近はこの硬化ウレタン断熱方式を採用するハウスメーカーや工務店も増えていますが、注意べきは可燃時に有毒な「シアン化水素」という物質を発生する点です。
引火性があるとも言われており、火に弱い断熱材と思っておくのがよいでしょう。
メリット
- 発泡プラスチックの中では断熱性が高い
- 吹き付け施工することでより高い断熱効果が期待できる
- 自己接着という特性があり断熱材に向いている
デメリット
- コストが割高
- 板状の製品は硬く施工性にやや劣る
- 燃焼時に有毒となるガスを発生させる
フェノールフォーム
出典:http://www.sotobari.org/about/index.html
旭化成へーベルハウスや積水グループの住宅で昔から使用されてきた断熱材の1つが、このフェノールフォームです。
最大の特徴は、熱を帯びることでプラスチックが硬化することです。そのため、耐熱性・ 難燃性が求められる住宅建材として広く使われてきました。
耐熱性が高く、熱伝導率も一般的な断熱材ではトップクラスの0.020(グラスウールは0.038~0.050)となっています。
発泡プラスチック系のなかで断熱性能が高い商品を探しているのであれば、このフェノールフォームがおすすめですが、高性能タイプはかなり高価なため、コスト面との兼ね合いが必要になります。
メリット
- 高い断熱性能
- 防火性に優れている
- 燃焼時でも有毒なガスがでない
デメリット
- 高性能な商品はかなり高価
- 水に弱く、「吸水性」「吸湿性」が高い
- シロアリ被害
ビーズ法ポリスチレンフォーム
出典:http://www.sotobari.org/about/index.html
ポリスチレン樹脂に「発泡剤」「難燃剤」を加えてビーズ状にし、蒸気でプラスチック状に発泡させた断熱材なのですが、一般的に知られている発泡スチロールのことです。
お魚屋さんで魚を入れている箱状の発泡スチロールであったり、Cool宅急便などに使用されている発砲スチロールのBOXなどが、このビーズ法ポリスチレンフォームと同じです。
水にも強く、水分を通しづらい性質があることから、湿気にも強い断熱材で、コストも安価です。何より施工しやすいことで、昔から断熱材としても幅広く使用されてきた歴史があります。
メリット
- 発泡プラスチック系の中では低価格
- 水に強く湿気対策にも向いている
- 柔らかく加工性が高いためあらゆる用途に使用できる
デメリット
- 断熱性能がやや低い
- 熱に弱いので防火性に不安がある
- 断熱性能は繊維系と同じ程度だが割高
押出法ポリスチレンフォーム
出典:http://www.sotobari.org/about/index.html
先に紹介した「ビーズ法ポリスチレンフォーム」と比べ、性能的には大きな違いはないと思っていて構いません。
製造工程が違うため多少の違いはありますが、おおまかには2つとも似た性質があります。ただしこちらの「押出法」によって製造された断熱材の方が、プラスチックの粒が小さく断熱効果も高いとされています。
発泡スチロール系断熱材のなかでも安価ですし、軽量で加工しやすいことから基礎断熱や土台床断熱などにも広く使用されています。
メリット
- ビーズ法ポリスチレンフォームよりも低コスト
- 水に強く湿気対策にも向いている
- 柔らかく加工性が高いためあらゆる用途に使用できる
デメリット
- 断熱性能がやや低い
- 熱に弱いので防火性に不安がある
- 経年による性能低下が不安視されている
ここまで、代表的な7つの断熱材についてメリットデメリットをまとめてきましたが、やはり性能が良くなればなるほど、予算がアップしてしまいます。
断熱材選びで悩んでいる人は、これからリフォームや新築を計画していると思いますが、実は業者選びのコツを理解しておかないと大きく損してしまう事があります。
リフォームについては、「大手リフォーム会社の評判」ページで、新築に関しては「ハウスメーカーの坪単価相場を比較」でポイントをまとめているので、ぜひチェックしてみてください。
コツを理解した上で契約すれば、ワンランク上の断熱材を選べるようになるかもしれません。
まとめ
いまの人気が高い断熱材は、セルロースファイバーや硬質ウレタンなどの吹き付けタイプのものです。
価格は少々割高になってしまいますが、マットやボード状の断熱材だと比べ、わずかな隙間までしっかり断熱材を確実に入れることができる点が高く評価されています。
といっても、今でも圧倒的なシェアを誇っているのは、コスト的にもやはりグラスウールでしょう。
ただしグラスウールにも種類があり、高性能グラスウールであれば、かなり高い断熱性を確保することができます。多少割高になってしまいますが、一棟あたり20万円ほどの追加で変更することができるでしょう。