価格が安い、眺望が良いという理由で、傾斜地の土地を購入して注文住宅を建てようとする方もいます。たしかに、傾斜地は割安ですし、場所によっては最高のロケーションでしょう。
しかし傾斜地といっても、色々なタイプの土地があります。ひな壇型になっている造成開発された土地もあれば、山を切り崩したような急斜面に建つ家もあります。
傾斜地のタイプによっても注意点や問題点は違ってきますが、今回は一般的な「ひな壇型の傾斜地」をメインに解説していきます。
- 【目次】傾斜地に注文住宅を建てる場合の注意点
傾斜地に家を建てる際に注意すべき7ヶ条
傾斜地にマイホームを建てる際、注意しておかなければならないポイントをわかりやすく解説します。
- 急傾斜地崩壊危険区域の確認
- 宅地造成法が改正された後の土地であるか?
- 傾斜地に家を建てると割高になる
- 水害の問題
- 地盤の問題
- まわりの家の状況を確認する(門のズレやよう壁のヒビ割など)
- 保証の問題
急傾斜地崩壊危険区域の確認
傾斜地の土地を購入する、もしくは家の建て替えをする場合、必ず調べて欲しいのが「急傾斜地崩壊危険区域」に指定されていないかです。
この急傾斜地崩壊危険区域とは、自治体などが「がけ崩れの起きる可能性が高い」と指定している危険な箇所のことです。
そんな危険な土地は不動産会社も仲介しないと思っているかもしれませんが、決してそんなことはありません。場合によっては仲介する不動産会社でさえ、その土地が急傾斜地崩壊危険区域内にあると知らずに仲介しているケースもあります。
その証拠に下の図をみてください。急傾斜が多い長崎県の防災マップから抜粋したのですが、オレンジ色になっている部分が「急傾斜地崩壊危険区域」や「急傾斜地崩壊特別危険区域」に指定されている箇所です。
出典:https://www.pref.nagasaki.jp/sb/gis/index.php
佐世保市といえば25万人規模のそこそこ大きい街です。それでもこれだけの危険区域が指定されています。このように急傾斜地崩壊危険区域は、街中のあちらこちらにあります。
この警戒区域に指定されていると、近くに「急傾斜地崩壊危険区域」という看板が立てられているはずです。土木事務所や役場の防災対策課に行けば、指定地域の地図を見せてもらうことができます。
もし土地を購入する前であれば、なるべくこのような警戒区域内にある土地は避けた方が良いですし、すでに既存の宅地であればしっかりとした防災対策を採用するようにしましょう。
宅地造成法が改正された後の土地であるか?
ひな壇型の宅地造成地であれば、その造成工事が何年に実施されたか調べてください。というのも、宅地造成に関する法令が厳しく改正されたのが、平成18年の9月だからです。
改定の理由は過去の大地震の際など、急傾斜だけでなく、比較的緩やかな傾斜の造成宅地でも地すべりなどが起こったためとされています。比較的緩やかな傾斜の団地だから大丈夫と思いこむのは危険です。
しっかり対策が講じられている、平成18年9月以降に宅地造成された分譲団地を購入することをおすすめします。
もしそれ以前に作られている分譲団地であれば、この「宅地造成法の改正」を受け、何かしら対策を講じたのかを尋ねてください。しっかりとした対策を講じていれば良いのですが、何の対策も講じてないのであれば、ちょっと災害に対する意識が低い開発業者の可能性を疑う必要があります。
傾斜地に家を建てると割高になる
傾斜地のマイホーム建設で間違いなく必要となるのが、よう壁の造作や土砂崩れの際に土砂を止めるための土留め対策です。そのため、フラットな土地にマイホームを建てるよりも、間違いなく割高になってしまいます。
すでに宅地造成されているような分譲団地であれば、よう壁などは作られているので費用の問題はなくなりますが、先にも書いているように安全対策の問題が残ることは否めません。
また、よう壁は作ったらそのまま放っておいて良いわけではありません。しっかりメンテナンスをしなければ安全面の心配が増加します。亀裂が入ったり、ヒビ割れが発生すればその修復費用も掛かります。
水害の問題
水害というと大げさかもしれませんが、傾斜地は雨水の問題を慎重に考えなければなりません。特に傾斜地の下側にある場合、雨水がいっきに流れ込んでくる可能性があり、非常に危険ですし、雨が降るたびに嫌な思いをすることにもなりかねません。
とくに道路よりも敷地が低くなっている作りだと要注意です。流れ込んできた雨水は逃げ場がありませんので、敷地内には大きな水溜りが出来てしまう恐れがあり、それが原因で建物の腐食を進行させてしまいます。
この雨水問題で悩んでいる家庭はすごく多く、実際に家を建て、そこに住み始めてから初めて気付くというケースも多くあります。
道路よりも敷地が低くなっている土地は、必ず万全の雨水対策をしましょう。ハウスメーカーはプロだから任せておけば大丈夫、思っているかもしれませんが、担当してもらう営業マンによって質はバラバラです。
管理人もハウスメーカーの営業マン経験があるので言えることですが、このような雨水問題などは、一度自分のお客さんがそういう目にあって、初めて営業マンも次から気をつけるようになります。
水を含んだ土地ほどモロいものはありません。地盤沈下や地すべりの多くも、雨水などを多く含んだ土地で起きているので、営業マンにしっかりと確認しておきましょう。
地盤の問題
宅地造成されているような分譲団地であれば、そこまで大きな問題ではありませんが、段々畑や山を切り開いたような傾斜地に家を建てる場合、地盤の問題が関係してきます。
もともと畑や山だった土地は、どのような地盤の土地なのかわかりません。どちらかというと強固な地盤の土地は少なく、軟弱地盤の土地が多いという特徴があります。
地盤が緩ければ、当然地盤改良などの対策をしなければ家を建てることはできません。その費用として数百万円かかることもあります。せっかく割安で購入できた土地でも、地盤改良費が多額になっては本末転倒です。
土地の売買契約をする前に地盤の調査をさせてもらう。それがダメなら近所の人に話しを聞いたり、土木事務所や役場で過去に地盤トラブルが起こった地域でないかを確認しましょう。
まわりの家の状況を確認する
傾斜地に家を建てるとき、その土地の状況を知る手軽な方法は、近所の家を注意深く観察してみることです。
門戸の高さが左右でズレていたり、よう壁や建物の壁に亀裂やヒビ割れが発生していると、地盤に問題がある地域という疑いが強くなります。
もし隣近所に話しを聞くのであれば、「地盤沈下とかしてませんか?」と聞くのはNGです。さりげなく障子やふすま、網戸の開閉はスムーズですか?というように、少し遠まわしの尋ね方をするようにしましょう。
保証の問題
今回は、傾斜地に家を建てるときの注意点や問題点を話してきましたが、注意したところで限界があります。最終的には家を建ててもらうハウスメーカーや、工務店の経験や調査力を信じるしかありません。
しかしそれでも起こるのが家トラブルです。危険区域の条例、地盤沈下、がけ崩れ、雨水問題など、急傾斜地に家を建てることは並大抵ではありません。
もし何らかのトラブルが起こったとき、最後に頼れるのは保証です。家の保証だけでなく、地盤に対する保証をしっかり確認して、建築依頼をする業者を選ぶというのが、一番の傾斜地対策だと思います。
がけ崩れなどは一軒だけでなく、まわりの家も同時に被害にあう可能性が高いです。そうなったとき、同じ建築会社が建てている分譲団地だと、その建築会社に保証するだけの体力があるのかという問題も出てきます。
つまり保証にしても、自社保証の範囲、外注保証の範囲まで確認しておく必要があるということです。業者に任せっきりにせず、自分でもしっかり土地の状況を調べて、「もしかしたら」を念頭に置き、リスクを減らしていきましょう。