注文住宅を建てる際の工法は大きく3つに分かれます。
- 木造(在来軸組工法、2×4など)
- 鉄骨造(軽量鉄骨構造、重量鉄骨構造)
- 鉄筋コンクリート構造(RC造)
出典:http://www.homes.co.jp/cont/buy_kodate/buy_kodate_00010/
ハウスメーカ-によって採用する工法が異なるので、自分たちがどの工法で家を建てるのか方向性を決めておかないと、業者を比較することができません。
この記事ではそれぞれの工法について分かりやすくまとめています。これからマイホームを建てようと検討している人はぜひ参考にしてもらえればと思います。
木造の特徴
住宅産業研究所が実施した調査では、平成26年度に建てられた一戸建て住宅の工法シェアは木造住宅が81.0%を占めています。
10棟中8棟以上が木造住宅で建てられていることがわかります。
この81.0%の中には、在来軸組工法と2×4(ツーバイフォー)があり、それぞれ以下の割合となります。
- 在来軸組工法:69.8%
- 2×4(ツーバイフォー):11.2%
- その他:19.%
このように日本家屋を代表する工法になってる木造住宅ですが、大きく「在来軸組工法」と「2×4(ツーバイフォー)工法」に分けられているので、それぞれの工法の違いなどについて説明していきたいと思います。
在来軸組工法とは?
在来軸組工法は、日本の伝統工法というだけあり、日本国内でのシェアは69.8%と7割近くとなっています。柱と梁で構造体を組み立てていくことから木造軸組工法とも呼ばれます。
古来より建てられてきた建築工法なので、これまでのノウハウを駆使して施主の細かい要望にも応えることができます。
より間取りをこだわりたい場合などは、この在来軸組工法を選ぶのがおすすめです。
在来軸組工法の価格帯
各工法の中では一番安価となるのが、こちらの在来軸組工法です。
トップメーカーになれば坪単価70万円近くになるケースもありますが、ローコスト住宅などに目を向ければ坪単価40万円を切る業者もあります。
依頼先は数限りなくありますので、住宅会社を決めるだけでも相当苦労すると思います。
選択肢が多いことは決して悪いことではありませんが、これほど多いと逆に目移りばかりしてしまい時間のロスに繋がる恐れが高いです。
効率良く住宅会社を比較する手段として、自分の予算に合わせていくつかのカタログを取り寄せてみましょう。
各業者がどのような工法を採用しているのか知ることができるので便利です。
在来軸組工法の早見表
在来軸組工法の特徴を早見表にして紹介します。なお、ジャッジは筆者が調査した結果、独自にまとめたものになります。
在来軸組工法 | |
---|---|
間取り | ◎ |
耐震性 | △ |
耐火性 | △ |
耐久年数 | 22年 |
遮音性 | △ |
気密性 | △ |
増改築 | ◎ |
この木造軸組工法の基準が今の日本の住宅平均レベルだと思って、他の工法を比較してみてください。
メリット
- 間取りの自由度が高く、増改築にも適している
- 他の工法よりも低予算で建てることができる
デメリット
- 熟練技術が必要なので、大工の腕次第でバラつきがでる
- 腐朽やシロアリ被害の心配が高くなる
在来軸組工法を採用している主なハウスメーカー
2×4(ツーバイフォー)工法の価格帯
軸組工法よりは若干割高な価格設定になっているハウスメーカーが多いですが、それでも基本は木造なので比較的安価な予算で建てることができます。
坪単価は低いところで40万、高いところでも60万円ほどです。大手ハウスメーカーも積極的に2×4を取りいれてますし、地元規模の工務店でも2×4を主流にしている会社は多くあります。
ただ軸組工法ほど多くはないので、手頃な会社数から自分たちの希望にあう会社を見つけることができるはずです。
軸組工法に比べ工期も1ヶ月~2ヶ月ほど短いので、あせらずじっくり探すようにしてください。
2×4(ツーバイフォー)工法の早見表
2×4工法 | |
---|---|
間取り | △ |
耐震性 | ○ |
耐火性 | △ |
耐久年数 | 22年 |
遮音性 | ○ |
気密性 | ○ |
増改築 | ○ |
軸組工法と大きく違うところは、間取りの自由度がやや劣ることと、耐震性が優れていることでしょう。
間取りの自由度を取るか、家族を守る耐震性を優先するかべきか?と頭を悩ませる人もいるかもしれませんが、これも他の工法が優秀なだけで、必ずしも粗悪なわけではありません。
間取りも一般的なものであればほぼ対抗可能です。どうしても窓の大きさや位置が制限されてしまうことを除けば、そこまで間取りで気になることは発生しないと思います。
メリット
- 耐震性に優れている(在来軸組の1.5~2倍の強度)
- 気密性に優れているため、断熱性能が高い
- 規格化されているので、職人によりバラつきが生じにくい
- 工期が短い
デメリット
- 在来軸組と比較すると間取りや開口部などの制約が多い
- 建築中に雨が降ると、内部まで水浸しになる
- 在来軸組と比較すると、増改築が容易でない
2×4工法を採用している主なハウスメーカー
鉄骨造住宅の特徴
一戸建て住宅といえば積水ハウスや大和ハウスなどがテレビCMも多く、真っ先に思う浮かぶハウスメーカーという人も少なくないでしょう。
その積水ハウスや大和ハウスを木造住宅だと思っている人も多いようですが、じつはこちらの鉄骨造住宅に分類されます。
一部商品として在来軸組の木造住宅も扱っているのですが、主力商品は「軽量鉄骨造」なんです。同じくテレビCMでよく目にするセイスイハイムも、やはりこちらの鉄骨造住宅の部類になります。
こちらの鉄骨造住宅も「軽量鉄骨造」と「重量鉄骨造」に分けられていますので、それぞれについて説明していきたいと思います。
軽量鉄骨造の特徴
基本的な考え方としては、木造軸組工法の柱や梁部分を木材ではなく、軽量鉄骨に置き換えたものだと思ってください。
基本的に建築部材の大半を工場で規格生産しているため、現場ではそれらの部材を組み立てるように家を建てていきます。
木造住宅のハウスメーカーの営業さんたちは、ちょっと比喩した言い方で軽量鉄骨造のことを「プレハブ工法」と言うケースが多いです。
柱や梁に鉄骨を用いることで、木材よりも強度が強いため柱と柱の間に大きな開口部をもうけることができるなど、広々とした空間の間取りを実現することができますが、その反面工場で規格生産されるため、細かな要望などを間取りに反映させることが難しくなります。
軽量鉄骨造の価格帯
鉄骨を使用することもあり坪単価はやや高めに設定されています。
積水ハウスや大和ハウスなどの大手トップメーカーがこの軽量鉄骨では圧倒的なシェアを誇っていますが、やはりそういったトップメーカーになると坪単価でも60万円~からと考えておくのが良いかと思います。
骨組み部分にあたる鉄骨を工場などで規格生産するため、やはり大手の方が大量生産することができます。そのため街の工務店規模ではなかなか安価で提供することも難しいというのが現状です。
軽量鉄骨造の早見表
軽量鉄骨 | |
---|---|
間取り | △ |
耐震性 | ◎ |
耐火性 | △ |
耐久年数 | 19年 |
遮音性 | ○ |
気密性 | ○ |
増改築 | △ |
軽量鉄骨造といっても、具体的にいうと色んな工法に分かれているので一概にこの一覧表が正しいとはいえませんが、それでも木造系に比べると間取りの自由度やリフォーム性は劣るが、耐震性や防音性は高いものが多いです。
ただしやはり鉄である分、火やサビには弱く、火災や結露などの対策がしっかりできているハウスメーカーを選ぶことをおすすめします。
メリット
- 柱の強度が高いため、広い空間の間取りが実現できる
- 工場での大量生産が可能なので、費用を安価に抑えることができる
- 工場で規格生産されるため、職人の力量に左右されない
- 工期が短い
デメリット
- 鉄骨は熱伝導率が高いため、気密性で木造に劣る
- サビ対策の問題がある
- 間取りの自由度が低い
軽量鉄骨工法を採用している主なハウスメーカー
重量鉄骨造の特徴
基本的に高層マンションの建設に用いられる工法と同じなので、一般家庭の戸建て住宅としては珍しい工法になります。
軽量鉄骨との違いは使用する部材の厚みになり、6ミリ以下を軽量鉄骨、6ミリ以上を重量鉄骨と区別されています。
このように使用する鉄材がより強固なものになるため、軽量鉄骨以上に強度が増し、柱のない大きな空間を作ることに適しています。
広い空間をようするオフィスなど、高層ビルに重量鉄骨造が用いられるのもそのためです。
重量鉄骨の価格帯
一般家庭の住宅で重量鉄骨造を売りにしているハウスメーカーが少ないので、どうしても一部のハウスメーカーの坪単価などを参考にしてしまうのですが、おおよその平均坪単価は高めの65万~だと考えておくのが良いでしょう。
それでもちょっと安く見積もっているくらいです。やはり部材もそうですが、需要が少ないことで大量生産してコストを下げることができないのがネックだと思います。
重量鉄骨の早見表
重量鉄骨 | |
---|---|
間取り | ○ |
耐震性 | ◎ |
耐火性 | ◎ |
耐久年数 | 34年 |
遮音性 | ○ |
気密性 | ○ |
増改築 | ○ |
こうしてみると非常に優秀に思うでしょうが、やはり価格が高いことがネックとなっているのか、一般家庭としての需要はお世辞にも多いとはいえません。
一階が店舗や病院で二階より上を住まいとする場合などには多く用いられたりします。頑丈な分、それだけ費用も大きくなるという点を踏まえて検討してみてください。
メリット
- 軽量鉄骨造よりさらに大きな空間を作ることができる
- 工場で規格生産されるため、職人の力量に左右されない
- 工期が短い
デメリット
- 基礎工事の費用が高い
- サビ対策が必要
- 鉄骨は熱伝導率が高いため、気密性で木造に劣る
重量鉄骨工法を採用している主なハウスメーカー
鉄筋コンクリート構造住宅の特徴
事務所や車庫などで、壁がコンクリートになっているのを見たことがありませんか?さらに身近なところで言えば、学校なども階段のところの壁がコンクリートだったりしませんでしたか?簡単に言ってしまえばそれが鉄筋コンクリート工法だと思ってください。
引っ張りに強い鉄筋、圧縮に強いコンクリート、それぞれが持つ長所を一体化させることで、より強度の高い建造物を作ることができます。
間取り、耐震性、耐火性、防音性など非常に優れているのですが、価格が高いということもあり、あまり一般的には戸建て住宅には用いられません。
鉄筋を網目状に組んでいき、その周りを板材で覆い、そこにコンクリートを流しこむことで柱や壁、床などを作り上げていきます。
そのため型枠さえ作ることができれば、ある程度の間取りに対応することができるのですが、基本的にほとんどの工程を現場作業で行うため、職人の技量による差が出易いとも言われています。
また鉄筋コンクリート工法を採用しているハウスメーカーは少なく、どうしても鉄筋コンクリートで建てたいのであれば、ハウスメーカーや地元工務店よりも、建築家(建築デザイナー)などに依頼するケースが多いようです。
柱、壁、床を一体化しているので、躯体に隙間ができず気密性が高いので断熱性が良いと言われていますが、一般的にコンクリートは熱を溜めやすいので、冬は寒く、夏は暑くなりやすいと言われています。
鉄筋コンクリート(RC造)の価格帯
今回紹介している工法の中でも一番コストが高いのがこちらの鉄筋コンクリート工法です。坪単価は70万円~と考えておくのがよいでしょう。
間取りや防音性などにこだわればこだわるだけコストはどんどん上がっていきます。なかなか一般の戸建て住宅として建てるには費用的な問題などもあり厳しいというのが正直な意見です。
地下1階、地上3階建てのような豪邸に用いられることが多い工法なので、よくテレビでお宅訪問などで芸能人が住んでいる家がこの工法だったりします。
鉄筋コンクリート(RC造)の早見表
鉄筋(RC造) | |
---|---|
間取り | ◎ |
耐震性 | ◎ |
耐火性 | ◎ |
耐久年数 | 47年 |
遮音性 | ◎ |
気密性 | ○ |
増改築 | ○ |
コンクリートなのに間取りは自由なんだ?と思われるかもしれませんが、基本型枠の形次第でどんな間取りにも対応できてしまいます。
またコンクリートが火に強いこともご存知だと思いますが、万が一火災を起こしてしまっても、自火鎮火することが多いので隣家などへの延焼の恐れがありません。
あらゆる面で優れている鉄筋コンクリート造の住宅ですが、やはり何度も繰り返しになりますが、どうしても価格面が高額なので一般住宅への普及率は決して高くありません。
メリット
- 耐火性、耐久性、防音性に優れている
- 広い空間や大きな窓を採用できる
デメリット
- 戸建て住宅の中では最も建築費が高い
- コンクリートは熱を溜めやすいので、冬は寒く、夏は暑い
- 採用しているハウスメーカーが少ない
鉄筋コンクリート工法を採用している主なハウスメーカー
- 大成建設
- 三菱地所ホーム
- レスコハウス
今回このページで紹介した工法が全てではありません。これ以外にも「木質パネル工法」や「コンクリートパネル工法」など、いろんな工法があります。
ですが、ここで紹介した工法を理解しておけば、紹介しきれなかった工法にも応用することができます。
自分たちが建てたい工法はどれなのか?「デザイン(間取り)」「価格」「工期」「地域」「将来的な増改築」などを当てはめていけば、おのずと理想に沿う工法がみつかるはずです。
理想とする工法が決まれば、あとはその工法を採用しているハウスメーカーのモデルハウスに絞って廻るだけなので、無駄な時間を節約することにも繋がります。