働き方改革の一環として政府が推奨しているのが在宅勤務で、テレワークやリモートワークとも呼ばれています。
テレワークする人は、今後さらに増える事が予想され、それにともないマイホームにワークスペースが必要となる人が多くなると思います。
この記事では、これから家づくりをする人、今ある家のリフォームを検討している人向けに、在宅勤務しやすい家づくりのポイントについて解説していきます。
リモートワークする際に必要な環境
自宅で仕事をするにあたり、一番難しいのは仕事とプライベートのオンオフの切り替えです。
実際にリクルート社が2019年11月と2020年4月に実施した「テレワークに対する不満」というアンケート調査の結果でも、最も多かったのがオンオフ切り替えでした。
このアンケート結果をみてもわかるように、これから自宅でテレワークを考えるのであれば、集中して仕事ができる場所づくり、そして作業スペースを確保するためのプランニングや工夫をしっかりと考えていく必要があります。
オンオフの切り替えをしやすくする
自宅でリモートワークをするとしても、仕事の生産性は落とせませんが、自宅だと仕事に集中できず、作業効率が落ちてしまうという人は少なくありません。
作業効率が落ちてしまう人の多くが、仕事モードのオンとオフの切り替えが上手に出来ていない可能性があります。
集中して仕事ができる仕事スペースの確保こそ、リモートワークでは何より大切なポイントです。
オンオフの切り替えがしやすい環境にするには、仕事スペースを「個室」と「オープンスタイル(半個室)」にするという方法があります。
個室タイプ
独立した書斎タイプの個室であれば、仕事に集中しやすくなるのでおすすめです。
書斎の場所ですが、個室といってもテレビの音、家族の足音などが気になる人も多いので、なるべくなら日頃あまり家族が近づかないような位置に設置することをおすすめします。
一番のおすすめは、夫婦の寝室の奥です。
昼間であれば、奥様が頻繁に寝室に出入りすることも少ないですし、子供たちもあまり近づかない場所です。
寝室を区切る形で書斎を設けるのが、テレワークをするうえで一番適した環境だと思います。
オープンスタイル(半個室)
予算や家の広さに余裕がなく、個室タイプの設置が難しい場合は、どこかの場所を間借りする感じのオープンスタイル(半個室)になります。
このオープンスタイルの場合、リビングを選ぶことが多いのですが、そうなるとどうしても家族に迷惑が掛かってしまうことも多く、あまりおすすめではありません。
おすすめしたい場所としては、階段の踊り場や寝室などを検討してみてください。
ここであれば、生活スペースを無理に削る必要もありませんし、家族団らんの場に仕事を持ち込むこともしなくて済みます。
作業スペースを確保する
上のブロックで紹介したように、階段踊り場にワークスペースを設置してしまうと、十分な作業スペースを確保しづらいという問題が発生します。
テレワークはパソコン1つあれば仕事はできるのですが、中には仕事で使う資料がたくさん必要な人もいるかと思います。
デスクは階段踊り場にあるけど、書類は1階のリビングにまとめてあるというのは、どう考えてもあまり仕事の効率的に良くはありません。
テレワーク用のスペースを設置するときは、十分な作業スペースが確保できるかもポイントになります。
どうしても作業スペースまで確保するのが間取り的に難しいのであれば、屋根裏部屋なども検討する価値はあると思います。
多少、天井高さなどに制限は掛かりますが、デスクに座って仕事するのであれば、そこまで高さなどは気にならないと思いますし、十分な作業スペースを確保できるのではないでしょうか。
窓の位置と照明はこだわる
在宅ワークには、窓の位置と照明が大きく関係してくると言われています。人間のカラダは、だいたいの明るさで時間を知る機能が携わっています。
そのため、いつも会社で仕事をしている自然光や部屋の明るさをカラダが記憶しているのです。
朝日を浴びているときは、「さぁ!これから仕事するぞ」というONのスイッチが入り、夕暮れ時になるとカラダは徐々に仕事モードをOFFに切り替えます。
いっぽう自宅というのはリラックスできる空間づくりをメインに考えられており、室内で使用されている照明の多くが、ソフトで柔らかみのある明るさになっています。
これでは仕事モードのONとOFFの切り替えが困難です。
照明機器の選び方については「照明器具おすすめは?種類や価格相場など選び方のポイント」で紹介しています。
他にも集中しやすい色などもありますので、壁紙の色にも気を使うようにしましょう。これらの問題を解決するには、インテリアコーディネーターという強い味方がいます。
大手のハウスメーカーであれば、専門の資格を持つコーディネーターが在籍しており、契約後の打合せ時に同席してくれますので、窓の位置、照明の色、壁紙の色などについて相談してみてください。
あくまでも一般的な意見ですが、集中力が高まる色は濃い青色や茶系だと言われています。
また仕事のひらめきやアイデアを大事にしたいのであれば、オレンジや赤色などを身の周りに置いておくと効果的だそうです。
コンセントの設置場所に注意
テレワークでは、パソコン用のコンセントはもちろん、そのほかにもプリンターや通信機器などのコンセントも確保しておかなければなりません。
既存住宅であれば、容易にコンセントの位置を変更することはできませんが、新築であれば難しい問題ではありません。
テレワークで使用する間取りが決まったら、ハウスメーカーなどと良く相談しながらコンセントの高さ種類、配線についても考えておくようにしましょう。
最近はUSB端子がついているコンセントもあるので、スマホの充電などにも効果的です。
また自宅で仕事をする場合、大事な情報を漏洩してしまわないよう、セキュリティ対策もしっかりとやっておきましょう。
ウイルスソフトを導入するのはもちろん、無線LANより有線LANでインターネットに接続することで、セキュリティも強化されます。
防音対策もしっかり行う
テレワークで大事なのは、仕事がしやすい環境づくりなのですが、家族への配慮も忘れてはいけません。
リビングにテレワーク用のスペースを作ってしまうと、そこで仕事をしている間、家族はおちおちテレビも見られなくなりますし、家族同士の会話にも気を使わなければならなくなります。
書斎のような個室タイプであれば、そこまで意識する必要もないのでしょうが、オープンスタイルや半個室タイプであれば、防音対策も考えなければなりません。
どうしてもリビングにしかテレワークスペースを確保できないのであれば、完全に防音するのは難しいので、垣根をつくり少しでも声が届かないようにするなどの工夫をしましょう。
間仕切り用の壁を1つ作るだけでも防音効果がありますし、それも難しいのであればパーティションや本棚などで仕切りを作ることをおすすめします。
もし資金的に余裕があるのでしたら、個室タイプでも遮音性や吸音性の高い建材を使うことで、かなりの防音効果が期待できます。
空調(エアコン)にも配慮する
自宅で仕事をするにあたり、意外と盲点になるのが空調設備です。
リビングにオープンスタイルの仕事スペースを確保するのであれば問題ないのですが、3帖程度の書斎、階段の踊り場、屋根裏部屋を選ぶと、空調をどうするかという問題が発生します。
3帖ほどの書斎にエアコンを設置するのはもったいない、ましてや階段の踊り場となればほぼ無理でしょう。
そこでおすすめしたいのが、空調用の窓やすき間を最初から設計しておくことです。
今の建物は高気密高断熱なので、間取りを工夫すれば、少し大きめのエアコンを設置することで、ワークスペースの空調まで補うこともできるようになります。
もちろん、そうした空調用の窓やすき間をつくることで、防音効果は多少薄れてしまいますが、何を得て、何を犠牲にするか良く考えることが大事です。
テレワーク対応の家が得意なハウスメーカー
最近、積極的に取り組む企業が多くなっているテレワークによる働き方改革。いま新築マイホームでも、自宅に在宅勤務用のワークスペースを設置する人が増えています。
気になるのは予算ですが、3帖ほどの書斎であれば、当初の予算にプラス100万円が目安になります。
こうした動きをみて、多くのハウスメーカーや工務店が、テレワーク向け住宅の販売を始めています。ここでは、テレワークに対応しているハウスメーカーを紹介していきたいと思います。
三井ホーム
三井ホームでは、テレワークスペースの設置を積極的にプランニングに取り入れており、公式サイトにもテレワーク専用のページがあるほどです。
Lucas(ルーカス)
こちらのルーカスは2階リビングを積極的に取り入れている住宅です。
ですので、間取りでもわかるように2階部分の多くをワーキングスペースとして確保し、リビングのような役割にもなっています。
リモートワークでも、つねに家族の雰囲気を感じながら仕事をしたい方に向いてる間取りプランニングだと思います。
Twin Family「ⅲ(トロワ)」
商品名の通り2世帯をモチーフにした3階建て住宅です。かなり広めの建物なので、仕事スペースも2カ所とってあります。
その日の気分で、仕事スペースを変えられるのは贅沢な感じですが、2世帯住宅のように広めの家だからこそ叶う間取りだと言えます。
ダイワハウス
ダイワハウスもいち早く、テレワーク専門のページを開設したハウスメーカーの1社です。
個室タイプや半個室タイプなど、さまざまなテレワークスタイルに柔軟に対応してくれます。
快適ワークスペース
ダイワハウスの「快適ワークスペース」とは、個室タイプのワークスペースのことで、防音仕様になっているので、家族のことを気にすることなくリモートワークに集中することができます。
半個室タイプ
セミクローズドの半個室タイプなので、ほどよく家族を感じながらリモートワークに集中することができます。
仕事も大事だけど、家族とのコミュニケーションも大切にしたいという人におすすめです。
また家事や育児をしながらでも、仕事ができることで、奥様の仕事スペースとしても人気です。
DIYで在宅勤務しやすい家にする方法と費用の目安
テレワーク用のデスクをDIYする方法について、ここでは紹介していきたいと思います。DIYでテレワーク環境をつくるのであれば、市販のDIYキットを購入するのが一番楽です。
届いたキットを自宅で組み立てるだけに加工されているので、DIY初心者でも手軽につくることができます。
DIYキットであれば10,000円~20,000円ほどで買うことができますが、さらに価格を抑えたいのであれば、近所のホームセンターで天板と足の木材を購入してみてください。
この場合の費用目安としては、5,000円程度を想定してもらえばと思います。
ただし、椅子の費用が別途かかるので、安く済ませたい場合はリサイクルショップなどを利用すると良いでしょう。
間仕切りを設置する
DIYで防音対策までやるには、素人には相当難易度が高くなると思いますので、あくまでも「簡易的なテレワークスペースをつくる」くらいを目標にしておくのが良いと思います。
リビングの一角にテレワーク用のデスクをDIYするのであれば、家族のためにパーティションで間仕切りをするという方法もあります。
市販されているパーティションを購入し、あとはDIYで簡単に設置できるのでおすすめです。
手軽なつい立タイプなら5,000円、天井のストッパーが付いたタイプだと20,000円以内くらいで揃えることができます。
リフォーム業者に依頼した場合
リフォーム業者にテレワークスペースの増設を依頼した場合ですが、工事の規模にもよりますが、テレワーク用のデスク取り付けだけであれば30,000円程度。
デッドスペースなどを利用し、簡易的な間仕切りタイプにするのであれば、200,000円~くらいを考えておくのが良いと思います。
さらに費用を抑えたいのであれば、シルバー人材センターに訪ねてみるのも良いでしょう。
過去に大工をされていた方が登録されていれば、格安で依頼することができると思います。
まとめ
テレワークの需要は年々増加しており、今後もさらに伸び続けることが予測できます。
これからの家づくりは、自宅で仕事をするリモートワークにも対応していかなければなりません。
既存の住宅であれば、空いた子供部屋を使うなどの工夫もできますが、防音対策なども考えるとそれなりの費用が掛かってしまいます。
とくに新築時は、子供がまだ小さい家庭も多いと思うので、集中して仕事ができる個室タイプ、子供が中学生のように分別のつく年齢であれば、リビングの一角をテレワークスペースにしても十分対応できるのではないでしょうか。
そうした家族の生活スタイルなどに合わせて、どのタイプを選ぶのか住宅会社と良く相談していくようにしましょう。