注文住宅は自分たちの生活に合わせた間取りで家を建てることができ、中でも最近人気なのが、家事や炊事が楽になる生活導線を取り入れた家づくりです。
このページでは、
- 家事の負担が減る生活導線のポイント
- 主婦に人気のハウスメーカー
- 生活導線を考えた家づくりをする際の注意点
などについて、詳しく解説します。
年齢を重ねるごとに家事の疲労度は増していくので、間取りを考える際には生活導線も考えながら家づくりを行っていきましょう。
家事の負担が減る生活導線のポイント
生活導線を意識した間取りにすることで、家事や炊事の負担を最小限に抑えることができます。
家事導線と聞いてもあまりピンとこない人もいるかもしれないので、パナソニックホームズの家事楽プランのページを引用しながら解説します。
まずはパナソニックホームズの従来プラン(生活導線を意識しない)の家での1日の家事の流れと、移動距離を算出したものが以下になります。
では、最近人気の「家事楽プラン」で家と比較してみてください。
このように生活導線を考えた間取りで家を建てた場合、1日で約400m、年間では約142kmも移動距離を削減することができ、家事負担に対する疲労度が大きく違ってきます。
将来的なことも考えて、家づくりする際はしっかり生活導線を考えて、マイホームを建てることをおすすめします。
料理(キッチン)
家事効率の良いキッチンにするには、ワークトライアングルを意識すると良いでしょう。
ワークトライアングルとは、シンク・コンロ・冷蔵庫を三角形で結んだ位置関係のことを言い、この距離の合計が360㎝~660㎝が目安で、最も理想的な距離は三辺の合計が510㎝だと言われています。
それと1辺あたりの長さは、最低120㎝が良いとされており、それよりも短くなると逆に使いづらいキッチン導線になるので注意しましょう。
キッチンの選び方に関しては、「注文住宅のおすすめキッチン」で詳しくまとめています。使いやすい高さの目安などもまとめているので、あわせてチェックしてみてください。
キッチンの配置
キッチンの導線を考えるとき、料理をする一連の動きを考えて配置する必要があります。
- 冷蔵庫から食材を取り出す
- シンクで食材を洗う
- 食材を切る
- コンロで調理する
このような動作を考えたとき、冷蔵庫とシンクの距離が短いほうが作業効率は高くなります。
画像のように冷蔵庫を奥に設置すると、シンクとの距離が離れてしまい無駄な歩数を費やすことになりますし、なにより料理中に家族がドリンク1つ取り出すのも大変になります。
このように調理中の導線だけでなく、家族の生活導線もしっかりと考えたレイアウトにしなければ、使いづらいキッチンになってしまうので注意しましょう。
掃除
掃除導線というのは、あまり一般的に使われる言葉ではありませんし、掃除導線と言ってもピンとくる営業さんは少ないかもしれません。
掃除導線を意識するのであれば、一般的な「回遊導線」を導入することを検討してみてはいかがでしょう。
回遊導線とは、家の中をグルっと回遊できるようになっている間取りのことで、掃除機やモップ掛けの導線を最小限にすることができますし、行き止まりが少ないので行ったり戻ったりという余計な動きをしないで済みます。
洗濯
一般的な洗濯導線では、以下のような移動が必要になります。
- 洗う(1階の洗面室)
- 干す(物干しスペース)
- たたむ(リビングなど)
- しまう(各部屋)
このように全てバラバラの場所で作業をすることは効率も悪く、家事の大きな負担となります。
そこで注目されているのが、洗濯の負担を小さくする「ランドリー導線」で、洗濯機がある洗面所の隣にランドリールームを設置する間取りです。
洗濯ものが少量の場合、外に干さない家庭も増えているので、ランドリールーム(家事室)を設置することで、洗濯にかかる移動距離を大幅に縮小することもできます。
このランドリールーム(家事室)に家族分の棚を設置することで、たたみ終わった洗濯ものを各部屋まで運んで収納するという作業も解消することができます。
その他の導線
ここまで紹介した導線の他にも家事の負担を楽にする、さまざまな生活導線がありますので、簡単に紹介しておきます。
玄関導線
玄関導線というのは、買い物してきた荷物を効率良く食品庫(パントリー)に片付けることができる導線であったり、料理中などの来客対応が楽になる導線のことをいいます。
最近はネットで買い物をする人が増えているので、頻繁に荷物が届くという家庭も多いのではないでしょうか。
そうした家では、このような導線を意識するようにすることをおすすめします。
上図の間取りは玄関導線がしっかり考えられた間取りになります。
もしキッチン裏のパントリーから玄関へと繋がる導線がなければ、来客のたびにダイニングやリビングを経由して玄関に向かわなければなりません。
もちろん買い物してきた荷物の搬入でも同じことが言えます。
朝のラッシュ導線
朝はトイレや洗面所が混雑しやすいのは、どこの家庭でも同じだと思います。
これは毎朝のことなので、家族がストレスなく出勤、通学できるように導線をしっかり考える必要があります。
この場合、各部屋の位置より、混雑する箇所を明確にして、使い勝手を向上させる工夫が必要となります。
例えば混雑しやすいトイレは2階にも設置し、歯磨きや洗顔する場所を広めに確保し、2人~3人が同時に利用できるようにしましょう。
また、階段から洗面所までの導線は大変混み合いやすく、余裕があれば廊下を広めに設計しておくのも1つの解決策ですし、お互いがすれ違わずに場所を譲れる回遊導線も有効だと思います。
介護導線
介護や介助が必要な家族がいる場合、介護の負担を減らす導線についても考えておくようにしましょう。
介護というのは、介護する側だけでなく、介護される側にとっても肉体的にも精神的にも大きな負担がかかります。
一般的には家にいることが多い奥さんが介護に関わることが多くなります。
気をつけておきたいポイントとなるのが、キッチンから介助者がいる部屋までの導線、トイレやお風呂の位置、デイサービスに出かけるときの出入り口などです。
介護者がいる部屋とキッチンなどの家事スペースが近すぎると、介護する側の負担が大きくなる可能性が高くなりますし、離れて過ぎていてもいけません。
またデイサービスを利用している場合、毎日のように送迎の人が迎えに来てくれます。
介護者の部屋を奥まった位置に作ってしまうと、出かけるのも大変になるので、なるべくなら部屋からそのまま外に出れるような工夫を考えておくのも良いでしょう。
上図であれば、和室8畳を介護部屋にすることでトイレやお風呂も近いですし、例え車イスでの移動が必要でも、和室の掃きだし窓から直接出入りすることができます。
主婦目線の家が得意なハウスメーカー
主婦目線の家が得意なハウスメーカーを紹介していきます。
各ハウスメーカーからも、家事の負担を減らせる住宅商品が販売されていますので、複数の住宅会社に相談しながら、最終的に契約する業者を決めるようしてください。
住友林業
住友林業には、女性目線で考えられた「Conokaコノカ」という商品があります。
ビッグフレーム構法なので、他社では真似ができない大空間を実現することができ、これは生活導線を考えるうえでも大きくプラスになります。
家事の効率化を図るランドリースペース(ワークテラス)や、天候に左右されることがないサンルームも備えているので設備は問題ありません。
あとは自分たち家族の理想となる生活導線をうまく組み込むことで、最強の家事楽マイホームが完成します。
パナソニックホームズ
苦手な家事でも楽しくこなせるように、パナソニックホームズでは工夫やアイデアが詰まった「家事楽スタイル」という商品があります。
この家事楽スタイルには3つの特徴があり、「家族の協力」「家事効率を考えた導線」「適材適所の収納」をコンセプトに掲げており、家族みんなで家事を楽しむことができます。
とくに家事導線に強いこだわりがあり、冒頭で紹介したように家事負担を数値化して算出しています。
三井ホーム
三井ホームの「chouchou(シュシュ)」は、家事したい女性に人気が高い住宅商品です。
女性目線のこだわりが多数詰め込まれており、デザイン性や機能性をみても女性を意識していることが良くわかります。
Chouchouのコンセプトは「あったらいいな!を叶える家」となっています。
家事を楽にすることで自分時間をつくることができ、充実した主婦ライフを送れるような工夫がふんだんに盛り込まれています。
Chouchouは2010年の販売以来、高い人気を維持している商品でもあり、2020年7月からテレワークにも対応した「chouchouクール」という新商品が販売開始しました。
ロイヤルハウス
ローコスト住宅でも、家事が楽になる住宅があります。
ロイヤルハウスで注目したいのは「コムニ」という商品で、子育て中でもラクに楽しく暮らせる20のアイデアが盛り込まれています。
コムニの中でも3つのグレードがあるのですが、家事だけでなく掃除や洗濯導線にも優れている「COMUNI美ファイン」という商品に注目してみました。
子育てや家事に忙しくても、毎日楽しく暮らしたい。そして美へのこだわりも持ち続けたいという主婦を応援する住宅商品になっており、家事を楽にして余った時間で自分磨きもしっかりできることが人気に繋がっているのだと思います。
ユニバーサルホーム
ユニバーサルホームもローコストに分類されるハウスメーカーです。
今回注目したの商品は「Kidukiきづき」です。
子供たちが成長しながら、「片付ける」「整理する」を自然と身につけられるように考えられた「Kidukiボックス」を採用したり、家族同士のふれあいを自然につくりだす導線にもこだわりが見られます。
また家事の負担を減らすため収納スペースにも強いこだわりがあり、一般的な住宅の収納スペースは全体の10%ほどであるのに対し、こちらのKidukiでは平均23.89%の収納率を実現しています。
もちろんユニバーサルホームの売りでもある、地熱床暖房にも対応しています。
生活導線を考えた家づくりをする際の注意点
ここまで紹介したように、生活導線といっても複数のパターンがあり、すべての導線を取り入れるのは難しいと思います。
また、生活導線ばかりを意識して間取りを考えると、予定していたよりも大きいサイズの家になってしまいがちで、結果として建築費が大幅に増えてしまう恐れがあります。
ここからは、生活導線を意識しすぎて失敗したパターンをいくつか紹介していきたいと思います。
家の大きさ
生活導線ばかりを意識すると、どうしても建物全体が大きくなってしまい、坪数が増えてしまいます。
とくに回遊導線は女性に人気ですが、かなりの確率で坪数が大きくなってしまいます。ちなみに回遊導線にすることで、1階の坪数は平均2坪ほど広くなってしまうと言われています。
坪単価50万のハウスメーカーで2坪広くなると、予算が100万アップします。
取り入れる生活動線の種類が多くなれば、それに比例するように建物も大きくなってしまうので注意しましょう。
上図でも回遊導線を諦めることで、②の通路をなくして洗面所とバスルームを詰めることができるので、それだけでも1坪ほどコンパクトにまとめることができます。
収納スペース
家事を楽にするのは導線だけではありません。
最近高い注目を集めるようになった「ファミリークローゼット」も家事を楽にする効果が高いと言われています。
ファミリークローゼットとは、家族が共有して使うクローゼットのことで、最近はリビングやランドリースペースの近くにファミリークローゼットを設ける家が増えています。
クローゼットを1カ所にまとめてしまうことで、ランドリーワークが大幅に軽減することにもなりますし、各部屋も居住スペースを広くつくることが可能になります。
こだわりすぎた失敗例
生活導線にこだわりすぎたばかりに、他のことに目が向かずに後悔されているポイントなどを参考にするのも良いでしょう。
ここでは、導線を意識しすぎたばかりに、その他の箇所が使いづらくなってしまった失敗例などをいくつか紹介していきます。
- 買い物導線を意識したばかりに、玄関からキッチンが丸見えになってしまった
- 回遊導線にして坪数が大きくなったので、収納スペースを削り、屋根裏収納を作ったが、階段の上り下りが面倒でほとんど使っていない
- 家族の交流を多くしたくてリビング階段の導線にしたが、子供が友達を連れてくるたびリビングを通るので常に綺麗にしておかなければならない
- お風呂に行くのにリビングを横切らないといけないので、来客時にお風呂に入れない
- 少しでも導線を効率良くしようとしたが、二階への階段を玄関近くにつくってしまい、来客時に娘たちがスカートを気にして階段を使えない
- 二階に洗面所やバスルームをつくってしまい、帰宅後の手洗いなどは1階のキッチンを使うことに
- 導線にばかり気を取られて、採光や通風の悪い間取りになってしまった
こうした点に注意しながら生活導線を上手に取り込むことで、家事の負担を減らしたり、家族同士のコミュニケーションを増やす家づくりができます。
生活導線を含めた間取りプランというのは、作り手によって全然違ってきますので、なるべく多くのハウスメーカーや住宅会社に相談しながら、自分たちの家づくりに必要な導線を選択していくのがポイントです。
まとめ
注文住宅において、最初から生活導線や家事導線を気にしている人は少ないと思います。
ですが、こうやって考えてみると、いろいろなアイデアや見直すべき間取りポイントが見えてくると思います。
間取りがある程度決まってから導線を考えていくのは大変な作業になるので、希望の間取りを作成してもらう前の段階で、自分たち家族がどのような生活導線を優先しているのか、営業担当と設計士にしっかり伝えておくようにしましょう。
今現在だけの生活スタイルを考えるのではなく、時間とともに生活スタイルが変化していくことを想像した家づくりを心掛けるようにしましょう。