太陽光発電システムを搭載した住宅や、マイホームで使う電力を家庭内で作るスマートハウスなどが登場していますが、その根本となっているのが「オール電化住宅」です。
日本国内におけるオール電化住宅の普及率は「11.8%」。約8世帯に1世帯がオール電化住宅です。2016年に始まった電力自由化の影響もあり、今後益々オール電化住宅の普及率は増加すると予測されています。
そこで今回は、オール電化で注文住宅を建てる場合のメリットやデメリット、相場価格と注意点について詳しく解説します。
- 【目次】オール電化での注意点や相場価格
オール電化住宅とは
オール電化住宅とは、家庭内における調理、空調、給湯、家電などを、すべて電力でまかなう住宅のことをいいます。
従来調理といえばガスコンロ、給湯といえばガス給湯器が主流でした。しかしこれらの機器をガスでなく、電気でまかなえるようにすることでガス代をなくし、光熱費削減や火災などの防災目的として広く普及することになりました。
- 調理用のガスコンロ → IHコンロ
- ガス給湯器 → 電気温水器
この2つの登場が、オール電化住宅の普及に拍車を掛けることになったのですが、さらに太陽光発電システムの普及が、オール電化住宅が急激に増加することになった理由だといえます。
オール電化住宅の普及率は11.8%ということでしたが、新築住宅におけるオール電化の割合は30%を超えており、地域によっては60%以上の割合でオール電化住宅が建てられています。
オール電化住宅は本当にお得なのか?
総務省の調査によると、電気とガスを併用している一般家庭が1ヶ月に払ってる光熱費の額は、平均18,651円。このうち電気代が11,203円となってます。そして、オール電化住宅の1ヶ月電気代の平均は15,905円という調査データがあります。
これで考えると、オール電化住宅の方が、光熱費を1ヶ月で2,746円節約できている計算になります。1年に換算すると32,952円も光熱費が削減できる計算です。
1ヶ月2,746円をどう捉えるかはその人次第だと思いますが、オール電化住宅の魅力は、これに太陽光発電システムが加わってこそだと思います。
太陽光発電システムを設置するには、初期投資費用が掛かりますが、それを考慮しても設置するだけの経済効果は十分にあると思っています。
オール電化住宅のメリット・デメリット
オール電化住宅には魅力的なメリットがたくさんあります。その反面、デメリットとなる部分もあります。これらをトータル的に考えて、マイホームをオール電化住宅にするか考えなければなりません。
オール電化住宅は光熱費が削減できますが、それもその家庭の生活リズムによって異なり、逆に光熱費が高くなってしまう可能性もあります。それではメリットとデメリットについて詳しくみていきましょう。
メリット
オール電化住宅にすることで、光熱費の節約になることは有名ですが、そのほかにもメリットとなる部分があります。
光熱費の節約になる
オール電化住宅にすることで、光熱費の大部分を占めると言われる、給湯のガス代とエアコンなどの電気代を節約することができます。
ただし、どれくらい節約できるかは、導入するオール電化設備や電気プランなどの契約形態によっても異なるので、自分の家庭に最適な契約形態を選ぶことが大事になります。
例えば、共働きで昼間は留守にしていることが多いのであれば、深夜電力が安くなり、昼間の電気料金が高いプランを契約すると、より節約効果が高くなります。
出典:http://www.kyushu-eneco.jp/category/
オール電化にすることで電気代が増加するのですが、その大部分は「電気温水器」が占めていると言われています。
そこで検討するのが、電気温水器に比べ消費電力を半分以下にできるエコキュートです。初期導入費は割高になってしまいますが、それでも今は多くの人がエコキュートを選択しています。最近では、さらに省エネ性が高い次世代型のエコキュートも登場しています。
支払いを一本化できる
電気とガスを一本化することで、光熱費や支払いの管理がしやすくなります。さらにガスと電気は、それぞれに基本使用料が掛かっているため、それを電気1本に絞ることでガスの基本料金を払わなくてすみます。
ちょっとしたことかもしれませんが、ガスの基本料金は月1,000円~2,000円の地域が多いため、年間にするとそれだけで20,000円ほどの節約になります。
火災予防になる
調理用ガスコンロを使わないため、火災はもちろん、ガス漏れや一酸化炭素中毒の不安もなくなります。
特に小さなお子さんが一人で留守番することが多かったり、高齢者が自分で調理器具を使うような家庭であれば、これはかなり大きなメリットです。
災害時に臨時の生活水が確保できる
災害時に電気温水器やエコキュート内の水を生活水として使用することができます。残念ながら飲料水としては使用できませんが、災害時に自由に使える水があるだけでもトイレや洗顔など気分的にも全然違います。
また災害といえば、ライフライン(水道、電気、ガス)で一番復旧が早いと言われているのが電気です。そう考えると、より早く日常の生活を取り戻すにはオール電化住宅が一番適してることもわかります。
地球環境に優しい
使用する電力が少なくなれば、それだけ排出するCO2も少なくなります。また、深夜電力をうまく活用することで、発電所そのもので発電する電力量を抑える効果もあると言われてます。
結果として、それが地球全体の環境にも良い結果を与えてくれることに繋がります。
デメリット
オール電化住宅を検討するのであれば、デメリットとなる部分も把握しておきましょう。
初期投資費用が高い
初期投資費用がそれなりに掛かってしまう部分が一番のデメリットだと思います。
単純にIHコンロと電気温水器だけを設置して、ガス使用をなくすのであれば費用は50万円~100万円くらいになります。しかし、それに太陽光発電システムをプラスするのであれば、導入費用は大幅にアップします。
どこまでのオール電化住宅を求めるのかによって初期費用が違ってくるので、しっかりと検討することをおすすめします。
昼間の電気代が高くなる
深夜電力が安い電気料金プランで契約すると、昼間の電気料金が割高になってしまいます。よって、昼間に家族が家にいる家庭であれば、逆に電気代が高額になる可能性もあります。
家族のライフプランに合わせて、それに見合う電気料金のプランをしっかり選ぶようにしてください。
IHコンロには好き嫌いがある
電気のIHコンロはガスを使わないので火がつきません。そのため中華料理のように強い火力の料理には不向きだと言う人もいます。
また高齢者の中には使い方がわからないという人も多いですし、火をつかない分、鍋が熱くなっているのに気付かず火傷をしてしまうケースも多いようです。家族構成や誰が主に料理をするのかなど、それらをしっかりと考慮して検討するようにしましょう。
オール電化住宅の価格相場
新築の注文住宅であれば、今はどこのハウスメーカーもオール電化に対応した価格になっているので、オール電化住宅にするからといって建築コストが高くなることはそうありません。
ただオール電化住宅といっても、ただ単にIHコンロと電気温水器を設置するだけのケースもあれば、太陽光発電システムや床暖房システムを設置するケースもあります。
基本的にはIHコンロと電気温水器は、注文住宅の基本仕様に含まれていると思ってもらって結構です。しかし太陽光発電システムや床暖房システムとなれば、別途追加費用が発生する可能性があります。
あくまでも目安ですが、太陽光と床暖房の設置費用は以下の金額を考えておくようにしましょう。
- リビング16畳の床暖房システム・・・100万円~120万円
- 太陽光発電システム・・・40万円~45万円/kw
太陽光システムは、実際にどれくらいの容量を設置するかによって金額が大きく違ってきます。
一般的に家庭用電力の6割程度をまかなうためには、5kw~6kwの太陽光パネルの設置が必要だと言われてますので、そう考えると設置費用は200万円~250万円ほどを考えておかなければなりません。
オール電化の注文住宅を建てる際の注意点
注文住宅でオール電化住宅を建てるときのポイントとしては、まず自分たちが希望するオール電化住宅の理想像をしっかりと伝えることです。
ただ単に、「オール電化住宅が希望です」とだけ伝えるのはNGです。以下のような具体例を考えて、しっかりと住宅会社に伝えておくようにしましょう。
- 電気温水器ではなく、エコキュートを設置したい
- 太陽光発電システムで家庭電器の7割を創りたい
- 設置できるだけ太陽光パネルを屋根に載せ、余った電力は売電したい
- 床暖房は必要ない
- オール電化といっても、スマートハウスが希望
- シャワーの水圧は強めがいいので、ポンプ式の温水器を設置して欲しい
このように自分たちが望むオール電化住宅の希望を明確にしておくことが大切です。
まとめ
今回は、オール電化のメリットやデメリットをはじめ、建てる時の注意点や相場価格について解説しました。
オール電化住宅にはたくさんのメリットがありますが、初期費用などがどうしても高額になってしまうので、デメリットや費用なども総合的に考慮して、本当に必要なのかもう一度確認しておきましょう。
建築が始まってから変更することは容易ではありませんし、資金計画も狂ってしまいます。まず自分たちがオール電化住宅に関して、ある程度の知識を勉強しておき、こちらの理想を建築会社にしっかりと伝えることが大切です。