人体に悪影響な有害物質を発生させる建築資材

人体に悪影響な有害物質を発生させる建築資材

「健康住宅」や「無添加住宅」など、健康第一を前面に押し出しているハウスメーカーは数多くあります。たしかに数千万円という高額な買い物となるマイホームで、健康を害してしまっては元も子もありません。多くの人が健康や化学物質という言葉に敏感になるのは、当然のことだと思います。

そこで今回は健康住宅というキーワードに注目して、人体に悪影響を及ぼす可能性が高い建築資材などについて話をしていきます。

ただ、このことだけは頭に入れておいて下さい。

「100パーセント無害な戸建て住宅を建てることは、ほぼ不可能」

ですが、細部に渡りこだわれば100パーセント無害な家を建てられるかもしれませんが、建築費が跳ね上がってしまうことは容易に想像できます。

少しでも人体に悪影響を及ぼす建築資材を、すべて紹介するのも膨大な量になってしまい難しいので、ここでは代表的なものをご紹介します。

有害とされる建築資材

今でも家作りでは、多くの有害物質を含む建築資材が使用され続けています。すべてを除外するのは決して楽なことではありませんが、どのような資材にどのような有害物質が含まれているのかを知っておくだけでも役に立ちます。

ここからは一般的に使用されることが多い、建築資材や有害物質について解説していきます。

断熱材のグラスウール

高気密高断熱住宅が広く普及しており、多くのハウスメーカーではこぞって高気密高断熱住宅を売りにしています。そこで注目されているのが、断熱工法です。断熱工法には「充填断熱」と「外張り断熱」の2種類があります。その中で多くのハウスメーカーが採用しているのが、コストも安く施工も簡単な充填断熱工法です。

この充填断熱工法では、壁の中の隙間に断熱材をぎっしりと充填するやり方が一般的です。そのとき使用される断熱材が、「グラスウール」というものです。

非常に安価で作業効率が良いため普及しているのですが、このグラスウールの素材の9割が、ガラス繊維でできており、他にもフェノール樹脂などの成分が使われています。このガラス繊維の粉塵を吸い込むと、呼吸系の病気の発症や、目や皮膚にも悪影響を起こす恐れがあります。

またグラスウールがカビに侵食されることで、ダニを発生させる温床となってしまいます。結果として断熱材まわりの木材も腐らせ、そこへシロアリがやってくるという悪循環を招きます。そうなると人体への影響はさらに深刻で、アレルギーや喘息などのシックハウス症候群を引き起こす恐れがあるのです。

対策としてもっともポピュラーなのが、充填断熱工法ではなく外張り断熱を採用することです。費用は多少かさみますが、人体や家への影響を考えると、検討する余地は充分にあると思います。

フローリングなどに使用される合板

まずは、どの家でも切り離して考えることができないフローリングについてです。フローリングに使用される木材は、大きく「合板」と「無垢材」の2つに分けることができます。合板とは複数の板材を張り合わせて作られたフローリング材のことで、無垢材とは一本の木から切り出した一枚板のことです。

当然複数の板を張り合わせる合板には、板と板を張り合わせるための接着剤が使用されており、その接着材にホルムアルデヒドが含まれています。

毎日接する場所なので、フローリング材にこだわって無垢材を選択する人は少なくありません。なるべく無垢のフローリングを標準仕様にしているハウスメーカーを選びたいものです。

壁紙の塩化ビニルクロス

家の中には、至るところに壁紙(クロス)が貼られているはずです。部屋もそうですし、トイレなども壁紙が貼ってあります。実はこの壁紙の90%以上が塩化ビニル製の壁紙なのです。塩化ビニルといえば、燃やすと大量のダイオキシンを発生させることは有名です。

それだけでなく、塩化ビニルクロスには可塑剤(かそざい)が含まれており、その毒性はメラニンの20倍にも及ぶというのです。人体への影響としては、男性生殖機能の低下や、大量摂取すると肝臓ガンを誘発する危険性があると注意換気されています。

そして壁紙を貼るための糊にも、VOC(揮発性有機化合物)という有害物質が含まれています。そしてその中には、ホルムアルデヒドも含まれているのです。

対策としては無害性の高いクロスを使うことや、壁紙を貼らずに漆喰などで代用する方法があります。

ワックスや塗料

家のあちらこちらで使われるワックス、塗料、ニス、ペンキなどにも有害な物質が多く含まれています。有機溶剤の中にはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなど、多くの有害化学物質が入っており、これらが人体に悪影響を及ぼすことがわかっています。

対策としては、有機溶剤を含まない水性系塗料や、天然成分の塗料を積極的に使うことです。しかしそれでも有害な化学物質がゼロになるわけではありません。

シロアリの防蟻処理剤にも要注意

シロアリ予防のため、柱に防蟻加工をするのが一般的です。しかしこれは、柱に薬剤を塗って防いでいるに過ぎません。当然殺虫剤とされている薬剤なので、有害な物質(主成分は有機リン系殺虫剤やピレスロイド系殺虫剤など)が含まれています。

これらの薬剤処理の効果は、おおよそ10年くらいを目処に切れてしまうのですが、その後は個人で防蟻処理業者に依頼して再処理をしてもらうことになります。

これまで人体に影響を感じなかった場合でも、防蟻施工業者が変われば、使用する薬剤も違う場合があります。そうした場合、急に人体に影響が出てしまうというケースも否めません。

また薬剤の期間を長持ちさせるため、木材に特殊な方法を使って薬剤を浸透させるハウスメーカーもあります。そうなれば、効果は半世紀ほど継続するそうです。

人体に悪影響を及ぼさないよう、薬剤を使わなければシロアリにやられてしまう、薬剤を使えば化学物質で人体に悪い影響が出てしまう恐れがある、実にもどかしい選択です。

ほんの15年ほど前までシロアリ処理の薬剤といえば、「クロルピリホス」を含んでいる有機リン系が圧倒的なシェアでした。しかしこの「クロルピリホス」が、2003年の改定により使用禁止に指定されました。

ということは2003年以前の中古住宅を購入したら、この「クロルピリホス」が使用されている可能性が高いということになります。

対策としては、天然系のヒバ油や木酢液などを用いた防蟻対策がありますが、効果はやはり充分でないとの報告も数多くみられます。その他には、やはり湿気や結露を出さない家作りというのが重要になります。

シロアリと結露や湿気の関係については、別記事の「シロアリ・ダニ・カビを発生させない注文住宅の建て方と費用相場」で詳しく触れていますので、そちらを参照してください。

「ホルムアルデヒド」などの建築資材

人体に有害とされる化学物質は、建築資材にも多く使用されています。

「ホルムアルデヒド」「クロルピリホス」「トルエン」「キシレン」「酢酸ビニル」「アスベスト」「ラドン」などです。しかし驚くことに、厚生省が指定している規制物質や禁止化学物質は、わずかに数えるほどしかないのです。

その代表的なものが、「アスベスト」や「ホルムアルデヒド」です。今でこそ使われていませんが、少し前までは壁内断熱に使われるロックウールに、アスベストが混ざっていた商品もあったのです。そして今一番問題視されているのが、人体にあらゆる害悪をもたらす「ホルムアルデヒド」という有害物質です。

もちろんホルムアルデヒドも法律によって使用を制限されていますが、今もなおほとんどの住宅に、少なからずこのホルムアルデヒドが使用されているのです。

ホルムアルデヒドは、あらゆる建築資材に使用されているため、すべてを排除して家を建てることは想像以上に難しいのです。使用が規制されているため、今ではホルムアルデヒドが使用されている製品には、どれくらいの量のホルムアルデヒドが使用されているのか、ひと目でわかる等級指数が設けられています。

等級指数は「F☆☆☆☆」というように、☆の個数で表示されており、この☆の数が多いほど、ホルムアルデヒドの拡散リスクが少ない商品となっています。(☆の数は最大4つ)

しかしこれも、ホルムアルデヒドが使われていないわけではありません。しっかりとホルムアルデヒドは使用されており、その発散量が多いか少ないかの目安でしかありません。シックハウスなどの健康被害を発症している場合、ほんのわずかな化学物質にも反応してしまう恐れがあるので、いくら「F☆☆☆☆」の建築資材でも意味を成しません。

ちなみにホルムアルデヒドが人体に及ぼす影響としては、皮膚疾患や気管支炎、喘息などが有名ですが、それ以外にも発ガン物質であることがわかっています。

どんな建築資材に使われているのか?

建築資材の中で、ホルムアルデヒドを多く含んでいる物質というのは、合板、集合材、壁紙、接着剤、断熱材、樹脂製品など、言い出せばキリがないほどの資材に使用されています。合板や壁紙にもホルムアルデヒドは含まれるので、家のフローリングや壁からは、毎日有害なホルムアルデヒドが発散されているのです。

もちろんひとつずつ解決しようと思えば、できないこともありません。フローリングには合板材を使用せずに、無垢材を使用するとか、壁紙を一切使わずに漆喰にするなどの手段はあります。しかしそれらをすべてやっていくと、先にも言ったように莫大な建築費になるのです。

でもそれができるのも、注文住宅のメリットだとも言えます。建売住宅や規格型住宅では、すでにほとんどの建築資材が決まっているため、変更は利きません。どうしても各所にこだわっていきたいのであれば、選択肢は注文住宅しかないということになります。

健康に住むことができる家作りをしたいのであれば、この言葉は忘れないでください。

「建売住宅や規格住宅は避け、注文住宅だからこそできる安心・安全の家作りをする」

ホルムアルデヒドの濃度は日数が経てば下がる

このホルムアルデヒドという成分は日数が経過すれば、発散量は徐々に低下することがわかっています。2週間から6週間で当初の3分の1程度にまで下がり、3ヶ月ほどで最低レベルにまで低下すると言われています。

ただしそれ以降は日数が経過しても、一定数は延々と残りますので、完全にゼロになることはありません。そのことを考えれば、新築住宅が完成してもすぐに引越しをせずに、一定期間をおいてから引っ越しするなどの対策も有効ではないでしょうか。

そしてもう1つここで注意して頂きたいのは、モデルハウスを見学しても身体に影響が出なかったからといって、安心することはできないということです。モデルハウスは年数が経過しているので、ホルムアルデヒドの発散量は最低クラスにまで低下している状態だからです。

よくモデルハウスを見学して目のかゆみやクシャミが出れば、シックハウスの恐れがあると紹介しているサイトなどをみかけます。このホルムアルデヒドのように日数が経過することで、発散量が減る化学物質は少なくありません。

つまり、「モデルルームに滞在しても症状がでないから安心」という考え方が正しいとは言いがたいのです。

あまり過敏になりすぎないように注意

ここまであらゆる有害物質を紹介してきましたが、おわかりの通り、人体に少しでも影響がある有害物資を挙げればキリがありません。有害物質といっても、加減があると思います。ホルムアルデヒドなどのように有害性の高い物質もあれば、ほとんど人体への影響はない有害物質もあります。

つまり「化学物質=すべてが人体に悪影響」というように、神経質に考えすぎないことも大事なことです。いくら注文住宅だからといっても、すべての有害物質を排除した家を建てることは、そう簡単なことではありません。

ここまで長く有害物質の話をしてきましたが、最後に頭の片隅に置いてほしいことがあります。

皆さんがこれまで過ごしてきた家にも、少なからず有害な物質は存在していたはずです。本当に小さなところでいえば、和室の畳やタンスの中の防腐剤にも有害な物資が含まれています。

防虫畳というくらいですから、当然虫よけの防虫処理が施されています。タンスの中の防腐剤や防虫剤にも、そういった成分が含まれていることも忘れないでください。

マイホームという高額な買い物をするわけですから、少しでも家族が健康に暮らせる家を作りたいという気持ちは重々理解できますが、どこかで妥協するということも大切なことです。

それでもやっぱり気になるというのであれば、最後に1つ紹介しておきたい制度があります。それは「安全データシート」という存在です。

安全データシート(SDS)とは?
家を建てる人は、住宅会社や建設会社から「製品安全データシート(略名:SDS)」という情報書類を取り寄せることができる決まりになっています。
このデータシートには、「どのような製品にどのような化学物質がどれだけ使用されているのか」などの情報が記載されています。

この安全データシートを取り寄せ、そこに記載されている成分をインターネットで詳しく調べていくことも可能なのです。このように使用される製品について、細かいデータを取り寄せて調べることで、気になる化学物質を使用した製品を使わないでおくなどの取捨選択ができます。

こういったデータをもとに、納得のいく資材や製品で家をつくることができるのも注文住宅のメリットです。予算の面も考慮して、健康的な生活が送れる家に少しでも近づけるように、情報収集も大切なことなのです。