実家の建て替えを検討している人向けに、建て替え費用の相場や住宅ローンの組み方について解説します。
まず最初に、混同されやすい「建て替え」と「まるごとリフォーム」の違いを理解しておきましょう。
建て替え | まるごとリフォーム | |
---|---|---|
工事内容 | 既存の建物をすべて解体し、新築住宅を建設する | 既存の住宅の一部を残し、再利用できる部分を活用しながらリフォームする |
工事費用 | 1,500~3,000万円(建物のみ) | 1,000~1,500万円 |
間取り | 希望通りに設計できる | 一部制限が入る場合がある |
工事期間 | 1ヶ月~3ヶ月 | 4ヶ月~6ヶ月 |
その他費用 | なし | 解体費、仮住まい費、引越し費など |
建て替えとリフォームについては、「建て替えと全面リフォームを徹底比較」で詳しく解説していますので、あわせてチェックしてみてください。
実家の建て替えでかかる費用まとめ
実家を建て替えるのであれば土地を買う必要はありませんが、既存の住宅を一度取り壊さなければならず解体費用がかかります。
ここからは、実家を建て替える場合の各費用について解説していきます。おもな費用項目は以下の通りです。
- 既存の建物の解体費用
- 新築住宅の本体工事費
- 外溝リフォーム費用
- その他の諸費用
既存の建物の解体費用
家の解体費用は、建物の大きさや構造によって大きく異なります。
構造 | 解体費の坪単価 | 40坪の解体費目安 |
---|---|---|
木造住宅 | 2.3~3.5万円 | 1,100,000円 |
鉄骨住宅 | 2.1~5.0万円 | 1,180,000円 |
RC住宅 | 3.6~7.6万円 | 1,840,000円 |
また解体費用は同じ建物でも業者によっても見積り価格が異なるので、必ず複数の解体業者で相見積もりを取ることをおすすめします。
複数の業者に問い合わせるのが面倒な人は、インターネットの一括見積もりサイトがあるので上手に活用してみてください。
解体費用についてもっと詳しく知りたい人は、別記事の「家の解体費用相場を徹底解説」で解説していますので、あわせてチェックしてみてください。
本体工事費用
建物の本体工事費は、新築住宅を建てるのと基本同じです。
予算を抑えたいのであればローコスト住宅がありますし、木造や鉄骨など好きな構造や工法を選ぶこともできます。
費用の目安としては、各業者の坪単価に家の大きさを掛けると、おおよその建築費用を算出することができます。
例えば坪単価55万円のハウスメーカーや工務店で述べ床面積35坪の家を建てると、
坪単価55万×家の大きさ35坪=1,925万円
が建物の本体工事価格となります。一概には言えませんが、一般的には「木造<鉄骨<RC」の順で建築費が高くなります。
出典:http://www.homes.co.jp/cont/buy_kodate/buy_kodate_00010/
各ハウスメーカーの坪単価を知りたい人は、「ハウスメーカーの坪単価相場を比較!2019年最新ランキング」をチェックしてみてください。
外構リフォーム費用
実家の建て替えでの外溝工事はある程度、既存のものを活用することができるためこだわらなければ費用を抑えることができます。
ただし、せっかく建て替えをするのですから、古くなったブロック塀や不要な庭などを一新してしてもいいと思います。
理由は5年後や10年後に外溝だけリフォーム工事するよりも、費用的には安く済ませることができるからです。
建て替えで多い外溝工事の項目としては、以下のような例があります。
- 駐車場スペースを増やしたい
- 浄化槽の位置を変更したい
- 庭を人工芝に張り替えたい
- 樹木や庭石を撤去したい
- 井戸を埋めたい
- 小屋・納屋を撤去したい
外溝工事の価格相場などについては、別記事の「新築の外構工事の費用相場と抑えるためのコツ」で詳しく解説していますので、あわせてチェックしてみてください。
その他の費用
その他の費用には、住宅ローンに付随する手数料や登記費用などがあります。
また、リフォームであれば住みながら工事をすることもできますが、建て替えとなれば仮住まいに一度引越しする必要があり、完成後と合わせて2回分の費用がかかります。
項目 | 費用の目安 |
---|---|
登記費用(所有権登記、抵当権設定登記など) | 5万~15万円 |
住宅ローン諸費用(保証料、手数料、印紙税など) | 50~100万円 |
引越し費用(実家→仮住まい→新居) | 30~40万円 |
ローンを組む際のポイント
実家の建て替えに関して、多くの人が住宅ローンの組み方で悩んでいます。
ここからは実家を建て替えるときの住宅ローンの組み方や選び方について、わかりやすく解説していきたいと思います。
住宅ローンの種類
まずは、実家の住宅ローンを今も返済中なのか、それともすでに完済済みなのかを把握しておきましょう。
すでに完済しているという場合は新築住宅を建てるのと同じで、比較検討して好きな住宅ローンを利用することができます。
今も住宅ローンを返済中という場合は残債務をどうするか考えなければなりません。この場合の選択肢は、以下の3つとなります。
- 残金を一括返済して新たな住宅ローンを組む
- 建て替えローンを利用する
- 親子リレーローンを利用する
残金を一括返済して新たな住宅ローンを組む
預貯金などがあり、そのお金で残金を一括返済できるケースです。この場合は完済済みの人と同じように、自分の好きな住宅ローンを利用することができます。
ローン選びのポイントですが建て替えを依頼する業者から提携住宅ローンを打診されると思いますが、無理に提携先の住宅ローンを使う必要はありません。
融資審査に不安を感じている場合などは、提携先の住宅ローンを利用することで多少審査が通りやすくなることもあります。
しかし建て替えの場合はすでに担保となる土地を所有している分、住宅ローン審査は通りやすくなっていると思います。
ですので、無理して提携先の住宅ローンを利用する必要性がなく、金利が低い住宅ローンや自分たちの希望する団信を扱う住宅ローンなどを選ぶことができます。
建て替えローンを利用する
建て替えローンというのは返済中の住宅ローン残債まで含めて、新たに融資を受ける住宅ローン商品のことです。
今の家の住宅ローンの残債が500万円残っていて建て替え費用として2,000万円かかるのであれば、2,500万円の融資を受けることになります。
この場合、返済中の住宅ローン500万円分は完済となるのでダブルローン(二重ローン)になることはありません。
建て替えローンの問題点は融資額が大きくなるので、申し込みする人の年収や信用が高くなければならない点です。
ただ金融機関によっては建物や土地の担保評価額の200%や300%まで融資してくれる住宅ローン商品もあります。
例えばりそな銀行の建て替えローンは執筆時点で担保評価額の最高300%となっています。このような金融機関をチェックしておくとよいと思います。
親子リレーローンを利用する
親子リレーローンは親世代が借り入れをして、将来的に子世代が返済していくという住宅ローン商品になります。
こちらを利用することで、審査に通るのが難しい高齢者でも住宅ローンを利用できるというメリットがあります。
似たような商品で親子ペアローンというものがありますが、こちらは内容が違いますので注意してください。
- 親子リレーローン:1本の住宅ローンをリレー方式で引き継ぐ商品
- 親子ペアローン:2本の住宅ローンを同時に返済していく商品
離れた実家を建て替える際の住宅ローン
離れて暮らす両親のために、実家を建て替えたいと考えている人もいるでしょう。
また最近は災害が相次いでおり、被災した実家を離れて暮らす人が建て替えてあげたいというケースも増えています。
この場合に問題となるのが住宅ローンです。なぜなら一般的な住宅ローンは、自分が住むことを前提に融資してもらうものだからです。
そのため離れて暮らす両親のために子供が住宅ローンを組み、家の建て替えをしてあげることはできません。
ですが例外があります。住宅金融支援機構が扱う「フラット35」という住宅ローン商品です。
このフラット35には、親入居型という住宅ローン商品があり、融資を受ける本人が居住しなくても利用できるようになっています。
もし離れたて暮らす実家の建て替えを検討している人は、参考にしてみてください。
実家を建て替える際のポイント
ここからは実家の建て替えをするとき、知っておくと便利なポイントをいくつか紹介していきたいと思います。
建て替えと解体を同じ業者に任せない
実家の建て替えでありがちなのが、既存の建物解体工事までハウスメーカーや工務店にお願いするケースです。
ダメとは言いませんがハウスメーカーも工務店も家を建てるのが本業であり、家の解体は専門業者に下請け依頼するのが一般的です。
理由はハウスメーカーや工務店を挟むことで中間マージンが発生してしまい、解体費用が高くなってしまう可能性があるからです。
ですので、建物の解体に関しては必ず解体専門の見積もりを取り、ハウスメーカーや工務店が提示してきた見積書と比較検討して決めるようにしてください。
古い木造住宅だとしても、解体費用で50~100万円くらい違ってくることは珍しくありません。
不満だったポイントを整理しておく
実家に長年住んでいたのですから、実際に居住していて不便に感じることもあったと思います。
実家を建てかえる際にまずポイントとなるのが自分たちが不満を感じていたポイントを明確にして、その部分を新居で改善することです。
- 脱衣所やバスルームが寒かった
- 洗濯してから物干し場までの距離が遠かった
- 2階にもトイレもあると便利だった
- 庭の手入れが大変だった
など、きっと少なからず不満に感じていたポイントが家族みんなにあるはずです。
そうしたポイントを明確にしておくことで、次の新居の間取りや設備の打ち合わせもスムーズになります。
間取り決めなどの打ち合わせがスムーズにいくことで、結果として新居が完成することを早めることができ、仮住まいの費用を抑えることにも繋がります。
不用品処分のコツ
実家を建てかえるときに、思いのほか頭を悩ませるのが不要になった家具の処分方法です。
昔の家と比べ、今の家はコンパクトな家が多くなっているため、古い家にあった不要な荷物を大量に処分しなければ入りきれません。
そこで建て替えのゴミ処理について、いくつかアドバイスしておきたいと思います。
リサイクルショップを利用する
タンスや食器棚、ベッドなどを買い取りしてくれるリサイクルショップが近くに無いか、ぜひ探してみてください。
もしダメな場合は家を解体するタイミングで業者に処分してもらうとよいでしょう。
屋内の壁や柱に固定した状態で残しておけば、家の一部とみなして解体業者がそのまま廃棄処分してくれます。
大きな家具類は自分たちで処分すると処理場まで持っていくだけでも大変で、処分費用も追加でかかってしまいます。
これを知っているのと知らないのだけでも、ずいぶんと手間が違ってくるので、解体の際は業者に尋ねてみるようにしてください。
不要になった電化製品も同じく、製造年月日から5年が経過しているものは基本的に買い取ってもらえないと考えてください。
それでも廃棄する前に近くのリサイクルショップに訪問買取りをお願いして、一度家の中をみてもらうようにしましょう。
思いもしなかったものが意外と高値で売れたりすることもあります。
例えば昔からある大きな仏壇、お祝いでもらったけど使わずしまっていた食器類やタオル類などは安いですが買い取ってもらえたりします。
安くても少しでも処分する荷物が減るだけ得だと考えると良いでしょう。
自治体に問い合わせてみる
専門の業者にゴミ処理を依頼すると、すべて産業廃棄物扱いとして処理され、思ったよりも高額な請求が来て揉めるケースがあります。
例えば、家庭で使用している布団やタンスなどは、自分で自治体が運営するゴミ処理センターへ持ち込めば1Kgあたり数十円の費用しかかかりません。
しかし、先ほど言ったようにすべて産業廃棄物として処理されてしまえば、これが一気に数万円になってしまうのです。
まずは解体する家がある自治体へ電話して、ゴミの処理方法について相談してみてください。
引き取れないものについても詳しく処理の仕方を教えてくれますし、自治体指定の産廃業者を紹介してもらうこともできます。
自治体のゴミ処理費用は地域によって費用が異なるのですが、一般的な相場と業者にゴミ処理を依頼したときの費用相場を比較しておくので、参考にしてみてください。
品目 | 自治体での処分費(東京都) | 回収業者での処分費 |
---|---|---|
シングルベッド | 1,000~1,500円 | 3,500~5,000円 |
冷蔵庫 | 5,000円~ | 10,000円~ |
洗濯機 | 2,600円~ | 3,500~5,700円 |
テレビ | 2,900円~ | 5,000~7,000円 |
タンス | 300~2,000円 | 3,000円~ |
食器棚 | 300~2,000円 | 3,500円~ |
エアコン | 1,600~3,000円 | 3,000~5,500円 |
ソファー | 1,000~1,500円 | 3,000~7,000円 |
相続トラブルに注意
建て替えで気をつけたいのが将来的な相続トラブルです。
先ほど紹介した親子リレーローンなどを利用すると、土地や家の名義は父親のままというケースもあります。
もし名義人の父親が亡くなったとき、兄弟で相続トラブルが起こってしまう恐れがあります。
名義人が父であれば当然、それらの不動産を相続する権利は兄弟にもあるわけです。
亡くなられたときの査定で、家と土地の評価が2,000万円だったとして、2人兄弟であれば母親1,000万、兄弟が500万円ずつ相続する権利があります。
もしその実家に住んでいない兄弟が相続の権利を主張してきたらどうなるでしょう。
法的には当然相続する権利があるのですから、兄弟の取り分500万円を渡さなければなりません。
このような相続トラブルを避けるためにも、実家の建て替えをするときには、将来的な相続方法について話し合いをしておくことを強くおすすめします。
贈与税に関する注意点
最後になりましたが、実家の建て替えで注意したいポイントが贈与税です。
建て替えの内容、つまり誰がどれだけ費用を負担するかによって大きく異なるので、ここで一概にこうだと明確な回答はできません。
ただ実家の建て替えにあたり、思いもしてなかった贈与税の請求がきてびっくりしたという話はよくあります。
判りやすい例としては、親名義の実家を子世帯が費用負担して建てかえる場合ですが、当然土地の名義は親になっているはずです。
これを子世帯の名義に変更すれば、当然その土地を親から子へ贈与したとみなされ税金を納める必要があります。
では次に、親名義の土地であっても住宅ローンを子世帯が組むことはできるので、そのまま親名義の土地に新居を建てたとしましょう。
このとき、親世帯と子世帯で新居費用を折半で負担したとします。これであれば、子が親に贈与したとみなされてしまうわけです。
このように実家の建て替えというのは、当然のことをしても贈与税の対象になることが珍しくありません。
ですので、実家の建て替えをするときは、贈与に関する知識がある業者、もしくは営業マンに依頼するようにしてください。
将来相続人となる他の兄弟たちとの合意が取れているのであれば、「相続時精算課税制度」などを利用し、うまく贈与税の負担を減らす方法もあります。
「相続時清算課税制度」については、別記事の「親名義の土地に家を建てる際の税金(相続)や住宅ローンの問題」で詳しく解説しているので、あわせえてチェックしてみてください。
まとめ
核家族化が進み、実家の空き家問題がクローズアップされています。
自分が生まれ育った家がなくなるのは実に寂しいものです。なるべくなら早い段階で実家に手を入れ、長く住める住宅へと生まれ変わらせてあげましょう。
ただ実家の建て替えには、住宅ローンや相続・贈与の問題がつきものです。
それらの問題をうまく対処するには、実家の建て替えを手がけた経験が多いハウスメーカーや工務店にお願いするのが一番だと思います。
最近は減税や補助金などの種類も増えているので、それらの制度を上手に活用していくようにしましょう。